著者
北村 嘉行
出版者
経済地理学会
雑誌
経済地理学年報 (ISSN:00045683)
巻号頁・発行日
vol.32, no.4, pp.313-326, 1986-12-28 (Released:2017-05-19)
被引用文献数
1
著者
松原 宏
出版者
経済地理学会
雑誌
経済地理学年報 (ISSN:00045683)
巻号頁・発行日
vol.52, no.4, pp.219-235, 2006-12-30 (Released:2017-05-19)

1980年代以降,少子高齢化とグローバル化の進展が著しいが,両者は関連しあいながら日本の地域構造に大きな影響を与えてきた.バブル崩壊後の90年代の不況期には,東京一極集中が終わったかにみえたが,近年では「東京再集中」と「都心回帰」が顕著で,東日本と西日本との地域経済格差も顕在化してきている.少子高齢化問題は,地域的差異を伴って今後深刻化していくと考えられる.大都市圏では,都市型高齢者の量的増大と遠隔な郊外での高齢化の進行・住宅地の空洞化が,地方圏では高齢化率などの数値の大きさに問題の深刻さがみられ,中心市街地の空洞化が問題に拍車をかけている.こうした少子高齢化に加え,グローバル化,財政危機の下で,日本の地域政策は転機を迎えている.地域経済の自立や国際競争力の強化が政策課題として重視され,国土形成法や産業クラスター計画などの新たな政策が提起されているが,共通するのは,官民協働や産学官連携など政策主体の幅を拡げるとともに,政策の地域スケールとして地方ブロックを重視してきている点である.広域化の一方で,日常生活圏においては,「互助・共助」を強調した「コミュニティ」の役割が重視されてきている.
著者
山本 大策
出版者
経済地理学会
雑誌
経済地理学年報 (ISSN:00045683)
巻号頁・発行日
vol.58, no.3, pp.227-236, 2012-09-30 (Released:2017-05-19)

本稿では,近年英語圏で「地理的政治経済派」と呼称されつつある視角から,地域格差研究に対するいくつかの問題提起をする.とくに主流派経済学との対比において,地理的政治経済派がどのように日本の地域格差変動に関する経験や知見を整序し,独自の論点を提供しうるかを試論的に考察する.
著者
豊田 哲也
出版者
経済地理学会
雑誌
経済地理学年報 (ISSN:00045683)
巻号頁・発行日
vol.59, no.1, pp.4-26, 2013

1990年代以降わが国では世帯所得格差の急速な拡大が見られるが,世帯所得の地域間格差については実証研究が進んでいない.理論面では,地域間格差は累積的因果関係によって拡大するという主張と,市場の調整メカニズムによって収束するという見解が対立している.低所得地域から高所得地域への人口移動は,1人あたり所得の均衡化をもたらしたとしても,人口の地域的偏在を助長し経済規模の格差拡大を招くというディレンマが存在する.現実には,地域の所得水準はそれぞれに固有な地理的諸条件の結果であり,その空間的分布や時間的変化が具体的な地域の構造とどう結びついているかが重要である.本研究では,1993〜2008年住宅・土地統計調査のミクロデータを使用し,世帯規模,年齢構成及び物価水準を考慮した都道府県別世帯所得(中央値)の推定をおこなった.その結果,地理的な所得分布は首都圏を頂点に国土の中央部で高く周辺部で低いこと,日本全体で地域間格差はほとんど拡大していないが,順位には東海地方の上昇と近畿地方の下降など変動が見られることが示された.また,所得水準と人口社会増加率との間には正の相関があり,その関係は強まっていることから,低所得地域から高所得地域への人口移動が活発化していることが明らかになった.すなわち,世帯所得の地域間格差は拡大していないが,人口移動が経済規模の地域間格差を拡大していると言える.
著者
鎌倉 夏来 松原 宏
出版者
経済地理学会
雑誌
経済地理学年報 (ISSN:00045683)
巻号頁・発行日
vol.58, no.2, pp.118-137, 2012-06-30 (Released:2017-05-19)
被引用文献数
1

本稿の目的は,多国籍企業による海外研究所の立地とその地域的影響に関する研究成果を整理し,グローバル化の下での研究開発機能の経済地理学研究の方法と課題を明らかにすることにある.従来の研究では,海外研究所が基礎研究を行うのか,現地市場向けの製品開発を行うのか,子会社化しているのか否か,といった機能や組織の違いによるR&D立地の差異,国のイノベーションシステムとの関係が主に扱われてきた,しかしながら,多国籍企業は,現地市場に対応する開発拠点のみならず,ローカルな知識を吸収し,それらをグローバルに結合する研究拠点を展開してきた.また先進国から新興国へと研究開発拠点を拡大するとともに,コストを節約しながら研究開発人材の活用を図ってきている.今後の研究課題としては,国内と海外の研究所との国際分業関係の変化を把握するとともに,知識のフローや研究開発人材の育成と定着にとって,研究開発機能の地理的集積が果たす役割を明らかにしていくことがあげられる.
著者
中澤 高志
出版者
経済地理学会
雑誌
経済地理学年報 (ISSN:00045683)
巻号頁・発行日
vol.52, no.1, pp.1-18, 2006
被引用文献数
2

公営住宅,公団住宅,および住宅金融公庫は,戦後日本の住宅政策の根幹をなしてきたが,1990年代後半以降にいずれも大きな変容をとげた.本稿の目的は,一連の住宅政策改革の内容を整理し,東京大都市圏を対象地域としてその影響について予察的考察を行うことである.公営住宅では,量的不足に加えて需要と供給の地域的不均衡が発生している.公営住宅法の改正は,公営住宅用地を都市再生に利用する道を拓くものであり,需給の地域的ミスマッチを拡大させる恐れがある.遠・高・狭との揶揄はあったものの,公団は比較的良好な住宅を供給してきたといえ,その住宅経営は良績を収めてきた.公団が実質的に解体されたことにより,住宅供給は基本的に民間に委ねられることになった.しかしファミリー向けの賃貸住宅の供給は依然として不十分であり,定期借家権の導入も期待されたほどの効力を発揮していない.制度金融である住宅金融公庫の廃止により,住宅金融も民間に委ねられた.これは持家を購入できる層とできない層の二極化を招く可能性がある.また,公庫廃止後も,大都市圏では依然としてマンションの大量供給が続いており,供給過剰の懸念もある.民間による住宅供給と住宅金融を基本とする住宅政策への転換は,居住に対する経済原理の支配を強めるものであり,新たな住宅階層を発生させる可能性がある.
著者
土屋 純
出版者
経済地理学会
雑誌
経済地理学年報 (ISSN:00045683)
巻号頁・発行日
vol.46, no.1, pp.22-42, 2000-03-31 (Released:2017-05-19)
被引用文献数
2

近年, コンビニエンス・ストア(以下, CVSと略)は, 物販だけでなく様々なサービスを供給する代理店として各方面の業界から注目されている.このような注目を受けるのは, CVSが全国的に広がり, かつ消費者に近接して分布しており, さらに情報・配送システムによってネットワーク化されているからである.しかし, CVSの地位的展開を考察した従来の研究は, ミクロスケールで行われたものが中心であり, 全国スケールで検討したものは少ない.そこで本研究では, CVSチェーンの全国展開パターンを検討し, CVSチェーンの発展とCVSの全国的普及過程との関わりについて考察した. 日本のCVS業界は上位集中化が進んでおり, 上位チェーンによる店舗展開がCVS全体の普及に大きく関わっている.よって本研究では, 出店戦略が特徴的な代表チェーン(セブンイレブン, ローソン, ファミリーマート, セイコーマート)を取り上げ, 全国展開のパターンについて検討した.その結果, 全国展開パターンとして, (1)大都市圏からの虫食い的展開, (2)拠点的展開, (3)エリアフランチャイズ方式, (4)特約店の支援の4つを指摘できた.しかし, これらのパターンには, 配送システムへの初期投資を円滑に回収する, あるいは運営コストを低レベルで押さえるという共通の要因が関わっており, ドミナントエリア(密度の高い店舗網)の形成という点で共通していた. このようなCVSチェーンによる全国展開によって, CVSの全国的分布には地域間, 都市階層間の偏在が形成されていることが明らかとなった.さらに, JITを前提としたルート配送が必要なことから, 都市遠隔山村, 半島部や離島へのCVS普及が進んでいないことも明らかとなった.
著者
端木 和経
出版者
経済地理学会
雑誌
経済地理学年報 (ISSN:00045683)
巻号頁・発行日
vol.63, no.2, pp.148-163, 2017

<p>&nbsp;&nbsp;&nbsp;&nbsp;本稿では北京における温州企業の集積地として知られる大紅門アパレル産業地域を事例として,温州出身者による企業が,どのような方法で親族や同郷者等との社会的ネットワークを活用しながら事業を成立させ,産業集積を形成したのかという点を検討した.以上の点を明らかにするために,本研究では同地域でアパレル生産・販売の事業を営む経営者82 名に対して資料収集とアンケート調査及びインタビュー調査を行い,その内容を分析した.調査結果は以下の通りである.大紅門では1980年代から温州出身者によるアパレル製品の工場と販売店の起業がみられるようになった.事業に成功した先行事業者たちは,さらに事業を拡大するために,親族や同郷者たちを労働者として大紅門に呼び寄せていった.これらの大量の労働者たちには,独立して起業する人も多かった.彼(女) らの多くは,縫製工場等で働きながら,生産や販売のための技術や知識,人脈等を身に付けていった.既に事業が軌道に乗っていた先輩の経営者たちは,地縁・血縁のある起業希望者たちに資金援助や取引先業者の紹介等の支援を行っていった.また,このような支援は,生産や販売面で分業を行うことができ,取引先の確保にもつながるため,先行事業者にとっても利益があったと推測される.このようにして大紅門には,地縁・血縁に基づく社会的ネットワークを有する同郷者による小規模事業者の集積が拡大していったことが明らかになった.</p>
著者
初沢 敏生
出版者
経済地理学会
雑誌
経済地理学年報 (ISSN:00045683)
巻号頁・発行日
vol.51, no.4, pp.348-367, 2005-12-30 (Released:2017-05-19)

近年,産業集積地域における革新に関して多くの研究がなされている.これは地域経済を振興するための視点として重要であるが,地場産業産地に関しては,このような研究は十分に蓄積されているとは言い難い.そこで,本小論では益子陶磁器産地と笠間陶磁器産地を事例に,産地の革新の特徴と,それが地域的生産構造に与えた影響について検討した.地場産業産地の革新には,新製品開発と,それを支える技術・技能の習得システムが重要な役割を果たす.益子産地では濱田庄司の来住と民芸陶器の導入という外部からの刺激を産地として受け止め,さらにそのための人材育成システムが産地内部に形成されたことが産地の革新を可能にした.その後,これに対応する形で産地の生産・流通構造が形成され,産地を発展させた.しかし,生活様式の変化などに対応するため,現在,栃木県窯業技術支援センターなどが中心となり,新たな革新が進められつつある.一方,笠間産地では窯業指導所などの公的機関が産地の革新をリードした.ここでは窯業指導所が技術・技能面の研究・開発に加え,製品開発やその普及,人材育成などに関しても大きな役割を果たした.また,行政も産業基盤整備を積極的に行い,陶磁器業の発展を支援した.笠間産地の生産構造は,基本的にこの上に成り立つものである.近年,笠間産地も新たな課題に直面しているが,ここでは公的機関の支援による産地形成という枠組みを維持したまま新たな革新が進められている.産地の革新にあたっては,産地の内外をネットワーク化することが必要であるが,それにあたり,公設試験場の果たす役割が重要になってきている.
著者
橋本 雄一 濱里 正史
出版者
経済地理学会
雑誌
経済地理学年報 (ISSN:00045683)
巻号頁・発行日
vol.41, no.3, pp.208-226, 1995
被引用文献数
3

本研究は福昂畢郡山市を事例地域とし, 都市内部で公共交通により形成される近接空間の変化を明らかにすることを目的とする. まず, 1977年と1987年の近接性データに準3相因子分析を行うことにより, 郡山市における近接空間を画定し, その変化について検討した. その特果, 両年次とも, 鉄道や主要道路ごとに近接空間が形成されており, 明確なセクター性が認められた. また, 市中心部においては, 郡山駅西側の市街地内部で強い結びつきが見られるだけではなく. 市街地縁辺の住宅地とも結びついて近接空間を形成していた. 1977年から1987年にかけての隣接空間の変化を見ると, 郡山駅南部の地区間結合が強くなっており, 逆に周辺地区間の強い結合は見られなくなった. 次に, 近接空間を包含する公共交通ネットワーク全体が, いかなる空間構造を有するのか, MDSを用いて検討した. その結果, 1977年には郡山駅を中心として, 等距離に市街地周辺地区の布置が見られたが, 1987年には郡山駅西側および南側の地区が郡山駅の近くに分布し, 市北部の地区は逆に駅から離れた布置となっていた. この変化は, 郡山市西部および南部で人口が急増したことによる公共交通の需要に, 公共交通ネットワークが対応したことによると考えられる. 以上のことから, 当該期間において公共交通ネットワークは, 都市内部のあらゆる部分地区間の移動を確保するものから,部分地区ごとの需要の違いに対応したものに変化したと推察される.
著者
高崎地域大会実行委員会
出版者
経済地理学会
雑誌
経済地理学年報 (ISSN:00045683)
巻号頁・発行日
vol.51, no.2, pp.178-183, 2005-06-30

2004年度の地域大会を10月23〜24日に開催した.23日午後より24日午前中まで,シンポジウムに出演いただくパネラーの案内により群馬県内を巡検し,地域の実情を視察した(川場村泊).巡検終了後,24日午後に高崎経済大学にてシンポジウムを開催した.巡検の参加者は34名,シンポジウムの参加者は70名(うち会員46名)であった.巡検宿泊先の川場村で新潟県中越地震が発生し,新潟県出身者やそこからの参加者の留守宅や親類の安否が心配されたものの,両日とも天候に恵まれ,成功裡に全日程を終了することができた.なお,巡検は,高崎経済大学地域政策学部の戸所隆氏,津川康雄氏に御案内いただいた.シンポジウムのコーディネーターは,千葉立也(都留文科大),西野寿章(高崎経済大)がつとめた.
著者
藤本 典嗣
出版者
経済地理学会
雑誌
経済地理学年報 (ISSN:00045683)
巻号頁・発行日
vol.63, no.4, pp.292-303, 2017

<p>&nbsp;&nbsp;&nbsp;&nbsp;「グローバル」と「世界」は,国家間の国境がなくフラットな中で諸経済フローが地球中の空間に展開する状態と,国境は存在するものの世界経済の中に諸経済フローが中核・周辺などの階層に包摂されていく状態とに区分される.金融はその地理的な流動において,国際決済通貨や証券・債権のいずれにおいても価値尺度の世界的共通性もあり,前者のグローバルな性質を内在している.<BR>&nbsp;&nbsp;&nbsp;&nbsp;1986年に「世界都市仮説」がJohn Friedmannにより提示されて以降,金融指標をはじめとする諸経済フローを用いて,世界の主要都市の地位・序列を様々な統計手法でランキング化し,都市間の階層構造を明らかにする試みが,英語圏・本邦の都市研究の中でも,都市システム研究により主におこなわれてきた.<BR>&nbsp;&nbsp;&nbsp;&nbsp;そのなかで,GaWC (Globalization and World Cities) 研究ネットワークなどの英語圏の研究の多くは,欧米を主眼に置いた都市間結合を明らかにしているが,多くの文献で東京の地位が下がったことが指摘されている.<BR>&nbsp;&nbsp;&nbsp;&nbsp;本稿は,都市システムの階層構造の中で,金融面に着目し,東京がどのように位置付けられるのかの分析をおこなった.まず,国内における金融面での東京の地位について,従来から地域構造論で扱われてきた預貸率分析に加え,日本銀行券受払の本社・支店別収支からも,明らかにした.他方で,グローバル都市システムにおける,東京の地位については,株式時価総額,外国為替取引額や関連する指標を用いながら,国民経済規模との関係で,その位置付けを検証した.<BR>&nbsp;&nbsp;&nbsp;&nbsp; 国内では,その地域的経済規模以上の,金融機能が集中している東京であるが,国際比較においては,日本の国民経済の規模と同程度の国際金融機能を量的に有していることが,株式時価総額,外国為替市場取扱額などの数値から明らかになった.また,東京の地位が下がっていることが確認されるのは,香港,シンガポールなどの新興市場や,ロンドンとの比較の上であり,大半の国の世界都市は,その都市がグローバルな結節となる国・地域の国民経済規模未満の国際金融機能しか有していないことが明らかになった.</p>