著者
小松原 宏子
出版者
多摩大学グローバルスタディーズ学部
雑誌
紀要 = Bulletin (ISSN:18838480)
巻号頁・発行日
vol.12, pp.9-24, 2020-03-31

2014 年と2015 年、学研の「10 歳までに読みたい世界名作」『若草物語』『あしながおじさん』の編訳をする機会に恵まれた。それに際し完訳版および原書を読むなかで気づいたこと、この2作品を初めて読んだ子ども時代から心に留めていた、あるいは疑問に思っていたことをここで整理してみたい。今回は脇役ながら物語中で重要な役割を果たしている脇役たち---『若草物語』のハンナ、『あしながおじさん』の視察委員プリチャード---に関しての考察をまとめる。
著者
松原 宏
出版者
The Association of Japanese Geographers
雑誌
地理学評論 (ISSN:00167444)
巻号頁・発行日
vol.55, no.3, pp.165-183, 1982-03-01 (Released:2008-12-24)
参考文献数
19
被引用文献数
7 4

本稿では,私鉄資本による代表的な大規模住宅地開発である東急多摩田園都市をとりあげ,その形成過程や特徴に,開発主体である東急の動向がいかに具現化しているかをみた.その結果は以下の点に要約できる. (1) 東急主導の土地区画整理手法.この手法により東急は,少量で分散した土地買収状態でも,新線沿線の広域的開発を主導できた.しかも事業を代行することにより,新たに保留地を安価で大量に取得することが可能となった. (2) 人口定着策としての高密度開発.私鉄資本ゆえに新線の収益性を無視することはできない.そこで,東急は高密度開発を進めたが,一方で社会資本の不足を激化させることになった. (3) 遠隔地からの住宅地形成.東急は新線沿線各所に土地を所有していたため,地価上昇を見込んで遠隔地から分譲するという傾向がみられた. (4) アンバランスな土地利用の混在.東急は高級な一戸建住宅や分譲マンションを,地元地主は独身寮や賃貸マンションを建設したため,土地利用は無計画なものとなった.
著者
松原 宏
出版者
経済地理学会
雑誌
経済地理学年報 (ISSN:00045683)
巻号頁・発行日
vol.59, no.4, pp.419-437, 2013-12-30 (Released:2017-05-19)

本稿の目的は,経済地理学の研究成果の中から方法論的な議論を抽出し,時系列的に要点を整理するとともに,全体を俯瞰することを通じて,方法論の軌跡を描き出し,あわせて,欧米での方法論的議論を参照しながら,日本における経済地理学方法論の特色と問題点,今後の課題を考えていくことにある.第2次大戦後,欧米諸国では,新古典派経済学の立地論や地域科学が発展をみせた.これに対し,日本の経済地理学は,戦前から独自の理論構築の歩みを示し,戦後には近代経済学的経済地理学とマルクス主義経済地理学とが並存してきた.後者はまた,経済地誌,地域的不均等論,法則志向の生産配置論等に分かれ,活発な議論がなされてきた.1970年代になると,国民経済の地域的分業体系を解明しようとする地域構造論が登場し,今日まで産業配置,地域経済国土利用,地域政策の4分野にわたる多くの研究成果を蓄積してきている.1990年代以降,欧米諸国では,文化論的転回や制度的転回など,方向づけが目まぐるしく変わってきたのに対し,地域構造論は,立地論や開発経済論のような多様な理論を批判的に吸収することによって理論内容を豊富にしてきた.21世紀に入り,グローバル化や情報・知識経済化の下で,日本の経済地理学は,新たな空間的視点や研究枠組みを確立するとともに,方法論的議論の希薄化を克服していく努力が必要である.
著者
鎌倉 夏来 松原 宏
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
E-journal GEO (ISSN:18808107)
巻号頁・発行日
vol.9, no.2, pp.37-64, 2014 (Released:2014-11-29)
参考文献数
37
被引用文献数
1

本稿の目的は,工業統計メッシュデータの地図化を通して,広域関東圏における産業集積地域の特徴と変化を明らかにし,産業集積政策の意義と課題を検討することにある.工場密度や従業者密度をもとに,広域関東圏におけるメッシュ分布図を作成したところ,主要な産業集積地域を摘出することができた.それらの多くは,「地域産業集積活性化法」の基盤的技術産業集積地域と重なっており, 各地域のメッシュ分布図および変化の大きな個別メッシュを分析したところ,以下の点が明らかになった.①工場密度の分布から集積地域の中心が同定されるが,出荷額の伸びが大きいメッシュは,工業団地や大規模事業所の立地の影響により分散的で,集積地域の中心とは乖離する傾向を示す.②集積地域間で工場密度や従業者密度の構成比が類似する組み合わせが存在する.③成長メッシュには大規模事業所が関わっており,大手企業の立地調整を踏まえた産業集積のあり方を考えていく必要がある.
著者
松原 宏
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
地理学評論 Ser. A (ISSN:00167444)
巻号頁・発行日
vol.57, no.7, pp.455-476, 1984-07-01 (Released:2008-12-25)
参考文献数
47
被引用文献数
1

本稿では,大手不動産資本によるオフィス形成の特徴や役割を明らかにするため,オフィスビルの配置,テナントの特徴,都市形成への影響の3点について検討を行なった. 先発で東京都心部に大量の土地を所有する三菱地所は,丸の内に一点集中的にビルを配置させ,オフィス街を形成してきた.これに対し,三井不動産は所有地の少なさを超高層ビルによる点的開発で補い,オフィス空間の拡大を図った.そして両社とも,おのおののグループ企業の本社・支所の拠点を形成してきた.一方,後発の日本生命は,地方中核都市などに分散的にビルを配置させ,急成長で多事業所を必要とする企業に空間を提供した.また,森ビルは港区虎ノ門周辺で,戦前からの所有地を基盤に,住宅・商店と混在するかたちでビルを建設し,対事業所サービス関連企業を主なテナントとしてきた. このように,系列,参入時期,土地所有によりオフィス空間の形成はさまざまであるが,大手不動産資本は,オフィスのより一層の集積を可能にし,あわせて都心形成を特徴的におしすすめてきたのである.
著者
清水 希容子 松原 宏
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
E-journal GEO (ISSN:18808107)
巻号頁・発行日
vol.9, no.2, pp.118-134, 2014 (Released:2014-11-29)
参考文献数
22
被引用文献数
2 2

東日本大震災から3年半が経過した.本稿の目的は,大震災後の製造業の回復過程を明らかにするとともに,地域経済の復興に向けて出されてきた産業立地政策を整理することである.鉄鋼,石油精製,セメントなどの沿岸部の素材型工業は,津波による大きな被害を受け,復旧にも時間がかかった.これに対し,内陸部の電子や自動車などの機械工業では,一部でサプライチェーンを通じて内外に被害が波及した工場があったものの,被害は相対的に少なく,早い時点での回復がみられた.震災後,中小企業向けのグループ補助金,国内産業立地補助金,地域イノベーション戦略推進地域など,さまざまな産業立地政策が,経済産業省や文部科学省によりとられてきた.被害の大きかった地域への新規投資を促すとともに,広域的観点から,東北各地の回復力と地域間の連携を強化することが今後の課題といえる.
著者
小松原 宏子
出版者
多摩大学グローバルスタディーズ学部
雑誌
紀要 = Bulletin (ISSN:18838480)
巻号頁・発行日
no.12, pp.9-24, 2020-03-31

2014 年と2015 年、学研の「10 歳までに読みたい世界名作」『若草物語』『あしながおじさん』の編訳をする機会に恵まれた。それに際し完訳版および原書を読むなかで気づいたこと、この2作品を初めて読んだ子ども時代から心に留めていた、あるいは疑問に思っていたことをここで整理してみたい。今回は脇役ながら物語中で重要な役割を果たしている脇役たち---『若草物語』のハンナ、『あしながおじさん』の視察委員プリチャード---に関しての考察をまとめる。
著者
小松原 宏子
出版者
多摩大学グローバルスタディーズ学部
雑誌
紀要 = Bulletin (ISSN:18838480)
巻号頁・発行日
no.13, pp.31-52, 2021-03-31

2014 年、学研の「10 歳までに読みたい世界名作」シリーズ出版において、19 世紀米文学の名作『若草物語』(ルイザ・メイ・オルコット作)の編訳をする機会に恵まれた。Little Women という原題のこの物語は、日本ではA tale of young grass という意味の、『若草物語』というタイトルで翻訳されている。1934 年の矢田津世子の抄訳出版と、キャサリン・ヘップバーン主演のキューカー監督作品である映画(1933 年アメリカ)の公開時に吉屋信子によって選ばれた、と言われるこの邦題について考察し、命名の理由についての仮説を立ててみた。
著者
松原宏和 新妻弘崇 太田学
雑誌
研究報告システムソフトウェアとオペレーティング・システム(OS)
巻号頁・発行日
vol.2014, no.18, pp.1-9, 2014-11-11

ニコニコ動画や YouTube といった有名な動画共有サイトには膨大な動画が投稿されており,動画のあらすじは興味のある動画を効率よく探すために視聴者にとって大変有益である.そこで本稿では,動画の画像特徴量とコメントを用いて動画の重要場面を検出し,要約サムネイルを生成する手法を提案する.提案する動画要約手法の特徴は,画像特徴量の変化に基づいて検出した各シーンの動画をコメントに基づいて分類し,さらに各シーン中で最も盛り上がる場面のサムネイルを抽出する点にある.これにより,動画内容を網羅しつつ,視聴者が盛り上がる場面を抽出する.評価実験により提案手法の有効性を確認する.
著者
松原 宏
出版者
日本地理学会 古今書院(発売)
雑誌
地理学評論 (ISSN:00167444)
巻号頁・発行日
vol.55, no.3, pp.p165-183, 1982-03
著者
金井 明子 松原 宏 丹羽 清
出版者
研究・イノベーション学会
雑誌
研究 技術 計画 (ISSN:09147020)
巻号頁・発行日
vol.21, no.3, pp.294-306, 2007
参考文献数
25
被引用文献数
1

「地域」が新しい知識や技術を生み出す場として,近年注目を集めている。本研究は,地域が競争力を生み出す仕組みに学習という概念を適用した「学習地域(learning region)論」に注目し地域的な枠組みの発展を,「テーマの共有」という要素を加えることでさらに大きくできる可能性を提示する。まず,日本でも有数の産業集積地域である東大阪地域の製造業企業へのアンケート調査を通して「テーマ共有」が,従来研究が明らかにしてきた学習地域の4つの要素と同等に影響力を持つことを明らかにした。次いで同地域における人工衛星プロジェクトのケーススタディにおいて,インタビュー調査を行った結果,テーマの共有が「役割分担の明確化」「参加機会の確保と参加者の淘汰」「モチベーションの向上」という3点で実際の仕事を進める上で有効であることが分かった。さらに共通テーマを掲げたこのプロジェクトによる「地域の知名度の向上」「地域への信頼性の向上」という2つの効果が示唆された。本研究は,従来の学習地域にはない「テーマ共有」という要素を備えた新たな学習地域の一形態の重要性を示した。
著者
松原 宏 加藤 和暢 鈴木 洋太郎 富樫 幸一
出版者
経済地理学会
雑誌
経済地理学年報 (ISSN:00045683)
巻号頁・発行日
vol.46, no.4, pp.443-450, 2000-12-31
被引用文献数
1

経済地理学会大会シンポジウムの前日(2000年6月3日)午後, 駒澤大学にて「グローバリゼーションと産業集積の理論」と題したラウンドテーブルを企画した.以下には, ラウンドテーブルの主旨, 加藤・鈴木・富樫の3氏の報告要旨, 討論の概要を掲げる.なお, オーガナイザーは, 松原が務めた.
著者
松原 宏
出版者
中央大学経済研究所
雑誌
中央大学経済研究所年報 (ISSN:02859718)
巻号頁・発行日
no.43, pp.737-756, 2012

日本のクラスター政策としては、 経済産業省による産業クラスター計画と文部科学省による知的クラスター創成事業が、21世紀初頭から始動してきたが、「事業仕分け」等により頓挫した状況にある。クラスター政策の再構築にあたって、政策の空間構造の検討が重要と考え、本稿では、東北・仙台地域と九州・福岡地域を事例に、政策展開の歴史的経緯や政策評価にかかわる空間構造特性について検討することを試みた。産業クラスター計画では、各地方経済産業局の管轄区域内での産業立地の状況や重点地域の選定が重要な要素を構成する一方で、知的クラスター創成事業では、地域内の研究開発基盤の歴史的蓄積や海外も含めた地域外との主体間関係の進展、中核機関の経路依存性や大学を中心とした知識フローの空間特性などが、地域イノベーションの成果にかかわっていることが明らかになった。