著者
木戸 功
出版者
札幌学院大学総合研究所 = Research Institute of Sapporo Gakuin University
雑誌
札幌学院大学人文学会紀要 = Journal of the Society of Humanities
巻号頁・発行日
no.100, pp.63-81, 2016-10-01

この論文では地方への移住を経験した人々のライフコースを構築主義の立場から検討する。インタビューを通じて得られた語りを移住動機に着目して分析する。インタビューという相互行為場面において,かれらの移住をめぐる語りはいくつかの文脈を参照することによって文字通り動機として提示されていることを論じる。「職業キャリア」「個人時間」「歴史時間」「家族キャリア」という4つの文脈に着目することで,動機を語るという実践が,それを通じてかれらのライフコースを言説的に構築する実践でもあることを例証する。さらに移住後のライフコースをめぐる予備的考察として,かれらの経験が地域の人々によって共有されている「ローカルな文化」を参照しながら語られていることを示す。
著者
木戸 功
出版者
日本家族社会学会
雑誌
家族社会学研究 (ISSN:0916328X)
巻号頁・発行日
vol.23, no.2, pp.150-160, 2011-10-31 (Released:2012-11-13)
参考文献数
76

この論文では過去20年にわたる家族社会学における質的研究の動向をふりかえり,その現状と課題を考察する.『家族社会学研究』(1989-2010)における質的研究を,論文数,データとその収集方法,方法論,主題といった観点から検討する.論文数が増加してくるのは2000年以降のことであり,そこでは個人の経験に焦点をあて,面接調査によってえられた「語り」をデータとして使用する研究が多いが,方法論や理論的な想定については十分には議論されてこなかった.こうした検討をふまえて,方法の妥当性と知見の一般化可能性という課題について議論する.調査研究過程の手続きの有意関連性を示し,理論的想定を明らかにすることの重要性を指摘するが,このことは家族社会学における知見の意義を明確にするという意味でも重要である.さらに,この知見の一般化可能性という水準において,量的研究との関係を考えることを提案する.
著者
木戸 功 戸江 哲理 安達 正嗣 鈴木 富美子 阪井 裕一郎 松木 洋人
出版者
聖心女子大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2017-04-01

全国家族調査(NFRJ)18幹事会に代表の木戸が出席し、量的調査と連携して実査に臨むことを確認した(4/15)。その後、日本家族社会学会会員に本研究会(NFRJ18質的調査研究会)への参加を呼びかけ研究代表者と研究分担者を含む33名の研究会組織を編成し連絡用メーリングリストを作成した。本年度は3回の研究会を開催し、また小規模であるが量的調査チームと連携した予備調査も実施した。第1回研究会は学会大会終了後に大阪市立大学で開催し(9/11)、本調査の概要についてあらためて確認した上で、インタビュー調査班をサブテーマごとに4つ作り、班ごとに対象者と調査項目について検討した。フィールドワーク班についても対象選定の方法と、データ収集の方法について意見交換した。第2回および第3回研究会はそれぞれ2部構成として前半で招聘講師からのレクチャーと討論、後半で各研究班ごとの実査に向けた検討とその進捗状況の報告を実施した。第2回研究会はライフヒストリー研究およびそのアーカイヴ化についての専門家として小林多寿子氏(一橋大学大学院)を招き早稲田大学にて開催した(11/23)。第3回研究会は生活史研究の専門家として岸政彦氏(立命館大学大学院)を招き大阪市立大学にて開催した(1/27)。いずれの研究会においても専門的な知見の提供を受けるとともに本研究会が実施する調査に対しての実践的な助言をえた。並行して木戸がNFRJ 18の全体研究会に参加し(11/12)量的研究チームとの連携を保った。これらの研究会でのやりとりなどを通じて、対象選定の方針と調査項目の選定については具体的な案がそれぞれの班より示されるにいたった。また量的研究チームが実施した予備調査において、追加調査となるインタビュー調査への協力の可否をたずねる項目を追加するとともに、応諾者のうち9ケースの予備調査を実施した(3月)。
著者
木戸 功
出版者
三田社会学会
雑誌
三田社会学 (ISSN:13491458)
巻号頁・発行日
no.20, pp.199-202, 2015-07

書評目次のタイトル : 「書評 : 渡辺秀樹・竹ノ下弘久編著『越境する家族社会学』」
著者
池岡 義孝 木戸 功 松木 洋人 松木 洋人
出版者
早稲田大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

本研究の目的は、戦後日本の家族社会学の成立と展開を詳しく検討することである。それを、文献研究と年配の先生方へのインタビューを通じて行い、所期の目的を達成することができた。とくに、家族社会学の主流だけでなく、家族問題研究のグループ、マルクス主義家族社会学のグループ、女性学・フェミニズム研究のグループなど多様な研究の流れを明らかにすることができたことが大きな成果であった。このことで、戦後家族社会学の展開を多元的に理解する視座をえることができた。