著者
西村 敏雄
出版者
聖泉大学
雑誌
聖泉論叢 (ISSN:13434365)
巻号頁・発行日
no.11, pp.61-78, 2003

凶悪な少年犯罪が起こるたびに、新聞などのメディアによる犯罪報道が、加害者や被害者の氏名や家族関係などのプライバシーの人権を侵害するケースがあとをたたない。本稿では少年法の適用や犯罪報道などの事例を基に報道(表現)の自由や人権問題をとりあげる。そしてまだ完全とはいえない少年法の改正については、単なる合理性や論理性だけを重視した法律論議だけではなく、人の感情や価値観なども抱合するような議論を、また報道の自由に関してはある一定の「制約」が必要であることを指摘した。
著者
赤井伸之
出版者
聖泉大学
雑誌
聖泉論叢 (ISSN:13434365)
巻号頁・発行日
no.17, pp.21-39, 2009

聖書に記された姦通の語を手掛りに,姦通関連の記事を探り,姦通疑惑の女に対してなされたユニークな神判をめぐって,ささやかな考察を進めた。
著者
井上 美代江 太田 節子
出版者
聖泉大学
雑誌
聖泉看護学研究 = Seisen journal of nursing studies (ISSN:21871981)
巻号頁・発行日
vol.2, pp.41-49, 2013

背景 看護基礎教育カリキュラムの改正が行われ,老年看護学では,学生が高齢者及びその生活機能を理解し,高齢者への看護実践能力を高める指導が求められている.そこで,学生が高齢者と関わる時間や生活援助の機会が多いと思われる生活の場としての「介護老人福祉施設」で,学生が高齢者と関わる過程を分析することで,実習指導の示唆を得たいと考えた.目的 介護老人福祉施設における老年看護学実習で,学生の要介護高齢者への援助過程における着眼点を明らかにする.方法 研究デザインは,質的帰納的研究である.対象は,研究に同意の得られた介護老人福祉施設で老年看護学実習を行った学生6(男子1)名である.データ収集は,高齢者に関わる学生を参加観察(観察者として)し,実習終了後に半構成質問紙による面接を行った.分析は,参加観察と面接および学生の実習記録を統合して行った.結果 得られたデータは,学生6名が高齢者8名に関わった38場面であった.実習経過では,初日の学生は,高齢者との関わりに戸惑い,その関わりを模索していた.3日目は,記録や教職員の助言等を参考に,高齢者の看護ニードを把握し援助した.最終日は,学生が主体的に高齢者の自立を支援した.これらの援助過程には,学生が高齢者への援助の関わりに着眼した視点があり,その類型を分類したところ,1)高齢者の残存機能に働きかける,2)高齢者との人間関係を重視する,3)高齢者の生活行動を重視する,4)高齢者の健康的な反応を引き出す,5)高齢者の感情を重視する,の5類型が抽出された.結論 学生が高齢者を援助する着眼点は,5類型が認められた.指導者は,抽出された学生の高齢者への援助の類型を活用して,教育的支援を行うことが重要と考える.Background Following revisions of the curricula for basic nursing education,students in geriatric nursing receive instruction on understanding elderly individuals and their daily functioning,and enhancing their nursing skills when working with them.And we sought to determine which suggestions are necessary for practicum instruction by analyzing the processes of students when interacting with elderly care recipients at a nursing home in geriatric nursing practicum. Purpose To explore the opinions of nursing of students interacting with elderly care recipients at a nursing home in a geriatric nursing practicum. Methods This study employed a qualitative and inductive study design.Participants were six students (one male) who consented to participate and who were completing their geriatric nursing practicum at a nursing home for the elderly. Data were collected through participatory observations of the students interacting with the elderly care recipients and semi-structured interviews after practicum completion.For analysis,we created transcripts by integrating materials from the observations,interviews,and practicum records. Results/Discussion We obtained data from 38 scenes where the six students interacted with eight care recipients.In terms of processes,on the first day they tended to be confused and struggled in their interactions with the individuals. On Day 3,they were likely to look at records and seek advice from their instructors,and attempted to understand the nursing needs of the care recipients and assist them.On the final day of their practicum,the students were actively supporting the independence of the care recipients.In the processes of assistance,we extracted five categories of particular perspectives the students had while assisting the care recipients :( 1) working on the care recipients' remaining functions,(2) emphasizing interpersonal relationships with them,(3) emphasizing their daily living behaviors,(4) eliciting healthy reactions from them,and (5) valuing their feelings. Conclusion There were five categories of the student opinions of nursing for elderly.We suggest that instructors utilize these categories in their provision of educational support.
著者
水野 邦夫
出版者
聖泉大学
雑誌
聖泉論叢 (ISSN:13434365)
巻号頁・発行日
vol.14, pp.53-59, 2006

本研究は, Midzuno(2004)のモデルに従い, 良好な対人関係を形成・維持する際に, どのような社会的スキルが関連するかを検討することを目的とした。大学生および専門学校生188名(男子99名, 女子89名)に質問紙調査を実施し, 思い浮かべた1名の人物について, そのパーソナリティ特性(外向性, 協調性), さまざまな社会的スキル(関係開始, 自己主張, 関係維持)およびその人物との関係性(関係の良好度)を回答させた。モデルに従ってパス解析を行ったところ, 関係維持スキルは良好な関係性と正の関連を持つのに対して, 自己主張や関係開始スキルは関連しないかむしろ負の関連を持つことが示された。パスを整理し, 再度分析を行ったところ, 社会的スキルは外向性を背景とした関係開始・自己主張スキルと, 協調性を背景とした関係維持スキルに分かれ, しかも, 関係開始・自己主張スキル(および外向性)は良好な対人関係に直接関連しないことが示された。これらの結果をもとに, 関係の開始から維持にかけて, 表現性スキルと感受性・制御スキルとの間に機能的な役割の交代が生じている可能性が示唆された。
著者
山西 洋平 新美 秀和
出版者
聖泉大学
雑誌
聖泉論叢 (ISSN:13434365)
巻号頁・発行日
no.19, pp.91-103, 2011

本研究は,青年期の「こころの居場所」をテーマとして取り上げ,青年期にある大学生42名に対して「こころの居場所」に関する自由記述形式の質問紙と室内画を用いて調査を行った。その結果,「こころの居場所」として大きく「一人の世界」「他とのかかわり」「場所や状況」というありかたがみられ,さらに下位に11分類し,それらの特徴を見出した。室内画では,描画の大きさ,部屋が描かれる際の視点,壁の有無において特徴がみられた。「こころの居場所」のありかたと室内画の特徴の関係を調べるためにχ2検定を行った結果,下位分類である「一人の場所」「動物とのふれあい」「社会的集団」を「こころの居場所」とする人においては室内画の視点に関して特徴が示され,「二者的なかかわり」を「こころの居場所」とする人においては壁の有無に関して特徴が示された。以上を青年期の特徴や対象化の観点から検討し,事例を2つ挙げて考察を行った。
著者
水野 邦夫
出版者
聖泉大学
雑誌
聖泉論叢 (ISSN:13434365)
巻号頁・発行日
no.11, pp.13-25, 2003

本研究では、対人場面において他者から好意的な感情を得るとき、代表的な性格特性のひとつである外向性(extroversion)がどのように寄与するかを、他の性格特性との関連において調べることを目的とした。97名の学生にアンケート調査を行い、各人の友人を1名想起させたうえで、その人物の性格特性の認知やその人物への諸感情などを評定させた。その結果、好意的な感惰と最も関連する性格特性は協調性(agreeableness)であり、外向性はこれらの性格特性要因を統制した場合、好意的感情の生起にほとんど関係しないことが明らかとなり、「外向性は好まれる性格である」とは見かけ上の認知に過ぎないことが示唆された。また、外向性をさまざまな側面から検討したところ、「友好的外向」という成分が協調性や好意的感情と関連を持つことが示され、これが見かけ上の認知を生む原因であることが考察された。
著者
炭谷 将史
出版者
聖泉大学
雑誌
聖泉論叢 (ISSN:13434365)
巻号頁・発行日
no.15, pp.157-172, 2007
被引用文献数
3

本研究は,人工的に配合された香りであるサーキュエッセンスと一般的にアロマテラピーで用いられているレモン精油の効果に関する実験研究である。男子大学生8名を被験者として吸香前,吸香直後,吸香10分後の脳波を測定した。測定された脳波から各帯域の含有率を算出し,前安静時と吸香直後,前安静と吸香10分後の平均値の差の検定を行った。その結果,サーキュエッセンス条件でβ波の減少およびα2波の優勢化が認められ,β波減少効果は10分後にも維持されていた。レモン条件では,吸香直後の速波化傾向が明らかになったが,10分後には前安静よりも徐波化しており,効果は持続していないと考えられた。このことから,ストレスマネジメントを目的とした利用に際して,サーキュエッセンスがより適している可能性が示唆された。
著者
石川 肇
出版者
聖泉大学
雑誌
聖泉論叢 (ISSN:13434365)
巻号頁・発行日
vol.13, pp.147-171, 2005

重度知的障害の方が自傷,他傷,パニックなど激しい行動上の問題を示すことがある。これらの方の約8割は自閉症の方であり,行動障害は自閉症という障害特性からくるもの,障害特性を無視した,あるいは配慮が不足した場合に生じるもの,精神科疾患との関連で生じるもの等があるが,それぞれが複雑に絡み合って生じることも多い。今回は事例を通じて行動障害が発生する原因を探り,有効な療育方法に言及する。さらに,療育的関わりだけでは行動改善の効果が上がらない一群もあることも述べたい。
著者
立脇 一美
出版者
聖泉大学
雑誌
聖泉論叢 (ISSN:13434365)
巻号頁・発行日
no.16, pp.157-176, 2008

介護に従事する職員の職務満足度は,上司・同僚・利用者との相互関係や,事業所の運営方針によって大きく推移する。今回,既存文献も希少である「特定施設入居者生活介護」に従事する職員を対象に,一定の論証を得るために,職務価値に関しての聞き取り調査を実施した。その結果,「特定施設入居者生活介護」に従事する職員は,日々複数の職務不満足を体感し,他職には見られない特有の職務価値や悪循環を形成していることが明確となった。職務不満足に関するファクターを,「組織風土」から派生するもの,「他者関係」から派生するもの,「自分自身の内的感情」から派生するものという三層構造として,その概念枠組みの検討を行った。
著者
日下 純子
出版者
聖泉大学
雑誌
聖泉論叢 (ISSN:13434365)
巻号頁・発行日
no.18, pp.185-192, 2010

本研究では,リハビリテーションとは障害があっても高齢になっても『その人らしく,いつまでも,楽しく生き生きできることを目指して取り組むこと』という滋賀県立リハビリテーションセンターの定義と昨今,教育や医療の現場で注目を浴びているポートフォリオをリンクした。自分の大切なものや自分史をファイルする過程で作成者の変化を「時間的展望体験尺度」を用い測定した。安価で簡単にできるポートフォリオが,ささやかであるが効果を認めたので報告する。
著者
山内 高太郎
出版者
聖泉大学
雑誌
聖泉論叢 (ISSN:13434365)
巻号頁・発行日
vol.11, pp.99-107, 2003

国際会計基準審議会は、組織改革とともに会計基準の収斂(convergence)をキーワードとした。各国における会計基準の収斂の問題を考える場合、金融商品プロジェクトは重要な意味をもち、その動向が今後の収斂に影響を与えると考える。金融商品プロジェクト問題の根底にあるのは、公正価値の導入であり、金融商品プロジェクトについて、公正価値測定と収斂という2点から考察を行った。
著者
立脇 一美
出版者
聖泉大学
雑誌
聖泉論叢 (ISSN:13434365)
巻号頁・発行日
no.16, pp.177-196, 2008

介護福祉士を目指す学生は,年々減少している。今回,短期大学系の介護福祉士養成校の在学生を対象に,介護福祉に興味を抱き始めた契機から,養成校受験に至るまでの意識形成過程の分析を行った。その結果,「個人の生育歴や生活歴といった外的環境因子」と「個人の有する職業観」といった二つの要因が折り重なり,意識が形成されていくことがわかった。前者には,個人の生まれ育った家庭環境や,中学や高等学校で学び得た福祉に関する知識・体験,保護者の職業意識,進路を意識した時代背景などが含有され,意識形成の基礎要因となっていた。後者では,介護職に対し「やりがい」を追及し,他者の役に立ちたいという動機が検出できた。学生は,社会的雑念に翻弄されることなく,純粋に自分らしく生きる一つの手段として,養成校を受験する意識を形成していくことが明確となった。
著者
作原 猛誌
出版者
聖泉大学
雑誌
聖隷学園聖泉短期大学人文・社会科学論集
巻号頁・発行日
vol.1, pp.139-150, 1987-02-20

一、わが国における桐材使用製品と物品税高級な総桐タンスのほとんどは材質のすぐれたアメリカ桐を100%使用し、価格も一棹100万円以上のものが多い。またすべての家具、特に和ダンス、整理ダンスなどの内面 (引き出し、側板など) は桐材を使用する。これは衣類の保存に適するとか、軽くて運び易いといった利点に加えて、材料比率で50%以上の桐材を使用すれば20%の物品税を免除するという桐業界保護政策の一環に由るものである。二、以上アメリカ桐原木買付の実態を実情に即して説明したが、最近では港から相当遠隔の山の中-そこでは切っても搬出が難しい-でないと発見されず、おのずから国内輸送費の増大、インフレに伴う Logger への伐採労賃の高騰、ならびに1985年9月のG-5 (先進5ケ国蔵相会議)以降の急激なドル安、円高に基因する供給側の意図的な値上げ攻勢などにより著しく輸入量は減少し、アメリカの桐供給源としての地位が低下するに至った。一方国内需要の面においては、最近の住宅事情による家具のユニット化の影響をうけ、現在以上の需要の伸びを期待することは不可能に近いというのが業界筋の悲観的な観測である。古くより日本人に親しまれてきた桐製品が今後関係業界と消費者との緊密な協力により新しい用途が開発され、再び国内市場に活性化を与える日の近からんことを願うものである。
著者
上松 健治
出版者
聖泉大学
雑誌
聖泉論叢 (ISSN:13434365)
巻号頁・発行日
vol.14, pp.139-151, 2006

「人権の世紀」と言われる21世紀に入って, 人権教育や啓発活動, 法整備などが積極的に推進されている。しかしその一方で, 弱肉強食や拝金の世相が一層強まるとともに, 親子の殺傷事件や凶悪犯罪は増加の一途をたどり, 人間の生命が軽んじられる風潮が急速に広がってきている。国際的にも, 大国による搾取・略奪が合理化, 正当化される一方で, 途上国では多くの人々が飢餓や環境破壊で苦しみ続けている。このような現状認識にたって, 近代西欧に源をもつ現代の人権思想を批判的に検証し, 生きとし生けるものへの「尊厳としての人権」「自然との共生の人権」の意義について, 人格の陶冶に光を当てて論じる。
著者
富川 拓 炭谷 将史 多胡 陽介
出版者
聖泉大学
雑誌
聖泉論叢 (ISSN:13434365)
巻号頁・発行日
vol.15, pp.255-270, 2007

本稿では地域の高齢グラウンドゴルフプレーヤーに対しライフストーリー・インタビューを実施し,「運動・スポーツ」「健康」「地域」と関連する語りからその生活世界の一部を明らかにした。また地域での運動会やゴルフ・グラウンドゴルフの活動を通した社会的ネットワークの構築や,競技に打ち込む高齢者の実態が確認された。