著者
美馬 義亮 木村 健一 柳 英克
出版者
芸術科学会
雑誌
芸術科学会論文誌 (ISSN:13472267)
巻号頁・発行日
vol.1, no.1, pp.39-45, 2002 (Released:2008-07-30)
参考文献数
10
被引用文献数
4 1

人間が図柄の構想を行い、コンピュータ上でそれらを表現するというスタイルのツールは広く用いられているが、コンピュータが図柄を生成する作業に関わるようなシステムは少数である。ThinkingSketch は、創造性をもった図柄生成に関する発想を対話的に支援することを目的とする。本システム上では。1)既存の絵画や写真などから生成されたカラーパレットを参考にして、作品の中で色彩を割り当てる。(=色のトレース)、 2)既存の絵画や写真の表現を下地にしてなぞる作業を通じてオリジナルな図形プリミティブを作成する。(=形のトレース)、 3)画面の中に 乱数によるプリミティブを配置する。4)パラメータと生成ルールにより多数の絵画を生成し、構図の構築、評価を繰り返し行う。このような検討作業を通じ、生成ルールやプリミティブのチューニングを行い、望ましいパターンの生成確率を上げる。ユーザはこの過程の中で自己の好む絵画スタイルの存在を意識し、それらを吟味することが容易になる。加えて、このような枠組みは熟練者への表現における生産性向上の支援にも利用可能であることを報告する。
著者
村上 存 臼井 恵
出版者
芸術科学会
雑誌
芸術科学会論文誌 (ISSN:13472267)
巻号頁・発行日
vol.1, no.1, pp.46-53, 2002 (Released:2008-07-30)
参考文献数
11

導電性弾性材料の塊を構造体かつ3 次元変形センサとする入力装置を用いた,直観的3 次元形状操作インタフェースDO-IT (Deformable Object as Input Tool) を提案する.電気抵抗値を測定するための端子対を格子状に導電性弾性材料の塊に接続し,弾性体に加えられた曲げ,ねじり,押し込みなどの3 次元的変形を,各部の電気抵抗値の変化により測定し,その変形をコンピュータ内の形状モデルに適用する.各端子対における抵抗値の変化パターンと入力装置の変形の関係をニューラルネットワークを用いて学習すると同時に,学習の過程において重要度の低い端子対を検出し除去することによって,適切な端子対の数および配置を半自動的に決定する.これらの学習,最適化によって,プログラムをほとんど書き換えることなく,目的や応用に応じたさまざまな形状の弾性体入力装置や変形の種類に対応することが可能となる.弾性体による変形入力に加えて,実際の応用のために必要となる,さまざまなモード切替,調整などの操作を行なうためのスイッチ,ボタン,ボリュームを統合した,直観的3 次元形状操作のための入力ツールを製作した.提案したインタフェースをコンピュータ・システムとして実装し,実際に操作を行なうとともに,従来のマウスと複数投影図を用いた形状操作方式との定量的比較を行ない,研究の有効性,可能性を検証した.
著者
寺沢 幹雄 小高 金次 佐藤 創 和田 重久 外山 武徳
出版者
芸術科学会
雑誌
芸術科学会論文誌 (ISSN:13472267)
巻号頁・発行日
vol.1, no.1, pp.54-63, 2002 (Released:2008-07-30)
参考文献数
19

本論文では,実時間視点モーフィングを用いたWeb用立体表示であるWeb2.5Dを実現するための実証実験的電子商品カタログシステム実現手法を述べ,データ自動生成法を提案する.実時間視点モーフィングは未校正カメラで撮影された2視点画像から2次元処理により中間視点画像を実時間で生成する手法であり,本システムでは複数画像に対応することで対象物体の全周表示を可能とした.自動抽出した特徴点に対して,データ作成者が入力した8組以上の対応点から得られるエピポーラ制約に基づいて面情報が自動生成される.オクルージョンにより対応点の自動決定が困難な場合には,レイヤ構造をサポートした専用エディタで修正する.本手法はバナー広告や画面背景にも適用できるため,通信販売,製品説明,電子会議など多くの応用に有効である.静止画像以外の転送データ量は数十キロバイト程度であるため,電話帯域のインターネットでも実用的に利用できる.
著者
尼岡 利崇 Laga Hamid 齋藤 豪 中嶋 正之
出版者
芸術科学会
雑誌
芸術科学会論文誌
巻号頁・発行日
vol.8, no.4, pp.151-159, 2009

3次元形状測定により観客の身体形状、動作を実時間で測定しインタラクティブアートのコンテンツとするCollective Bodyを提案する。本作品は、観客の身体形状から生成した3次元モデルに観客の身体動作によって実時間で特殊視覚効果を与える作品である。本作品では、グラフィックスと特殊視覚効果をそれぞれ2種類ずつ実装した。3次元モデルは、パーティクルの集合体で表現し、特殊視覚効果は生命活動をモチーフとしパーティクルそれぞれに運動方程式を与え独自に挙動させることで表現した。ユーザーは、自分自身の身体形状、動作から生成された3次元モデルを自由視点で鑑賞することにより、本作品を通し新しいインタラクティブ体験が出来ると共に新しい視点で自身の身体を捉えることが可能となる。
著者
家田 暁 琴 智秀 萩原 将文
出版者
芸術科学会
雑誌
芸術科学会論文誌
巻号頁・発行日
vol.9, no.4, pp.163-172, 2010
被引用文献数
1 2

本論文では感性を反映した構図修正による,デジタル写真の品質向上システムを提案する.提案システムでは入力画像に適した構図を自動選択し,画像の構図を原画像の印象を保ちながら修正することで,画像の品質向上を行うことができる.修正は4 段階の処理によって行われる.まず,入力された画像から主となる顔,際立つ領域,三角部分,水平線,対角線,遠近法消失点の6 種類の構成要素が検出される.検出された各構成要素の位置や他構成要素との関係から,それぞれの構成要素に適すると考えられる出力構図案が計算される.次にそれらの構図案から,原画像の印象から大きく変わってしまう案が削除される.すなわち,画像に対する構成要素の位置が大きく移動する案が削除される.最後に,残った出力構図案の中から原画像の印象を最も保つことが可能な構図案,すなわち切り出す面積が最も小さい構図案が選択され,その構図案に従い画像の構図修正が行なわれる.ユーザアンケートによる2 種類の評価実験を行った.その結果,提案システムによってユーザにとって好ましい修正が行われること,また既存手法と比較しても好ましい修正が行われることが確認された.
著者
景 琳琳 井上 光平 浦浜 喜一
出版者
芸術科学会
雑誌
芸術科学会論文誌
巻号頁・発行日
vol.6, no.3, pp.98-105, 2007
被引用文献数
1

カラー写真をステンドグラス画像やカラースケッチ画像などの非写実的画像に変換する簡便で高速な手法として,画像を色が均一な領域に分割するタイプの処理法を提案する.本論文では,エッジベースの手法と領域ベースの手法とを提案する.エッジベースの手法では,入力画像から検出したエッジからの距離変換に基づいて画像をアポロニウス分割し,バンプマッピングによってステンドグラス風やキルティング風,タイル風などの画像を生成する.エッジからの距離変換を用いる同様な手法として,円板配置によるバブル画像の生成法も示す.領域ベースの手法では,入力画像を減色し,モードフィルタをかけて滑らかな境界の領域分割を得る方法を提案し,境界線や領域色を処理してステンドグラス画像やカラースケッチ画像を生成する.
著者
菊池 司 工藤 芳彰 岡崎 章 木嶋 彰 古屋 繁
出版者
芸術科学会
雑誌
芸術科学会論文誌
巻号頁・発行日
vol.3, no.1, pp.35-44, 2004
被引用文献数
1

デザインの対象が「モノ」から「コト」への移行がいわれて久しい昨今,ユーザが製品や提供される環境を利用していくなかでの全体的な経験までを視野に入れた「Experience Design」,つまり経験を提供するデザイン,あるいは経験そのものをデザインの対象とするという視点に立ったデザインの必要性が言われている.しかしながら,「Experience Design」の意味する本質は見えにくく,経験をデザインできるのかという疑問があるのも事実である.そこで本論文では,「Experience Design」という言葉が意味するものは何かを研究事例などを通して探り,新しい領域へと広がっていくデザイン研究,および実践のあり方を検討するものである.
著者
飯田 弘之 中川 武夫 長谷川 敦史 岡根谷 敏久 Muangkasem Apimuk 曾根 彰吾 石飛 太一
出版者
芸術科学会
雑誌
芸術科学会論文誌 (ISSN:13472267)
巻号頁・発行日
vol.12, no.3, pp.132-142, 2013-09-30

本論文において,新たな情報力学モデルを提案し,その応用について探求する.最初のモデルはゲーム結果の確かさに関連し,二番目のモデルはゲーム結果の不確かさに関連する.これらのモデルを将棋とサッカーに適用する.そして,エンタテイメント性の質,ゲーム進行パターン,アドバンテージの依存性,勝率といったゲーム情報の時間推移を可視化するために有効であることを確認する.提案モデルの応用例として取り上げたサッカーの情報力学モデルから,FIFA女子世界サッカー選手権決勝の試合は典型的な均衡がとれたゲームであることがわかる.また,この試合で日本チームはアメリカチームに勝利したが,日本チームが最後まであきらめなかったことが示唆される. : This paper is concerned with novel information dynamic models and their application. The first model is relating to certainty of game outcome, and the second one is to the uncertainty. They have been applied to Shogi and Soccer. It is found that these models are useful for visualizing the detail processes in the game, such as the quality of entertainment, game pattern, together with time dependency of the advantage and winning rate. It is suggested that FIFA Women's World Cup Germany 2011Final is a typical balanced game in which Japan got the win against USA, but fighting spirit of Japanese players was slightly stronger than that of American players.
著者
山澤 舞子 伊藤 貴之 山下 富義
出版者
芸術科学会
雑誌
芸術科学会論文誌
巻号頁・発行日
vol.7, no.2, pp.85-96, 2008

本論文では,階層型多変数データを可視化する一手法「十二単ビュー」を提案する.既に報告されている「平安京ビュー」が階層型データ中の各データ要素をアイコン表示したのに対して,「十二単ビュー」では個々のアイコンに割り当てられた変数の数だけの色を割り振り,この色の濃さによって各データ要素の多変数の値を表現する.また,拡大表示時にはデータの葉ノードを単位として変数値を表示し,縮小表示時には下位階層の変数値を統合し,上位階層のみを表示する,というような詳細度制御を実現する.本論文では,薬物群の分子構造情報と実験値を格納したデータベースより構築される階層型多変数データを例として,「十二単ビュー」の有用性を議論する.また,いくつかのユーザテストにより,可視化結果の有効性を検証する.
著者
飯田 弘之 中川 武夫 長谷川 敦史 岡根谷 敏久 Muangkasem Apimuk 曾根 彰吾 石飛 太一
出版者
芸術科学会
雑誌
芸術科学会論文誌 (ISSN:13472267)
巻号頁・発行日
vol.12, no.3, pp.132-142, 2013-09-30

本論文において,新たな情報力学モデルを提案し,その応用について探求する.最初のモデルはゲーム結果の確かさに関連し,二番目のモデルはゲーム結果の不確かさに関連する.これらのモデルを将棋とサッカーに適用する.そして,エンタテイメント性の質,ゲーム進行パターン,アドバンテージの依存性,勝率といったゲーム情報の時間推移を可視化するために有効であることを確認する.提案モデルの応用例として取り上げたサッカーの情報力学モデルから,FIFA女子世界サッカー選手権決勝の試合は典型的な均衡がとれたゲームであることがわかる.また,この試合で日本チームはアメリカチームに勝利したが,日本チームが最後まであきらめなかったことが示唆される. : This paper is concerned with novel information dynamic models and their application. The first model is relating to certainty of game outcome, and the second one is to the uncertainty. They have been applied to Shogi and Soccer. It is found that these models are useful for visualizing the detail processes in the game, such as the quality of entertainment, game pattern, together with time dependency of the advantage and winning rate. It is suggested that FIFA Women's World Cup Germany 2011Final is a typical balanced game in which Japan got the win against USA, but fighting spirit of Japanese players was slightly stronger than that of American players.
出版者
芸術科学会
雑誌
芸術科学会論文誌 (ISSN:13472267)
巻号頁・発行日
vol.8, no.2, pp.81-89, 2009-07-10

本論文では,カクテルのアナロジを用いることにより風景画像を作成するシステムを提案する.このシステムではカクテルの材料を風景の要素とし,それらをシェーカで混ぜる事で風景を作成する事が出来る.作成される風景画像はシェーカを振ることでリアルタイムに変化し,体験者は風景画像を作成している感覚を持つことが出来る.また,風景の要素の組み合わせで,出来上がる風景画像は異なってくる.これにより,体験者はオリジナルの風景画像を作成する事ができる. : We present a system that generates landscapes using a cocktail analogy. With this system, users generate landscapes by combining "ingredients." Users select a bottle containing the intended landscape element and pour an appropriate amount of water into a shaker. The amount of water used from each bottle determines the ratio of landscape elements. The relief of the surface and the position of each element are changed by shaking the shaker. This system provides the enjoyment of creating one's own favorite scenery.
出版者
芸術科学会
雑誌
芸術科学会論文誌 (ISSN:13472267)
巻号頁・発行日
vol.8, no.2, pp.66-73, 2009-07-10

身の回りには,顔に見えるものが多く存在する.もしそれらの顔が表情を変え,話をすることができたら,さらに楽しい発見や体験が行えるのではないだろうか.筆者らは,このような顔に見えるものとのインタラクションを目的とした作品「かおさがし」を提案し,新たに感情モデルと合成音声を加えたシステムを製作した.人形型デバイスで顔に見えるものを撮影し,人形の顔を触ったり,人形を揺らしたりすることによって,顔や音声がインタラクティブに変化する.このシステムによって,顔に見えるものとのインタラクションが可能となった.今後,携帯電話向けアプリケーションや玩具として応用することによって,新たなエンタテインメントを提案することができる. : There are a lot of face-like objects and materials. If those faces move, speak, and interact with us, it will be very amusing for many people, especially children. We therefore propose a system, which enables people to interact with those faces for entertainment. We have previously proposed a facial recognition system and a facial animation system to produce artwork which encourages people to interact with these face-like objects. We have newly updated the system, adding emotion modeling and synthetic voices. Users take a picture of a face-like thing with the doll-shaped device. Then, photograph take appearance in the face of the doll. When users touch the face of the doll or shake the body of the doll, the facial expression and the voice of the doll changes. We encourage people to interact with face-shaped objects for entertainment. We hope this system will be implemented in mobile gadgets such as mobile phones, and expect people, especially children, to use the gadget and play with faces in their environment.