著者
比佐 優子 比佐 章一
出版者
行動経済学会
雑誌
行動経済学
巻号頁・発行日
vol.2, pp.138-140, 2009

本論文では,新規上場(IPO)におけるアンダー·プライシングの決定要因について分析を行った.アンダー·プライシングは,投資家と経営者の間に情報の非対称性が存在するときや,投資家の横並び行動が存在することに起こりやすいことが知られている.分析の結果,ベンチャーキャピタル(VC)が,情報の非対称性を解消する役割を果たしていない可能性があることがわかった.
著者
久米 功一
出版者
行動経済学会
雑誌
行動経済学 (ISSN:21853568)
巻号頁・発行日
vol.5, pp.185-188, 2012 (Released:2013-05-29)
参考文献数
9

本稿では,各種アンケート調査の結果を分析して,想起,順応,合理化の視点から,幸福度指標を経済政策に応用する際の三つの留意点を提示した.第一に,幸福から連想する言葉や内容は人によって異なり,それが主観的幸福度の違いをもたらす.第二に,幸福度の尺度には限界があり,人々の幸福度の推移を統計的に把握することは容易ではない.第三に,ある種の世界観は幸福度や所得に有意に影響する.また,人々は合目的的に幸福度を高めているとは必ずしもいえない.これらの結果は,幸福度の分配原理,計測の精緻化,世俗的合理主義との折り合い等,幸福主義的な政策を立案する上での諸課題を示唆している.
著者
保原 伸弘
出版者
行動経済学会
雑誌
行動経済学
巻号頁・発行日
vol.3, pp.160-161, 2010

ヒット曲(流行歌)は周囲の経済状況との関連が強い商品(財)と考えられる.去年のヒット曲の調性やテンポと経済状況に関する分析に引き続き,日本の昭和期および平成期に流行ったヒット曲(流行歌)がもつ音域や音程に注目し,それらと経済状況との間の相関について考察する.
著者
岡野 武志
出版者
行動経済学会
雑誌
行動経済学
巻号頁・発行日
vol.4, pp.145-149, 2011

生活者は,身近な事例に強い影響を受けて不安を感じ,将来を悲観的に予想しやすい.業績や財務基盤に不安を抱える企業にも,悲観的な傾向がみられる.業況を相対的に強気に見てきた大企業にも,金融危機以降の判断に変化がみられる.大企業の判断にも,身近な事例に基づく不安が投影されれば,人件費の削減や投資の抑制につながりやすい.収入が減少すれば生活者は支出を抑え,需要の減少がさらに企業業績を悪化させて,スパイラル的な経済規模の縮小が進みかねない.政府支出の増加分が,企業や家計に蓄積されれば,主体間・世代間に資金の偏在を生む結果につながる.偏在の是正には,生産と支出の増加による経済活性化が必要であり,国民の努力も重要になる.経済合理性のみを追求する社会の危うさは周知されつつあり,「貢献」という効用を得る機会の増加が望まれる.人を対象とする行動経済学は,さらに活躍の場を広げていくべきであろう.
著者
顧 そうえい 竹下 俊一
出版者
行動経済学会
雑誌
行動経済学 (ISSN:21853568)
巻号頁・発行日
vol.2, pp.149-153, 2009 (Released:2011-12-03)
参考文献数
21

本研究では,情報の有無による条件下で,人が債務を果たす上で,財務能力の違いによって預託金の償還請求の交渉(意思決定過程),当事者の行動(意思決定)の違いを明らかにすることを目的とした.ゴルフ会員権の償還問題に想定し,情報開示と情報非開示グループを比較した預け金についての修正最終提案ゲームについて実験研究を行った.
著者
大塚 一路 西成 活裕
出版者
行動経済学会
雑誌
行動経済学 (ISSN:21853568)
巻号頁・発行日
vol.3, pp.218-221, 2010 (Released:2011-06-27)
参考文献数
7

本研究はファイナンス理論の枠組みを用いて「人混みに値段をつける」ことを目標としている.そこで我々は混雑における人の満足度が顧客一人あたりに与えられるパーソナルスペースと同等であると仮定してサービス価値の変化を正味現在価値(NPV)法と呼ばれる資産価値評価理論によって評価した.また,新たな試みとしてサービスの価値(顧客の効用)が待ち時間の増加に伴って割引かれるという概念を導入し,空港の入国管理場で測定したデータに対する実証分析も行った.実証分析の結果から,今回導入した指標は待ち時間の増加やスペースの減少と連動して効用が小さくなる指標であることが確認された.
著者
Shunichiro Sasaki Shiyu Xie Shinsuke Ikeda Jie Qin Yoshiro Tsutsui
出版者
行動経済学会
雑誌
行動経済学 (ISSN:21853568)
巻号頁・発行日
vol.5, pp.15-25, 2012 (Released:2012-06-01)
参考文献数
16
被引用文献数
2

This paper pursues two aims by conducting economic experiments in Shanghai. One aim of this paper is to investigate the following three anomalies on time discounting: the delay, interval, and magnitude effects. We confirmed all the three anomalies. Particularly, by separating the delay effect from the interval effect, the delay effect is found when the delay is relatively short, which has seldom been reported in former studies. Another feature of our experiment is that it is immune to the criticism that the subjects recruited for the experiment did not have sufficient incentives to report their true preferences because the highest reward that was offered to the subjects was approximately equivalent to their monthly household incomes. The second aim of this paper is its explanation of the subjects’ procrastinating behaviors by their time discount rates and the degrees of the delay effect. Our analysis suggested that higher time discounting always promotes procrastination; however, the delay effect is negatively associated with procrastination. An interpretation of the latter result can be that our subjects, i.e., the students of Fudan University, are sophisticates rather than naïfs.
著者
北村 智紀 中嶋 邦夫 赤井 研樹 青木 恵子
出版者
行動経済学会
雑誌
行動経済学 (ISSN:21853568)
巻号頁・発行日
vol.4, pp.139-140, 2011 (Released:2012-03-29)

高齢者が投資決定に際して他の者と相談することで投資詐欺を防ぐことが可能か実験で検証した.実験では高齢者を被験者とし,意思決定前に相談するグループと相談しないグループを設定し,現状の市場環境では存在し得ない元本保証で高利回りという詐欺的な特徴を持つ金融商品と通常の株式投信への仮想的な投資配分を決定してもらった.実験の結果,当初の選択では相談したグループの方が詐欺的商品への配分比率が高くなり,相談の効果が認められなかった.しかし,異なる商品に対する続く選択では相談したグループの方が詐欺的商品への配分比率が減少した.さらに,過去に預けた預金金利が高い者ほど相談に効果があった.家族等と単に相談するだけでは投資詐欺被害を防ぐ効果は低いと考えられるが,より現実的な投資詐欺の手口を示すことや,過去と現在の預金金利を比較するなどの具体的な相談内容を示すことで高齢者の投資詐欺被害を減らせる可能性がある.
著者
松葉 敬文 佐藤 淳 蔵 研也 青木 貴子 村上 弘
出版者
行動経済学会
雑誌
行動経済学 (ISSN:21853568)
巻号頁・発行日
vol.3, pp.194-198, 2010 (Released:2011-06-27)
参考文献数
17

女子短大の学生を被験者に3週間にわたり,テストステロンの濃度と,リスク選好指標,時間選好などを計測した.リスク選好指標は,選択課題(choice task)と適合課題(matching task)の2種類を用いた.また被験者のT濃度を,グルコース投与によって一時的に低下させて,コントロール群との違いを見た.結果,Tの絶対濃度とリスク選好には選択課題,適合課題ともにはっきりとした関係がなかった.また,30分間隔でのT濃度の変化と,リスク選好の指標である 選択課題の間には有意な正相関があるが,選択課題とでは有意性は示されなかった.T濃度の変化は,確率過程の不明な不確実性(uncertainty)状況では影響を与えるが,確率過程が既知のリスク(risk)状況下では弱い,あるいは与えないことが示唆された.またTは時間選好には影響を与えない.