著者
山本 聡美
出版者
金城学院大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2007

中世日本で外来の十王図像が移入され和洋化するプロセスについて、作品調査と文献の分析を通じて考察した。本研究期間内に計9件の作品調査を実施した他、写真などを用いた画像資料の収集を行った。特に日本製十王図の多くに描きこまれる本地仏の組み合わせに着目し、調査結果を分析した。その結果、制作年代の遡る作例ほど組み合わせに多様性があり、また本地仏として大日如来を描く事例が多いという傾向が浮かび上がってきた。また、現存作例の和洋化が著しく進む13世紀後半~14世紀にかけての、仏書や日記・記録類に着目、仏事で十王図が懸用された事例を分析した。その結果、宮中や幕府関係の逆修・追善供養での懸用と軌を一にしながら、十王図と本地仏の組み合わせが決定され、日本的十王図への変容が促されたことが明らかとなった。以上の成果の一部は、『国宝六道絵』(共著、中央公論美術出版、2007年)などの出版物として公刊している。
著者
安藤 裕明
出版者
金城学院大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2007

オープンソースの教育支援システムMoodleに,携帯電話からの利用を想定したMoodle for Mobileを導入し,携帯情報端末(PDA)と携帯電話を組み合わせて利用可能な,薬学部用の授業支援システムを構築した。また,一般教室での利用を想定し,PDAから無線LAN経由で同時に接続できる台数や,携帯電話からの接続に関する検証を行い,授業における応用の可能性について検討した。具体的には,パソコンでの利用を前提としたMoodleに,携帯電話に対応するためのMoodle for Mobileをアドオンしたサーバを準備し,また,薬理学分野の問題をデータベース化して登録し,ミニテスト機能に応用できるようにした。このサーバに対し,PDAおよび携帯電話からの接続性,ミニテスト問題等の視認性,使いやすさ等を,主に学生アンケートを元に分析した。携帯電話からMoodleを使用する場合は,一般的にパケット通信を行うために費用が発生する。そこで,学生の所有する携帯電話について,パケット通信費用に関する調査も実施した。実験の結果,携帯電話からMoodle for Mobileへの接続は,URLを直接入力する方法ではミスが頻発した。しかし,QRコマドやURLを明記したメールを準備する事で,トラブルを回避することができた。携帯電話からのアクセスでは,利用できる機能や表示できる文字数に制限があり,○×問題以外は実用的ではなかった。PDAからは,Moodleの全機能を利用できた。しかし,画面の解像度が低いために,複雑な投票や問題は回答し難い事が明らかとなった。PDA単独の利用を想定した場合は、PDAの故障等,様々なトラブルを考慮する必要があるが,携帯電話は,これを補完するツールとして有用である。ただし,利用する際には,機種毎に大きく異なる画面サイズや,パケット通信に伴う費用の発生等の問題を考慮しておく必要がある。
著者
大山 小夜
出版者
金城学院大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2003

貸し手側である業者と借り手側である消費者による金銭貸借をめぐる相互作用(消費者信用取引)において、紛争は、多くが複数の業者から借り入れる消費者の返済の遅れに始まる。このため、消費者信用取引の紛争は、一般に、多重債務問題と呼ばれる。破産はその一帰結である。本研究の目的は、紛争当事者が出会う市場、市場で生じた紛争の事後処理と市場に法規制を行う司法、借り手に資源を投与することで紛争の解決を図る行政など、消費者信用と多重債務問題に関わる諸制度の実証研究を通じて、紛争解決のための政策的、社会学的示唆を得ることである。この目的に対し、本年度の研究内容は以下の通りである。第1は、消費者信用市場のグローバル化にともなう紛争拡大の実態把握と、紛争解決のための国際的取り組みの必要性の提言である。2005年3月末、日本弁護士連合会が消費者信用法制について韓国で現地調査を行った。報告者はこの調査に同行し、帰国後、補足調査を行うことで次の2点を明らかにした。一つは、多重債務問題は、経済の低成長期にある社会において、高い収益性のある消費者信用市場への規制緩和と、市場から脱落する個人への司法的行政的救済制度(セーフティネット)の未整備による不幸な結婚によって生じること。いま一つは、こうした不幸な結婚には、豊富なノウハウと資金力をもつ諸外国業者による市場進出も大きく関わっていることから、多重債務問題の解決には、当該国内だけでなく、国際的取り組みが必要なこと、である。第2は、消費者信用市場への規制をめぐる論点整理である。市場へ事前に包括的な規制をかけることで紛争を防ぐという意見に対し、近年、市場に規制をかけないかわりにそこで生じる紛争を事後的に個別的に解決すればよいという意見が出されている。そこで、後者の、紛争解決のあり方の代表例として、日本の司法における紛争処理の実態を検討し、その利点と問題点を整理した。
著者
副田 義也 樽川 典子 嶋根 克己 藤村 正之 牧園 清子 小高 良友 株本 千鶴 樫田 美雄
出版者
金城学院大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2005

社会的行為としての死の研究。医師、看護師、メディカル・ソーシャル・ワーカー、近親者などと死にゆく者との相互作用のなかで、死を観察、分析、研究した。とくに、緩和ケアのありかた、医師と看護師の役割分担、医療スタッフと近親者とのコミュニケーションに焦点をあわせつつ、聞きとり調査をおこない、事例研究をおこなった。制度としての葬儀の研究。国内では、高度成長期以降の葬儀業界のありかたを、葬祭業者の専門職化と資格の制度化を中心に、調査、研究した。また、創価学会で近年注目される友人葬の事例を収集し、研究した。外国では、フランスにおける葬祭業の成立と展開にかんする歴史社会学的研究、中国の客家人の葬儀と死生観の事例研究をおこなった。文化としての追悼の研究。太平洋戦争時における市民から出た大量の死者を追悼する施設の調査・研究に主力を集中した。東京・沖縄・広島における戦争博物館の比較考察、対馬丸記念館の調査・研究がおこなわれた。ほかに、沖縄の陸軍病院壕、周南市回天記念館は、軍人戦死者の追悼施設として追加調査された。死の社会学の全体構想の研究。以上の3部門の研究をふまえ、内外の死の社会学的研究文献の分析・総括をあわせて、死の社会学の体系化が試みられた。全体社会、組織・集団、相互作用、社会制度、文化、パーソナリティ、社会的行為の7つの主要概念の有機的連関を利用して、死の社会学の7部門が構成された。(研究成果報告書、11ページ参照)。
著者
柳田 知常
出版者
金城学院大学
雑誌
金城学院大学論集. 国文学特集
巻号頁・発行日
vol.5, pp.130-145, 1955-04-05