著者
嶋根 克己 玉川 貴子
出版者
専修大学人間科学学会
雑誌
専修人間科学論集. 社会学篇 (ISSN:21863156)
巻号頁・発行日
no.1, pp.93-105, 2011-03

経済成長、家族関係の変化、生活様式の近代化などの社会変動のなかで、葬送儀礼も大きく姿を変えつつある。遺族や親族のみならず地域共同体や職場共同体にとっての共同イベントであった葬儀は、個人主義化の進行や家族の独立化、孤立化の中で、家族主体で行われるようになっていった。その一方で、共同体が担ってきた葬儀実務を肩代わりするために専門的葬祭業者の出現は不可欠であった。しかし家族の絆が弱体化し、地域社会とのかかわりさえも薄れてきた現在、葬儀はますます縮小し家族や親族の中だけにおける私的な儀礼に姿を変えてきた。こうした状況を受けて経済産業省は、個人や家族が個別に解決を迫られてきた医療、介護、看取り、葬送儀礼、遺族の癒しを総合的につなぐことのできる制度作りにむけて検討する機会を持ち始めた。
著者
嶋根 克己
出版者
日仏社会学会
雑誌
日仏社会学会年報 (ISSN:13437313)
巻号頁・発行日
vol.26, pp.31-46, 2015-11-30 (Released:2017-07-03)

The genocide of Jews during World War II is disgusting memory that they cannot be dispelled in the European societies. The Memorial to the Murdered Jews of Europe was established in Berlin 60 years after World War II. The German people have very strong and often conflicting feelings about how the Holocaust should be remembered, so they had to go through a political tangles to launch the memorial. In France the expositions about the genocide in the Resistance and Deportation History Center and the Museum of the Orders of Liberation are different. The atonement for the persecution is put together with the memory of the glorious victory of the Resistance. History museums are “the places of the co-memory" for each societies. However, they select the memories and edit the “History” that they want to keep. Historical museums are created through political conflicts.
著者
副田 義也 樽川 典子 加藤 朋江 遠藤 惠子 阿部 智恵子 株本 千鶴 嶋根 克己 牧園 清子 鍾 家新 藤村 正之 樫田 美雄 阿部 俊彦 時岡 新 村上 貴美子 藤崎 宏子 小高 良友 野上 元 玉川 貴子 坂田 勝彦 柏谷 至
出版者
金城学院大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2009

戦後内政の主要分野を、戦前期に内務省が専管した行政の諸分野に注目して、ひとつの統一的性格をもつものとして研究した。旧来、1947年の内務省解体は、連合国総司令部が強行した、否定的に評価されるべき事態として語られがちであった。しかし、その分割があったからこそ、その後の半世紀以上にわたる日本の福祉国家としての歩みが可能になったのである。すなわち、厚生行政、警察行政、建設行政、自治行政を担当する省庁の分立と発展、政策の複合による内政構造の拡大、深化である。
著者
副田 義也 樽川 典子 嶋根 克己 藤村 正之 牧園 清子 小高 良友 株本 千鶴 樫田 美雄
出版者
金城学院大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2005

社会的行為としての死の研究。医師、看護師、メディカル・ソーシャル・ワーカー、近親者などと死にゆく者との相互作用のなかで、死を観察、分析、研究した。とくに、緩和ケアのありかた、医師と看護師の役割分担、医療スタッフと近親者とのコミュニケーションに焦点をあわせつつ、聞きとり調査をおこない、事例研究をおこなった。制度としての葬儀の研究。国内では、高度成長期以降の葬儀業界のありかたを、葬祭業者の専門職化と資格の制度化を中心に、調査、研究した。また、創価学会で近年注目される友人葬の事例を収集し、研究した。外国では、フランスにおける葬祭業の成立と展開にかんする歴史社会学的研究、中国の客家人の葬儀と死生観の事例研究をおこなった。文化としての追悼の研究。太平洋戦争時における市民から出た大量の死者を追悼する施設の調査・研究に主力を集中した。東京・沖縄・広島における戦争博物館の比較考察、対馬丸記念館の調査・研究がおこなわれた。ほかに、沖縄の陸軍病院壕、周南市回天記念館は、軍人戦死者の追悼施設として追加調査された。死の社会学の全体構想の研究。以上の3部門の研究をふまえ、内外の死の社会学的研究文献の分析・総括をあわせて、死の社会学の体系化が試みられた。全体社会、組織・集団、相互作用、社会制度、文化、パーソナリティ、社会的行為の7つの主要概念の有機的連関を利用して、死の社会学の7部門が構成された。(研究成果報告書、11ページ参照)。