著者
吉野 浩司
出版者
長崎ウエスレヤン大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2016-04-01

2017年9月にチェコのブルノとプラハの2都市で調査を行った。①ブルノではドゥシャン・ヤナーック氏にインタビューを行った。ブルノ学派の創始者であるブラハに関すること、チェコ社会学史とソローキンとの関係に関することを中心に、聞き取り調査を実施した。ブラハとソローキンの社会学方法論の類似性をお互いに確認しあえたのは収穫であった。また同地のマサリク大学を訪問し、東欧出身の社会学史研究家たちとの意見交換の場を持つことで、新たなネットワークを構築できた。ソローキンのチェコでの亡命生活を調査する中で、亡命ロシア人のプラハでの仕事の重要性について知ることができた。当時ロシア人たちが住んでいた地域の調査が、今後の課題として浮上してきた。②プラハではチェコ科学アカデミーのマレク・スコヴァジュサ氏に、近著『チェコ共和国の社会学』について詳しく話を聞き、議論を行った。またカレル大学のズデニエク・ネシュポル氏には、チェコ社会学に関する聞き取りを行った。自身が編集に携わったチェコ社会学関連の雑誌をデータベース化したCD-Romや社会学辞典などを見せてもらい、学ぶところが多かった。またネシュポル氏は亡命ロシア人の実情にも詳しく、チェコ科学アカデミーのスラブ研究所を紹介してもらい、施設を利用する便宜をはかってくれた。③プラハではいくつかの施設を訪れた。国立図書館のスラブコレクションでは、ソローキンの著作を含む文献・資料をコピーした。ネシュポル氏紹介のスラブ研究所ではアーカイブから、いくつかの貴重な雑誌を発見し、コピーをすることができた。また滞在中に、チェコ国立文学研究所が開催している亡命ロシア人展「エクザイル」開催の情報を得、実際に会場に足を運ぶことができた。④2017年8月および同年年末から2018年年始にかけて、利他主義研究の日本的展開として、山陽・山陰の妙好人に関する現地調査を実施した。
著者
亘 明志
出版者
長崎ウエスレヤン大学
雑誌
長崎ウエスレヤン大学地域総合研究所研究紀要 (ISSN:13481150)
巻号頁・発行日
vol.3, no.1, pp.21-31, 2005-03-31

「近代化」とは歴史的な概念であるとともに、特定の社会、とりわけ非欧米社会のアイデンティティを問う概念でもある。しかし、それを一次元的尺度とみなすことは危険である。「近代化」には、経済発展や産業化には還元できない要素があるからである。そうした「近代化」の多様性をとらえようとする流れのなかで、近年、「近代化」と視覚などの身体感覚や表象との関連を取り上げる論考が見られるようになった。そこで、本論文では、視覚や表象の近代化に関する議論を踏まえながら、従来からの近代化論のいくつかのタイプ-合理化モデル、主体化=従属化モデル、メディア・モデル-についても身体論的観点から見直し、相互の関連性を明らかにするよう試みた。
著者
金原 俊輔
出版者
長崎ウエスレヤン大学
雑誌
長崎ウエスレヤン大学現代社会学部紀要 (ISSN:13481142)
巻号頁・発行日
vol.6, no.1, pp.53-62, 2008-03

高等学校において、生徒たちの問題・悩みにどのように対応するかを、森田療法の見地から解説した。まず、森田療法が有する理論や技法を概観し、その後、高校生の諸問題を「不登校・別室登校」「学校がらみの問題」「勉強」の3項目に分けて、森田療法的なアドバイスを記した。アドバイスは、教師が生徒に与えるという状況を想定している。一例をあげれば、いわゆる「不登校」に関しては、登校できない事情があるかもしれないが、とにかく学校へ行き、他者と会い、授業を受け、帰ってくる、それをめざして、実行すべきで、毎日、歯をくいしばり登校を継続する、時々休みを入れながらで構わない、やがては卒業式に到達し、その間に、がんばった成果として以前よりも多くの知識や経験や能力が身についている、このような目的本位の指導例を述べた。本論文は、高校生に見られる気分本位の生活パターンを目的本位の生活パターンに改めることに主眼を置き、それにより生徒たちに行動面の変化が現れることを企図したものである。
著者
村上 清
出版者
長崎ウエスレヤン大学
雑誌
長崎ウエスレヤン大学現代社会学部紀要 (ISSN:13481142)
巻号頁・発行日
vol.4, no.1, pp.17-21, 2006-03-31

本論文では、障害者自立支援法や障害者雇用促進法改正という状況を踏まえて精神障害者の就労を今後促進するための課題を整理するとともに、精神障害者の障害特性を考え筆者が注目している新たな就労形態として、EUが掲げる「社会的排除との闘い」の具体的実践としてイタリアでさかんな社会的協同組合B型について論及するものである。
著者
入江 詩子 佐藤 快信 菅原 良子
出版者
長崎ウエスレヤン大学
雑誌
長崎ウエスレヤン大学現代社会学部紀要 (ISSN:13481142)
巻号頁・発行日
vol.5, no.1, pp.51-62, 2007-03-31

ボランティア活動への参加の動機やきっかけも、従来の自己犠牲的あるいは献身的な動機から、自身の充実感とそれに付随した楽しみや喜びが主流になってきている。ただし、そこには自己満足的な独りよがりなボランティアを生む危険性が存在している。ボランティア活動そのものが学びであり、ボランティア活動の目的が自己実現であり、活動そのものは手段で、学習の成果の還元・活用・発展としてのボランティア活動がある。学習の成果を社会に還元するという行為は、社会貢献であり、自己が社会的に認知され、自己のアイデンティティを確立することにつながるのである。この点において、生涯学習とボランティアは結びつき、共に自発性という本質的なところで両者は結びつく。まちづくりの視点でみた場合、市民リテラシー(市民としての意識)の醸成をどのように形成していくかということは重要な課題で、先の生涯学習とボランティアの関係性はその初期段階を形成する意味で有効な手法といえよう。また、独りよがりにならない、押し付けにならないボランティア活動を展開する上でも市民リテラシーを持つことが重要である。以上のことをふまえ、市民として社会参画していく手段としてボランティア活動を位置づけた場合、「ボランティアをしたい」という意思を持つ人やグループなどとボランティア活動を受けたいとする人または組織集団との間にたって、それらニーズを充足するために必要な支援をおこなう介在者・媒介者としての担い手または組織が必要になってくる。ボランティアコーディネーターには、ボランディア活動を地域とつながったまちづくりという線上に位置づけながら関わること、高齢者、若者、子どもの生活スタイル、商業施設や企業、事務所の日常生活をまちづくりに反映させ、生活を中心においたまちづくりを創造していくことを意識することが求められる。
著者
早田 武四郎 江崎 國治
出版者
長崎ウエスレヤン大学
雑誌
長崎ウエスレヤン大学地域総合研究所研究紀要 (ISSN:13481150)
巻号頁・発行日
vol.3, no.1, pp.13-20, 2005-03-31

The English course load per week of a business high school (a technical high school, an agricultural high school, a fisheries high school, forestry high school) is 2 hours . The students ' motivation for learning English is low, many of whom also dislike English and their proficiency of English is extremely low. Many of the English teachers who take charge have been at a loss to conduct lessons and the measures should be hurried. This research focuses on this problem and discusses the clues of improving business high school ( except for commercial high school ) English education. In order to obtain the data for the surmise of the actual circumstances of technical high school and other business high school English Education in Japan, we administer "the questionnaire about English learning"to second - year students in a certain technical high school, vocabulary test of 50 words after the 200 word vocabulary list which is the 3rd grade of the Society for Testing English Proficiency (STEP) was studied during 2004 summer vacation and then a 3rd grade muck test of STEP. Then we calculate the degree of correlation between the above vocabulary test results and those of the 3rd grade mock test of STEP. What kind of measures can be considered as a way for English education improvement of all the business high schools except commercial high schools? As we refer at the part of the discussion, we can give (1) promoting vocabulary learning, (2) performing a lesson evaluation once or twice in a school year (Ushiro, 2001), (3) holding English song contest that the participants can enjoy. The reason why we recommend vocabulary learning is because it is possible for them to acquire high score acquisition, even if they do not understand grammar, and it will lessen their feeling of resistance to learning English and have them like it.
著者
兪 稔生
出版者
長崎ウエスレヤン大学
雑誌
長崎ウエスレヤン大学地域総合研究所研究紀要 (ISSN:13481150)
巻号頁・発行日
vol.4, no.1, pp.35-44, 2006-03-31

アメリカにとって、中国との軍事的最前線が台湾海峡になるか、それとも台湾の東岸の沖合になるかでは相当大きな違いがある。また、中国、香港、台湾が一体となれば、強力な経済力を擁した超大国・中国がアジアに出現し、アメリカの覇権は確実に脅かされる。一方、日本は複雑な日中関係の歴史を背景に、「日本の上に立つ」中国が将来表れることに不快感(嫌中感情)をつのらせ、中国への警戒感が増幅している。したがって、日米両国は台湾の現状維持でも利害が一致しており、国家統一を目指す中国との緊迫した関係が続くことになる。日本では戦後、侵略戦争の責任者の多くが釈放され、政界に復帰したため、今なお中国をはじめとするアジア諸国に対する戦争責任を認めようとしない保守政治が続いている。歴史認識(教科書問題)、靖国神社参拝、台湾問題はその脈絡の中で当然起こるべきして起こった事件である。