著者
金原 俊輔 Shunsuke Kanahara 長崎ウエスレヤン大学現代社会学部福祉コミュニティ学科 Faculty of Contemporary Social Studies Nagasaki Wesleyan University
出版者
長崎ウエスレヤン大学
雑誌
長崎ウエスレヤン大学現代社会学部紀要 (ISSN:13481142)
巻号頁・発行日
vol.3, no.1, pp.21-28,

行動療法は、インフォームド・コンセントを重んじ、実験を通して有効性が確認されたエビデンス・ベーストの技法を用い、クライエントが望む介入結果に至ることがめずらしくない、心理療法である。しかし、研究者や実践者たちにおけるこの療法への敬意は必ずしも高くはなく、とりわけ日本においてその傾向が強い。本論文は、文献などに見られる「行動療法は人間をネズミあつかいする」「クライエントの過去の経験を重視しない」「冷たい」といった諸批判を検討するものである。まず、行動療法の母体である行動心理学を解説する。続いて行動療法を概観し、特にその技法を詳述する。以上を通して行動療法の位置と性格を明らかにした後、これまで行動療法に与えられてきた19種類の典型的な批判を紹介して各批判に検討を加える。検討は「批判への回答」形式でおこなうが、その内容は、科学というアプローチに対する誤解の指摘、行動心理学と行動療法を混同していることの指摘、ヒューマニスティックという語の定義の再考、などから成り立っている。
著者
福留 範昭 亘 明志 Noriaki Fukudome Watari Akeshi 強制動員真相究明ネットワーク事務局 長崎ウエスレヤン大学 現代社会学部 社会福祉学科
出版者
長崎ウエスレヤン大学
雑誌
長崎ウエスレヤン大学地域総合研究所研究紀要 (ISSN:13481150)
巻号頁・発行日
vol.4, no.1, pp.17-25,

本稿_<(1)>では、朝鮮人強制労働被害者の遺骨問題を、「記憶」と「記録」をキーワードにして社会運動論的観点から考察している。韓国では、「日帝強占下強制動員被害真相糾明委員会」が設立され、強制動員真相究明の事業が開始された。その一環として、強制動員被害者の遺骨の収集と返還の活動がある。日本政府は、日本に残された強制動員被害者の遺骨の調査と返還に協力を約束した。本稿では、先ず日韓政府によって60年間放置されてきた遺骨に対する事業が始まった経緯を概観した。そして、日本政府が行っている遺骨調査の進展状況を眺め、調査の問題点を指摘した。さらに、この遺骨調査の持つ意味を踏まえ、調査が実りあるものになるために、何が必要であるかを考察した。
著者
吉野 浩司 梅村 麦生 吉田 耕平 磯 直樹
出版者
長崎ウエスレヤン大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2019-04-01

〈善く生きる〉のための社会学とは、人間が生きる上で必要な生きがい、愛、喜びといった人間のポジティブな側面を対象とし、その発生メカニズムの解明と社会への実装とを目的とする科学である。この社会学を、亡命知識人論というグローバルな社会学史の観点から、その源流にまでさかのぼって捉え直そうとするものである。わけても〈善く生きる〉ための思索の片鱗は、20世紀初頭のロシア社会学にも組み込まれており、後に欧米の社会学にまで浸透していった。世界各地のアーカイブに残された亡命知識人の資料を掘り起こし、かつてのロシアや中東欧の思想から現代の欧米の社会学にいたる様々な試みを総合的に把握する。