著者
中島 光好 植松 俊彦 長嶋 悟 小原 正雄 坂本 博 寺川 雅人
出版者
Japanese Society of Chemotherapy
雑誌
CHEMOTHERAPY (ISSN:00093165)
巻号頁・発行日
vol.42, no.3, pp.72-113, 1994

FK037の第I相臨床試験として健常成人男子志願者33名を対象に単回投与試験および連続投与試験を実施し, 本剤の安全性および薬物体内動態を検討した。単回投与試験ではFK037125, 250, 500mgを静脈内に5分間および500, 1,000, 2,000mgを60分間infusion投与し, 連続投与試験では1日2回12時間間隔で5日間の合計9回2,000mgを静脈内に60分間infusien投与した。<BR>1) 単回投与試験 (27名) で500mgの5分間infusion投与 (朝9時) の1名に不快感, 嘔気および血圧低下等のショック様症状が認められたため投与を中止した。当該被験者は, 夕方には症状はおちつき, 翌朝にはほぼ正常に回復した。連続投与試験 (6名) では第1日の2回目投与前に1名で感冒によると思われる全身熱感があり, 被験者の安全性を考慮し投与を中止した。また, 第2日に軽度の頭痛が1名に認められた。臨床検査については, GPTおよびLAPの軽度上昇が単回および連続投与試験で各1名, GPTの軽度上昇が連続投与試験で1名にみられた。いずれも臨床的に問題となる程度ではなかった。その他には単回および連続投与試験において自他覚症状, 臨床検査, 理学的検査で特に異常は認められなかった。<BR>2) 連続投与試験において腸内菌叢に及ぼす影響を検討した。腸内菌叢は好気性菌, 嫌気性菌いずれにおいても本剤により特に大きな変動はみられなかった。<BR>3) 単回投与試験で本剤のC<SUB>max</SUB>, AUCは投与量に比例し, 線形性の体内動態が認められた。また, T<SUB>1/2</SUB>は2.30時間, 投与後24時間までの尿中排泄率は95.0%であった。連続投与試験ではC<SUB>max</SUB>は投与第2日以降ほぼ一定となり, T<SUB>1/2</SUB>は2.15時間, 尿中排泄率は89.1%であった。また, 血漿蛋白結合率は11.4%であった。本剤の体内動態は第2日には定常状態に達し, 蓄積性は認められなかった。<BR>以上の結果から, セファロスポリン系抗生物質でみられるショック様症状に留意して, 本剤の第II相臨床試験を実施することが可能であると考えられた。
著者
福岡 義和 田中 啓一 野口 雅志 酒井 晃 萩中 隆博 中村 武夫 田近 栄司 神田 静人 加藤 正博 長谷川 真常
出版者
Japanese Society of Chemotherapy
雑誌
CHEMOTHERAPY (ISSN:00093165)
巻号頁・発行日
vol.34, no.2, pp.150-157, 1986

新しく開発された経口セフェム系抗生剤T-2588 (T-2525として100mg力価) を健常成人4例および種々の程度の腎機能障害者14例に経口投与し, その抗菌活性物質であるT-2525の体内動態を検討した。腎機能の指標としては24時間内因性クレアチニンクリアランス (Ccr) を用い, 薬動力学的解析は吸収に遅れがあるとしたone-compartment open modelを用いた。<BR>T-2525の最高血清中濃度は腎機能に影響されることなく投与後4時間に得られたが, Ccr20~30ml/minの腎機能障害者では正常者に比べ高値を示す傾向がみられた。血清中濃度半減期 (t<SUB>1/2</SUB>) は腎機能正常者で0.83±0.02時間と計算され, 腎機能の低下に伴い延長した。排泄速度定数KelはCcrと良く相関し (r=0.739, p<0.005), 一次回帰式Kel=-0.053+0.0113Cer (Ccr: 20~80) が得られた。<BR>腎機能正常者におけるT-2525の投与後8時間までの尿中回収率は平均22.2±1.9%で, 腎機能の低下に伴い低値を示した。<BR>Ccr40~70ml/minの軽度腎障害者では本剤100mg1日3回の連続投与によってもほとんど体内蓄積の可能性はないが, Ccr20~30ml/minの腎障害者では連続投与によりC<SUB>max∞</SUB>およびC<SUB>min∞</SUB>が上昇することが推定された。
著者
斉川 茂樹 蟹本 雄右 村中 幸二 岡田 鎌一郎
出版者
Japanese Society of Chemotherapy
雑誌
日本化学療法学会雜誌 = Japanese journal of chemotherapy (ISSN:13407007)
巻号頁・発行日
vol.43, pp.250-255, 1995-01-25

新しい経口ペネム剤であるritipenem acoxil (RIPM-AC) について尿路感染症に対する臨床効果の検討, 腎障害例における体内動態の検討を行い以下の結論を得た。<BR>1) 本剤200mg単回投与後の血中, 尿中濃度の推移を評価可能な腎機能低下患者8名 (I群;60ml/min < Ccr≦90ml/min, n=3, II群: 30ml/min < Ccr≦60ml/min, n=2. III群: Ccr≦30ml/min, n=3) を対象に比較検討した。Tmax (1群: 1.58±0.42時間, II群: 3.50時間, III群2.67±0.33時間), Cmax (I群: 2.25±0.90 μg/ml, II群: 1.32 μg/ml, III群3.20±0.72μg/ml), T<SUB>1/2</SUB> (1群: 0.64±0.02時間, II群: 0.91時間, III群 4.26±156時間) であった。また尿中回収率 (0-12時間) は1群で20.5±9.2%, II群で26.0%, III群で11.8±2.2%であった。<BR>2) 慢性複雑性尿路感染症10例に1回200mgを, 1日3回, 5日間から14日間内服投与した。主治医判定で著効4例, 有効2例, やや有効1例, 無効3例で, 無効例は何れも緑膿菌感染であった。UTI薬効評価基準に従って判定可能の8例では, 著効4例, 有効1例で, 緑膿菌感染の3例では無効であった。また, 投与症例すべてについて本剤に起因すると思われる自・他覚的副作用は認められず, 臨床検査値の異常も認められなかった。
著者
山本 康生 玉木 宏幸 池田 政身 広谷 由佳里 荒田 次郎
出版者
Japanese Society of Chemotherapy
雑誌
CHEMOTHERAPY (ISSN:00093165)
巻号頁・発行日
vol.36, no.1, pp.1102-1105, 1988

新しく開発された経口用セファロスポリン剤であるCS-807を皮膚科学的に検討した。<BR>1) 皮膚感染病巣より分離した<I>S. aureus</I> 51株に対するR-3746 (CS-807の活性体R-3763のNa塩), セファレキシン (以下CEX), セファトリジン (以下CFT) のMICを108/ml接種で測定した。R-3746は3.13μg/ml以上に分布し, 100μg/ml以上に26株であった。CEXは1.56μg/ml以上に分布し, 100μg/ml以上に24株であった。CFTは0.78μg/mlから50μg/mlまでに分布していた。<BR>2) ラットにR-374620mg/kgを陰茎背静脈より静注30分後の血清内, 皮膚内濃度は各16.4±0.7μg/ml, 9.0±0.6μg/g (湿重量)(n=5) で, 皮膚移行率 (血清内濃度に対する皮膚内濃度比) は平均0.55であった。<BR>3) 当科を訪れた皮膚感染症21例 (1日200mg17例, 400mg3例, 200mgから400mgに増量1例) にCS-807を使用した。著効5, 有効8, やや有効7, 無効1例で有効以上61.9%であった。1日20mg使用例のみでみると著効5, 有効6, やや有効6例で有効以上64.7%であった。副作用として1例に軟便がみられた。13例で行った使用前後の臨床検査値において, 本剤との関連が疑われた異常変動は, 好酸球数の増加 (2例), S-K, S. GPT, LDHの上昇 (各1例) であった。
著者
吉田 勇 杉森 義一 東山 伊佐夫 木村 美司 山野 佳則
出版者
Japanese Society of Chemotherapy
雑誌
日本化学療法学会雜誌 = Japanese journal of chemotherapy (ISSN:13407007)
巻号頁・発行日
vol.51, no.4, pp.209-232, 2003-04-25
被引用文献数
43

2000年に全国16施設において種々の臨床材料から分離されたグラム陰性菌19菌種属, 1,227株に対する各種抗菌薬のMICを寒天平板希釈法で測定し, 抗菌力の比較検討を行った。腸内細菌科の抗菌薬感受性は, ほとんどのβ-lactam系薬に対して, 過去のデータに比べ耐性化傾向は認めなかったが, ニューキノロン系薬 (NQs) に対する低感性株を含む耐性株の分離頻度は引き続き上昇していた。<I>Escherichia coli, Klebsiella</I> spp., <I>Proteus</I> spp.においては, ceftriaxone, ceftazidime, aztreonamあるいはcefbodoximeに対する非感性菌は, それぞれ9.8%, 4.0%, 8.3%検出された。<I>Neisseria gonorrhoeae, Branhamella catarrhalis</I>に対し, 多くの抗菌薬は良好な抗菌力を有していたが, <I>N.gonorrhoeae</I>ではNQs低感性株を含む耐性株が92%にまで達し, きわめて高い分離頻度であった。<I>Haemophilus influenzae</I>におけるβ-lactamase産生株は7%であり, 1998年より減少したが, β-lactamase-negative ampicillin耐性株 (BLNAR) の分離頻度は1992年3.3%, 1994年3.5%, 1996年15.6%, 1998年24.4%, 2000年37.0%と大きく増加していた。<I>Pseudomonas aeruginosa</I>の各抗菌薬に対する感受性は上昇しており, tobramycin, doripenem, meropenem, arbekacinは, MIC<SUB>90</SUB>で6.25μg/mL以下を示した。抗緑膿菌薬11剤に対する感受性解析の結果, 多剤耐性化は進んでおらず, すべての抗菌薬に感性の株の分離頻度が上昇していた。<I>P. aeruginosa</I>以外のブドウ糖非醗酵グラム陰性菌においても, 測定抗菌薬の抗菌力は若干上昇していた。