著者
柴田 孝弥 三井 敬盛 全並 秀司 柄松 章司 杉浦 博士 西田 勉
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.939-944, 2012-07-20

要旨 患者は83歳,男性.腹痛と嘔吐のため入院した.精査で胃石の嵌頓による小腸イレウスと診断し,コカ・コーラによる溶解療法を試みた.胃石の分解がみられたがイレウスは改善せず,腹膜炎所見が出現したため緊急手術を施行した.落下した胃石が小腸に嵌頓しており,小腸を切除した.切除腸管は潰瘍と虚血性壊死を認めた.コーラによる胃石溶解療法は簡便で有効な治療法であるが,嵌頓胃石によるイレウスでは腸壁の循環障害が生じている可能性があるため,つねに緊急手術の可能性を念頭に置くことと,コーラによる溶解療法の適応は慎重に判断することが重要と考えられた.
著者
佐藤 暢
出版者
医学書院
雑誌
病院 (ISSN:03852377)
巻号頁・発行日
vol.47, no.10, pp.864-868, 1988-10-01

はじめに 昨年12月22日と24日に国立嬉野病院(佐賀県)で起きた医療ガス配管ミスによる死亡事故について,その原因を巡って様々な報道がなされてから既に半年が経過して,警察の調査も終わり厚生省も漸く対応策をまとめたので,この際,問題点を振り返ってみた上で,このような悲惨な事故がなぜ繰り返されるのか,もう二度と起こさないための方策を探りたい. この事故は,手術室の天井裏にある換気用通気管の工事に伴って,邪魔になった医療ガス用の配管を移設した際,酸素と笑気の配管をつなぎ間違えた単純なミスによる(図1).しかし,2本の配管を逆に連結する工事ミスが起きて,しかも3日間も気づかなかったので,2人も患者が死亡した裏には複雑な背景がある.
著者
堀 忠雄
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.1363, 2007-07-10

なぜ夢を見るのかという根本的なことはよくわかっていません.しかし,夢は毎晩誰もが見ており,夢を見ることはごく自然な生理心理現象と考えられています. 夢はノンレム睡眠とレム睡眠のどちらでも見ていますが,記憶に残る夢はレム睡眠中に現れます.鮮明で情動性に富んでおり,印象的です.レム睡眠中に起こして夢を見ていたかを尋ねると,見ていたという報告は80%以上になります.ノンレム睡眠ではこれが30%程度です.夢を「よく見る人」と「見ない人」の違いは,どちらの眠りから目覚めるかによっていると考えられています.目覚める直前の睡眠段階を調べた研究では,若い人(19~28歳)はレム睡眠から目覚める割合が全体の47%であるのに対して,高齢者(60~82歳)では27%でした.「年をとると夢を見なくなる」というのは,このような朝の目覚め方に関係しているのかもしれません.
著者
菊地 克子
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.126-128, 2013-02-15

頭皮の痒みはよく遭遇する症状である.なんら皮膚疾患をもたない健常人でも,シャンプーができないなど,頭皮の清潔を保てない状況になれば,たちまち頭皮の痒みとフケに悩まされる.この場合は脂漏性皮膚炎と考えられる.フケは,頭皮から生じる落屑であり,頭皮に何らかの鱗屑を生じる皮膚症状を呈しているために生じるが(J1),炎症性変化が肉眼的には明らかでないこともある.脂漏性皮膚炎のほか,いわゆるかぶれである接触皮膚炎,頭皮に生じる尋常性乾癬,頭部白癬などでも落屑や痒みを生じる可能性があるため,頭皮に生じている皮膚所見をよく観察する必要がある.
著者
草間 朋子 村嶋 幸代 真田 弘美 深井 照美
出版者
医学書院
雑誌
看護研究 (ISSN:00228370)
巻号頁・発行日
vol.48, no.5, pp.468-477, 2015-08-15

診療看護師としての活動の成果 草間(司会) 2025年に向けて,いま,医療制度が大きく変わりつつあります。その中で,昨年6月に「医療介護総合確保推進法」が通りまして,その一環として保助看法も昭和23年に制定されて以来初めて看護師の業務に踏み込んだ改正が行なわれました。「特定行為に係る看護師の研修制度」として法制化されたことで,診療看護師(NP)に関連するいままでの私たちの取り組みがようやく認められつつあることを実感しています。 診療看護師は,医療界にとって大きな課題である2025年問題の解決に向けての重要なキーパーソンになると考えています。現在,診療看護師を養成する大学院は全国で7校あり,修了生は2015年3月現在で200人を超えており,素晴らしい活躍をされています。制度の施行は本年10月からですが,制度化に至るまでの間,厚生労働省が平成23年に養成試行事業,24年に業務試行事業という2つのモデル事業を立ち上げました。モデル事業を通して,診療看護師の実績が出てきているところかと思います。診療看護師をさらに定着させ進化させていくには,これからしっかりエビデンスを創出し,公表していくことが大変重要だと思います。そのためにも,わかりやすく納得が得られるアウトカムを形で残し,それを基盤に学問として成長させていく必要があります。本日はそのあたりを中心に議論したいと思います。