著者
西田 睦 澤志 泰正 西島 信昇
出版者
日本水産學會
巻号頁・発行日
vol.58, no.2, pp.199-206, 1992 (Released:2011-03-05)
著者
佐野 二郎
出版者
福岡県水産海洋技術センター
巻号頁・発行日
no.19, pp.91-97, 2009 (Released:2011-03-05)

従来、オイカワの資源増殖事業として主に天然採捕の稚魚を用いた種苗放流が行われてきたが、近年では資源状況の悪化等により放流用種苗が入手困難となり放流数が激減し、十分な増殖が図られていない状況である。また、小規模ながら産卵場の造成が行われてきたものの、オイカワの産卵生態、特に産卵場形成要因の知見が乏しくオイカワに適した産卵場造成手法は確立しておらず、ウグイなどの他魚種の事例を参考に実施されているものであるため、効果は思ったほどあがっていなかった。本研究では、前報で報告した産卵場形成条件を元に造成に用いる底質材や造成手法の検討を行った。底質材については砂利の大きさ別にモデル産卵床を造成し、それぞれの産卵床に産み付けられた卵数と産卵床の形状変化から適正材を検討し、¢1〜2cmの砂利が材料として適していることがわかった。造成手法については、河川に直接砂利を撒いて造成を行う客土式産卵床、持ち運び可能な容器に砂利を入れて設置する移動式産卵床の2手法について検討を行った。客土式産卵床はその適正な造成時期は梅雨明け後の7月中旬であり、産卵床の周囲を石でコの字状に取り囲み砂利留めを設けることで効果を維持することできた。移動式産卵床は天然産卵場等に比べ産卵数が多い傾向が確認された。また増水や渇水などに伴う河川水位の変動に合わせて移動させる作業が必要となるものの、その回数は3〜4回と作業負担も十分対応可能な範囲であり、1基あたりの価格は285円と非常に安価であることから産卵場造成手法として有効であると判断された。
著者
高村 健二
出版者
日本陸水學會
巻号頁・発行日
vol.70, no.3, pp.249-253, 2009 (Released:2011-03-28)

固有種に富む琵琶湖の魚類相は、生物学的侵入や生息環境減少などによって脅かされる一方、固有種の他陸水域への放流により、生物学的侵入を生じるという矛盾した状態にある。関東地方河川では、琵琶湖産アユ放流に随伴した侵入により、琵琶湖由来と関東在来の2系統のオイカワが混在していることが、ミトコンドリアcytochrome b遺伝子分析によりわかった。湖産アユ放流は放流河川での翌年のアユ回帰へ貢献しないと報告されているため、放流の停止がアユ資源維持にも生物学的侵入の抑制にも望ましいと考えられた。琵琶湖魚類相を取り巻く矛盾した状態の解消には各々の地域環境に適応した在来生物の保全が鍵となるであろう。