著者
上椙 英之 上椙 真之 多仁 照廣
雑誌
研究報告人文科学とコンピュータ(CH)
巻号頁・発行日
vol.2012, no.6, pp.1-6, 2012-10-05

石造遺物表面の文字情報を取得するため,先ず斜光撮影画像を複数枚用意する.次にその差分を採ることで,色情報を削除し,残った凹凸の陰影を合成することにより通常撮影では判別が困難な文字情報を効率よく取得することが可能となった.In this paper, we propose a new technique for the imaging of the characters on the surface of stone monuments. We acquired images of a stone monument illuminating from different directions, and reconstructed a new image by differentiating and integrating the source images. Using the reconstructed image, we can identify the characters without the stone monuments being damaged.
著者
上椙 真之
出版者
一般社団法人 日本物理学会
雑誌
日本物理学会誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.74, no.11, pp.752-758, 2019-11-05 (Released:2020-05-15)
参考文献数
22

小惑星探査機「はやぶさ」が地球に帰還して,大きな話題になってから,9年がたった.当時は地球に帰還したこと,そしてサンプルカプセルの中に,確かに小惑星イトカワの粒子が入っていたことは非常に大きなニュースとしてクローズアップされた.この時,わずか数10 μmの粒子の分析を通して,小惑星イトカワの母天体の大破壊や,さらにそれ以前の履歴,また,小惑星の進化の果ての未来像までもが,初期分析と呼ばれる試料分析の結果から得られ,帰還からわずか1年以内に報告されている.この迅速な分析・成果公表の影には,人類史上初の小惑星から直接採取されたサンプルをどう扱い,どう分析するか,という問題に対する挑戦が存在した.100 μmに満たない微小な粒子,たった40個を,電子顕微鏡観察に始まり,X線を用いた非破壊分析,試料加工,元素質量分析や透過電子顕微鏡観察など,最先端の分析装置を連続して適用し,最大限の情報を取得する.こういった最先端の技術を使って試料を分析する際に,必ず問題になるのが試料の装置へのマウントである.このマウントの仕方一つで分析の精度が決まるため,試料の前処理は実際の分析装置の操作以上に重要になる.そして複数の装置を一つの試料に対して連続的に適用する場合,試料をそれぞれの装置に適した形にマウントする必要があるため,試料をホルダからホルダに移動する必要がある.この際に,試料が汚染されたり,破壊,あるいは紛失といったトラブルが頻発する.「はやぶさ」帰還試料の分析では,過去の知見を活かし,樹脂を利用した試料ハンドリングを行って,迅速な成果公表に成功した.その一方で,多くの試料に対して,汚染源となる地球大気を遮断した分析ができなかったという,大きな課題を残すことになった.2019年2月に「はやぶさ」の後継機,「はやぶさ2」が小惑星リュウグウへのタッチダウンに成功するという快挙を成し遂げた.小惑星リュウグウは,「はやぶさ」のターゲット天体であった小惑星イトカワと違い,水や有機物を多く含んでいる可能性が高い.このため,生命の起源に関する情報が得られることが期待されている.しかし,このために,地上の汚染の影響を受けやすく,試料を分析する際に大気遮断が必須となり,樹脂を使うこともできない.地上では,「はやぶさ」の経験を受けて,「はやぶさ2」帰還試料分析におけるこれらの課題に対する対応・検討が急ピッチで進められている.科学の世界ではtrial and errorの過程を成果公表でつぶさに語ることは無く,最終結果を成果として発表することが通例である.しかし,「はやぶさ」帰還試料の分析の際の大気遮断の失敗,試料ハンドリング時における事故,トラブルによる試料の破壊や紛失,有機物粒子の分析において分析と並行して技術開発を行ったことによる,成果公表の大幅な遅れなど,失敗談や挫折にこそ,今後の技術発展の基礎となる重要な要素が多く含まれる.これらの経験が今後の科学の発展の一助になれば幸いである.
著者
矢田 達 安部 正真 岡田 達明 中村 智樹 野口 高明 岡崎 隆司 石橋 之宏 白井 慶 上椙 真之 唐牛 譲 八亀 彰吾 上野 宗孝 向井 利典 吉川 真 川口 淳一郎 藤村 彰夫
出版者
日本惑星科学会
雑誌
遊・星・人 : 日本惑星科学会誌 (ISSN:0918273X)
巻号頁・発行日
vol.22, no.2, pp.68-77, 2013-06-25

地球外物質の採取・記載・保管および配布の目的で発足したJAXAキュレーションセンターでは,現在は小惑星イトカワにタッチダウンした探査機「はやぶさ」の試料を取り扱っている.「はやぶさ」から分離して地球帰還した再突入カプセルを受け入れ,その内部の試料コンテナを取り出してクリーンチェンバー内に導入し,開封を行った.試料コンテナ内の残留ガスから地球外起源の希ガスは検出できなかったが,キャッチャー内部からは主にケイ酸塩鉱物から成る微粒子を回収した.初期記載の結果,それらの鉱物比・鉱物組成がLL4-6コンドライト隕石に近いことが分かり,イトカワ試料と確認された.現在までに400個以上の粒子の回収・初期記載を行い,そのうち8割がイトカワ粒子だった.キュレーションセンターではこの試料を初期分析チーム,NASA,国際公募研究に対して配布し,多様な科学成果が挙がっている.
著者
上椙 英之 上椙 真之 多仁 照廣
雑誌
研究報告電子化知的財産・社会基盤(EIP)
巻号頁・発行日
vol.2012-EIP-55, no.11, pp.1-5, 2012-02-03

本論文では,デジタルカメラを使用し,石造遺物の文字情報を取得する撮影手法を提案する.安定した撮影環境が望めない,フィールドワーク中に於いても,光を遮り,フラッシュライトを用いることで,文字の復元も可能な程の陰影のコントラストの取得が可能であることが確認された.
著者
唐牛 譲 石橋 之宏 上椙 真之 矢田 達 中藤 亜衣子 熊谷 和也 岡田 達明 安部 正真
出版者
一般社団法人日本地球化学会
雑誌
地球化学 (ISSN:03864073)
巻号頁・発行日
vol.48, no.4, pp.211-220, 2014-12-25 (Released:2015-01-06)
参考文献数
17
被引用文献数
1

The Extraterrestrial Sample Curation Center of JAXA curates the Hayabusa-returned samples in conditions of minimum terrestrial contaminants, because these samples are very tiny. We evaluated the cleanliness of the handling instruments, the cleanroom environments and the sample storage chamber to improve the cleanliness of particles, organic molecules and metallic elements to a level not to affect the analyses of the Hayabusa-returned samples. In the environment of the clean chamber No. 2 where the samples have been stored, the organic molecule abundance was lower than the detection limit, furthermore, metallic elemental concentrations were the lowest among other evaluated place. A multi-stage ultrasonic cleaning by organic solvents and the ultrapure water have been applied to instruments made of stainless steel and/or aluminum alloy, and additionally, acid-alkali liquids cleaning have been performed for those made of quartz glasses. For the cleanliness of quartz glasses after the cleaning, the organic molecules abundances were blank level, and the metallic element concentrations were 1~100×109atom/cm2/24 h. It was confirmed by optical microscope that no particle of size more than 10 μm was observed on quartz glasses after the cleaning.
著者
上椙 英之 上椙 真之 多仁 照廣
雑誌
じんもんこん2012論文集
巻号頁・発行日
vol.2012, no.7, pp.179-184, 2012-11-10

本論文では,画像を登録すると,過去の解析実績から類似した残存状況の石像遺物に適用された解析手法を検索・適用し,自動解析を行う,解析型のアーカイブシステムの開発を行った.
著者
上椙 真之
出版者
一般社団法人 日本物理学会
雑誌
日本物理学会誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.74, no.11, pp.752-758, 2019

<p>小惑星探査機「はやぶさ」が地球に帰還して,大きな話題になってから,9年がたった.当時は地球に帰還したこと,そしてサンプルカプセルの中に,確かに小惑星イトカワの粒子が入っていたことは非常に大きなニュースとしてクローズアップされた.この時,わずか数10 μmの粒子の分析を通して,小惑星イトカワの母天体の大破壊や,さらにそれ以前の履歴,また,小惑星の進化の果ての未来像までもが,初期分析と呼ばれる試料分析の結果から得られ,帰還からわずか1年以内に報告されている.この迅速な分析・成果公表の影には,人類史上初の小惑星から直接採取されたサンプルをどう扱い,どう分析するか,という問題に対する挑戦が存在した.100 μmに満たない微小な粒子,たった40個を,電子顕微鏡観察に始まり,X線を用いた非破壊分析,試料加工,元素質量分析や透過電子顕微鏡観察など,最先端の分析装置を連続して適用し,最大限の情報を取得する.こういった最先端の技術を使って試料を分析する際に,必ず問題になるのが試料の装置へのマウントである.このマウントの仕方一つで分析の精度が決まるため,試料の前処理は実際の分析装置の操作以上に重要になる.そして複数の装置を一つの試料に対して連続的に適用する場合,試料をそれぞれの装置に適した形にマウントする必要があるため,試料をホルダからホルダに移動する必要がある.この際に,試料が汚染されたり,破壊,あるいは紛失といったトラブルが頻発する.「はやぶさ」帰還試料の分析では,過去の知見を活かし,樹脂を利用した試料ハンドリングを行って,迅速な成果公表に成功した.その一方で,多くの試料に対して,汚染源となる地球大気を遮断した分析ができなかったという,大きな課題を残すことになった.</p><p>2019年2月に「はやぶさ」の後継機,「はやぶさ2」が小惑星リュウグウへのタッチダウンに成功するという快挙を成し遂げた.小惑星リュウグウは,「はやぶさ」のターゲット天体であった小惑星イトカワと違い,水や有機物を多く含んでいる可能性が高い.このため,生命の起源に関する情報が得られることが期待されている.しかし,このために,地上の汚染の影響を受けやすく,試料を分析する際に大気遮断が必須となり,樹脂を使うこともできない.地上では,「はやぶさ」の経験を受けて,「はやぶさ2」帰還試料分析におけるこれらの課題に対する対応・検討が急ピッチで進められている.</p><p>科学の世界ではtrial and errorの過程を成果公表でつぶさに語ることは無く,最終結果を成果として発表することが通例である.しかし,「はやぶさ」帰還試料の分析の際の大気遮断の失敗,試料ハンドリング時における事故,トラブルによる試料の破壊や紛失,有機物粒子の分析において分析と並行して技術開発を行ったことによる,成果公表の大幅な遅れなど,失敗談や挫折にこそ,今後の技術発展の基礎となる重要な要素が多く含まれる.これらの経験が今後の科学の発展の一助になれば幸いである.</p>
著者
上椙 英之 上椙 真之
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告. 人文科学とコンピュータ研究会報告
巻号頁・発行日
vol.2014, no.2, pp.1-2, 2014-07-26

砂岩製の石造遺物は風化が早く,日々剥落・摩耗で文字情報が失われている.本論文では,この砂岩製の石造遺物の風化傾向を踏まえた上で,文字情報の取得のための画像処理方法を検討した.