著者
矢田 達 安部 正真 岡田 達明 中村 智樹 野口 高明 岡崎 隆司 石橋 之宏 白井 慶 上椙 真之 唐牛 譲 八亀 彰吾 上野 宗孝 向井 利典 吉川 真 川口 淳一郎 藤村 彰夫
出版者
日本惑星科学会
雑誌
遊・星・人 : 日本惑星科学会誌 (ISSN:0918273X)
巻号頁・発行日
vol.22, no.2, pp.68-77, 2013-06-25

地球外物質の採取・記載・保管および配布の目的で発足したJAXAキュレーションセンターでは,現在は小惑星イトカワにタッチダウンした探査機「はやぶさ」の試料を取り扱っている.「はやぶさ」から分離して地球帰還した再突入カプセルを受け入れ,その内部の試料コンテナを取り出してクリーンチェンバー内に導入し,開封を行った.試料コンテナ内の残留ガスから地球外起源の希ガスは検出できなかったが,キャッチャー内部からは主にケイ酸塩鉱物から成る微粒子を回収した.初期記載の結果,それらの鉱物比・鉱物組成がLL4-6コンドライト隕石に近いことが分かり,イトカワ試料と確認された.現在までに400個以上の粒子の回収・初期記載を行い,そのうち8割がイトカワ粒子だった.キュレーションセンターではこの試料を初期分析チーム,NASA,国際公募研究に対して配布し,多様な科学成果が挙がっている.
著者
唐牛 譲 石橋 之宏 上椙 真之 矢田 達 中藤 亜衣子 熊谷 和也 岡田 達明 安部 正真
出版者
一般社団法人日本地球化学会
雑誌
地球化学 (ISSN:03864073)
巻号頁・発行日
vol.48, no.4, pp.211-220, 2014-12-25 (Released:2015-01-06)
参考文献数
17
被引用文献数
1

The Extraterrestrial Sample Curation Center of JAXA curates the Hayabusa-returned samples in conditions of minimum terrestrial contaminants, because these samples are very tiny. We evaluated the cleanliness of the handling instruments, the cleanroom environments and the sample storage chamber to improve the cleanliness of particles, organic molecules and metallic elements to a level not to affect the analyses of the Hayabusa-returned samples. In the environment of the clean chamber No. 2 where the samples have been stored, the organic molecule abundance was lower than the detection limit, furthermore, metallic elemental concentrations were the lowest among other evaluated place. A multi-stage ultrasonic cleaning by organic solvents and the ultrapure water have been applied to instruments made of stainless steel and/or aluminum alloy, and additionally, acid-alkali liquids cleaning have been performed for those made of quartz glasses. For the cleanliness of quartz glasses after the cleaning, the organic molecules abundances were blank level, and the metallic element concentrations were 1~100×109atom/cm2/24 h. It was confirmed by optical microscope that no particle of size more than 10 μm was observed on quartz glasses after the cleaning.
著者
遠藤 佑介 山本 尚人 石川 諄武 露木 肇 山中 裕太 嘉山 貴文 矢田 達朗 片橋 一人 佐野 真規 犬塚 和徳 竹内 裕也 海野 直樹
出版者
日本静脈学会
雑誌
静脈学 (ISSN:09157395)
巻号頁・発行日
vol.33, no.1, pp.21-27, 2022-02-17 (Released:2022-02-17)
参考文献数
18

直接作用型経口抗凝固薬(以下DOAC)が広く使用されるようになり,患者の実情に即した適応用量以外の使用も増えている.われわれも一定数で低用量のエドキサバンを選択している.2014年から2019年までに経験した静脈血栓塞栓症は528例であった.経口抗凝固薬の使用なしが105例,DOACの通常用量が249例,エドキサバン低用量が98例,ワルファリンが78例であった.低用量エドキサバン使用例についてその患者背景と出血性・血栓性の有害事象について検討した.低用量エドキサバン96症例では,中枢型40例/末梢型56例,有症状11例/無症状85例で,低用量での使用理由は出血のリスクが48例,血栓伸展予防目的が48例であった.出血リスク症例48例中3例で出血のため抗凝固を中止したが速やかに止血が得られ,再開が可能であった.低用量エドキサバンは抗凝固なし/治療用量の抗凝固療法以外の選択肢として有用であり,出血リスクが高い症例に対しても有効な治療選択肢といえる.
著者
斉藤 貴明 犬塚 和徳 佐野 真規 片橋 一人 矢田 達朗 嘉山 貴文 露木 肇 山中 裕太 山本 尚人 海野 直樹 竹内 裕也
出版者
日本静脈学会
雑誌
静脈学 (ISSN:09157395)
巻号頁・発行日
vol.29, no.3, pp.413-417, 2018-12-21 (Released:2018-12-21)
参考文献数
27

症例は45歳女性.糖尿病性腎症のため左上腕内シャントで透析を行っていた.透析導入から6年後にシャント静脈高血圧による左顔面および左上肢の浮腫が出現し,当科紹介となった.造影CT検査でシャント静脈高血圧の原因となる左腕頭静脈の高度狭窄を認めた.最初に左腕頭静脈の経皮経管的バルーン拡張術を行ったが,3週間後には症状が再燃したため14 mm×40 mmステント(SMART, Cordis, Dublin, Ohio, USA)留置術を施行した.以降,顔面および上肢の浮腫は軽減したが,術後1カ月で左胸水が出現した.超音波検査にてシャント血流量が1537 mL/minと高値であったため,シャント血流過多による心不全の診断で,人工血管PTFEグラフト(PROPATEN, GORE, Newark, USA)を使用しシャント静脈バンディング手術を施行した.術中超音波検査を併用しシャント血流量を491 mL/minに減量させた.術後は心不全の改善を認め,顔面および上肢の浮腫も増悪なく経過している.
著者
藤村 彰夫 安部 正真 矢田 達 田中 智 加藤 學 はやぶさ試料初期 分析チーム
出版者
一般社団法人日本地球化学会
雑誌
日本地球化学会年会要旨集
巻号頁・発行日
vol.56, pp.74, 2009

宇宙航空研究開発機構に設置された惑星物質試料受け入れ設備(キュレーション設備)は今後の種々のサンプルリターンに対応したものであるが、直近の2010年6月の小惑星探査機「はやぶさ」によるサンプルリターンに備え、設備の機能性能を確認する試験運用を実施した。今回の試験運用で、はやぶさ試料の受け入れ、試料カプセルの開封、試料の取り出しと保管、秤量や分配の手順確認ができた。現時点でクリーンチャンバー内では取り扱うことができない微小なサイズの試料についてのハンドリングを可能にする対応についても今後検討すると共に、直近に迫っている「はやぶさ」試料帰還に備えて、リハーサル運用を実施する予定である。
著者
安部 正真 矢田 達
出版者
国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2016-04-01

新規に整備を行ったイオン照射装置を用いて、小惑星模擬表層物質としての含水ケイ酸塩鉱物と無水ケイ酸塩鉱物に対して、太陽風を模擬した水素イオンの照射実験を行った。照射前後の反射スペクトル測定を行ったところ、水素イオンの照射によって、H2OおよびOHに関連する吸収バンドに強度変化が見られた。このことから、水素イオンがケイ酸塩鉱物と反応して水を生成することを示唆する知見が得られた。大気のない小惑星や月表層のケイ酸塩鉱物に水素イオンが貫入し、結晶構造を壊し、活性化した酸素に水素イオンが結合することにより、SiOHやH2Oが形成していると考えられる。今年度は照射する試料を変えて、イオン照射量とスペクトル変化の関係に関する知見を獲得した。微隕石衝突を模擬した宇宙風化実験の結果とも整合する結果が得られている。また、ケイ酸塩鉱物への水素イオンの貫入で形成されるOHやH2Oの温度安定性についての知見を得るために、照射装置のサンプルホルダーに加熱機構を付加する改修を行った。この結果は実際に月表面で観察された水に関する吸収バンドの生成メカニズムを考察するのに役立つと考えられる。また、微隕石衝突を模擬した実験による反射スペクトル変化の測定は主に、可視波長域で行われているため、その結果と比較できるように、本研究で用いているFTIRの観測波長域を可視域まで拡張した。可視域には0.7ミクロンの水質変成に関係する吸収バンドがあり、宇宙風化がこの吸収バンドにどのような変化を及ぼすかについての考察にも役立つと考えられる。これらの改修後の照射・加熱実験および反射スペクトル測定の実施と結果の考察については、来年度も引き続き行う予定である。
著者
藤村 彰夫 安部 正真 中村 智樹 野口 高明 岡崎 隆司 矢田 達 石橋 之宏 白井 慶
出版者
一般社団法人日本鉱物科学会
雑誌
日本鉱物科学会年会講演要旨集
巻号頁・発行日
vol.2010, pp.63, 2010

小惑星イトカワを探査した「はやぶさ」の回収カプセルが無事相模原のキュレーション設備のクリールームに搬入された。回収カプセルは、開梱、外観チェック、内部のCT撮像、アブレータ取外し、サンプラコンテナ清掃、チャンバー搬入準備が行われ、クリーンチャンバーに搬入された。サンプラコンテナの開封、コンテナ内部の光学観察の後に、サンプルの取出し、分配、保管作業を順次実施する。これらのキュレーション作業は、サンプル1次分析チームから選抜された研究者とともに数か月程度実施され、その後、米豪の研究者も迎え、日本国内で1次分析が行われる予定である。本講演では、カプセル回収から、キュレーション設備搬入後のキュレーション作業についての現状を報告する。
著者
藤村 彰夫 矢田 達 加藤 学
出版者
日本惑星科学会
雑誌
日本惑星科学会秋季講演会予稿集 日本惑星科学会2007年秋季講演会予稿集
巻号頁・発行日
pp.15, 2007 (Released:2008-04-28)

2007年度末に竣工する我が国の惑星物質試料受け入れ設備は、地球環境による汚染を極力防止して、はやぶさ試料を受け入れ、国内の大学、研究機関と協力して一次記載を行い、保管・管理を行うと共に国内外の大学や研究機関に分配を行う使命を持つ。他に将来のサンプルリターン計画で汚染の無いサンプルを取得するために探査機搭載サンプラの汚染管理についてもその材料を含めた基礎研究を実施する。さらに帰還サンプルによる地球環境への影響についての基礎的研究も行う。この目的を達成するために該当設備の仕様は広範な分野の研究者により決められた。この仕様と現状について報告する。