- 著者
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野田 岳人
- 出版者
- 群馬大学
- 雑誌
- 基盤研究(C)
- 巻号頁・発行日
- 2017-04-01
本研究はチェチェン紛争における人権侵害を事例として、冷戦後のロシアをめぐるヨーロッパの国際人権レジームの変化を考察するものである。人権分野では、冷戦時代にソ連に影響を与えた欧州安保協力機構から冷戦後には欧州評議会と欧州人権裁判所へと担い手が交替した。それに伴い、人権保護の射程はより個人的なもの、より人道的なものへと移りつつある。これは国際政治の司法化(judicialization)の現象の一つである。本研究では、第一にヨーロッパ人権レジームの変化と国際政治の司法化の現象を検討する。第二にチェチェン紛争における人権侵害の実態を把握し、その人権侵害の事例が国際政治化する過程を考察する。第三に他の地域紛争における人権侵害の事例と国際人権レジームの関わり方について整理する。初年度の目標は、本研究のアウトラインを可能な限り正確にスケッチすることであった。まず、国際人権レジームの変化については、アクターを欧州評議会・欧州人権裁判所とロシア政府に限定し、学術的動向を把握した。チェチェン紛争の被害者に関し、欧州人権裁判所の裁判記録やNGO団体による人権侵害の資料などをもとに事実関係をまとめた。また、国連や欧米各国が関与して設置された旧ユーゴスラヴィア国際刑事裁判所(ICTY)の成果などについても整理した。しかしながら、第二の点と第三の点は予定通り進んでいない。第二のロシアにおけるチェチェン紛争の動向調査は受入先との関係で、来年度以降に実施することになった。第三の他地域における人権侵害状況を理解し、冷戦後の地域紛争における人権侵害に関する共通点を探るための地域研究者との意見交換も来年度に予定を変更した。