著者
宮脇 昇
出版者
日本公共政策学会
雑誌
公共政策研究 (ISSN:21865868)
巻号頁・発行日
vol.19, pp.14-21, 2019-12-10 (Released:2021-10-02)
参考文献数
22
被引用文献数
1

公共政策過程の実施主体は,実施対象からの信頼を獲得することが望ましい。しかし,主体に対する,あるいは主体間の信頼は,アプリオリに存在するわけではない。なぜなら立案主体,決定過程の参加主体と決定主体,実施主体それぞれの意思や調整をめぐる情報は,明示的なものであれ,黙示的なものであれ,完備情報化・完全情報化されないためである。さらに国際公共政策は,主権国家による外交政策決定過程を交えるため,一層のこと不完備・不完全情報の社会を対象にする。本稿ではトラスト(信頼)の先行研究を瞥見し,決定過程の完備情報・完全情報化を1つの理念型として想定する。その後,主体別(国内・国際)にトラストの構図を整理したうえで,完備情報社会に抗う複雑性・専門性と完全情報社会を浸食する時限性の要素を抽出し,国際・国内公共政策の決定過程におけるトラストのあり方について最後に提示する。
著者
宮脇 昇 山本 隆司 横田 匡紀 清水 直樹 西出 崇 後藤 玲子 藤井 禎介 玉井 雅隆 山本 武彦
出版者
立命館大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

「やらせ」の政治的演出は情報の不完備性に依拠している。「やらせ」を命じる政治的演出者と「やらせ」を見る観客の双方に共通知識があたかも(as if)存在するかのごとく演出されるが、現実には観客の有する情報は限定的・選択的でしかない。被操作者は必ずしも完全な知識を有さない。情報の不完備性・非対称性が政治的演出としての「やらせ」を可能にし、公共政策の政策過程の循環を演出者の意図にそって進行させる。また非民主主義国では「やらせ」を内在化した情報操作が権力維持のために恒常化している。しかし世界的な民主化の波、インターネットの普及、情報公開制度の拡大により、成功的演出の条件が困難になった。
著者
宮脇 昇
出版者
ロシア・東欧学会
雑誌
ロシア・東欧研究 (ISSN:13486497)
巻号頁・発行日
vol.2002, no.31, pp.199-218, 2002 (Released:2010-05-31)
参考文献数
53

This article reviews the relations between the OSCE (Organization for Security and Co-operation in Europe) and Belarus, which has become very tense in recent years. Since joining the OSCE in 1992 as a newly independent state, Belarus soon began showing signs of authoritarianism. In November 1996, President Alexander Lukashenko took steps to strengthen his control over the country by proposing a new constitution that would broaden his authority, extend his term in office from five years to seven years, and create a bicameral National Assembly in the place of the Chamber of Representatives (Supreme Soviet) -- a reversion, as the opposition would call it, to the Soviet era. The OSCE, which had been closely involved with democratization process in Europe, responded in 1998 by sending a mission, the AMG (Advisory and Monitoring Group in Belarus) . After making little progress, it was replaced by the even more powerless OOM (OSCE Office in Minsk) in 2003, as a result of the Belarus government's resistance. This setback by the OSCE coincided with the growing presence in Belarus of the ACEEEO (Association of Central and Eastern European Election Officials), an election-monitoring body which has disagreed with the OSCE on quite a few issues. Meanwhile, it should be noted that Belarus, despite its high degree of political stability and low security risk, still displays significant repression of human rights: The correlation between traditional diplomatic relations and human rights (or democratization) does not appear to hold true in Belarus. In light of this peculiarity, and given the recent weakening of its mission, the OSCE democratization regime in Belarus will continue to suffer in the foreseeable future.
著者
大矢根 聡 山田 高敬 石田 淳 宮脇 昇 多湖 淳 森 靖夫 西村 邦行
出版者
同志社大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

日本の国際関係理論は海外の諸理論の輸入に依存し、独自性に乏しいとされる。本研究は、過去の主要な理論に関して、その輸入の態様を洗い直し、そこに「執拗低音」(丸山真男)のようにみられる独自の問題関心や分析上の傾向を検出した。日本では、先行する歴史・地域研究を背景に、理論研究に必然的に伴う単純化や体系化よりも、現象の両義性・複合性を捉えようとする傾向が強く、また新たな現象と分析方法の中に、平和的変更の手がかりを摸索する場合が顕著にみられた。海外の理論を刺激として、従来からの理念や運動、政策決定に関する関心が、新たな次元と方法を備えたケースも多い。
著者
初瀬 龍平 野田 岳人 池尾 靖志 堀 芳枝 戸田 真紀子 市川 ひろみ 宮脇 昇 妹尾 哲志 清水 耕介 柄谷 利恵子 杉浦 功一 松田 哲 豊下 楢彦 杉木 明子 菅 英輝 和田 賢治 森田 豊子 中村 友一 山口 治男 土佐 弘之 佐藤 史郎 上野 友也 岸野 浩一 宮下 豊
出版者
京都女子大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究の目的は、戦後日本における国際関係論の誕生と発展を、内発性・土着性・自立性の視点から、先達の業績の精査を通じて、検証することにあった。研究成果の一部は、すでに内外の学会や公開講座などで報告しているが、その全体は、『日本における国際関係論の先達 -現代へのメッセージ-(仮)』(ナカニシヤ出版、2016年)として集大成、公開する準備を進めている。本書は、国際政治学(国際政治学、政治外交史)、国際関係論(権力政治を超える志向、平和研究、内発的発展論、地域研究)、新しい挑戦(地域研究の萌芽、新たな課題)に分けた先達の業績の個別検証と、全体を見通す座談会とで構成されている。
著者
西谷 真規子 庄司 真理子 杉田 米行 宮脇 昇 高橋 良輔 足立 研幾 大賀 哲
出版者
神戸大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008-04-08

本研究では、国際規範の発展における規範間の競合または複合のプロセスを明らかにすることを目的とした。グローバル、リージョナル、ナショナルの各レベルにおいて、①規範的アイディアの競合や複合が、どのような制度変化をもたらすか、②多様な行為主体(国家、国際機構、市民社会、企業等)が競合または複合の過程にどのように関っているか、または、競合や複合から生じる問題をどのように調整しているか、の二点を中心的な問いとして、事例分析を行った。成果は、国際・国内学会発表や論文発表を通じて逐次公開した。最終的には、編著『国際規範の複合的発展ダイナミクス(仮題)』(ミネルヴァ書房)として近刊予定である。