- 著者
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深貝 保則
栗田 啓子
高 哲男
中山 智香子
西沢 保
姫野 順一
矢後 和彦
- 出版者
- 横浜国立大学
- 雑誌
- 基盤研究(B)
- 巻号頁・発行日
- 2004
4年間の研究期間中に随時、Professor Micheal Freeden(オックスフォード大学マンスフィールド・コレッジ)およびProfessor Hansjorg Klausinger(ウィーン経済経営大学)の2名の海外共同研究者をはじめ、7ケ国15名の海外研究者の参加を得て、研究集会やセミナーなどを開催した。研究集会にあたっては当該の科学研究費補助金の研究組織メンバーをはじめ、国内の近接領域の研究者若干名も加わって、英文のペーパーによって討論をおこなった。19世紀の先進国のあいだでは「進歩」と「自由」を軸にした経済統治(経済についてのガヴァナンス)が比較的順調に進んだ。統一国家の形成それ自体が課題であったドイツやイタリア(および日本)は別格としても、原子論的・個人主義的社会像をベースにおいたブリテンや、実証主義を軸にエンジニア・エコノミストによる経済のアレンジを進めたフランスでは典型的に、進歩に信頼を寄せる方向にあった。しかし19世紀終盤になると、この枠組は大幅に修正を迫られた。現実的な歴史基盤の面でいえば、外交および経済を外延的に拡張させるストラテジーが相互に衝突を起こす可能性に直面しただけではない。各国の内包的な利害の面でも、産業化と都市化のうねりの帰結をめぐって社会階層間で、また一国経済の方向づけとその国際的連関のあり方をめぐって産業利害と金融利害との間で新たな調整を必要とする局面に差し掛かったからである。この研究課題の遂行を通じて、19世紀末からの局面転換を思想史的な観点から捉えた場合に、有機的なヴィジョンが持った構想力の重要性が確認された。T. H.グリーンやデュルケムに担われた有機体説的な社会観と、ダーウィンやスペンサーによって典型的に展開された進化論はともに、世紀転換期以降の社会のあり方や経済的な統治を構想する上で重要な役割を果たしたのである。