著者
西谷 修 中山 智香子 大川 正彦 林 みどり 安村 直己 阿部 賢一 米谷 匡史 蕭 幸君 上村 忠男
出版者
東京外国語大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2003

本研究の課題は、グローバル化として語られる世界変容を、ネオ・リベラリズムと戦争の変容という二つの軸を立てて解明することだったが、この3年間で、西洋の世界化という歴史的パースペクティヴを背景に、一方で「帝国」概念をニューディールとの隠れた関係から見直して現代の世界秩序の再解釈を図るとともに、9・11以後の「テロとの戦争」の分析から、現代世界における国家・権力・法秩序・暴力等の再編成のありようを追究し、現代の政治思想の諸課題を解明するなどの作業を行った。また、これらを原理的考察として、国家間システムからグローバル秩序への移行にともなう特徴的諸問題が端的に表れる諸地域(ラテン・アメリカ、東欧、東アジア等)に焦点をあて、それらの地域研究をもとにしてテーマを具体化し、ナショナルな歴史の語り、内戦と人間(個の枠の崩壊)、亡命から難民へ(民のステイタスの崩壊)などの問題を掘り下げて、国家秩序の形成と崩壊が社会形成や個人の存立に触れる地点を描き出した。これらの研究成果は本研究課題を標題とする論集として近々出版する予定である。また当初予定した映像資料等の収集は、研究遂行の過程でグローバル世界のメディアの問題と結びつき、資料を公共化すると同時にそれを軸にした討論をシンポジウムで行うという企画に発展し、H16年度に1度、H17年度に2度の国際シンポジウム(視角の地政学、<人間>の戦場から、グローバル化と奈落の夢)を実施した。その記録の一部は企画を共催した別途資金ですでに刊行され、残りの編集準備も進んでいる。共同研究の内実と、実施による新たな研究への発展、実践と成果のアクチュアルな公共化(社会還元)等、多くの面で実のある研究が遂行できたと自負している。
著者
西谷 修 中山 智香子 真島 一郎 土佐 弘之 崎山 政毅 森元 庸介
出版者
東京外国語大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010-04-01

折からの東日本大震災と福島第一原発事故は研究課題を先鋭化するかたちで起こり、これを受けて、グローバル化した世界における〈オイコス〉再検討という課題を、 現代の文明的ともいうべき災害や核技術の諸問題、さらに近年注目されている「脱成長」のヴィジョンに結び付け、主としてフランスの論者たちとの交流を通じて〈技術・産業・経済〉システムの飽和の問題として明らかにした。その内容や、そこから引き出される展望については、下に列記した雑誌諸論文や以下の刊行物に示した。『〈経済〉を審問する』(せりか書房)、報告書『核のある世界』(A5、100p.)『自発的隷従を撃つ』(A5、121p.)
著者
西谷 修 中山 智香子 米谷 匡史 真島 一郎 酒井 啓子 石田 英敬 土佐 弘之 石田 英敬 土佐 弘之
出版者
東京外国語大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

21世紀グローバル世界秩序の構造的要素である戦争・経済・メディアの不可分の様相を歴史的・思想的に解明し、前半部を「ドキュメント沖縄暴力論」(B5、171ページ)として、また後半部を「グローバル・クライシスと"経済"の再審」(B5、226ページ)としてまとめた。
著者
深貝 保則 栗田 啓子 高 哲男 中山 智香子 西沢 保 姫野 順一 矢後 和彦
出版者
横浜国立大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2004

4年間の研究期間中に随時、Professor Micheal Freeden(オックスフォード大学マンスフィールド・コレッジ)およびProfessor Hansjorg Klausinger(ウィーン経済経営大学)の2名の海外共同研究者をはじめ、7ケ国15名の海外研究者の参加を得て、研究集会やセミナーなどを開催した。研究集会にあたっては当該の科学研究費補助金の研究組織メンバーをはじめ、国内の近接領域の研究者若干名も加わって、英文のペーパーによって討論をおこなった。19世紀の先進国のあいだでは「進歩」と「自由」を軸にした経済統治(経済についてのガヴァナンス)が比較的順調に進んだ。統一国家の形成それ自体が課題であったドイツやイタリア(および日本)は別格としても、原子論的・個人主義的社会像をベースにおいたブリテンや、実証主義を軸にエンジニア・エコノミストによる経済のアレンジを進めたフランスでは典型的に、進歩に信頼を寄せる方向にあった。しかし19世紀終盤になると、この枠組は大幅に修正を迫られた。現実的な歴史基盤の面でいえば、外交および経済を外延的に拡張させるストラテジーが相互に衝突を起こす可能性に直面しただけではない。各国の内包的な利害の面でも、産業化と都市化のうねりの帰結をめぐって社会階層間で、また一国経済の方向づけとその国際的連関のあり方をめぐって産業利害と金融利害との間で新たな調整を必要とする局面に差し掛かったからである。この研究課題の遂行を通じて、19世紀末からの局面転換を思想史的な観点から捉えた場合に、有機的なヴィジョンが持った構想力の重要性が確認された。T. H.グリーンやデュルケムに担われた有機体説的な社会観と、ダーウィンやスペンサーによって典型的に展開された進化論はともに、世紀転換期以降の社会のあり方や経済的な統治を構想する上で重要な役割を果たしたのである。