著者
西谷 修 中山 智香子 真島 一郎 土佐 弘之 崎山 政毅 森元 庸介
出版者
東京外国語大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010-04-01

折からの東日本大震災と福島第一原発事故は研究課題を先鋭化するかたちで起こり、これを受けて、グローバル化した世界における〈オイコス〉再検討という課題を、 現代の文明的ともいうべき災害や核技術の諸問題、さらに近年注目されている「脱成長」のヴィジョンに結び付け、主としてフランスの論者たちとの交流を通じて〈技術・産業・経済〉システムの飽和の問題として明らかにした。その内容や、そこから引き出される展望については、下に列記した雑誌諸論文や以下の刊行物に示した。『〈経済〉を審問する』(せりか書房)、報告書『核のある世界』(A5、100p.)『自発的隷従を撃つ』(A5、121p.)
著者
真島 一郎
出版者
日本文化人類学会
雑誌
民族學研究 (ISSN:00215023)
巻号頁・発行日
vol.55, no.4, pp.406-432, 1991

本稿の目的は,西アフリカ,象牙海岸共和国のダン族に於ける仮面表象を通して,秘密結社の政治体制を支えるその「力」観念の特質を探っていくことにある。ギニア湾西部のいわゆる《ポロ結社文化》の諸社会に比べ,ダンの社会では,権力の行使が秘密結社に集中している。ただ,結社権威の観念的な拠り所となる「力」は,実は妖術と同一の概念あり,重大な規範侵犯への制裁も妖術制裁の形をとっている。とりわけ,森由来の精霊である仮面は秘密結社と密接に連係し,結社と同じ「力」に訴えることで,制裁への恐怖に裏付けられた規範維持に寄与している。だが結社のイデオロギーは,邪悪な妖術と同じ本質を持つ「力」を自らの手で完全に正当化することができない。そこに,ダンの仮面表象に於いては例外的な,「面なき仮面」の生きる余地が生じてくる。秘密結社という支配集団は,「誰でもない」その声に託して,権力への自己言及の道を開こうとするのである。
著者
真島 一郎
出版者
日本文化人類学会
雑誌
文化人類学 (ISSN:13490648)
巻号頁・発行日
vol.71, no.1, pp.24-49, 2006

本稿では、デュルケムの中間集団論およびその受容をめぐる人類学史を概観したうえで、今日の人類学が「社会的なるもの」を再考するうえでの発見学的モデルとして、一世紀の時を経た「中間集団」概念の理論的な加工作業が試みられる。デュルケム社会学の底流には、産業資本と福祉国家生誕の時をむかえた20世紀転換期フランスの「社会」危機に対し、彼のいう二次的集団、とりわけ職業集団の再編成を軸に道徳的個入主義と有機的連帯の育成を促そうとする社会工学の意図があった。だが、その後デュルケム理論の継承を図ったイギリス社会人類学は、自社会の変革をめぐる彼の政治規範を理論から漂白する過程で、市場の対概念であるモラルの思想史的含意、ならびに「未開社会」が植民地帝国下の入工的な中間集団たる現実を忘却していった。起点からの分岐と忘却を経た入類学に社会への視線が回帰する時期とは、脱スターリン化から「1968年革命」、福祉国家危機論の台頭へと到る、社会科学全般のパラダイム転換期でもあった。社会的なるものを主題とした人類学的考察の今日における顕著な増加を、パラダイム転換第二波の徴候とみるにせよ、モラル・エコノミー論争の70年代から地続きの現象とみるにせよ、社会介入型国民国家の生誕から問い直しへと到る歴史の一サイクルが閉じつつある今、19世紀末の社会工学を参照点とする「社会」再考の試みには、相応の意義が見出せよう。
著者
渡辺 公三 高村 学人 真島 一郎 高島 淳 関 一敏 昼間 賢 溝口 大助 佐久間 寛
出版者
立命館大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

フランス人類学の定礎者マルセル・モース(1872-1950)はデュルケームの甥であり、フランス穏健社会主義の指導者ジョレスの盟友であり、ロシア共産主義の厳しい批判者であった。その人類学分野以外での活動もふくめて思考の変遷を、同時代の動向、学問の動向、学派(デュルケム学派社会学)の進展との関係を視野に入れて明らかにし、現代思想としての人類学の可能性を検討する。そのうえでモースの主要業績を明晰判明な日本語に翻訳する。
著者
西谷 修 中山 智香子 米谷 匡史 真島 一郎 酒井 啓子 石田 英敬 土佐 弘之 石田 英敬 土佐 弘之
出版者
東京外国語大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

21世紀グローバル世界秩序の構造的要素である戦争・経済・メディアの不可分の様相を歴史的・思想的に解明し、前半部を「ドキュメント沖縄暴力論」(B5、171ページ)として、また後半部を「グローバル・クライシスと"経済"の再審」(B5、226ページ)としてまとめた。