著者
中川 成美
出版者
日本文学協会
雑誌
日本文学 (ISSN:03869903)
巻号頁・発行日
vol.60, no.4, pp.2-15, 2011 (Released:2016-12-09)

真に文学的な想像力とはどのようなものなのだろうか。文学は言語を媒介とする表現様式と認知されているが、読書行為の推移のなかで見出される非言語的なイマージュの躍動に対して、文学研究においてはこれまで「表象」化という概念に貼りつかせて、言語的行為と捉えてきた。しかし、G・ドゥルーズが指摘するように、言語を超えてイマージュそのものを身体的に感知する「精神的自動機械(automate spirituel)によって見出す「外の思考」をここで考えていくならば、非言語としての図象的想像力とは、あらゆる思考の生産のなかに発動の契機を持つであろう。そしてその中で文学によってしか存立しない想像力、「文学的想像力」としか名付け得ない領域が開かれているのではないかと考えている。本発表ではその立場から、想像力が言語、非言語に関わらず喚起されていく経緯を現代文学作品から考察し、特に視覚性(Visuality)という身体の経験との往還によって見出される想像力が、文学のなかに基層的に封じ込められていることに言及したい。
著者
中川 成美
出版者
日本文学協会
雑誌
日本文学
巻号頁・発行日
vol.50, no.11, pp.52-63, 2001

カルチュラル・スタディーズが真に衝撃的だったのは、既存の学問的な思考分類がそれ自身のためにあったのだということに気付かせた点にあるだろう。ハイ・カルチュアーを構成してきた知識人や大学人によって排除・疎外されてきた大衆文化の見直し作業は、<制度>として機能してきたアカデミックな領域そのものへの痛烈な自己批判として出発した。それは「方法」ではなく、思考の転回を期するものであったはずだ。しかし、文学研究の領域で「推進」されようとしている<文化研究>と呼称されるものは、果たしてそうした起点を持ちえていたであろうか。文学におけるカルチュラル・スタディーズとは何を目的とするものなのか、また文学とカルチュラル・スタディーズを繋ぐものは何なのか、本稿で考えたい。
著者
鷲巣 力 加國 尚志 小関 素明 中川 成美 樋口 陽一 三浦 信孝 桜井 均 湯浅 俊彦 渡辺 公三
出版者
立命館大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2017-04-01

本研究の課題は戦後日本を代表する国際的知識人加藤周一の思想を戦後思想史のなかに位置づけることである。本研究の基礎作業が加藤の「手稿ノート」の研究とその成果としてデジタルアーカイブ化して公表することである。本年度は《Journal Intime 1948-1949》《Journal Intime 1950-1951》の二冊について、デジタルアーカイブ化して公開した。昨年公開した8冊の「青春ノート」の抄録を刊行するべく、編集校閲作業を進めた。さらに『加藤周一 その青春と戦争』(共著)の編集執筆も進めた。加藤と丸山眞男との比較研究は、東京女子大学の丸山眞男記念比較思想研究センターと本研究を支える加藤周一現代思想研究センターとの間で研究提携の協定書を締結した。丸山研究センターの川口雄一氏は加藤研究センターの客員協力研究員についてもらい、研究会にて丸山眞男研究の推移について報告した。また『丸山記念研究センター報告』(第13号)に「加藤周一文庫と加藤周一の方法」を寄稿した。さらに山口昌男文庫をもつ札幌大学の公開講座に、本研究の研究者代表である鷲巣と川口雄一氏が参加して、研究報告を行なった。加藤と林達夫との比較研究では、鷲巣が中心となり林達夫研究を進め、成果として『イタリア図書』に「林達夫への精神史的逍遥」の連載を続けた。加藤は生涯を通して反戦を貫き、反戦小説も著わしたが、研究分担者の中川成美は他の戦争文学との比較のために『戦争を読む』(岩波新書)を刊行した。加藤周一記念講演会には、フランス哲学の浅田彰氏を招聘して「普遍的知識人の時代は終わったのか」と題した講演を行なって、加藤がもつ現代的意義について論じてもらった。研究会では、上記の川口氏の報告のほか、猪原透協力研究員の「科学し研究と加藤周一」と題した報告、石塚純一協力研究員の「網野善彦、山口昌男、加藤周一」と題した報告を受けた。
著者
林 淑美 大塚 博 内藤 由直 中川 成美 兵頭 かおり
出版者
立教大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2015-04-01

本研究は、中野重治の肉筆原稿、書簡、日記などの調査と研究である。加えて、最近困難な状況にある文学館との協力の社会的意義の追求も目的である。近代文学研究において肉筆原稿等第一次資料の調査はきわめて大切であるが、調査の対象となる原物は適切に整理・保存・収集されねばならず、そのための作業は研究者の重要な任務である。中野重治の第一次資料を所蔵しているのは石川近代文学館、神奈川近代文学館、中野重治文庫記念坂井市丸岡図書館、日本近代文学館である。これら文学館との協力によって、本研究の肉筆原稿・書簡の整理と調査、戦後日記の翻字とデータ化等が実現した。
著者
中川 成美
出版者
日本文学協会
雑誌
日本文学 (ISSN:03869903)
巻号頁・発行日
vol.50, no.11, pp.52-63, 2001-11-10 (Released:2017-08-01)

カルチュラル・スタディーズが真に衝撃的だったのは、既存の学問的な思考分類がそれ自身のためにあったのだということに気付かせた点にあるだろう。ハイ・カルチュアーを構成してきた知識人や大学人によって排除・疎外されてきた大衆文化の見直し作業は、<制度>として機能してきたアカデミックな領域そのものへの痛烈な自己批判として出発した。それは「方法」ではなく、思考の転回を期するものであったはずだ。しかし、文学研究の領域で「推進」されようとしている<文化研究>と呼称されるものは、果たしてそうした起点を持ちえていたであろうか。文学におけるカルチュラル・スタディーズとは何を目的とするものなのか、また文学とカルチュラル・スタディーズを繋ぐものは何なのか、本稿で考えたい。
著者
中川 成美
出版者
立命館大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

近代以降、日本人の海外渡航に伴う紀行文、旅行記、旅行日記などは膨大な量に及ぶ。本研究ではその堆積を基礎に、日本人が残した海外体験の実相を追及するとともに、そこには異文化への興味を媒介とする自己の相対化が断行されていたことが了解される。それはまた歴史的な事象によって変転する自身の運命との対峙ともなっている。移民や戦争によって戦地に連れ去られる兵士など、日本人が経験した多様な海外体験は膨大な記録となって積み重ねられているが、その殆どが忘れられている現状を鑑み、それらの資料の発掘と、別の視点からの照射は、あらたな文化研究を拓いていくものと考えている。
著者
中川 成美
出版者
立命館大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2016-04-01

本研究は1990年代に新たな分析理論として出発したクィア理論を、日本文学研究の上に照らしだし、新たな批評理論の可能性と実践を、国際的な共同研究のもとに実施したものである。クィアネス(クィア性)を作品批評の一つの軸と設定することによって、文学批評の地平は大きく変化していく。本研究で開催したワークショップや講演会、シンポジウムはその一面を拓いていったものと考える。特に1)ジェンダー配置の不等性2)災禍と女性配置3)クィア理論と情動理論の融合、についての、新しい知見を得たことが主たる成果である。
著者
中川 成美
出版者
日本文学協会
雑誌
日本文学 (ISSN:03869903)
巻号頁・発行日
vol.60, no.4, pp.2-15, 2011

<p>真に文学的な想像力とはどのようなものなのだろうか。文学は言語を媒介とする表現様式と認知されているが、読書行為の推移のなかで見出される非言語的なイマージュの躍動に対して、文学研究においてはこれまで「表象」化という概念に貼りつかせて、言語的行為と捉えてきた。しかし、G・ドゥルーズが指摘するように、言語を超えてイマージュそのものを身体的に感知する「精神的自動機械(automate spirituel)によって見出す「外の思考」をここで考えていくならば、非言語としての図象的想像力とは、あらゆる思考の生産のなかに発動の契機を持つであろう。そしてその中で文学によってしか存立しない想像力、「文学的想像力」としか名付け得ない領域が開かれているのではないかと考えている。</p><p>本発表ではその立場から、想像力が言語、非言語に関わらず喚起されていく経緯を現代文学作品から考察し、特に視覚性(Visuality)という身体の経験との往還によって見出される想像力が、文学のなかに基層的に封じ込められていることに言及したい。</p>
著者
中川 成美 西 成彦 木村 一信 フォックス チャールズ 富田 美香 ベルント ジャクリーヌ
出版者
立命館大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2004

<平成16年度研究概要>日本文学・文化研究の国際的ネットワーク・データ・ベースの基礎構築として平成16年度には以下の研究を促進した。1 基礎データベースの作成に関する打ち合わせ(平成16年7月)2 欧米・アジア・オセアニア圏において日本文学・文化に関する講座を設置する大学、研究機関の調査3 欧米・アジア・オセアニア圏において日本文学・文化を研究する研究者の調査4 欧米・アジア・オセアニア圏において日本文学・文化に関する講座・講義・シンポジウム・学会などの調査(2から4までを夏休み休暇中に調査終了)5 調査で得た情報をもとにデータベースを入力(平成16年9月から平成16年12月)6 5の基礎データをもとにより精査して、ファイリング・テクストに変換して参照・使用に供するようなデータベースの作成(平成17年1月から3月)7 日本文学・文化研究国際ネットワークの仮称のもとにデータ交換を主要拠点大学を中心に広報した。(平成17年3月)<平成17年度研究概要>日本文学・文化に関する研究者、研究機関、大学等における講座、研究機関の国際的なデータベースの第一次基礎データベースを作成した。ここでは文学・文化と視覚性の問題に関与すると思われる要項を抽出しておこなった。包括するのは北米、ヨーロッパ、アジア、オーストラリアであり、主にアメリカ合衆国、オーストラリア、韓国、中国、イギリス、フランス、ドイツに関しての約1000件のデータが収集された。これを検索サーチ用にファイル化したが、今後はこの基礎データをもとにより詳しいデータを加えていけるための形式を完成した。今回の科研にて焦点化した文学・文化と視覚性の基礎理論構築に関しては、2006年2月に視覚理論に関するシンポジウム「映画・女性・権力-ジェンダーと視覚性-」をおこなった。
著者
姫岡 とし子 中川 成美 池内 靖子 松本 克美 立岩 真也 二宮 周平 松井 暁
出版者
立命館大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2003

本研究は、1、労働概念が男性の多い有償の経済労働を中心に組み立てられ、2、職業/家事、正規社員/パートなどジェンダー問でさまざまな境界線が引かれ、3、労働法も中立ではなく、4、労働研究がジェンダーの構築に関与している、という多様な意味合いで、労働がジェンダー化されていることを出発点とした。そして概念、制度、労働分担、働き方、セクシュアリティなどにいかにジェンダーが組み込まれているのかを、その変容過程も含めて考察し、また分析するために、歴史、社会学、法学、政治学、経済学、表象の分野で学際的な研究を行った。本研究では、労働の脱ジェンダー化に向けての提案も行った。本研究の過程で、「労働のジェンダー化」シンポジウムを開催し、制度面と表象面の2つの側面から、買売春やアンペイドワークなど、従来の労働概念に含まれていない労働も含めて考察した。その成果は、『労働のジェンダー化-揺らぐ労働とアイデンティティ』として平凡社から2005年に公刊されている。労働のジェンダー化は、家族と密接に関連している。家族については、歴史的観点から、日独の近代家族の形成と現在における家族の個人化について考察し、未完に終わったととらえた資本制と家父長制をめぐる論争に関して、性別分業がなお存在しつづけている理由とそこから誰が利益を得ているのかが検討された。家族法では、女性差別撤廃条約の視点から民法改正がなされる必要性が指摘された。また教育現場のセクシュアルハラスメントに関して、当該機関に環境配慮義務のあることが指摘された。表象については、アングラ演劇をマスキュリニティ構築のパフォーマンスとして読み解いている。