著者
梅村 雅之 中本 泰史 朴 泰祐 高橋 大介 須佐 元 森 正夫 佐藤 三久
出版者
筑波大学
雑誌
特別推進研究
巻号頁・発行日
2004

宇宙第一世代天体の誕生は、宇宙全体の進化、銀河の誕生、重元素の起源を解き明かす上で根源的な問題である。本計画の目的は、宇宙第一世代天体形成過程について、超高精度のシミュレーションを行い、その起源を解き明かすことにある。そのために、天体形成シミュレーションの専門家と計算機工学の専門家が、緊密な協力体制の下に重力計算専用ボードBlade-GRAPEを開発し、これをPCクラスタに融合させた宇宙シミュレータFIRSTを開発した。FIRSTは、256の計算ノード、496CPUからなり、2つのファイルサーバをもつ。また、分散したローカルディスクから一つの共有ファイルシステムを構築するGfarmシステムが導入されており、総計22TBのファイルシステムをもつ。FIRSTの総演算性能は、36.1TFLOPSであり、内ホスト部分3.1TFLOPS、Blade-GRAPE部分33TFLOPSである。また、主記憶容量は総計1.6TBである。このような融合型並列計算機の開発は、世界でも例を見ないものである。FIRSTを用いてこれまでにない大規模なシミュレーションを実行した。その結果、次のような成果を得た。(1)宇宙第一世代天体形成のダークマターカスプに対する依存性の発見、(2)初代星に引き続いて起こる星形成への輻射性フィードバックの輻射流体計算とフィードバック条件の導出、(3)紫外線輻射場中の原初星団形成シミュレーションによる球状星団形成の新たな理論モデルの提唱、(4)3次元輻射輸送計算による原始銀河からの電離光子の脱出確率の導出、(5)銀河団合体時の非平衡電離過程効果の発見、(6)アンドロメダ銀河と衛星銀河の衝突による“アンドロメダの涙"のモデル提唱。中でも(1)は、過去の他グループの計算に比べて2桁以上高い質量分解能を実現することによってもたらされたものである。この計算によって、従来の第一世代天体に対する描像に見直しが必要であることが明らかとなった。
著者
梅村 雅之 中本 泰史
出版者
筑波大学物理学系
雑誌
年次研究報告 (ISSN:09155317)
巻号頁・発行日
vol.1993, pp.20-25, 1994 (Released:2013-12-18)
著者
大谷 栄治 倉本 圭 今村 剛 寺田 直樹 渡部 重十 荒川 政彦 伊藤 孝士 圦本 尚義 渡部 潤一 木村 淳 高橋 幸弘 中島 健介 中本 泰史 三好 由純 小林 憲正 山岸 明彦 並木 則行 小林 直樹 出村 裕英 大槻 圭史
出版者
日本惑星科学会
雑誌
遊・星・人 : 日本惑星科学会誌 (ISSN:0918273X)
巻号頁・発行日
vol.20, no.4, pp.349-365, 2011-12-25
被引用文献数
1

「月惑星探査の来たる10年」検討では第一段階で5つのパネルの各分野に於ける第一級の科学について議論した.そのとりまとめを報告する.地球型惑星固体探査パネルでは,月惑星内部構造の解明,年代学・物質科学の展開による月惑星進化の解明,固体部分と結合した表層環境の変動性の解明,が挙げられた.地球型惑星大気・磁気圏探査パネルは複数学会に跨がる学際性を考慮して,提案内容に学会間で齟齬が生じないように現在も摺り合わせを進めている.本稿では主たる対象天体を火星にしぼって第一級の科学を論じる.小天体パネルでは始原的・より未分化な天体への段階的な探査と,発見段階から理解段階へ進むための同一小天体の再探査が提案された.木星型惑星・氷衛星・系外惑星パネルは広範な科学テーマの中から,木星の大気と磁気圏探査,氷衛星でのハビタブル環境の探査,系外惑星でも生命存在可能環境と生命兆候の発見について具体的な議論を行った.アストロバイオロジーパネルでは現実的な近未来の目標として火星生命探査を,長期的な目標として氷衛星・小天体生命探査を目指した観測装置開発が検討された.これらのまとめを元に「月惑星探査の来たる10年」検討は2011年7月より第二段階に移行し,ミッション提案・観測機器提案の応募を受け付けた.
著者
中本 泰史
出版者
東京工業大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

本研究は,中心星近傍で発生したX線フレアを起源とする星風が原始惑星系円盤に衝突し,衝撃波が発生するという現象をとりあげ,(1)そのような現象が発生するかどうか,(2)発生するとしたら円盤内の物質にどのような影響を及ぼすか,(3)それらの現象を天文学的あるいは隕石学的な手法により確認することができるか,などを明らかにすることを目的とした。そのために,電磁流体力学数値シミュレーションや流体力学,輻射輸送計算,解析的検討など種々の手法を用いて研究を推進した。電磁流体力学数値シミュレーションの結果,円盤上層部に衝撃波が発生することが確かめられた。また,これらの衝撃波はコンドリュール形成やダストの加熱結晶化にとって適当な衝撃波となることも明らかにした。つまり,(a)3AU程度以内ならば,円盤の上空に強い衝撃波が発生してダスト粒子を十分加熱することが可能なこと,(b)X線フレアによって発生した星風は磁場によるコリメーションを受けるため,5AU程度よりも外には影響を及ぼしにくいこと,などがわかった。一方,発生する衝撃波の性質をより的確に理解することが出来るようになり,衝撃波の発生場所,すなわち,ダストが加熱を受ける場所をより具体的に議論することが出来るようになった.このことにより,加熱を受けて結晶化したダストが彗星に取り込まれる可能性について,検討することが可能となった。それによれば,X線フレアに伴って発生する円盤上空衝撃波で加熱・結晶化できるダスト粒子は中心星から5AU程度までのものであるから,彗星中の結晶化ダストがそのようなものであるとすると,なんらかの機構によって5AU以内にあったダスト粒子を彗星形成領(30AU程度)まで運ぶ必要があることになる。ダスト粒子の輸送機構にはいくつかの可能性があるが,今後はそれらの輸送機構の適否を詳しく検討することが必要になるだろう。