- 著者
-
中本 泰史
- 出版者
- 東京工業大学
- 雑誌
- 基盤研究(C)
- 巻号頁・発行日
- 2005
本研究は,中心星近傍で発生したX線フレアを起源とする星風が原始惑星系円盤に衝突し,衝撃波が発生するという現象をとりあげ,(1)そのような現象が発生するかどうか,(2)発生するとしたら円盤内の物質にどのような影響を及ぼすか,(3)それらの現象を天文学的あるいは隕石学的な手法により確認することができるか,などを明らかにすることを目的とした。そのために,電磁流体力学数値シミュレーションや流体力学,輻射輸送計算,解析的検討など種々の手法を用いて研究を推進した。電磁流体力学数値シミュレーションの結果,円盤上層部に衝撃波が発生することが確かめられた。また,これらの衝撃波はコンドリュール形成やダストの加熱結晶化にとって適当な衝撃波となることも明らかにした。つまり,(a)3AU程度以内ならば,円盤の上空に強い衝撃波が発生してダスト粒子を十分加熱することが可能なこと,(b)X線フレアによって発生した星風は磁場によるコリメーションを受けるため,5AU程度よりも外には影響を及ぼしにくいこと,などがわかった。一方,発生する衝撃波の性質をより的確に理解することが出来るようになり,衝撃波の発生場所,すなわち,ダストが加熱を受ける場所をより具体的に議論することが出来るようになった.このことにより,加熱を受けて結晶化したダストが彗星に取り込まれる可能性について,検討することが可能となった。それによれば,X線フレアに伴って発生する円盤上空衝撃波で加熱・結晶化できるダスト粒子は中心星から5AU程度までのものであるから,彗星中の結晶化ダストがそのようなものであるとすると,なんらかの機構によって5AU以内にあったダスト粒子を彗星形成領(30AU程度)まで運ぶ必要があることになる。ダスト粒子の輸送機構にはいくつかの可能性があるが,今後はそれらの輸送機構の適否を詳しく検討することが必要になるだろう。