著者
杉山 耕一朗 小高 正嗣 佐野 康男 大石 憲且 馬場 聡 高井 昌彰 大石 尊久 林 祥介 倉本 圭 渡部 重十
出版者
日本惑星科学会
雑誌
遊・星・人 : 日本惑星科学会誌 (ISSN:0918273X)
巻号頁・発行日
vol.17, no.2, pp.123-129, 2008-06-25

北海道大学と名寄市立木原天文台とを接続する広帯域ネットワークを構築し,研究と教育の連携のための実験を行った.広帯域ネットワークを用いる最大の利点は,地理的に離れた両拠点の既存の機材とソフトウェア環境を現地まで移動することなく相互に利用できるようになり,両拠点が一体の遠隔天文台として機能できることである.実際に,北海道大学から木原天文台の望遠鏡を遠隔操作して天体の操像観測を試み,遠隔天文台としての機能の検証を行った.また,両拠点の観望映像のどちらか条件の良い映像をインターネット中継映像として配信する実験を行い,今回我々の構築したネットワーク環境が天文現象のインターネット中継の成功率向上に資することを確認した.
著者
大谷 栄治 倉本 圭 今村 剛 寺田 直樹 渡部 重十 荒川 政彦 伊藤 孝士 圦本 尚義 渡部 潤一 木村 淳 高橋 幸弘 中島 健介 中本 泰史 三好 由純 小林 憲正 山岸 明彦 並木 則行 小林 直樹 出村 裕英 大槻 圭史
出版者
日本惑星科学会
雑誌
遊・星・人 : 日本惑星科学会誌 (ISSN:0918273X)
巻号頁・発行日
vol.20, no.4, pp.349-365, 2011-12-25
被引用文献数
1

「月惑星探査の来たる10年」検討では第一段階で5つのパネルの各分野に於ける第一級の科学について議論した.そのとりまとめを報告する.地球型惑星固体探査パネルでは,月惑星内部構造の解明,年代学・物質科学の展開による月惑星進化の解明,固体部分と結合した表層環境の変動性の解明,が挙げられた.地球型惑星大気・磁気圏探査パネルは複数学会に跨がる学際性を考慮して,提案内容に学会間で齟齬が生じないように現在も摺り合わせを進めている.本稿では主たる対象天体を火星にしぼって第一級の科学を論じる.小天体パネルでは始原的・より未分化な天体への段階的な探査と,発見段階から理解段階へ進むための同一小天体の再探査が提案された.木星型惑星・氷衛星・系外惑星パネルは広範な科学テーマの中から,木星の大気と磁気圏探査,氷衛星でのハビタブル環境の探査,系外惑星でも生命存在可能環境と生命兆候の発見について具体的な議論を行った.アストロバイオロジーパネルでは現実的な近未来の目標として火星生命探査を,長期的な目標として氷衛星・小天体生命探査を目指した観測装置開発が検討された.これらのまとめを元に「月惑星探査の来たる10年」検討は2011年7月より第二段階に移行し,ミッション提案・観測機器提案の応募を受け付けた.
著者
渡部 重十
出版者
北海道情報大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

2013年5月に,マーシャル諸島でNASA,クレムソン大学と共同でロケット実験を実施した.高度100kmから上方には太陽光があり地上には太陽光がない19時地方時に,2機のロケットを約1分間隔で打ち上げ,熱圏下部と上部(電離圏E層とF層)の中性大気とプラズマを同時に測定した.クレムソン大学と共同で開発したリチウム原子放出器によるリチウム原子とTMAを放出することで,熱圏大気にリチウム雲とTMA雲を形成した.これらの雲をロイ島,ロンゲラップ島,リキエップ島に配置した高感度CCDカメラとビデオで同時撮影した.高度100km付近に約100m/sの熱圏大気風速シアーを捉えた.
著者
渡部 重十
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

熱圏電離圏を飛翔するサウンディングロケットにより,熱圏電離圏内に人工的に中性大気雲とプラズマ雲を同時に発生させ,可視化することによって,その運動をモニターし,大気・プラズマ結合過程の本質を世界に先駆けて解明する.地球の大気・プラズマ雲だけでなく,太陽風と金星・火星・彗星の大気・プラズマ,イオトーラス,タイタン大気・プラズマ,恒星風と系外惑星大気・プラズマ等に内在する素過程の理解にも繋がり,本研究が,惑星大気・プラズマ研究に与えるインパクトは極めて高い.NASA/ワロップスのロケット発射場とJAXA/内の浦宇宙空間観測所で実施するロケット実験にリチウムガス放出機器を搭載し人工雲を生成する.地上の3観測点から人工雲の運動を観測する.人工雲の運動から,高度100km~300kmの大気密度・温度・風速を求める.本研究により,リチウムガス放出機器と狭帯域フィルターを用いた高感度カメラを開発し観測研究を実施した.
著者
渡部 重十 小野 高幸 阿部 琢美 齋藤 昭則 大塚 雄一 山本 真行
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2006

スペースシャトル,宇宙ステーション,人工衛星が飛翔する高度100km以上の熱圏には,中性大気中に0.01%ほどのプラズマが混在している.プラズマは磁力線に束縛された運動をするため,中性大気とプラズマ間には無視できない運動量輸送が存在する.最近の衛星観測やモデリングは,中性大気の運動がプラズマの運動に強く依存していること,電磁場を介したプラズマの運動が中性大気の運動をコントロールしていること,熱圏中性大気の東向きスーパーローテーションがプラズマとの相互作用に起因している可能性があること,を明らかにした.しかし,中性大気とプラズマの運動を熱圏上部で同時に測定した例はない.平成19年9月2日19:25に宇宙航空研究開発機構/内之浦宇宙空間観測所からS520ロケットを打ち上げた.このロケットにリチウムガス放出装置とプラズマ・電磁場観測装置が搭載された.〜1000Kのリチウムガスを230km,190km,140km高度でロケットから放出した.リチウムガスによる太陽光の共鳴散乱を地上の多地点から観測し,上部熱圏風の高度分布を測定することに世界で初めて成功した.リチウムガスの拡散から大気温度と密度の高度分布を得ることにも成功した.中性大気の物理パラメータとロケットに搭載したプラズマ測定と比較することにより,中性大気とプラズマ間の相互作用過程を解明することが可能となる.本研究により,ロケットからのガス放出技術,高感度CCDカメラを用いた地上観測技術,画像解析による大気パラメータの導出技術,を確立することもできた.