著者
中村 有吾 松本 亜希子 中川 光弘
出版者
Tokyo Geographical Society
雑誌
地学雑誌 (ISSN:0022135X)
巻号頁・発行日
vol.114, no.4, pp.549-560, 2005-12-25 (Released:2009-11-12)
参考文献数
18
被引用文献数
8 6

The AD1663 ejecta of Usu volcano, western Hokkaido, northern Japan, have a thickness of approximately 200, cm and are divisible into 7 units on the eastern foot of Usu volcano. The basal deposit, Unit-A, is composed of fine-grained, poorly sorted pumice and ash with well-developed stratification. It contains base surge beds near the sources, and is interpreted as phreatomagmatic in origin. Unit-B is typical in many respects of the product of plinian activity. It is characterized by coarse grain size and wide dispersal, combined with low lithic contents and poor development of internal stratification. This fallout deposit (Usu-b tephra) can be seen in the eastern regions of Usu volcano, and has a thickness of about 4 cm at 200 km from the vent. Unit-C, Unit-E, Unit-F, and Unit-G have characteristics that are satisfactorily interpreted as a consequence of phreatomagmatic activity : fine grain size near source, poor sorting, well-developed stratification and base surge bedforms. Unit-D is typical of phreatic deposits, being composed largely of non-juvenile lithic fragments.According to historical records, the eruption was preceeded by earthquake swarms for 3 days from August 13, 1663. The first eruption (Unit-A) occurred on August 16, followed by an eruption associated with a large amount of pumice and ash (Unit-B) on August 17. The explosive eruptions lasted approximately 20 days.The petrographic properties of the plinian product differ considerably from those of the phreatomagmatic products. The pumice clasts of Unit-B contain abundant glass and little phenocryst (plagioclase, orthopyroxene, and hornblende). The glass has a relatively high refractive index (n = 1.490-1.492) and a low SiO2 content. Orthopyroxene in Unit-B has a relatively high refractive index (γ = 1.735-1.740) and low Mg#. The phreatomagmatic products are rich in massive glass. This glass has a relatively low refractive index (n = 1.475-1.490) and a high SiO2 content, with values differing among horizons. The compositional diversity of the 1663 products indicates the existence of some magma. Presumably, their mixing triggered the 1663 eruption of Usu volcano.
著者
中村 有吾 高橋 唯 仙頭 杏美 和田 庫治
出版者
日本地球惑星科学連合
雑誌
日本地球惑星科学連合2018年大会
巻号頁・発行日
2018-03-14

室戸ジオパークは、2008年に日本ジオパークに認定されてから、今年で満10年となる。2018年には、今後10年間の活動計画(マスタープラン)を策定し、今後のジオパーク活動を推進する上で主要な活動場所となるサイトおよび拠点施設を見直し、新たに指定することになる。その際、2015年のGGN再審査による指摘事項(Recommendation)に対応するため、次の条件を満たすサイトを設定する:内陸のサイトを増やす、地質サイトとそれ以外(生態・文化)をわける、自然の家展望台などツーリストの関心を引く施設も活用する、構造地質学的要素(断層など)をとりいれる、施設や道を「サイト」としてはいけない。ただし、大前提として、室戸ジオパークのテーマ(「海と陸が出会い 新しい大地が誕生する最前線」)およびそこから派生するジオストーリーに沿った地点を、サイトとして設定する。新たなサイト設定には、従来「ジオサイト」として活用してきた地点を再定義するとともに、市民から要望のあったサイトでテーマとの関連するものを新たにサイトとして定義した。そのほか、専門員による野外調査・文献調査に基づいて、室戸ジオパークに分布する主要な地層(Formationレベル。場合によってはMemberレベル)や地形(海成段丘や海食地形など)は代表的な地点をサイトとして認定する。その際なるべく、室戸半島の東海岸・西海岸でそれぞれ認定する。その結果、51のジオサイト、10のエコサイト、17のカルチュラルサイトを「サイト」として、また、展示施設や展望台などの10施設を「拠点施設」として、設定した。
著者
中村 有吾 丸茂 美佳 平川 一臣 澤柿 教伸
出版者
日本第四紀学会
雑誌
第四紀研究 (ISSN:04182642)
巻号頁・発行日
vol.47, no.1, pp.39-49, 2008-02-01 (Released:2009-03-26)
参考文献数
22
被引用文献数
2 2

北海道東部,知床半島のほぼ中央に位置する羅臼火山は,過去約2,200年間のうち3時期にマグマ噴火したことが知られており,それぞれ降下テフラ(Ra-1 : 500~700 cal BP, Ra-2 : ca. 1,400 cal BP, Ra-3 : ca. 2,200 cal BP)および火砕流を噴出した.これら羅臼起源のテフラは,いずれも斜方輝石および単斜輝石を含むなど鏡下での特徴が類似するが,脱水ガラス屈折率は異なり,識別が可能である.羅臼火山の南西約4.5kmに位置する天頂山火山から約1,900年前に噴出した天頂山aテフラ(Ten-a)は,多量の石質岩片のほか,フレーク状火山ガラス,斜長石,斜方輝石などの本質物質を含む.その火山活動はマグマ水蒸気噴火だったと推定される.Ten-aの噴出量は約0.02km3である.羅臼岳の南~南南西方向約5km付近,標高500~750mの地域には,羅臼湖など多数の沼沢地や湿原が点在する.複数の湿原での掘削調査の結果,駒ヶ岳c1テフラ(AD1856),樽前aテフラ(AD1739),駒ヶ岳c2テフラ(AD1694),Ra-1,摩周bテフラ(774~976 cal BP),Ten-a, 一の沼火山灰の存在と層序が明らかになった.そのほか,知床半島の南部には,摩周起源の摩周lテフラ(ca. 13,000 cal BP)が分布する.
著者
加 三千宣 山本 正伸 中村 有吾 竹村 恵二 守屋 和佳 谷 幸則
出版者
愛媛大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010-04-01

地球温暖化に伴って、数十年スケールで大変動する太平洋のイワシ資源は、今後どのような変動を示すのか。中世温暖期におけるイワシ存在量の数十年スケール変動の振幅変化とそのメカニズムの解明を試みた。マイワシには過去1000年間において300年スケールの変動が見つかり、中世温暖期とそれにつづく小氷期という汎地球規模の気候変動に対して応答しないことがわかった。一方で、マイワシ存在量の300年スケール変動の背後には太平洋とその東西陸域を含む空間規模を持つ気候変動と関連している可能性が示唆された。日本マイワシ資源変動の環境要因として、北西太平洋の餌環境が重要である可能性が示唆された。