著者
山田 浩雄 小林 玲爾 中田 了五 宮浦 富保
出版者
THE JAPANESE FORESTRY SOCIETY
雑誌
日本林学会誌 (ISSN:0021485X)
巻号頁・発行日
vol.80, no.3, pp.201-204, 1998-08-16 (Released:2008-05-16)
参考文献数
16
被引用文献数
1

林木花粉の長期貯蔵試験をスギ花粉を用いて行った。花粉の含水率を調節した後,室温,5°C,-20°Cおよび液体窒素(-196°C)の四つの温度条件下で貯蔵した。また5年間液体窒素内で貯蔵した花粉(貯蔵花粉)と貯蔵していない花粉(新鮮花粉)を用いて人工交配を行った。花粉を液体窒素で貯蔵した場合,花粉の発芽率は5年間低下しなかった。人工交配によって得られた種子の100粒重,球果1個当りの種子重,種子の有胚率に関しては,花粉を液体窒素で貯蔵したことによる影響は認められなかった。
著者
中田 了五
出版者
一般社団法人 日本木材学会
雑誌
木材学会誌 (ISSN:00214795)
巻号頁・発行日
vol.60, no.2, pp.63-79, 2014
被引用文献数
3

日本を代表する林業樹種であるスギとトドマツでは,心材に水分が集積する現象であるwetwood(高含水率心材・水食い材)がしばしば出現することが木材利用上の欠点となっている。Wetwoodは上記2樹種に特有なものではなく多くの樹種に認められ,wetwoodの出現する頻度は種または属の特徴とできる。本稿では,wetwoodとはどのような現象で,いかに定義するべきかについて議論する。また,wetwoodの記述に必要であり,手法が容易であるにも関わらず実はあまりよく調べられていない重要な木材の性質である木材の生材含水率についてやや詳細に述べる。
著者
平川 泰彦 藤澤 義武 中田 了五
出版者
森林総合研究所
雑誌
森林総合研究所研究報告 (ISSN:09164405)
巻号頁・発行日
vol.2, no.1, pp.31-41, 2003-03
被引用文献数
16

水戸市の旧林木育種センター育種素材保存園に植栽されていた約30年生のスギの精英樹クローン、563クローン1060個体を対象に基礎材質を調べた。供試木のクローンは、関東育種基本区(関東、甲信、東海地方及び福島県と岐阜県)に成育していた精英樹から接ぎ木または挿し木により育成されたものである。供試木の地上高約1.8m部分から約50cm長さの短尺丸太を採取し、年輪幅、晩材率、密度、生材含水率、心材率、心材色、無欠点小試験体の曲げヤング係数と曲げ強度、仮道管長および仮道管の二次壁中層のミクロフィブリル傾角を調べた。また、地際から1.8m長の丸太の動的ヤング係数を調べた。個体間の変動係数は、心材の生材含水率、外側10年輪の年輪幅、晩材率およびミクロフィブリル傾角で30%以上と特に大きく、丸太の動的ヤング係数と小試験体の曲げヤング係数では17.5%と25.6%でやや大きく、密度、心材率、心材色及び仮道管長では15%以下と小さかった。本研究で示したスギ精英樹クローンの材質変動は、日本全国におけるスギの若齢造林木のそれをほぼ表しており、スギの間伐材の利用で問題になっている心材の高含水率や丸太の低ヤング係数に関しては、育種による改良効果が期待できるものと考えられる。
著者
安江 恒 藤原 健 大山 幹成 桃井 尊央 武津 英太郎 古賀 信也 田村 明 織部 雄一朗 内海 泰弘 米延 仁志 中田 了五 中塚 武
出版者
信州大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2011-04-01

将来予想される気候変動下での国産主要4樹種の肥大成長量や密度変化の予測を目的とし,年輪年代学的手法による気候応答解析を行った。スギ,ヒノキ,カラマツ,ブナのクロノロジーネットワークを構築し,気候データとの相関解析を行った。スギとヒノキについては,ほとんどの生育地において冬~春の気温が年輪幅変動に対して促進的に影響していた。ブナにおいては,比較的寒冷な生育地では,夏季の気温が年輪幅に促進的に影響しており,一方温暖な生育地では気温が制限要因となっていないことが示唆された。カラマツについては,生育地によって年輪幅や密度と相関を示す気候要素が大きく異なっていた。