著者
梅津 大雅 中田 和秀
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会第二種研究会資料 (ISSN:24365556)
巻号頁・発行日
vol.2023, no.FIN-030, pp.45-50, 2023-03-04 (Released:2023-03-04)

資産運用において,単一の銘柄に投資を行うことは非常にリスクのある行動とみなされている.そのため資産運用を行う際は,複数銘柄に分散投資を行うことが求められる.このように市場に存在する様々な金融資産に対して,どの資産にどれだけ投資するかを決定する問題はポートフォリオマネジメントと呼ばれている.ポートフォリオマネジメントの代表的なモデルとして,ポートフォリオの期待収益率の最大化と分散の最小化を行う平均分散法のような最適化のアプローチの手法が知られている.しかし,最適化の手法は,主に特徴量として平均と分散を使用しており,強い定常性を仮定している点が問題である.これらの問題に対して本研究では,強化学習の枠組みを用いてポートフォリオマネジメントを行う.強化学習は機械学習の分野の1つであり,コンピュータ上のエージェントが環境と相互作用を繰り返すことで,タスクの報酬を最大化する意思決定の方策を学習する.また定常性を仮定せず,長期的な依存関係を考慮した学習を行うため,資産運用と相性が良い.一方で,強化学習には2つの問題が存在する.その1つが金融市場のデータ不足である.強化学習を行う際は,多量の訓練データを必要とするが,金融時系列は時間に対して1対1にしかデータが増えない.また強化学習に入力する特徴量は,基本的に行動を決定する時点の情報のみを使用するが,資産運用に関しては将来の状態を考慮することが重要である.本研究ではこれらの問題に対処するために,CSDIによるデータ生成とLSTMによる予測を用いた強化学習フレームワークを提案する.CSDIはDiffusion Modelを基としたデータ生成手法の1つであり,金融時系列の分布を模した人工データを生成することが可能であるため,データ不足の問題を解消できる.また時系列予測の分野で高性能を記録しているLSTMによる予測特徴量を入力とすることで将来の状態を明示的に把握させた.これらの提案手法の性能を検証するために,ダウ・ジョーンズ工業株価平均の30銘柄を用いて定量評価を行い,提案モデルはベンチマーク手法よりも優れていることを確認した.
著者
石川 洸矢 中田 和秀
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集 第36回 (2022)
巻号頁・発行日
pp.2P6GS1001, 2022 (Released:2022-07-11)

金融市場における機械学習の適用には大きく2つの問題がある.それは単位時間当たりに増えるデータ数が少ない事とデータが非定常的という事である.一般に膨大なデータを訓練データとしてかつ定常的なデータを扱う事が前提とされる機械学習手法には,これらの問題は非常にネックとなり得るだろう. 本研究では以上の問題に対応する為に,「GANによるデータ拡張を用いた強化学習モデルのリアルタイム学習フレームワーク」を提案する.提案手法の新規性として大きく2つある.まず1つに価格推移の予測モデルを生成モデルとする事によって市場データの代替データを生成し,データ不足を解消できる点である.2つ目にリアルタイム学習フレームワークを取り入れることにより,データの非定常的な動きに対応しやすくなっている点である. 本研究では提案手法が従来の深層強化学習手法に比べて収益率が改善されている事を外国為替相場のデータを用いて示した.また,非定常性へと対応力を検討する為に,新型コロナウィルスやリーマンショックなどの例外的なイベントに対してもうまくモデルが対処している事を確認した.
著者
黒木 開 川上 孝介 岩井 大志 石塚 湖太 中田 和秀
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集 第35回 (2021)
巻号頁・発行日
pp.2D3OS7a02, 2021 (Released:2021-06-14)

リスティング広告における広告文の品質向上は、消費者をランディングページ(LP)へ誘導し、購買へと繋げるために大変重要である。 品質向上手法には一般的に知られた手法がいくつかあり、例えば検索キーワードを広告文内に含めることで、クリック率など各種指標が改善することが知られている。そこで本論文ではより優れた広告文を生成するために、特定のキーワードを高確率で含む文生成手法を提案する。ベースとなる自然言語処理モデルには事前学習済みBERTをEnc-Dec構造にしたBERT2BERTを採用し、学習データはgoogle広告において配信されていた約69万件の広告データを用いた。また、生成時に「ドア」と「扉」といった類語の生成を防止するため、キーワードをマスクした形で学習を行なった。加えて文生成時にはキーワードを優先出力する手法を検討した。実際に配信された広告データを用いてその精度を評価した結果、提案手法は最大約80%の確率で広告文内にキーワードを挿入できることを確認し、既存モデル(BERT2BERTを学習データでfine-tuningしたのみのモデル)の挿入率を有意に上回ることができた。
著者
水野 眞治 小島 政和 比嘉 邦彦 二宮 祥一 尾形 わかは 中川 秀敏 中田 和秀 中野 張 北原 知就 高野 祐一 高橋 幸雄
出版者
東京工業大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2008

数理ファイナンス/金融工学に関連する数理技術、特に「最適化・オペレーションズ・リサーチ」「確率数値解析」「情報ネットワークセキュリティ」という3つの要素技術に関して理論的研究を行った。また、それらを実装したソフトウェアをインターネット上で公開した。さらに、金融数値計算を行うシステムの設計と構築を行った。その結果、高度な専門的数理技術を容易にアクセスできるようになった。
著者
中田 和秀
出版者
東京工業大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2010-04-01

対称錐計画法を利用して現実問題を解くため、典型的な現実問題を効率良く解くためのモデル化とアルゴリズムの開発を行なった。また、金融数値計算と数式処理を統合したモデリングツールを開発した。開発したQuantOnlineは、インターネットを利用した簡単なモデリングによりオンラインで計算できる。さらに、条件数に関する制約を含んだ行列近似問題などを効率良く解くアルゴリズムの開発に成功した。
著者
中田 和秀 梅谷 俊治
出版者
公益社団法人日本オペレーションズ・リサーチ学会
雑誌
オペレーションズ・リサーチ : 経営の科学 (ISSN:00303674)
巻号頁・発行日
vol.54, no.8, pp.504-505, 2009-08-01

第23回企業事例交流会は,平成21年春期研究発表会初日の3月17日に筑波大学春日キャンパスで開催された.今回の企業事例交流会では3件の発表があり,座長は日本アイ・ビー・エム(株)の米沢隆氏が務められた.この企業事例交流会は,OR学会において大学の理論コミュニティと企業の実務家コミュニティが融合する貴重な場であるが,発表の後の熱心な質疑応答を拝見し,その主旨が十分に果たされていると感じた.また,筆者も今回の企業事例交流会に参加したことで,今後の研究や大学でのOR教育を実践していくにあたり,非常によい経験となったというのが率直な感想である.以下では,3件の発表についてまとめる.