著者
川名 のん 長沼 健 吉野 雅之 太田原 千秋 冨樫 由美子 笹 晋也 山本 恭平
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集 第35回 (2021)
巻号頁・発行日
pp.1F2GS10a02, 2021 (Released:2021-06-14)

e-KYCとは、インターネット越しの画像/映像で本人確認を行い、金融機関の口座開設の手続きを非対面で行なう仕組みのことである。本稿では、Deepfakeを用いて他人の顔になりすますことで、e-KYCなどの顔画像/映像を用いた本人確認に対してなりすまし攻撃ができるかの実験を行った。本稿の実験では、実システムに対してではなく、OSSをベースに独自に作成したe-KYCシステムに対して、運転免許証の写真とDeepfakeでなりすました人物の顔画像/映像が同一人物かの判定を行うものとした。より具体的には、システム側からe-KYC対象者に対して、顔を傾けるなどのランダムな動作を指示し、顔画像とこれら動作の認証を行い、本人性を確認する。実験の結果、なりすまし攻撃が成功し、これによりDeepfakeによるe-KYCへの攻撃が現実的な脅威であることが判明した。また本稿では、この攻撃に対していくつかの対策技術を検討した結果をまとめる。
著者
川本 峻頌 澤井 悠 張 培楠 脇本 宏平
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集 第35回 (2021)
巻号頁・発行日
pp.3H2GS9b04, 2021 (Released:2021-06-14)

NLGシステムの生成結果の評価、あるいは極性判定のような応用タスクのアノテーションでは、実応用時と同様の幅広い属性のアノテーターによる作業が重要である。こうした応用事例ではクラウドソーシングのような仕組みを利用して多様なアノテーターを集めることが多い一方で、実世界のユーザの多くはスマートフォンなどのモバイル端末を利用する割合が多い。本稿では、これまで注力されていなかったスマートフォンなどのモバイル端末におけるUXを重視した、応用タスク向けのアノテーションツール "FAST" を提案する。実験では、複数名のアノテーターによるアノテーションを実施し、ツールのログやユーザアンケートから速度や品質、使いやすさといった指標を評価した。結果、本システムは特定のタスクにおいて、既存の手法と比較して、品質を維持しつつ高速にアノテーションできることを確認した。
著者
坪井 優樹 阪井 優太 鈴木 佐俊 後藤 正幸
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集 第35回 (2021)
巻号頁・発行日
pp.3G2GS2h04, 2021 (Released:2021-06-14)

企業が施策を講じる際,適切な効果検証を行い,正しい意思決定につなげることは重要な課題である.観測データから施策効果を正しく評価するために,因果推論という考え方がある.近年の因果推論では,ユーザを施策を打つ群と打たない群に分割した後,条件付き平均処置効果(以下,CATE)と呼ばれる,同じ特徴を持つユーザ群における群間の結果の平均値の差を施策効果とする.CATEにより,施策を講じることが有効であるユーザ群の特定が可能になる.ここで,CATE推定手法としてCausal Treeが提案されている.この手法は解釈性が高く,施策効果に影響を与える要因についての分析に有用である.しかし,この手法は施策対象者をランダムに選択する場合のみを対象とする.そのため,ユーザを人為的に選択し系統的な誤差(以下,選択バイアス)が生じる場合は対応できないという問題点がある. そこで本研究では,Causal Treeをベースとし,選択バイアスが存在する状況に対応したCATE推定手法を提案する.また,人工データセットを用いて実験を行い,提案手法の有効性を示す.さらに,実データセットを提案手法に適用し,実際に分析を行う.
著者
久田 祥平 村山 太一 矢田 竣太郎 若宮 翔子 荒牧 英治
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集 第35回 (2021)
巻号頁・発行日
pp.1D2OS3a04, 2021 (Released:2021-06-14)

ソーシャルメディアの時代、私たちはフィルターバブルによって意図せずとも偏った情報にさらされることが多い。 このような偏った情報は、意見の細分化や政治的な二極化を増幅させる。 この問題に対処するために、ニュースメディアのバイアスを分析し、人々がニュースを正しく理解できるようにする。 既存のバイアスに関する調査は、専門家による分析やクラウドソーシングによるメディアへの評価が行われている。 本研究では、ニュースに対するTwitterのコメントに対してトピックモデルを用いることで、階層的クラスタリングによるトピックの推定確率からニュースメディア間の距離を算出している。 基本的な考え方は、トピックの内容とニュースメディアの類似性を分析することでバイアスを測定することである。 この方法を「日本学術会議」問題に関するツイートに適用したところ、朝日新聞などの主流メディアの結果は、政治的バイアスに関する他の研究とほぼ一致していることがわかりました。これまで調査されていなかったメディアのバイアスを捉えることが可能であることがわかりました。
著者
濵本 鴻志 葛谷 潤 荒井 ひろみ
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集 第35回 (2021)
巻号頁・発行日
pp.2C4OS9b02, 2021 (Released:2021-06-14)

人工知能(AI)の発展が目覚ましい一方で、その背景にある機械学習、特に深層学習のブラックボックス性は、信頼と責任の観点から社会実装の障害となっている。こうしたブラックボックス化の問題を解決するために、説明可能AIのコミュニティでは、透明性や説明責任を実装するための技術的な取り組みが急速に進められているだけでなく、近年では、そもそも説明とは何かといった哲学的問題に取り組む研究も始まっている。既存の研究の一つとして、Mittelstadt et al. (2019)は、Miller (2019)による説明概念の分析に基づいて、対話型の対比的説明を提供する説明可能AIの開発の必要性を訴えている。本論文では、まず、肺炎リスク予測システムの事例を用いて説明可能AIのニーズを確認し、次にMittelstadt et al.(2019)の議論を概観した上で、そこで提案されている対話型の対比的説明の有用性について議論する。
著者
杉山 雅和 吉村 綾馬 友松 祐太 小町 守
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集 第35回 (2021)
巻号頁・発行日
pp.2Yin504, 2021 (Released:2021-06-14)

近年、音声認識や音声合成の性能が向上しておりそれらを用いた音声自動応答サービスが広く提供され始めている。音声自動応答サービスでは音声認識の精度がサービスの質に直結する重要な要素であるが、性能が向上しているとはいえ音声認識の精度は完璧ではない。そこで我々は音声認識誤りを含む音声認識結果を、文法誤り訂正と同じように訂正することを考える。文法誤り訂正は、巨大なコーパスで事前学習した言語モデルを用いた深層学習系の手法の台頭により性能が飛躍的に向上しているが、音声認識誤りを含む大規模な日本語コーパスは存在しない。そこで小規模な音声認識コーパスから誤り傾向を分析して誤り付与ルールを策定し、そのルールを巨大な日本語コーパスに適用することで、自動的に擬似音声認識誤りコーパスを作成した。本研究では複数の条件で作成した擬似誤りコーパスを事前学習に用いてTransformerによる誤り訂正の実験を行い、コーパス作成の設定が精度に与える影響の評価を行う。
著者
斉藤 勇璃 村井 源
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集 第35回 (2021) (ISSN:27587347)
巻号頁・発行日
pp.3D2OS12b01, 2021 (Released:2021-06-14)

登場人物は魅力的な物語を作る上で重要な要素の一つである.登場人物が物語に良い影響を与え,より面白くしている作品は多数存在している.その為,物語論や自然言語処理の分野においては,これまで登場人物の役割や人間関係等に関して,多数の研究が行われている.しかし,どのような物語上の役割を担う登場人物が何人出てくるのか,特に物語を長編にしても読者を飽きさせない為には,どのような役割の登場人物がどのように登場・退場し,役割が変化していくか等,人数に着目した計量的な研究はほとんど行われていなかった.そこで本研究では,少年漫画における登場人物の一話ごとの人数とその役割についての分析と,物語を長編化した場合における適切なタイミングでの登場人物の登場・退場・役割の変化等に関する数値的なデータの蓄積を行った.人数と役割に関する定量的な分析の他にも,物語において新しく登場する新規登場人物の分析や,因子分析を行い,登場人物の役割の組み合わせパターンの抽出を行った.その結果,少年漫画での一話の登場人物数に共通の特徴があることが明らかになった.また,登場人物の配置における中・長期的な時系列の頻出パターンを抽出した.
著者
瀬川 友香 浅谷 公威 坂田 一郎
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集 第35回 (2021) (ISSN:27587347)
巻号頁・発行日
pp.1I4GS4c04, 2021 (Released:2021-06-14)

ソーシャルメディアの急速な普及により,社会的相互作用が大きく進歩した一方で,誹謗中傷などの攻撃的な言動が問題視されている.誹謗中傷によって精神的な病気や自殺に追い込む事例もあり,社会において攻撃的な言動のメカニズムの解明や検出は重要である. ソーシャルメディア上の攻撃のテキストベースの分析は,文章の短さや曖昧さから攻撃を特徴付けることは困難となっている.この問題を解消するために攻撃に関わるユーザーベースの分析も行われているが,その結果は多種多様であり一定の知見は得られていない. そこで本研究では,ユーザーの性質とネットワーク上の関係から攻撃をいくつかに類型化し,その特徴を明らかにすることを目的とし,日本語Twitterのサンプリングデータから,sentence-BERTを用いて抽出した攻撃ツイートを分析した. 攻撃はユーザー同士のネットワークが近いところで起こるパターンが多いことや,ネットワーク上の遠いユーザーに攻撃を行なっているユーザーは普段からネガティブな投稿を多く行なっている傾向があることを明らかにした.また,集団攻撃を行うユーザーは普段から繋がっている傾向が高いことが示唆された.
著者
熊谷 雄介 板倉 陽一郎 見並 良治 猪谷 誠一 道本 龍
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集 第35回 (2021) (ISSN:27587347)
巻号頁・発行日
pp.2D3OS7a01, 2021 (Released:2021-06-14)

さまざまな大規模データセットが企業や大学によって公開され,それらを用いた研究や開発が行われている.また,深層学習フレームワークの発展によってデータセットのみならず学習済み統計モデルも広く公開され,利活用が進んでいる.それらの資源には多くの場合さまざまなライセンスが指定されているが,一般の研究者がそれを意識することはまれである.しかし,データセットや学習済み統計モデルを用いた商用システムやソリューションの開発を行う際には,どの用途であればライセンス違反になるのか,またはならないのかを十分に検討しなければならないが,既存研究においては明らかにされておらず,各社の判断において行われているのが現状である.そこで本研究では,データセットと学習済み統計モデルを用いた研究やビジネスのより安心・安全な実現を手助けするために (1) 代表的なデータセットや学習済み統計モデルのライセンスを確認し,(2) データセットや学習済み統計モデルのユースケースを列挙し, (3) ライセンスとユースケースの組み合わせについて何が可能で何が不可能か,の3点を検討した.
著者
西村 歩 新井田 統
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集 第35回 (2021) (ISSN:27587347)
巻号頁・発行日
pp.2H1GS3a05, 2021 (Released:2021-06-14)

従来の研究観では、経験を集合させることによって「客観性」を担保していく科学的手続きが重視されてきた。その一方でオートエスノグラフィや一人称研究に見られるように、研究者自身によるフィールドでの活動を通して得られた日常的な知覚経験から得られる経験的な知識としての「知覚的知識(Perceptual knowledge)」を語る研究も見られてきた。しかしここでいう「語り」とは元来主観的かつ文脈依存的なものであることから、研究者の「幻覚」が記述されてしまわないかとする懐疑論も根強く存在する。そこで本稿では研究者自身の経験に基づく「知覚的知識」を報告する研究の意義とは何かについて知識論における「幻覚からの議論」や「選言主義」の立場を踏まえて議論する。その上で知覚的知識に向けられる「幻覚」に由来する過剰な懐疑論を乗り越え,かつ知覚的知識ならではの強みを活用した研究活動が普及していくための条件を提示した。本稿の意義とは、これまで哲学的領域で行われてきた「知覚」に関わる議論について具体的なフィールドを舞台とした研究での適用について議論する一助となることである。
著者
前田 春香
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集 第35回 (2021) (ISSN:27587347)
巻号頁・発行日
pp.2C3OS9a01, 2021 (Released:2021-06-14)

本発表では、保険における(統計的な)差別の分析手法をアルゴリズムによる差別で踏襲することができることを示す。昨今では、アルゴリズムによる差別が注目され、技術的取り組みも盛んである。偏りがあると問題になりやすい属性として人種や性別といった属性が知られているが、一律にその使用を禁ずることは望ましくなく、かといってどう扱えばよいのかも必ずしも明らかでない。そこで本発表では、保険における差別のアプローチを参照し、いつ属性の取り扱いが倫理にかかわる問題になりうるかを明らかにする。両者はアルゴリズムによる差別と、意図によらない合理的推論に基づいているという最大の特徴を共有する。具体的には、特に属性に生じる社会的コストに着目しながら、保険分野における差別および倫理にかかわる事項を通じその応用可能性を探る。この作業により、どのような事例が問題になるかを考える筋道を提供する。
著者
岩田 あきほ 川島 寛乃 河野 慎 中澤 仁
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集 第35回 (2021)
巻号頁・発行日
pp.4I4GS7e01, 2021 (Released:2021-06-14)

本研究ではフィギュアスケートの動画からステップシークエンスのエレメントの自動判別に取り組む.フィギュアスケートにおいて,全ての演技の採点は一つ一つのエレメントの判定と出来栄えの評価によって構成されており,審判の目視によってすべて行われている.しかし,エレメントの判定と評価を同時に行うことは審判にとって負担となっている.そこでエレメントの判別を自動で行うことで審判の負担が軽減し,審判は出来栄えの判定に注力できる.本研究ではエレメントの判別を動画の分類問題として定式化し取り組む.そのためにデータセットを作成する必要があるが,フィギュアスケートの特性上,望ましくない性質をもってしまう.そこで、この性質を扱う手法を適用した畳み込みニューラルネットワークを用い,エレメント認識を行う.実験では,フィギュアスケートデータセットにおける手法の有効性を検証し,その結果を報告する.
著者
松野 省吾 セーヨー サンティ 榊 剛史 檜野 安弘
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集 第35回 (2021)
巻号頁・発行日
pp.1D4OS3c01, 2021 (Released:2021-06-14)

企業におけるマーケティングコミュニケーションやニュースの発信など,様々な情報を幅広く伝達する上で,ソーシャルメディアによる情報拡散の影響は無視できなくなっている.特にエコーチャンバーやフェイクニュースの拡散などでは,ソーシャルメディアによる情報拡散が主要な役割を果たしていると言われている.本研究では,企業のPRやニュースの発信において,ソーシャルメディア上の情報拡散の規模がどのような要素が影響しているかを明らかにしていきたい.SNSにおいて社会に対して大きな影響力を持つ人物はインフルエンサーと呼ばれる.そこで,筆者らはインフルエンサーの性質を,1)投稿を拡散するユーザを多くもつユーザ.かつ,2)投稿数の多いユーザ(≅拡散を躊躇なくするユーザ)であると定義し,Twitterの記録から構築したソーシャルグラフを用いて投稿拡散への影響を検証した.その結果,いずれかの性質を持つユーザはランダムに選択したユーザよりも投稿の拡散される確率が高く,特に,プライベートグラフの中でフォロー/フォロワー数が少ないフォロワーを多く抱えるユーザの投稿は最も拡散される確率が高くなることが判った.
著者
石原 祥太郎 澤 紀彦
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集 第35回 (2021)
巻号頁・発行日
pp.1D2OS3a03, 2021 (Released:2021-06-14)

本研究では,ニュース記事を文章選択・圧縮で要約する手法を提案する.具体的には,記事を代表するN個の文章を抽出し,構文解析で各文章を圧縮する.指標としてMMR(Maximal Marginal Relevance)とTF-IDF(Term Frequency - Inverse Document Frequency)を用いた.実験の結果,提案手法は人間の編集者の作業と約26.7%の割合で同一の話題に言及していた.必ずしも高い一致率とは言えないが,それ以外の生成物も日本語として誤りが少なく,候補として採用できるものが多かった.提案手法には特定の語句の重み付けなどで編集者の意図を組み込みやすく,編集者の負担軽減に繋がる利点がある.
著者
鈴木 かの子 松井 孝典 川久保 俊 増原 直樹 岩見 麻子 町村 尚
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集 第35回 (2021)
巻号頁・発行日
pp.4H3GS11d01, 2021 (Released:2021-06-14)

幅広いステークホルダーがSDGs(持続可能な開発目標)に取り組み,成功事例を共有することは重要である.そこで本研究は深層学習型の自然言語処理モデルBERTで,①活動事例や課題をSDGsに写像する分類器を構築すること,② SDGs間の連環関係 (nexus) を可視化すること,③地域課題とそれを解決しうる取り組み事例とのマッチングシステムを構築することを目的とした.まず,国連関連文書,日本の政府関連文書,内閣府が収集するSDGsの課題解決等に関する提案文書を収集し,各文書とそれに対応する複数のSDGsが対になったマルチラベルデータフレームを構築し,WordNetを用いたデータオーグメンテーションを行った.次に,訓練済み日本語BERTモデルをマルチラベルテキスト分類タスクでファインチューニングし,nested cross-validationでハイパーパラメータの最適化と交差検証精度の推定を行った.最後に,学習後のBERTモデルでSDGs間の共起ネットワークを可視化するとともに,地域課題と取り組み事例のベクトル埋め込みを行ってコサイン類似度を取得することで,マッチングシステムの開発を行った.
著者
磯谷 光毅 大沢 英一
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集 第35回 (2021) (ISSN:27587347)
巻号頁・発行日
pp.1I4GS4c03, 2021 (Released:2021-06-14)

近年SNSが広く利用されている中,誹謗中傷の様な攻撃的な投稿がなされる場合があり問題となっている.そこで誹謗中傷などの攻撃的な投稿についてその特性を理解した上で効果的な対策を考案することが必要である.本研究では意見が二分されるようなテーマについての誹謗中傷などの攻撃的な投稿の,発生や収束といったダイナミクスを的確に表現することができるモデルを構築しその特性について分析することを目的とする.モデルには各ユーザについて中立,賛成,賛成かつ攻撃的,反対,反対かつ攻撃的の5つの状態を定義し状態遷移に周辺ユーザの影響を考慮するよう設定した.DTWにより実際のTwitterにおける攻撃的状態にあるユーザとモデルでの攻撃的状態のユーザの推移についての時系列の距離を測った結果,提案モデルは賛成かつ攻撃的について4.493,反対かつ攻撃的について7.443であり各状態をランダムで遷移した場合の132.2,170.0と比較し類似度が高いモデルを構築することが可能であった.また攻撃的なユーザの,同意見周辺ユーザへの影響を抑えると攻撃的状態ユーザ総数の割合の累計が減少することが示された.
著者
林 美衣 森 直樹
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集 第35回 (2021) (ISSN:27587347)
巻号頁・発行日
pp.3D1OS12a01, 2021 (Released:2021-06-14)

近年,ファッション分野への人工知能技術の適用が注目されている.本研究は複数の衣服やアクセサリーの画像で構成されたコーディネートを学習した深層学習モデルからコーディネートの出来栄え点を獲得し,それを用いてファッションコーディネートプランを最適化する手法を提案する. 提案手法ではまず学習済みの Bi-LSTM + VSE モデルに手持ちの服を組み合わせたコーディネートを入力し,出来栄え点を獲得する.その点数を元に熱力学的遺伝アルゴリズム (Thermodynamical Genetic Algorithm : TDGA) を用いて複数のコーディネートからなるリスト,つまり着まわしプランを作成した.期間中同じコーディネートを使用してはいけない,3 日以内に同じアイテムを使用してはいけない,期間中一度も使っていないアイテムがあってはならないという制約を課し,多様性を考慮しながら着まわしプランを作成可能とした. 数値実験により,提案手法がユーザが購入を検討しているアイテムが価値があるかを定量的に評価し,どのアイテムを買うべきか推薦するツールとしても活用できることを示す.
著者
浦上 大輔 郡司 ペギオ幸夫
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集 第35回 (2021) (ISSN:27587347)
巻号頁・発行日
pp.1H3GS1b01, 2021 (Released:2021-06-14)

リザバーコンピューティングにおいて時系列データの記憶と分類を担うリザバーは、臨界的な性質を持つことが望ましいと考えられている。しかし、一般的にあるシステムにおいて臨界性を実現するためにはパラメータの微調整を必要とする。一方、我々が提案している非同期セルオートマトン(AT_ECA)はそのようなパラメータ調整を必要とせず、臨界的な時空間パターンを生成する。また、AT_ECAをリザバーとする学習システムは、高い学習能力を有することが明らかになっている。これらを踏まえて、本研究の目的はリザバーの状態を解析するための指標を提案して、AT_ECAの臨界性と学習能力の関係を明らかにすることである。まず初めに、初等セルオートマトン(ECA)をリザバーとした場合について、臨界的な時空間パターンを生成する特定の局所ルールの学習能力が高いことを示し、そのリザバーの状態の特徴を上記の指標によって明らかにする。次に、AT_ECAをリザバーとした場合について、多くの局所ルールで同じ特徴が認められることを示す。これらの結果より、AT_ECAの高い学習能力はその普遍的な臨界性に由来することが明らかになる。
著者
竹内 孝 西田 遼 鹿島 久嗣 大西 正輝
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集 第35回 (2021)
巻号頁・発行日
pp.2I3GS5b03, 2021 (Released:2021-06-14)

群衆に対する移動誘導は,突発的な事故や道路遮断で生じる交通渋滞の解消や,災害時に混雑した建物などの危険箇所からの迅速な避難などの分野で注目を集める問題である.ある状況下において誘導はどのような群衆移動を起こすか?この質問に解答するシステムが実現されれば,誘導の意思決定における補助が可能になると考えられる.本研究では,群衆移動誘導におけるwhat-if問題を,少数かつ選択バイアスを持つデータから誘導における因果効果推定を行う問題として定式化する.さらにバイアスを補正した高精度な予測を行うために,空間データ解析と因果推論の分野で広く研究されている深層表現学習を用いた空間畳み込み反事実回帰(SC-CFR)を提案する.介入効果推定の性能評価には,すべての誘導を実行した場合の群衆移動データが必要であるが,そのようなデータは存在しない.そこで,高精度なマルチエージェントシミュレータを用いて,新国立劇場での避難シナリオにおける避難データを生成した.このデータを用いた実験によって,提案手法によって介入効果の推定誤差が既存法と比較して最大56%削減されたことを示す.
著者
小川 祐樹 高野 雅典 森下 壮一郎 高 史明
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集 第35回 (2021)
巻号頁・発行日
pp.1D4OS3c03, 2021 (Released:2021-06-14)

様々なニュースメディアが存在するなか、人々のニュースに対する意識や行動も多様化してきている。ネット上におけるニュース接触に関しても、新聞社・通信社が運営するニュースサイトや、ポータルサイトからニュースを知るといった場面だけでなく、SNS上でニュースを知るといった場面も一般的になりつつある。一方で、TwitterなどのSNSは同質な情報環境になりやすいことから、利用者が接触できるニュースの範囲や内容が限定的になってしまうことで、多様な情報に接触する機会が低下してしまうことが懸念される。本研究では、Twitter上でのニュースツイートに着目し、このツイートの閲覧者がその後どのようなニュース動画の視聴行動を行ったかを分析することで、Twitter上でのニュース閲覧の効果を考察する。具体的には、ニュースのツイートとそこからリンクされるニュース動画の視聴ログを用いて、ニュースの継続視聴や視聴ジャンルの変化などの行動を分析する。