著者
加藤 浩徳 志摩 憲寿 中川 善典 中西 航
出版者
社会技術研究会
雑誌
社会技術研究論文集 (ISSN:13490184)
巻号頁・発行日
vol.9, pp.70-85, 2012 (Released:2012-10-03)
参考文献数
20

本論文は,高知県を対象として,交通システム成立の経緯を整理するとともに,その経緯と社会経済的要因や政治的要因との関係を分析するものである.同県の広域交通ネットワークの発展経緯を,古代~中世,近世,明治~戦前,戦後の4つの時代区分にしたがって整理した.その結果,高知県は,険しい四国山地と海に囲まれた地域であったため,古代から現在に至るまで,海路による広域交通ネットワークに頼らざるを得なかったこと,県領域内の閉鎖的な交通政策が広域旅客交通の発展を妨げたこと,高知県の陸路ネットワークの整備は,主に政治的要因によって実施されてきたこと,高知県の海上交通ネットワークは,一貫して関西地方との経済的結びつきのもとに発達してきたこと,四国遍路が高知県内の技術に与えた影響が大きいことなどを明らかにした.
著者
中西 航 福冨 義章 布施 孝志
出版者
一般社団法人 交通工学研究会
雑誌
交通工学論文集 (ISSN:21872929)
巻号頁・発行日
vol.3, no.4, pp.A_1-A_6, 2017-04-01 (Released:2017-04-01)
参考文献数
14

歩行空間の性能評価において歩行者流の密度-速度関係を考える場合、この関係がミクロスケールで地点依存しうる課題がある。しかし、現状の測定手法では地点依存を考慮した適切な測定箇所の設定は容易でない。これに対し、密度-速度関係の空間内での分布をも詳細に把握できれば、より精緻な設備配置や流動制御への展開が期待できる。本研究では、歩行者流の密度-速度関係に空間相関構造を組み込み、空間全域の測定データをひとつの回帰式でモデル化する方法を示す。空間フィルタリング手法である Harmonic Spatial Filtering により定式化し、横断歩道での実データに対し密度-速度関係と空間内の相関構造とを推定した。空間相関を考慮しない場合と比べて回帰精度の向上を示すとともに、推定された空間相関構造を解釈した。
著者
中西 航 布施 孝志
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D3(土木計画学) (ISSN:21856540)
巻号頁・発行日
vol.72, no.5, pp.I_673-I_681, 2016 (Released:2016-12-23)
参考文献数
14

本研究では,GPS測位値のような誤差を有する時系列観測を得たときに,その測位精度を表すモデルのパラメータをデータ適応的に推定する手法の有用性を示す.まず,測位精度を既往研究を援用してモデル化する.つぎに,一般状態空間モデルの枠組みにこのモデルを統合する.具体的には,ネットワーク上を移動する歩行者から取得される測位値に基づき,測位精度を歩行者位置,経路選択および移動速度と同時に逐次ベイズ推定する定式化を行った.仮想ネットワーク上から生起した擬似的な測位値への適用により推定精度を検証するとともに,従来手法との比較を通して提案手法の利点を示した.さらに,実空間上のデータにおいても,提案手法が機能することを確認した.
著者
加藤 浩徳 志摩 憲寿 中西 航
出版者
Sociotechnology Research Network
雑誌
社会技術研究論文集 (ISSN:13490184)
巻号頁・発行日
vol.8, pp.11-28, 2011

本論文は,山梨県を事例に交通システム成立の経緯を整理するとともに,その経緯と社会的要因との関係を分析するものである.同県の広域交通ネットワークの発展経緯を,近世以前,明治~戦前,戦後の3つの時代区分にしたがって整理した.山梨は,元来,山々に囲まれた地域であるため,近隣地域とのアクセスが不便であった.しかし,古来より道路網が整備されており,一時は,富士川を通じた舟運も栄えた.明治時代に入り,近代化が進められると,鉄道が整備され,舟運は衰退した.戦後は,観光農業と製造業が盛んとなり,東京という巨大市場へのアクセス向上のため新笹子トンネルや中央高速道路が開通された.これらの経緯を踏まえつつ,交通に関連する社会的要因を,国内動向,政治・政策,産業・宗教に分類し,これらと交通システムとの相互関係を時代別に分析した.
著者
中西 航
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D3(土木計画学) (ISSN:21856540)
巻号頁・発行日
vol.78, no.1, pp.24-33, 2022 (Released:2022-03-20)
参考文献数
19

道路ネットワークの性能評価においてFundamental Diagram (FD)は重要な役割を果たす.FDは原理的に場所ごとに異なるため,実データに基づいた任意地点でのFD推定が望まれる.そこで本研究では,全車両軌跡データを前提として,相互に異なるFDに従う区間を特定したうえで,各区間のFDを推定する.具体的には,軌跡データが与えられた連続空間に対して,スパースモデリングを用いることで区間分割とFD推定とを同時に実行できるモデルを定式化した.これにより,分析者の先験的な知識を必要とせず,統計的もしくは実用的に適した区間数を設定可能とした.提案手法を阪神高速道路における実データに適用し,推定結果の妥当性を示した.
著者
長崎 滉大 中西 航 朝倉 康夫
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D3(土木計画学) (ISSN:21856540)
巻号頁・発行日
vol.78, no.5, pp.I_825-I_831, 2023 (Released:2023-05-12)
参考文献数
10

道路の一地点を通過する交通量は一日の間で時間によって変動する.地点交通量の確率分布を推定することにより,路側での観測が容易な交通量データからドライバーの行動の時間変動を知ることができる可能性がある.また,交通量の時間変動のように24時間単位で繰り返されている現象に対しては,角度を扱う方向統計学を適用し,0時と24時を同一と見なして分析することが適切である.本研究では,方向統計学における確率分布である円周分布を混合した分布を用いて,高速道路の複数地点で観測された地点交通量の分布のパラメータ推定を行った.分布の推定により,交通量の時間変動を朝の出勤と夕方の帰宅の分布に分離することができた.また,朝の分布は左に歪んだ立ち上がりの速い分布であり,後者の分布は緩やかな分布であることがわかった.
著者
加藤 浩徳 志摩 憲寿 中西 航
出版者
社会技術研究会
雑誌
社会技術研究論文集 (ISSN:13490184)
巻号頁・発行日
vol.8, pp.11-28, 2011 (Released:2011-11-04)
参考文献数
48
被引用文献数
1

本論文は,山梨県を事例に交通システム成立の経緯を整理するとともに,その経緯と社会的要因との関係を分析するものである.同県の広域交通ネットワークの発展経緯を,近世以前,明治~戦前,戦後の3つの時代区分にしたがって整理した.山梨は,元来,山々に囲まれた地域であるため,近隣地域とのアクセスが不便であった.しかし,古来より道路網が整備されており,一時は,富士川を通じた舟運も栄えた.明治時代に入り,近代化が進められると,鉄道が整備され,舟運は衰退した.戦後は,観光農業と製造業が盛んとなり,東京という巨大市場へのアクセス向上のため新笹子トンネルや中央高速道路が開通された.これらの経緯を踏まえつつ,交通に関連する社会的要因を,国内動向,政治・政策,産業・宗教に分類し,これらと交通システムとの相互関係を時代別に分析した.
著者
中西 航 小林 巴奈 都留 崇弘 松本 拓朗 田中 謙大 菅 芳樹 神谷 大介 福田 大輔
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D3(土木計画学)
巻号頁・発行日
vol.74, no.5, pp.I_787-I_797, 2018
被引用文献数
4

観光施策の検討において,周遊行動の実態把握は重要である.アンケート調査やプローブデータの利用など様々な方法が存在するが,コストや普及率の問題から十分なサンプル数を得ることは容易ではない.本研究では,パッシブなデータ取得手段であるWi-Fiパケットセンサーを用いた周遊行動把握の可能性を検討する.沖縄本島・本部半島周辺の複数観光地にセンサーを設置し,観光客が所有するモバイル端末からのプローブリクエストデータを複数日にわたり計測した.計測データからプローブリクエストの特性を把握し,来場者数の推定可能性を確認したうえで,複数地点での同一端末の計測情報を用いて観光地間のOD表とトリップチェインの作成を行った.来場者数の時系列変動や地点間流動量の大小関係について妥当な結果を得るとともに,課題を整理した.
著者
中西 航 布施 孝志
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D3(土木計画学) (ISSN:21856540)
巻号頁・発行日
vol.73, no.5, pp.I_549-I_557, 2017 (Released:2017-12-27)
参考文献数
23

歩行者行動の高解像度な把握により街路上の施設配置の高度化などが見込まれる.一般に,高解像度に捉えた歩行軌跡は道路ネットワークの真上には存在しない.しかし,ネットワークに測位値を吸着させる従来のマップマッチング手法は,軌跡をネットワーク上に復元することが前提であるという課題を有する.そこで本研究では,ネットワークが有する誤差を連続空間上で明示的に考慮する手法を提案する.歩行軌跡のネットワークからのずれを潜在変数と捉え,これをGNSS測位値により測位誤差を考慮しながら逐次推定する手法である.誤差を有する観測から,ネットワーク上で移動を記述でき,かつ実際の位置をネットワーク上に限定しない軌跡を得る定式化を行うとともに,複数の設定におけるシミュレーションデータへの適用を通し,その有用性を示した.
著者
和田 健太郎 瀬尾 亨 中西 航 佐津川 功季 柳原 正実
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D3(土木計画学) (ISSN:21856540)
巻号頁・発行日
vol.73, no.5, pp.I_1139-I_1158, 2017 (Released:2017-12-27)
参考文献数
80

本稿では,道路上の交通流ダイナミクスを記述する標準的な枠組みであるKinematic Wave (KW)理論の近年の発展について解説を行う.具体的にはまず,KWモデルの従来の解析法を概説しその限界を述べた上で,交通流の変分理論(VT)を解説する.また,様々な座標系(Euler座標系,Lagrange座標系)で記述される交通流モデルがVTの枠組みにより相互に関係づけられることをみる.続く章では,上記の単一道路区間(リンク)でのモデルをネットワークに拡張するための理論について記述する.ここでは,多車線道路や交差点を対象に,複数のリンクの境界面における交通流を決めるための条件や手法を解説する.
著者
加藤 浩徳 志摩 憲寿 中川 善典 中西 航
出版者
Sociotechnology Research Network
雑誌
社会技術研究論文集 (ISSN:13490184)
巻号頁・発行日
vol.9, pp.70-85, 2012

本論文は,高知県を対象として,交通システム成立の経緯を整理するとともに,その経緯と社会経済的要因や政治的要因との関係を分析するものである.同県の広域交通ネットワークの発展経緯を,古代~中世,近世,明治~戦前,戦後の4つの時代区分にしたがって整理した.その結果,高知県は,険しい四国山地と海に囲まれた地域であったため,古代から現在に至るまで,海路による広域交通ネットワークに頼らざるを得なかったこと,県領域内の閉鎖的な交通政策が広域旅客交通の発展を妨げたこと,高知県の陸路ネットワークの整備は,主に政治的要因によって実施されてきたこと,高知県の海上交通ネットワークは,一貫して関西地方との経済的結びつきのもとに発達してきたこと,四国遍路が高知県内の技術に与えた影響が大きいことなどを明らかにした.