著者
原田 和弘 井澤 修平 中村 菜々子 吉川 徹 赤松 利恵 池田 大樹 久保 智英
出版者
一般社団法人日本体力医学会
雑誌
体力科学 (ISSN:0039906X)
巻号頁・発行日
vol.71, no.5, pp.417-429, 2022-10-01 (Released:2022-09-13)
参考文献数
38

Previous studies among middle-aged and older adults have shown that engagement in exercise with others is more strongly associated with better mental health than engagement in exercise alone. However, the applicability of such findings to workers remains unclear. This study aimed to examine whether 1) engagement in exercise with others and time spent exercising with others were associated with lower stress response and mental distress among workers, and 2) self-determined motivation toward exercise mediated these associations among workers. This was a cross-sectional study. A web-based questionnaire survey was conducted among 810 workers aged 20 to 59 years. The survey measured respondents’ engagement and time spent exercising alone and with others, self-determined motivation toward exercise, psychological and physical stress responses, mental distress, and basic factors. Basic factors were treated as covariates. The analyses of covariance showed that engagement in exercise with others was significantly associated with lower psychological and physical stress responses and mental distress, while engagement in exercise alone was not. Multiple regression analyses revealed that longer time spent exercising with others was not associated with lower psychological and physical stress responses or mental distress. Path analyses showed that mediation effect of self-determined motivation on these associations was not significant. Although dose-response associations and the mediating role of self-determined motivation were not confirmed, this study found that engagement in exercise with others was associated with lower stress responses and mental distress among workers.
著者
久保 智英
出版者
作業条件適応研究グループ
雑誌
若手研究(スタートアップ)
巻号頁・発行日
2008

疲労の回復は勤務中の手休めや休憩時にも生じるが、疲労が回復する大きな機会は勤務と勤務の間の余暇にある。しかし、これまで、どのような余暇の過ごし方が疲労回復に効果的であるのか、とりわけ昼夜の逆転が頻繁に起こる交代制勤務者に焦点を当てた知見は数少ない。本研究の目的は、健康生成論的な観点より、交代制勤務に従事する看護師を対象として、夜勤による疲労回復と余暇の過ごし方の関係を明らかにすることであった。
著者
久保 智英
出版者
独立行政法人 労働安全衛生総合研究所
雑誌
労働安全衛生研究 (ISSN:18826822)
巻号頁・発行日
pp.JOSH-2016-0007-SHI, (Released:2017-01-20)
参考文献数
34
被引用文献数
2

本稿では,近未来の働き方とそれによる労働者の疲労問題,そしてその対策について,先行研究を踏まえながら,著者の私見を述べた.その論点は,1)情報通信技術の発達による飛躍的な労働生産性の向上は,これまで労働者の生活時間のゆとりではなく,逆に新たなる作業時間に結びつく可能性があること,2)その影響により,労働者の働き方は,いつでもどこでも仕事につながることができ,ますます,オンとオフの境界線が曖昧になるかもしれないこと,3)その疲労対策としては,オフには物理的に仕事から離れるだけではなく,心理的にも仕事の拘束から離れられるような組織的な配慮と個人的な対処が重要であること,4)最近,注目されている勤務間インターバル制度と,勤務時間外での仕事のメールなどの規制としての「つながらない権利」を疲労対策として紹介したこと,に要約できる.いずれにしても,公と私の境界線がもともと曖昧なわが国の労働者にとっては,オフを確保することが近未来に生じうる労働者の疲労問題に対しての有効な手立てとなるだろう.
著者
久保 智英
出版者
独立行政法人 労働者健康安全機構 労働安全衛生総合研究所
雑誌
労働安全衛生研究 (ISSN:18826822)
巻号頁・発行日
vol.10, no.1, pp.45-53, 2017-02-28 (Released:2017-03-03)
参考文献数
34
被引用文献数
2 2

本稿では,近未来の働き方とそれによる労働者の疲労問題,そしてその対策について,先行研究を踏まえながら,著者の私見を述べた.その論点は,1)情報通信技術の発達による飛躍的な労働生産性の向上は,これまで労働者の生活時間のゆとりではなく,逆に新たなる作業時間に結びつく可能性があること,2)その影響により,労働者の働き方は,いつでもどこでも仕事につながることができ,ますます,オンとオフの境界線が曖昧になるかもしれないこと,3)その疲労対策としては,オフには物理的に仕事から離れるだけではなく,心理的にも仕事の拘束から離れられるような組織的な配慮と個人的な対処が重要であること,4)最近,注目されている勤務間インターバル制度と,勤務時間外での仕事のメールなどの規制としての「つながらない権利」を疲労対策として紹介したこと,に要約できる.いずれにしても,公と私の境界線がもともと曖昧なわが国の労働者にとっては,オフを確保することが近未来に生じうる労働者の疲労問題に対しての有効な手立てとなるだろう.
著者
池田 大樹 久保 智英 井澤 修平 中村 菜々子 吉川 徹 赤松 利恵
出版者
独立行政法人 労働者健康安全機構 労働安全衛生総合研究所
雑誌
労働安全衛生研究 (ISSN:18826822)
巻号頁・発行日
pp.JOSH-2023-0006-CHO, (Released:2023-07-19)
参考文献数
28

勤務間インターバルとは,勤務終了後から翌始業までの休息時間のことを言う.本研究は,勤務間インターバルと睡眠時間の組み合わせと職業性ストレスおよび病気欠勤の関連を検討した.本横断調査は,WEB形式で2022年2月に実施した.日勤労働者13,306名に対して勤務間インターバル,睡眠時間,職業性の高ストレス(職業性ストレス簡易調査票),病気欠勤について尋ねた.参加者を勤務間インターバルと睡眠時間に基づき14群に分類し,これを独立変数,高ストレス判定と病気欠勤を従属変数としたロジスティック回帰分析を実施した.その結果,短いインターバル(<11時間)と通常睡眠(≥6時間)や十分なインターバル(15時間)と短時間睡眠(<6時間)の組み合わせで,基準(十分なインターバルと通常睡眠)と比べてオッズ比が有意に高かった.これは,勤務間インターバルと睡眠時間を十分に確保することが職業性ストレスの低減に重要であり,勤務間インターバル制度によりインターバルが十分に確保されても,睡眠時間が短いと健康リスクが生じる可能性を示している.病気欠勤について,短いインターバルと短時間睡眠の組み合わせでオッズ比が有意に低かった.この原因として,勤務間インターバルが短い(長時間働かなければならない)人々は,忙しいために病気欠勤が必要な状況になっても休みを取れずあるいは取らず,結果的にオッズ比が低くなった可能性が考えられる.
著者
松元 俊 久保 智英 井澤 修平 池田 大樹 高橋 正也 甲田 茂樹
出版者
公益社団法人 日本産業衛生学会
雑誌
産業衛生学雑誌 (ISSN:13410725)
巻号頁・発行日
vol.64, no.1, pp.1-11, 2022-01-20 (Released:2022-01-25)
参考文献数
38

目的:日本においてトラックドライバーは脳・心臓疾患による過労死や健康起因事故が多い職種である.また,トラックドライバーは,脳・心臓疾患のリスクである高血圧症,肥満,高脂血症,糖尿病に関連する項目の定期健診での有所見率も高い.そこで,トラックドライバーの過労死防止策の立案に向けて,職種の特徴を踏まえた労働生活条件と,脳・心臓疾患に高血圧症,肥満,高脂血症,糖尿病を含めた健康障害,疾患前としての過労状態との関連について検討した.対象と方法:全国のトラックドライバーを対象として,上記の健康障害の既往歴および過労状態を含む,基本属性,生活習慣,働き方,休み方,運転労働の負担について質問紙調査を行った.47都道府県の1,082のトラック運送事業所に5部ずつ合計5,410部を配送し,1,992部を回収した(回収率36.8%).そのうち,女性41人および性別不明4件を除く男性1947人を解析対象とした.労働生活条件と各種健康障害との関連は多重ロジスティック回帰分析を用いて検証した.結果:解析対象トラックドライバーにおいて,肥満は22.2%,高血圧症は19.3%,高脂血症は8.5%,糖尿病は5.6%,心臓疾患は2.5%,脳血管疾患は0.7%,過労状態は6.0%に見られた.多重ロジスティック回帰分析の結果,健康障害の既往歴は,運行形態が長距離2泊以上と地場夜間早朝,勤務日の早朝覚醒有り,休日の過し方が不活発,夜間運転の重い負担と有意な関連が示された.また,過労状態は,勤務日の中途覚醒および睡眠不足感有り,休日の睡眠時間が6時間未満および睡眠不足感有り,ひと月あたりの休日数が0–3日,運転・夜間運転・作業環境の重い負担と有意な関連が示された.考察と結論:トラックドライバーにおける健康障害および過労状態と有意な関連は,夜間・早朝勤務への従事および夜間運転の負担が重いこと,また夜間・早朝勤務に付随する睡眠の量と質の低下に見られた.本研究より,過労死防止策を念頭に置いた勤務の改善点として,夜間運転の負担軽減や,十分な夜間睡眠取得および活動的に過ごすための休日配置の重要性が示唆された.
著者
松元 俊 久保 智英 井澤 修平 池田 大樹 高橋 正也 甲田 茂樹
出版者
独立行政法人 労働者健康安全機構 労働安全衛生総合研究所
雑誌
労働安全衛生研究 (ISSN:18826822)
巻号頁・発行日
vol.13, no.1, pp.3-10, 2020-02-28 (Released:2020-02-29)
参考文献数
23
被引用文献数
2 1

本研究は,脳・心臓疾患による過労死の多発職種であるトラックドライバーにおいて,労災認定要件であ る過重負荷と過労の関連について質問紙調査を行った.1911人の男性トラックドライバーから,属性,健康状態, 過重負荷(労働条件:運行形態,時間外労働時間,夜間・早朝勤務回数,休息条件:睡眠取得状況,休日数),疲労感に関する回答を得た.運行形態別には,地場夜間・早朝運行で他運行に比して一か月間の時間外労働が 101時間を超す割合が多く,深夜・早朝勤務回数が多く,勤務日の睡眠時間が短く,1日の疲労を持ち越す割合 が多かった.長距離運行では地場昼間運行に比して夜勤・早朝勤務回数が多く,休日数が少なかったものの, 睡眠時間は勤務日も休日も長く,過労トラックドライバーの割合は変わらなかった.過労状態は,1日の疲労の持ち越しに対して勤務日と休日の5時間未満の睡眠との間に関連が見られた.週の疲労の持ち越しに対しては,一か月間の101時間以上の時間外労働,休日の7時間未満の睡眠,4日未満の休日の影響が見られた。運行形態間で労働・休息条件が異なること,また1日と週の過労に関連する労働・休息条件が異なること,過労に影響 を与えたのは主に睡眠時間と休日数の休息条件であったことから,トラックドライバーの過労対策には運行形態にあわせた休日配置と睡眠管理の重要性が示唆された.
著者
池田 大樹 久保 智英 松元 俊 新佐 絵吏 茅嶋 康太郎
出版者
独立行政法人 労働安全衛生総合研究所
雑誌
労働安全衛生研究 (ISSN:18826822)
巻号頁・発行日
vol.12, no.1, pp.51-59, 2019-02-28 (Released:2019-02-28)
参考文献数
28

本研究では,職場環境改善の取組み時における勤務時間外の仕事に関する行動(メール確認,自宅仕事)が,労働者の睡眠や疲労,生産性等に及ぼす影響を検討した.製造業の中小企業において,組織体制の変更,勤務 開始時刻の多様化,勤務体制の多様化,作業環境の変更の4つの職場環境改善取組みが実施された.調査は,職場環境改善の約1か月前(事前調査),3,6,12か月後の計4回実施し,調査の同意が得られた36名を分析対 象とした.調査内容として,基本属性,睡眠の質,勤務時間外における仕事との心理的距離,生産性,疲労回復状況等を測定した.また,勤務時間外における仕事に関するメールの確認,自宅での仕事に関する設問を設け,その有無により,群分けを行った.線形混合モデル分析を行った結果,生産性に群と調査時期の交互作用が見 られ,自宅仕事が有った群のみ,職場環境改善前と比較して3か月後の生産性が低下したこと,無かった群と比較して3,6,12か月後の生産性が低かったことが示された.また,調査時期の主効果が睡眠の質と疲労回復 に見られ,職場環境改善後にそれらの改善及び改善傾向が生じたことが示された.また,群の主効果が心理的距離に見られ,勤務時間外にメール確認が無かった群は,有った群と比較して,勤務時間外に仕事との心理的距離が取れていたこと,一方,自宅仕事が無かった群は,有った群と比較して,心理的距離だけでなく,睡眠の質や疲労回復状況も良いことが示された.以上により,職場環境改善時における仕事関連の行動が労働者の生産性に影響を及ぼすこと等が示された.今後,職場環境改善の一環として,職場外・勤務時間外における働き方・休み方の改善も検討していく必要があると考えられる.
著者
松元 俊 久保 智英 井澤 修平 池田 大樹 高橋 正也 甲田 茂樹
出版者
独立行政法人 労働安全衛生総合研究所
雑誌
労働安全衛生研究 (ISSN:18826822)
巻号頁・発行日
pp.JOSH-2019-0021-GE, (Released:2019-12-06)
参考文献数
23
被引用文献数
1

本研究は,脳・心臓疾患による過労死の多発職種であるトラックドライバーにおいて,労災認定要件であ る過重負荷と過労の関連について質問紙調査を行った.1911人の男性トラックドライバーから,属性,健康状態, 過重負荷(労働条件:運行形態,時間外労働時間,夜間・早朝勤務回数,休息条件:睡眠取得状況,休日数),疲労感に関する回答を得た.運行形態別には,地場夜間・早朝運行で他運行に比して一か月間の時間外労働が 101時間を超す割合が多く,深夜・早朝勤務回数が多く,勤務日の睡眠時間が短く,1日の疲労を持ち越す割合 が多かった.長距離運行では地場昼間運行に比して夜勤・早朝勤務回数が多く,休日数が少なかったものの, 睡眠時間は勤務日も休日も長く,過労トラックドライバーの割合は変わらなかった.過労状態は,1日の疲労の持ち越しに対して勤務日と休日の5時間未満の睡眠との間に関連が見られた.週の疲労の持ち越しに対しては,一か月間の101時間以上の時間外労働,休日の7時間未満の睡眠,4日未満の休日の影響が見られた。運行形態間で労働・休息条件が異なること,また1日と週の過労に関連する労働・休息条件が異なること,過労に影響 を与えたのは主に睡眠時間と休日数の休息条件であったことから,トラックドライバーの過労対策には運行形態にあわせた休日配置と睡眠管理の重要性が示唆された.
著者
久保 智英 佐々木 司 松元 俊
出版者
独立行政法人 労働安全衛生総合研究所
雑誌
労働安全衛生研究 (ISSN:18826822)
巻号頁・発行日
vol.3, no.1, pp.47-54, 2010 (Released:2010-04-27)
参考文献数
17

本研究では,長時間過密労働をシミュレートした環境下での,1)情動的負担の変容過程,2)情動的負担と行動的疲労の関係を明らかにするために事例的検討を行った.その際,情動的負担が顕著だった事例と,同じ状況にあっても情動的負担が抑制されていた事例に着目した.結果より,「怒り-敵意」因子に属する訴えは,行動的疲労が亢進する上での重要なサインであること,情動的負担と行動的疲労との関係は情動的負担が高い時に行動的疲労が軽・中程度で,情動的負担が低くなると行動的疲労は高くなる関係にあることが示唆された.