著者
木村 美和子 千原 康裕 二藤 隆春 田山 二朗
出版者
特定非営利活動法人 日本気管食道科学会
雑誌
日本気管食道科学会会報 (ISSN:00290645)
巻号頁・発行日
vol.57, no.6, pp.502-507, 2006 (Released:2006-12-25)
参考文献数
6
被引用文献数
3 2

ムンプスの合併症として,呼吸困難や咽喉頭浮腫は報告が少ない。今回われわれは咽喉頭浮腫を合併したムンプスの2症例を経験したので報告した。 症例は26歳男性と36歳女性。初診時より顎下部耳下部の腫脹,呼吸困難を認め当院救急外来受診,喉頭ファイバースコープにて咽喉頭に浮腫を呈しており入院となった。頸部CTでは,顎下腺,耳下腺とその周囲にびまん性の腫脹を認め,咽喉頭の浮腫状腫脹が著明であった。血液検査でWBC・CRP正常範囲内,血清アミラーゼ高値を認めた。ステロイド投与により呼吸困難は改善し退院した。その後の検査でムンプスウィルスIgM陽性を確認した。 2症例ともステロイド投与で咽喉頭浮腫は軽減し,気管切開を回避することができた。咽喉頭浮腫の原因は,顎下腺とその周囲軟部組織の炎症性浮腫により,二次的に咽喉頭から流出するリンパ管がうっ滞して循環障害を起し,咽喉頭粘膜にうっ血性の浮腫が生じたためと推察した。 咽喉頭浮腫を合併したムンプスの成人例を2症例報告した。耳鼻咽喉科の臨床現場では頸部腫脹と咽喉頭浮腫を合併した症例にしばしば遭遇するが,ムンプスウィルス感染の可能性も鑑別診断の1つにあげる必要があると考えられる。
著者
森 安仁 上羽 瑠美 橘 澄 佐藤 拓 後藤 多嘉緒 藤巻 葉子 二藤 隆春 山岨 達也
出版者
一般社団法人 日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会
雑誌
日本耳鼻咽喉科学会会報 (ISSN:00306622)
巻号頁・発行日
vol.120, no.7, pp.932-938, 2017-07-20 (Released:2017-08-18)
参考文献数
18
被引用文献数
1 1

歯ブラシによる口腔・咽頭外傷は小児に多く, 外力の加わる方向により深頸部や頭蓋内を損傷する可能性がある. 当院で入院加療を行った4症例を報告する. 症例1は咽頭後壁の受傷翌日に発熱と呼吸障害を来し, 深頸部・縦隔の気腫と周囲への感染を認め人工呼吸管理を要した. 3症例は口腔内の創傷が軽微だったが, CT で全例に気腫を認めた. 症例2は左副咽頭間隙を中心とした気腫, 症例3は咽後間隙上方に気腫と腫脹, 症例4は右顎下部から副咽頭間隙に気腫と腫脹を認めた. 全例が抗菌薬による保存的治療で治癒したが, 歯ブラシ外傷では局所所見が軽微な場合でも異物遺残や気腫, 深部感染の可能性に留意し, CT などの画像評価を行うべきである.
著者
田山 二朗 弓削 忠 二藤 隆春 木村 美和子
出版者
The Japan Society of Logopedics and Phoniatrics
雑誌
音声言語医学 (ISSN:00302813)
巻号頁・発行日
vol.48, no.2, pp.158-162, 2007-04-20 (Released:2010-06-22)
参考文献数
7
被引用文献数
1 2

アテロコラーゲンは, 異種タンパクであるためアレルギー反応等のおそれや, 吸収率が高いことから複数回の注入が必要になるなどの短所があるが, 注入手技が多彩で簡便であるため使用しやすく, 全身状態の低下した症例, 全身麻酔不能例や外来治療を希望する例に対する局所麻酔下日帰り内視鏡手術に適している.咽喉頭の麻酔が十分なされていれば, ほとんどの症例において本手技が施行可能である.手術効果は声帯の状態によって異なる.主に筋層に萎縮が見られる声帯麻痺例 (特に正中固定例) については, 筋層のvolume増加が得られるために音声改善効果が高くなる.声帯溝症では振動部位である粘膜の病変が主であるため, 術後声帯のvolume増大により発声時の声門閉鎖不全が改善されたとしても, 音質の改善に関しては不十分となる.なお, 吸収率が高いため安定した効果を得るには3~4回の注入が必要である.合併症としては, 術時の局所麻酔中毒や喉頭痙攣, 術後の嚥下性肺炎や喉頭浮腫, 粘膜層への注入による声帯振動障害などが挙げられる.われわれの音声外来では, 高齢者の声帯萎縮性病変が増加しており, 声帯内注入術はこれらに対して十分活用できる音声外科的治療法としてもっと普及してよい術式である.そのためには, 声帯内注入術や注入材料に対する正しい理解と, 安全, 簡便かっ安定した, さらに粘膜内注入にも適した注入材料の開発が望まれている.
著者
二藤 隆春 山内 彰人 上羽 瑠美 山岨 達也
出版者
THE JAPAN LARYNGOLOGICAL ASSOCIATION
雑誌
喉頭 (ISSN:09156127)
巻号頁・発行日
vol.24, no.2, pp.97-99, 2012-12-01 (Released:2013-05-10)
参考文献数
13
著者
二藤 隆春 今川 博 溜箭 紀子 山岨 達也 榊原 健一 田山 二朗
出版者
日本音声言語医学会
雑誌
音声言語医学 (ISSN:00302813)
巻号頁・発行日
vol.51, no.2, pp.166-170, 2010-04-20
参考文献数
8

声帯瘢痕は, 手術や外傷による損傷, 炎症の反復などにより本来柔軟な声帯粘膜が硬い瘢痕組織に置換され, 声帯振動の異常から音声障害が生じる疾患である. 瘢痕性病変の部位や程度を正確に評価するには通常の喉頭内視鏡検査では困難であり, 喉頭ストロボスコピーや高速度デジタル撮影が必要である. 患側の声帯振動, 粘膜波動の減弱や消失, 両側声帯間の位相差や声門閉鎖不全などの所見が観測される. 画像解析法として, 声帯振動の時系列的な変化を追うキモグラフや部位ごとの声帯振動の差異を表示可能な喉頭トポグラフなどが活用されはじめ, さらなる発展が期待されている. 症状と喉頭内視鏡検査所見が一致しない場合は, 声帯瘢痕の可能性も念頭におき, 積極的に精査を進めることが重要である.
著者
二藤 隆春 木村 美和子 田山 二朗
出版者
日本喉頭科学会
雑誌
喉頭 (ISSN:09156127)
巻号頁・発行日
vol.19, no.2, pp.101-105, 2007-12-01 (Released:2012-09-24)
参考文献数
11
被引用文献数
1
著者
木村 美和子 萩澤 美帆 中嶋 正人 二藤 隆春 田山 二朗
出版者
The Japan Broncho-esophagological Society
雑誌
日本気管食道科学会会報 (ISSN:00290645)
巻号頁・発行日
vol.56, no.6, pp.484-488, 2005-12-10
被引用文献数
3 3 6

ガス壊疽はガス産生を伴う壊疽性の軟部組織感染症であり, クロストリジウム属に起因するものと非クロストリジウム属に起因するものとに大別される。従来, 頭頸部領域には稀とされてきたが, 最近報告例が増加し, 強い病原性を呈する可能性があり非常に注意を要する。今回われわれは齲歯が原因と予想される頸部から縦隔まで進展した非クロストリジウム属に起因する頸部ガス壊疽の症例を経験した。本症例は皮下に握雪感を伴い, ガス産生菌によって引き起こされた, 急速に進行する軟部組織の壊死性感染症であり, ガス壊疽と診断した。造影CTにて両側頸部, 縦隔に著明なガス像と膿瘍形成を認め, 術前の病変の進展範囲の判定に有用であった。受診同日に局所麻酔下に気管切開を施行し, 気道確保後, 全身麻酔下に頸部膿瘍切開排膿術, デブリードメント, 縦隔ドレナージを施行し, 術後も呼吸器科と連携して約2週間十分に抗菌薬投与し, 救命しえた。ガス壊疽は症状の進行が非常に急速であり, 炎症の波及の範囲を適切に判断した迅速なドレナージと抗菌薬投与が重要であると考えた。