著者
五味 一博
出版者
特定非営利活動法人 日本歯周病学会
雑誌
日本歯周病学会会誌 (ISSN:03850110)
巻号頁・発行日
vol.56, no.4, pp.367-374, 2015-01-30 (Released:2015-02-18)
参考文献数
60
被引用文献数
2
著者
八島 章博 鈴木 丈一郎 田村 紗恵子 松島 友二 五味 一博 新井 髙
出版者
特定非営利活動法人 日本歯周病学会
雑誌
日本歯周病学会会誌 (ISSN:03850110)
巻号頁・発行日
vol.57, no.4, pp.159-167, 2015-12-28 (Released:2015-12-29)
参考文献数
34

近年,音波歯ブラシが一般に普及している。音波歯ブラシの利点は高振動数によりプラーク除去効率に優れ,歯周ポケット内細菌に影響を与えていると考えられる。しかし,音波歯ブラシの歯周ポケット内細菌への影響を評価した研究は少ない。本研究では,音波歯ブラシのプラーク除去効果と臨床パラメータの変化,歯周ポケット内細菌への影響について評価した。振動数の異なる音波歯ブラシ3種と手用ブラシを無作為に40名の被験者に割り振り,使用前,2, 4週後に臨床パラメータ(Probing Pocket Depth, Gingival Bleeding Index, Gingival Index)とPlaque Control Recordを評価した。歯周ポケット内細菌はPCR-Invader法により総菌数と歯周病原細菌数を評価した。全歯ブラシで,ベースライン時に比べ,4週後のPlaque Control Recordと臨床パラメータで改善傾向を認めた。歯周ポケット内細菌は,いずれの歯ブラシでも総菌数の顕著な変化はみられなかったが,歯周病原細菌の中には音波歯ブラシの使用によって減少傾向を示す細菌種も存在した。以上より,どの歯ブラシを用いても縁上プラークの減少と臨床パラメータの改善が認められ,一定の効果を有することが示された。また,音波歯ブラシは,歯周ポケット内細菌叢に影響を与える可能性のあることが示唆された。
著者
平尾 千波 後藤 美樹子 池島 巌 大島 朋子 湯浅 茂平 向後 生郎 亀井 優徳 五味 一博 前田 伸子 新井 高 桃井 保子
出版者
特定非営利活動法人 日本歯科保存学会
雑誌
日本歯科保存学雑誌 (ISSN:03872343)
巻号頁・発行日
vol.52, no.3, pp.255-263, 2009-06-30 (Released:2018-03-30)
参考文献数
23

本研究では,古くから飲料・食品として親しまれてきたココアを含有した試験研磨材を試作し,その有用性について,ウシ歯を用いたin vitro試験と臨床試験によって検討した.In vitro試験では,試験研磨材として,純ココア(森永製菓)を蒸留水に縣濁させ,0.2g/mlココア溶液(ココア研磨材)を作製した.比較対照として,0.2g/mlリン酸水素カルシウム水溶液(リン酸水素カルシウム研磨材)と,蒸留水を用意した.ウシ抜去歯を紅茶液に浸漬し,歯面を着色させた.ココア研磨材,リン酸水素カルシウム研磨材,蒸留水の3グループにウシ歯を分類し,各試験研磨材を用いて研磨を行った.研磨は,ウシ歯唇面の被験部位に対し,ポリッシングブラシにて,同一条件下で行った.着色前,着色後,3分間研磨後,6分間研磨後において,被験部位を分光式色彩計にて測色し,CIEL*a*b*で表示した.着色後と3分間研磨後の色調,着色後と6分間研磨後の色調それぞれについて色差(ΔE*ab)を算出し,各試験研磨材の違いについてTukeyの多重比較を行った(α=0.05).さらに,ココア溶液による歯面の着色が生じるか否か検討するため,ココア溶液(4g/100ml)を作製し,別に準備したウシ歯を浸漬した.ココア溶液浸漬前後の色調変化を,紅茶液に浸漬前後の色調変化と比較した.臨床試験では,ココアパウダー含有の試作歯磨剤を使用する被験歯磨剤群と,ココアパウダー不含有の試作歯磨剤を使用するプラセボ群に被験者を分け,1ヵ月間使用した前後の前歯の色調の測定と,プラーク指数(PLI,Silness&Loe法)の判定を同一評価者により行い,二重盲検法により比較検討した.結果は,Mann-Whitney U testで解析した(α=0.05).In vitro試験の結果,ココア研磨材による研磨前後の色差は,蒸留水による研磨前後の色差に対し有意に大きい値を示した.ココア研磨材による研磨前後の色差と,リン酸水素カルシウム研磨材による研磨前後の色差に有意差はなかった.各試験研磨材の研磨前後の色差は,3分間研磨前後,6分間研磨前後の間で大きな変化はみられなかった.また,ココア溶液にウシ歯を浸漬した場合,紅茶とは異なり,ほとんど着色は生じなかった.臨床試験の結果,試験期間前後における歯の明るさの差とプラーク除去効果は,被験歯磨剤群とプラセボ群の間に有意差は認められなかった.以上の結果より,ココアパウダーを含有した試験研磨材は,歯面着色除去効果を有することが示されたが,歯磨剤への臨床応用試験において,今回の試験条件下では有意差を認めるまでにはいたらなかった.
著者
深谷 芽吏 鈴木 綾香 船津 太一朗 松島 友二 八島 章博 長野 孝俊 五味 一博
出版者
特定非営利活動法人 日本歯周病学会
雑誌
日本歯周病学会会誌 (ISSN:03850110)
巻号頁・発行日
vol.62, no.1, pp.27-37, 2020-03-31 (Released:2020-03-28)
参考文献数
28

歯科用CT装置(CBCT)は,診断に必要な部位とその周囲組織の3次元的形態を評価できるだけでなく,指定した部位からの距離や角度の計測も可能である。デンタルX線写真などから推測した骨欠損形態は,実際の骨欠損状態とは異なる場合がある。特に歯周組織再生療法を行う場合,事前に正確な骨欠損状態を把握しておくことは手術の成功に大きく係わる。そこで当講座では,歯周組織再生療法を予定する患者に対しCBCTの撮影を行い,さらに3Dプリンターで模型を作製し,事前に歯周組織再生療法のカンファレンスを行うことを義務づけている。本症例報告は,当講座における歯周組織再生療法のカンファレンスの流れと,実際に行った2症例について報告する。本症例は,検査所見にて垂直性骨欠損を確認した。その後,手術予定部位のCBCT画像,3次元模型,臨床データを基に術前カンファレンスを行った。歯周組織再生療法時に比較したところ,3次元模型は実際の骨欠損形態をほぼ再現していた。歯周組織再生療法を予定している患者に対して,CBCT撮影及び3次元模型を作成することにより,手術部位の骨欠損形態を事前に把握することができ,手術前の十分な討論が可能となった。我々の取り組みにより,手術をより安全かつ効果的に行うことができると示された。また手術前に十分なカンファレンスを行うことは,若手歯科医師の育成,および患者への説明のツールとしても有用であった。
著者
渋川 直也 五味 一博 飯野 史明 金指 幹元 鈴木 丈一郎 大島 朋子 前田 伸子 新井 高
出版者
JAPANESE SOCIETY OF ORAL THERAPEUTICS AND PHARMACOLOGY
雑誌
歯科薬物療法 (ISSN:02881012)
巻号頁・発行日
vol.22, no.2, pp.83-90, 2003-08-01 (Released:2010-06-08)
参考文献数
39
被引用文献数
3

Azithromycin is an azalide antibiotic, which has a strong effect on a wide variety of oral bacteria. It is taken up by phagocytes and is released over a long period in the inflamed tissue. This study investigated the clinical and microbiological effects, and measured the drug concentration in gingival of periodontal patients systemically administered azithromycin. The subjects were 26 adults diagnosed with periodontitis and given azithromycin (zithromac®) 500 mg once daily for 3 days. Clinical parameters such as PD, GI, BOP and GCF were examined at days 0, 7, and 14, and subgingival plaque was collected by paper points at days 0, 4, 7 and 14. The total number of cultivable bacteria was counted and six of the periodontopathic bacteria —Porphyromonas gingivalis, Actinobacillus actinomysetemcomitans, Bacteroides forsythus, Prevotella intermedia, Prevotella nigresence, and Toreponema denticola—were assessed by the PCR method. The lining gingiva of periodontal pocket was collected by pocket curettage at days 4 and 7. The azithromycin concentration was measured by agar diffusion bioassay.The total number of bacteria was significantly decreased at days 4 and 7, but was slightly increased at day 14. Continuous reduction of the six bacteria was recognized until day 14 by PCR. These bacteria were not detected at day 14 without Porphyromonas gingivalis. This result might be due to improvement of anaerobic condition caused by pocket reduction. The azithromycin concentration in the lining gingival tissues of periodontal pocket was 2.92±1.97μg/g at day 4 and 1.27±0.95μg/g at day 7. Half the drug concentration was still detected at 7 days after the first administration in inflamed gingiva.These results indicate that azithromycin may be a useful adjunct agent for adult periodontitis. In the future, we will consider a new periodontal therapy using this behavior of azithromycin.
著者
牧野 智彦 大島 朋子 川崎 文嗣 五味 一博
出版者
特定非営利活動法人 日本歯周病学会
雑誌
日本歯周病学会会誌 (ISSN:03850110)
巻号頁・発行日
vol.51, no.4, pp.303-315, 2009 (Released:2010-05-31)
参考文献数
41
被引用文献数
2 1

現在, インプラント治療が広く行われているが, その一方でインプラント周囲炎を発症する症例が増加する傾向がある。インプラント周囲炎は歯周ポケットからインプラント周囲溝へ歯周病関連細菌が伝播することにより生じると考えられることから, 一口腔単位での治療が必要である。重度歯周病患者に対して一口腔単位で細菌をコントロールする治療法としてアジスロマイシン(AZM)を用いたfull-mouth SRP (FM-SRP)が報告され, 早期に病態が改善し長期間維持されることが示されている。そこで本研究はインプラント周囲炎を伴う歯周病患者に対し, AZMを併用したFM-SRPを行い, 通常行われる1/3顎ずつのSRPと比較し, インプラント周囲炎ならびに歯周炎における効果を臨床的, 細菌学的に評価した。その結果, 実験群ではインプラント・天然歯ともに対照群と比較し臨床症状が有意に改善し,3ヵ月間維持された。また, PCR-Invader法により歯周病関連細菌5菌種の定量測定を行ったところ, 実験群においてインプラント・天然歯ともに細菌数は対照群と比較し3ヵ月間低く保たれていた。さらに, FM-SRPが細菌叢全体に与える影響を検索するため, T-RFLP法を用いて多菌種解析を行い, Cluster解析したところ, インプラント・天然歯とも治療前後で統計学的に細菌叢の変化が認められた。以上の結果から, 病態の改善には細菌叢の変化が深く影響していることが考えられ, AZMを用いたFM-SRPはインプラント周囲炎に対して臨床的かつ細菌学的に有効な治療法であることが示された。日本歯周病学会会誌(日歯周誌)51(4) : 303-315,2009
著者
八島 章博 五味 一博 大島 朋子
出版者
特定非営利活動法人 日本歯周病学会
雑誌
日本歯周病学会会誌 (ISSN:03850110)
巻号頁・発行日
vol.48, no.1, pp.17-27, 2006 (Released:2006-08-07)
参考文献数
39
被引用文献数
2 3

歯周疾患は歯周病関連細菌が引き起こす感染症疾患であり, 治療法として最も有効なのはブラッシングやスケーリング·ルートプレーニング (SRP) である。特にSRPは歯肉縁下プラークをコントロールする上で重要な位置を占める。しかし, SRPは通常数回に分けて行われ, SRPを終了した部位にまだSRPを行っていない部位から歯周病関連細菌が伝播し, 処置した部位が再細菌感染を起こし, 歯周疾患の再発を招く危険性が考えられる。そこで我々は, 抗菌内服薬としてアジスロマイシンを術前投与することで細菌数を減少させ, 薬剤濃度が維持された状態で, 全顎のSRPを1回で行うone-stage full-mouth SRPを行い, 通法に行なわれる1/3顎ずつのSRPと検出可能な総菌数, 黒色色素産生グラム陰性桿菌数 (BPRs) および各種臨床パラメーターを術後3カ月まで比較検討した。その結果, 総菌数の変化に差は見られなかったが, one-stage full-mouth SRPを行った群ではBPRsが検出されなかったのに対し, 1/3顎ずつのSRPを行った群では術後3カ月以内に検出された。また, 臨床パラメーターは術後3カ月まで, one-stage full-mouth SRPを行った群が1/3顎ずつのSRPを行った群よりも良好な状態を示した。以上の結果から, アジスロマイシンを用いたone-stage full-mouth SRPは臨床的にも細菌学的にも優れた術式であることが示された。
著者
牧野 智彦 大島 朋子 川崎 文嗣 五味 一博
出版者
特定非営利活動法人 日本歯周病学会
雑誌
日本歯周病学会会誌 (ISSN:03850110)
巻号頁・発行日
vol.51, no.4, pp.303-315, 2009-12-28
参考文献数
40
被引用文献数
1

現在, インプラント治療が広く行われているが, その一方でインプラント周囲炎を発症する症例が増加する傾向がある。インプラント周囲炎は歯周ポケットからインプラント周囲溝へ歯周病関連細菌が伝播することにより生じると考えられることから, 一口腔単位での治療が必要である。重度歯周病患者に対して一口腔単位で細菌をコントロールする治療法としてアジスロマイシン(AZM)を用いたfull-mouth SRP (FM-SRP)が報告され, 早期に病態が改善し長期間維持されることが示されている。そこで本研究はインプラント周囲炎を伴う歯周病患者に対し, AZMを併用したFM-SRPを行い, 通常行われる1/3顎ずつのSRPと比較し, インプラント周囲炎ならびに歯周炎における効果を臨床的, 細菌学的に評価した。その結果, 実験群ではインプラント・天然歯ともに対照群と比較し臨床症状が有意に改善し,3ヵ月間維持された。また, PCR-Invader法により歯周病関連細菌5菌種の定量測定を行ったところ, 実験群においてインプラント・天然歯ともに細菌数は対照群と比較し3ヵ月間低く保たれていた。さらに, FM-SRPが細菌叢全体に与える影響を検索するため, T-RFLP法を用いて多菌種解析を行い, Cluster解析したところ, インプラント・天然歯とも治療前後で統計学的に細菌叢の変化が認められた。以上の結果から, 病態の改善には細菌叢の変化が深く影響していることが考えられ, AZMを用いたFM-SRPはインプラント周囲炎に対して臨床的かつ細菌学的に有効な治療法であることが示された。<BR>日本歯周病学会会誌(日歯周誌)51(4) : 303-315,2009
著者
松島 友二 鈴木 琢磨 八島 章博 白川 哲 鈴木 丈一郎 五味 一博
出版者
特定非営利活動法人 日本歯科保存学会
雑誌
日本歯科保存学雑誌 (ISSN:03872343)
巻号頁・発行日
vol.58, no.4, pp.306-313, 2015 (Released:2015-08-31)
参考文献数
28

目的 : 極細毛を用いた手用歯ブラシは, 極細毛が歯周ポケット内に到達し, 歯周ポケット内のプラークコントロールに効果があるとされているが, 手用歯ブラシでは細かな振動を与えることが困難で, 極細毛の効果を十分に発揮することができないと考えられる. 本研究では, 微細な振動を与える音波歯ブラシに極細毛を応用した場合のプラーク除去効果, 歯周ポケット内の細菌叢の変化および歯肉に対する傷害を調べることを目的とした.  材料と方法 : 実験には段差の異なる極細毛3種類と手用極細毛歯ブラシを用いた. 被験者は, 歯肉炎または軽度歯周炎を有する歯周病患者52名を対象とした. この52名を無作為に4群に分け, 0週, 2週および4週後に歯肉擦過傷, 歯肉溝滲出液量, ポケット深さ, BOP, GI, PCR値を測定した. また, 歯周病患者18名について段差3mmの極細毛歯ブラシを音波歯ブラシおよび手用歯ブラシで用い, 使用前後のポケット内細菌をPCR-Invader法で測定した.  結果 : すべての歯ブラシにおいて歯肉への傷害は軽微であった. また, プラーク除去および歯肉の炎症改善は, 各歯ブラシ間に有意差を認めなかった. 段差3mmの極細毛を音波歯ブラシで用いた場合, 有意に細菌の減少が認められた.  考察 : 極細毛を応用した音波歯ブラシは, ポケット内のプラークコントロールに有効であると考えられた. さらに歯肉傷害は少なく, 安全に使用できることが確認された.
著者
五味 由季子 長﨑 満里子 三澤 絵理 梶山 創太郎 斉藤 まり 長野 孝俊 井上 孝二 五味 一博
出版者
特定非営利活動法人 日本歯周病学会
雑誌
日本歯周病学会会誌 (ISSN:03850110)
巻号頁・発行日
vol.56, no.1, pp.49-56, 2014-04-11 (Released:2015-02-18)
参考文献数
27
被引用文献数
2

インプラントは広く臨床に応用され,インプラントを有する患者数も増加している。インプラントには生体安定性に優れたチタンが用いられているが、最近になりフッ素イオンの存在下ではチタンの耐食性が低下し腐食することが報告されている。特に食物やプラークによる pH の変化が生じる口腔においてフッ素が存在するとチタンの腐食が進行すると考えられる。しかし,市販の歯磨剤の多くはう蝕の予防を目的にフッ化物が添加されている。本研究ではフッ素の存在に伴うリスクを排除し長期間に渡って使用できるインプラント専用の歯磨剤の開発を目的とし,試作フッ化物未含有歯磨剤および洗口剤のチタン合金および純チタンに対する影響を共焦点レーザー顕微鏡と走査型電子顕微鏡を用いて市販のフッ素含有歯磨剤およびフッ素塗布剤と比較検討した。その結果,9000 ppm を超えるフッ素を含有するフッ素塗布剤では著しいチタンの腐食が認められた。1000 ppm 以下のフッ素含有歯磨剤においてもコントロールと比較して有意に表面が荒れることが示された。さらに酸性環境下でフッ素が存在すると腐食が進み表面粗さが進行すると考えられた。また,純チタンはチタン合金より腐食傾向が強かった。一方,フッ素未含有の試作歯磨剤および洗口剤ではチタン表面の腐食はほとんど認められなかった。 以上より試作歯磨剤および洗口剤はインプラントを口腔に保有する患者に対して有用であり安全性が高いと考えられた。 日本歯周病学会会誌(日歯周誌)56(1):49-56,2014
著者
八島 章博 鈴木 琢磨 松島 友二 五味 一博
出版者
特定非営利活動法人 日本歯科保存学会
雑誌
日本歯科保存学雑誌 (ISSN:03872343)
巻号頁・発行日
vol.58, no.4, pp.314-320, 2015 (Released:2015-08-31)
参考文献数
23

目的 : 音波歯ブラシは高振動によるキャビテーション効果により, 毛先から離れた部位のプラーク除去にも効果があるとされるが, 深い歯周ポケットに対してはその効果を十分発揮するのは難しい. しかし, 歯周ポケット内の歯周病原細菌をコントロールすることはきわめて重要であると考えられる. そこでわれわれは, 音波歯ブラシと水流洗浄器を併用した場合の歯周ポケット内細菌に与える影響について検討した.  材料と方法 : 4~5mmの歯周ポケットを有する患者18名を無作為に2群に分け, 実験群は被験歯に音波歯ブラシで頰側・口蓋側から10秒ずつブラッシング後含嗽し, 水流洗浄器で頰側・口蓋側から10秒ずつ洗浄を行った. 細菌は術前後に採取した. 対照群は音波歯ブラシでブラッシング, 含嗽後に細菌を採取した. 採取した細菌はPCR-Invader法にて, 定量・定性分析を行った.  結果 : 個々の歯周病原細菌の術前後の菌数変化に有意な差を認めなかったが, 全歯周病原細菌の平均で評価すると, 実験群では術前と比較して術後に有意な減少を認めたのに対し, 対照群では有意差を認めなかった. また, 歯周病原細菌数の減少率を比較すると, 実験群は対照群に比べて約4倍の歯周病原細菌の除去効果が認められた.  考察 : 以上の結果より, 音波歯ブラシによる液体流動力と水流洗浄器が発生させるバブル水流の併用は, 歯周ポケット内の歯周病原細菌の除去に有効であることが示唆された.
著者
海老沢 政人 大島 朋子 長野 孝俊 五味 一博
出版者
特定非営利活動法人日本歯科保存学会
雑誌
日本歯科保存学雑誌 (ISSN:03872343)
巻号頁・発行日
vol.50, no.3, pp.386-394, 2007-06-30

現在,歯周組織再生療法の一つにエナメルマトリックスデリバティブ(EMD)を利用した方法がある.EMDを含むEmdogain^[○!R]-Gel(Emd^[○!R]-Gel)を用いた処置は,通法の歯周外科処置と比較して術後の治癒が良好であり,炎症反応の抑制が知られている.その理由の一つに,EMDが抗菌作用を有することが考えられているが,先行研究において一定した評価は得られていない.この理由として,EMDはアメロゲニン(AMEL),エナメリン,シースリンといった複数のタンパク質やタンパク質分解酵素を含む粗精製物であることが考えられる.このうち,AMELは最も豊富な構成物質で,EMDの約90%以上を占め,さまざまな分子量のAMELが会合して存在している.本研究の目的は,EMDの主要成分であるAMELの口腔内微生物に対する抗菌効果を評価することである.EMDは,ブタ下顎骨の幼若ブタ歯胚エナメル質から抽出し,Sephadex G-100を用いたゲル濾過クロマトグラフィーにより精製された25kDaとその誘導体である20kDa,13kDa,6kDa AMELを用い, Porphyromonas gingivalis, Prevotella intermedia, Actinobacillus actinomycetemcomitans, Candida albicansに対する抗菌効果を判定した,また,Emd^[○!R]-Gel,PGA,BSA,histatin 5との効果の比較を行った.Emd^[○!R]-Gelはすべての菌に抗菌効果を示し,Emd^[○!R]-Gelの溶媒であるPGAは歯周病関連細菌に強い抗菌作用を示したが,C. albicanには効果を示さなかった.250μg/ml濃度の25kDa,20kDa,6kDa AMELはP. gingivalisに対して抗菌効果を示したがその効果は低かった,P. intermediaおよびA. actinomycetemcomitansに対して,AMELは抗菌作用を示さなかった.したがって,Emd^[○!R]-Gelの歯周病関連細菌に対する抗菌効果はPGAがその主体であることが示唆された.一方,C. albicansに対してすべてのAMEL画分は,濃度依存的に強い抗菌効果を示した.したがって,Emd^[○!R]-GelのC. albicansに対する抗菌効果はAMELによるが,EMDにはAMEL以外にエナメリンやシースリンといったタンパクが含まれるため,これらの非AMELタンパクが抗菌作用を有する可能性も考えられる.今後,EMDに含まれるAMELおよび非AMELタンパクの特性の解明は,抗菌ペプチドの開発や臨床応用の可能性を検索するうえできわめて重要であると考える.