著者
梶原 忠彦 川合 哲夫 赤壁 善彦 松井 健二 藤村 太一郎
出版者
山口大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1997

最近"磯の香り"(マリンノート)はアメニティー機能を有する海洋系複合香として注目されている。例えば、そのタラソテラピー(海洋療法)における機能性芳香剤としての利用、あるいは水産食品への香味香付与によってみずみずしさを増強し、商品価値を高めるなど種々の用途開発がなされようとしている。ここでは高品質のマリンノートを安定供給できる最新の遺伝子組み換え技術と伝統的養殖技術を両輪とし化学合成を組み込んだ、未利用植物材料(沿岸汚染藻類、野菜クズなど)を利用する生産システムの技術開発を目指した研究に於て、次のような研究成果を得た。(1)紅藻ノリより、不飽和脂肪酸に酸素を添加しオキシリピン類(ヒドロペルオキシド)を生成する機能を有する新規のヘムタンパク質をはじめて単離することができ、このものはグリンノート生産に極めて有用であることが分かった。(2)ヤハズ属褐藻の特徴的な香気を有するディクチオプロレン、ディクチオプロレノール及びそのネオ一体の両エナンチオマーを酵素機能と合成技術を併用して、光学的に純粋に得ることに成功し、絶対立体位置と香気特性との関連を明らかにした。また、ネオ-ディクチオプロレノールから生物類似反応により、オーシャンスメルを有する光学活性ディクチオプテレンBに変換することに成功した。(3)緑藻アオサ類には、(2R)-ヒドロペルオキシ-脂肪酸を光学特異的に生成する機能を有することを実証した。また、このものはマイルドな条件下で海藻を想起する香気を有する長鎖アルデヒドに変換できることが分かった。(4)アオサ類に含まれる不飽和アルデヒド類を立体選択的に合成し、熟練したフレーバーリストにより香気評価を行った結果、これらは海洋系香料としての用途が広いことが分かった。
著者
相田 美喜 伊藤 一幸 池田 浩明 原田 直國 石井 康雄 臼井 健二
出版者
日本雑草学会
雑誌
雑草研究. 別号, 講演会講演要旨 (ISSN:0372798X)
巻号頁・発行日
no.42, pp.46-47, 2003-04-19

水田除草剤のベンスルフロンメチル(BSM)が、絶滅危惧種とされる水生シダのサンショウモ、オオアカウキクサ、デンジソウおよびミズニラの生育に及ぼす影響を野外試験により検討した。また、サンショウモとオオアカウキクサの現生育地における出現状況とBSM濃度の消長を調査するとともに、現生育地において想定される低濃度域のBSMに対するサンショウモとオオアカウキクサの感受性を室内試験により検討した。
著者
春原 由香里 臼井 健二 松本 宏 小林 勝一郎
出版者
日本雑草学会
雑誌
雑草研究 (ISSN:0372798X)
巻号頁・発行日
vol.40, no.2, pp.95-103, 1995-08-31
被引用文献数
3

著者らはすでに, クロメプロップ自身はオーキシン活性を示さず, 植物体内でその加水分解物であるDMPAに分解された後に初めてオーキシン結合蛋白質に認識され, オーキシン活性を示している可能性が高いことを報告した。本論文では, クロメプロップの更は詳しい作用機構を調べることを目的とし, ダイコン幼植物を材料としてクロメプロップの茎葉処理後に生成されるエチレンが形態変化に関与しているかどうかの検討を行った。(1) クロメプロップ, DMPA処理後に現れる葉のカーリングや葉の葉柄間角度の増大はエチレン生成阻害剤(AOA)を前処理することにより軽減された(Fig. 1, Table 1)。 (2) クロメプロップ, DMPA処理後の上記の作用は, エチレン作用阻害剤(NBD)を後処理することにより軽減された(Fig. 2)。(3) エチレン生成量は, クロメプロップの場合, 茎葉処理12時間後までは殆ど生成されず対照区と同程度であったが, 24時間後からはエチレン量の増加が見られた。DMPAの場合は茎葉処理3時間後から徐々に増加し始め, 12時間後から生成速度が増加した(Fig. 3)。(4) エチレン生成促進剤(ETH)処理により, 著しく第1葉の伸長が阻害された(Fig. 4)。(5) クロメプロップ, DMPA処理により, ACC合成酵素が誘導され, AOAの前処理によりその誘導が抑制されることが確認された(Fig. 6)。(6) クロメプロップ, DMPA処理では, ACCからエチレンへの反応を触媒する酵素(ACC 酸化酵素)の誘導は起こらなかった(Table 2)。以上の結果より, クロメプロップは植物体内でDMPAへと変化し, DMPAがACC合成酵素を誘導することによってエチレン生成量を増加させ, そこで生成されたエチレンが, ダイコンの形態的変化を引き起こしているものと推察された。
著者
臼井 健二
出版者
日本雑草学会
雑誌
雑草研究 (ISSN:0372798X)
巻号頁・発行日
vol.48, no.1, pp.17-23, 2003-05-31

近年,雑草防除・管理への除草剤の使用は,効率性と省力化をもたらし作物の安定生産に寄与してきている。戦後間もなく導入された2,4-D以来,対象とする作物に安全で雑草を有効に防除する除草剤が多く用いられてきている。この作物-雑草間の除草剤の選択作用性は,高活性,低毒性,非残留性,環境負荷が少ないことなどと共に除草剤に求められる大きな特性の1つとなっている。選択性の主な要因として,土壌・生態的要因および植物の生理生化学的要因があるが,後者の主なものは除草剤の植物体内への吸収,作用部位への移行,作用点の除草剤感受性およびその間の除草剤の代謝があげられている^<10)>。植物体内に吸収された除草剤は様々な反応・代謝を受ける。反応は化学的にも進行するが,多くの場合酵素により触媒される^<21,22,25)>。一般に,脂溶性化合物は,主としてエステラーゼなどによる加水分解,チトクロームP-450などによる酸化,あるいは還元などの反応を受けて極性基が導入され,その極性基を介してグルコースなどの生体成分と抱合される。一方,親電子化合物はグルタチオン転移酵素(GST)により直接グルタチオン(あるいはホモグルタチオン)抱合される。更に抱合化合物は液胞に運搬されたり,細胞壁に取込まれたりし,いわゆる隔離される。一連のこれらの反応は解毒(不活性化)反応であるが,加水分解・酸化等により活性化される場合もある。これらの除草剤解毒代謝酵素は,本来,体内に取り入れた様々な化学物質を生体成分として合成・代謝し利用する一方,侵入した異物。毒物を代謝・解毒し防御するために発達してきたと言われるが,それらが除草剤にも反応していると考えられる。除草剤の代謝は,除草活性に関係するばかりでなく,代謝物を含めた残留性,安全性およびその試験においても重要である。代謝物の同定,経時的および定量的分析に基づく代謝経路の推定により,それらの代謝に関与する酵素も推定される。それ故,植物体内での除草剤の代謝活性の測定には,代謝物を分析する他,酵素活性の測定も有効である。除草剤の選択性が除草剤の種類と植物の解毒代謝活性に依存する場合,除草剤の主要代謝に関与する酵素活性の測定によりその程度を推測できるであろう。本研究では,植物(作物と雑草)における水田用の酸アミド(α-クロロアセトアミド)系除草剤のグルタチオン抱合に関与するGSTおよびスルホニルウレア系除草剤の酸化代謝(O-脱メチル反応)に大きく関与しているP-450を中心に数種除草剤の解毒代謝酵素活性の測定およびアイソザイムの分離等を通じて,選択性および薬害軽減作用への関わり,植物の外界の異物に対する防御の機能・役割を追究した。
著者
ポーンプロム トッサポン 松本 宏 臼井 健二 石塚 皓三
出版者
日本雑草学会
雑誌
雑草研究 (ISSN:0372798X)
巻号頁・発行日
vol.39, no.3, pp.180-182, 1994-10-28
被引用文献数
3

The absorption and metabolism of oxyfluorfen were determined in oxyfluorfen-tolerant and non-tolerant (normal) soybean cell lines. The tolerant cells absorbed considerably less of the herbicide than the normal cells. Metabolism of oxyfluorfen did not differ between the two cell lines. These data suggest that lower absorption in the tolerant cells may contribute to the observed tolerance but that the tolerance is not metabolism-based.
著者
スワンウォン スィーソム 臼井 健二 石塚 皓造
出版者
日本雑草学会
雑誌
雑草研究 (ISSN:0372798X)
巻号頁・発行日
vol.34, no.4, pp.315-321, 1989-12-25
被引用文献数
3

除草剤耐性機構の解明および耐性植物作出の検討を目的として,植物における分岐鎖アミノ酸生合成,芳香族アミノ酸生合成あるいはグルタミン合成酵素のような窒素代謝の掻乱活性が強いベンスルフロンメチル(BSM),グリホサ-ド(GLY),およびグルボシネ-ト(GLU)を用いて各々の耐性細胞をニンジン懸濁細胞より選抜した.ニンジン(Daucus carota L. cv. Harumakigosun)はこれらの除草剤に感受性である. ニンジンの胚軸より誘導した細胞をLS培地で懸濁培養した.この細胞の生育は10^<-8> M BSM,10^<-3> M GLYあるいは10^<-5> M GLU処理で著しく阻害された(Fig.1).それぞれ10^<-9> M,10^<-4> Mあるいは10^<-6> M処理では50%程度の阻害を示したが,これら除草剤を含む培地で数回継代培養すると無処理細胞と同程度の生育となった.その状態の細胞を更に,それぞれ,10^<-8> M,10^<-3> Mあるいは10^<-5> Mを含む培地に移し継代培養を続けることにより,耐畦細胞が選抜された(Fig. 3, 4, 6, 7).選抜された耐性細胞は上記濃度の除草剤を含む培地中で無処理細胞と同程度に生育した.耐性細胞の選抜に要した継代培養回数即ち期間は,GLYはBSMよりやや長いが3〜4ヵ月と比較的短かったが,GLUはほぽその倍の期間であった.このことは除草剤の物理化学性あるいは作用,耐畦機構と関連があると推察された.これら耐畦細胞は,ある期間上記濃度の除草剤中で培養した後,更に高濃度の10^<-7> M BSM,10^<-2> M GLYあるいは10^<-4> M GLU中に移しても生育可能であった(Fig. 2, 5, 8).また,除草剤を含まない培地に移しても耐畦は保持され(Fig.9),耐性適応は少なくとも一年間は安定であることが認められた.