著者
井田 哲雄 MARIN Mircea
出版者
筑波大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2007

●折紙の理論を構築し,国際雑誌Journal of Symbolic Computationで発表した.この理論では,面の集合と面同士の隣接関係と重なり関係からなる構造により,抽象折紙を定義し,抽象折紙の折り操作を抽象書換え系の書換え操作でモデル化する.さらに,コンピュータの実装に向けて,抽象折紙をラベル付きハイパーグラフで表現し,抽象書換え系をグラフ書き換え系で実現する.さらに,この理論を実装し,本研究の前年度までに構築されているEos(E-Origami System)に組み込んだ.グラフ書き換えのアルゴリズムについても,新たに開発するとともに,アルゴリズムの正当性の基礎になるいくつかの定理を証明した.グラフ書き換えによる折紙の構築過程を可視化することに成功するとともに,折紙をグラフとして見たときの構造の特徴をも明らかにした.●折紙定理のコンピュータによる自動証明の高速化のために,Eosの定理証明モジュールに様々な方法を組み込んだ.たとえば,証明で用いるグレブナ基底の計算に折紙構築履歴に依存した単項式順序を組み込むこと,折紙幾何に特化した証明ドキュメントの自動生成がある.これらの改良により,折紙定理証明の効率は著しく向上した.たとえば,Morleyの定理の自動証明には当初17時間もかかったが,10分程度で完了するようになった.●上記EOSシステムのウェブ・インタフェイスの構築研究を継続して行い,ウェブ・インタフェイスの改良をおこなった.●藤田による折紙の公理をウー・リットの方法で代数的に解釈し直し,折紙の構築の基本操作を与える藤田の公理の代数的な性質を解析した.ウー・リットの手法で用いる特性集合を調べることにより,藤田の公理が記述する幾何の縮退条件を代数的に求めることができた.
著者
高橋 英和 井田 哲雄
出版者
日本ソフトウェア科学会
雑誌
コンピュータ ソフトウェア (ISSN:02896540)
巻号頁・発行日
vol.27, no.2, pp.2_2-2_13, 2010-04-27 (Released:2010-06-27)

本論文は,折り紙を折るという操作のグラフ書換を用いた数理的なモデル化の試みである.折り紙による図形の構成は,折り紙の集合OとO上で定義された折るという二項関係↬からなる抽象書換系(O, ↬)と捉えることができる.また,折り紙自身は,面の集合ΠとΠ上で定義された面の隣接関係∽,重なり関係≻の3つの要素の組(Π, ∽, ≻)として抽象化することができる.更に,抽象化された折り紙をハイパーグラフを用いて表現し,折り操作をグラフ書換変換により実現する.実際に,紙を折るという操作を計算機に実装するには,面の分割や重なりを判定するといった実平面を定義域とした幾何的な数値計算と,面のつながり探索や重なり順序の構成といった純粋に離散的な記号計算の両方が要求される.この2種類の計算が時に複雑に絡み合い,折り操作のアルゴリズムを難しくしている.本論文で提案するグラフ書換変換の方法は,これら2つの計算を分離し,折り操作のアルゴリズムを分かりやすく記述できるという利点を持ち,今後,折り紙の更に高度な問題の解決へ導くものである.
著者
井田 哲雄 MARIN Mircea
出版者
筑波大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2010

折紙における「折る]過程を研究し,以下の成果を得た.(1) 折る過程を抽象的に表現する代数的グラフ書換系を定義し,グラフ書換を記述・実行する言語処理系を開発した.(2) グラフ書換操作から代数系へと変換するアルゴリズムの開発とその正当性の検証を行った.(3) 研究の進展に応じてコンピュータによる折紙実行システムの拡張を行い,折紙幾何定理の証明の高速化と多くの定理の自動証明を可能とした.
著者
板野 肯三 中田 育男 和田 耕一 井田 哲雄 佐々 政孝 田胡 和哉
出版者
筑波大学
雑誌
一般研究(B)
巻号頁・発行日
1988

高水準言語によるプログラミングを効果的に支援するためには、道具としての言語処理系がきめ細かくプログラミングの過程をサポ-トすることが不可欠であることは勿論であるが、言語処理系の処理速度も重要な要素である。一方、現在の半導体技術の著しい進歩は、非常に複雑なアルゴリズムを1つのチップとして実現することを可能にしており、LSI化するのに適したハ-ドウェアの設計が与えられれば、物理的な実現は原理的にはそれほど困難ではない。一般に、ハ-ドウェアで実現すれば、汎用の計算機ア-キテクチャ上で実行するのに比較して、100ー1000倍に実行速度を高めることが可能でありこともある。しかし、ソフトウェアのアルゴリズムを単にマイクロプログラム化するだけで、このような性能を達成することは難かしく、方式の見直し、場合によってはアルゴリズムそのものの見直しも必要である。本研究では、このような状況を踏まえて、言語処理系をLSIとして実現するための設計技術の確立を目標とした。とくに、インタプリタの高速化を前提にしたプログラミングシステムを実現するためのハ-ドウェア設計に重点をおき、今年度は、シリコンコンパイラが使用可能になったので、シリコンコンパイラによるLSIの設計を行った。具体的には、手続き型言語PLOの解析木インタプリタと論理型言語のインタブリタの2つのprojectを取り上げて、具体的な設計を通じて、いろいろな経験を蓄積し、実際に言語書理系に関連したLSIをつくるための基礎技術を模索した。LSIの内部では、並列性を採用する一方、制御やデ-タの流れの局所性を高めることが重要であり、また、できるかぎり系統的に設計できることが望ましい。このような前提で、アルゴリズムレべルのハ-ドウェアの設計から始め、フルカスタムのパタ-ン設計とシミュレ-タによる検証を行った。
著者
井田 哲雄
巻号頁・発行日
2012

科学研究費助成事業(科学研究費補助金)研究成果報告書:基盤研究(B)2008-2011
著者
松野 年宏 市川 眞一 井田 哲雄
雑誌
全国大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.40, pp.966-967, 1990-03-14

本稿では,われわれの開発したLisp-Prolog融合処理系MC(Meta Computing environment)の概要を述べるとともに,MCによるアプリケーションプログラム開発を通じて得た,融合の効果についての評価を行う.計算機によって処理される問題が拡大し,またそれらの複合問題の解決が要求されるにつれ,それを記述するためのプログラミング言語に要求される機能は多様化してきている.この要請に対する解決には,強力な新言語を開発する,あるいは,既存のプログラミング言語に適切なインターフェイスを設ける,という2つのアプローチが考えられる.MCでは,既存ソフトウェア資産,およびプログラミングノウハウの継承という現実的な配慮から後者のアプローチをとり,記号処理分野で広く利用されているLispとPrologの融合を図った.Lisp-Prolog融合処理系自体は決して新しいものではないが,その効果についての評価は未だに定まっていない.われわれは,MCによる実際的アプリケーションの開発により,Lisp-Prolog融合処理系が単なる研究的興味の対象ではなく,プログラム開発の効率化に有効であるとの評価を得た.
著者
井田 哲雄 南出 靖彦 MARIN Mircea 鈴木 大郎
出版者
筑波大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

ウェブソフトウェア検証の事例研究として, WebEosの核となる部分の形式化と検証を行った.幾何と代数の基本的な部分にMathematicaの計算結果を援用することで, 効率的な検証が可能となった.文字列解析による検証において, 正規表現マッチングの正確な解析を可能とした.また, データベースとの連携の解析を導入し, 蓄積型XSS脆弱性検査を実現した.ポジションオートマトンを利用した正規表現の貪欲マッチングアルゴリズムの設計と実装を行った.
著者
井田 哲雄 松野 年宏
出版者
一般社団法人日本ソフトウェア科学会
雑誌
コンピュ-タソフトウェア (ISSN:02896540)
巻号頁・発行日
vol.8, no.2, pp.p149-163, 1991-03

本論文はMC/LISPと呼ぶCOMMON LISPに基づいて実現されたLISP処理系の翻訳系の構成を述べたものである.翻訳系はプログラム変換系とコード生成系より成っている.LISPのプログラムはFP/Cと呼ぶカテゴリ風プログラムに変換される.次にFP/Cのプログラムが翻訳関数によって翻訳されコード生成が行われる.プログラム変換は実行時の環境を単純なものとするために,および翻訳の過程を形式的に把握するために不可欠である.この考えに基づきLISPの基本的計算機構のプログラム変換の規則とコード生成の規則を形式的に与えている.
著者
浜名誠 西岡 知之 中原 鉱一 井田 哲雄
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究会報告
巻号頁・発行日
vol.94, pp.25-32, 1994
被引用文献数
1

関数論理型言語とは関数型言語と論理型言語を融合したプログラミング言語である.本稿で述べる関数論理型言語Evは,関数型言語の特徴である高階関数,遅延評価,及び論理型言語の論理変数や非決定的な実行といった特徴を全て備えている.Evはコンビナトリー項書換え系とナローイングという理論的背景を特ち,効率の良い実行のために設計された計算系LNCに基づいている.本稿では関数論理型言語Evとそのインタプリタの実現方法について述べる.特にEvのプログラムをコンビナトリー項書換え系とみなすための変換方法を与え,Evと理論とのつながりを示す.