著者
井関 龍太 川崎 惠里子
出版者
日本認知心理学会
雑誌
日本認知心理学会発表論文集 日本認知心理学会第7回大会
巻号頁・発行日
pp.105, 2009 (Released:2009-12-18)

過去の出来事を思い出すときには,自分自身がその場にいて実際に周囲の状況を見ているかのように思い出す場合と(一人称の視点),第三者の立場に立って外部から自分を見つめているかのように思い出す場合(三人称の視点)がある。このような想起の視点は,現在の自己との整合性が低い記憶を想起する場合には三人称になりやすいことが報告されている。このことから考えると,現在からより離れた時点の記憶を想起するときほど,三人称の視点で想起されやすいと思われる。そこで,本研究では,手がかり語のイメージ性を操作して自伝的記憶の想起を求めた。一般に,イメージ性の高い語は,より過去の出来事を想起させることが知られている。実験の結果,高イメージ語は,低イメージ語よりも,より過去の出来事を想起させた。しかし,想起の視点は,手がかり語の違いによって有意には異ならなかった。想起の鮮明性は,高イメージ語の場合に高い傾向が見られた。
著者
井関 龍太
出版者
公益社団法人 日本心理学会
雑誌
心理学研究 (ISSN:00215236)
巻号頁・発行日
pp.90.18202, (Released:2018-12-25)
参考文献数
15

Psychological-experimental training is a popular method of education for psychology courses. Although it is possible that a training menu can affect undergraduate’s skills and later understanding of psychology, there is no systematic research about what theme is likely to be included in the menu. Training syllabi from Japanese universities were collected and the similarity structure of selecting themes was analyzed. Four ways of arranging themes were found: preferring classical and standard themes; preferring recent and flexible theme; emphasizing clinical demands; and abstract themes based on research methods. The relationship among the themes was interpreted with the similarity structure. A possible determinant of theme selection was discussed in terms of student’s cognitive demand.
著者
井関 龍太
出版者
日本認知心理学会
雑誌
日本認知心理学会発表論文集
巻号頁・発行日
vol.2020, pp.37, 2021

<p>昔話や民話では,同じようなエピソードがくり返し現れることがある。『三匹の子豚』や『山姥』など,典型的にはくり返しの回数は三回であることが多い。そのようなくり返しは,登場人物による目標達成のための試みのくり返しを表しているとされる。そのような観点から考えると,試みを実行する登場人物が変わる場合(三人の兄弟など)には,同じ人物が試み続ける場合よりも目標達成の試みが最終的には成功したり,あるいは,先行する人物のふるまいを厳密に踏襲しなかったために失敗したりすることが考えられる。口承民話を収集した『ハンガリー民話集』をこのような観点から分析したところ,くり返しに登場する人物の異同と最終的な成果の変化に明確な関連は見られなかった(井関, 2019, 日心大会)。しかし,この結果は分析対象が属する文化に依存する可能性も残る。本研究では『ラテンアメリカ民話集』を分析し同様の結論を得た。</p><p></p>
著者
井関 龍太
出版者
日本基礎心理学会
雑誌
基礎心理学研究 (ISSN:02877651)
巻号頁・発行日
vol.38, no.2, pp.243-249, 2020-03-31 (Released:2020-06-09)
参考文献数
8

Psychologists have analyzed response time data by their rules of thumb. Modern advances of statistical methods promote to create a new practice. Traditionally, outliers were discarded prior to statistical test and skewed data were converted by logarithms. Fitting approach reminds that analyzers intend to estimate parameters for RT distributions. In statistical tests, psychologists often conducted ANOVA by aggregating data across different trials in the same condition. This practice loss precision information of measurement. Linear mixed models is changing the situation. While practical issues are remain for several aspects of applying linear mixed model, consensus among psychologists would be increasingly required.
著者
井関 龍太
出版者
日本認知心理学会
雑誌
日本認知心理学会発表論文集 日本認知心理学会第19回大会
巻号頁・発行日
pp.37, 2022 (Released:2022-04-20)

物語を読んでいるときに,ある場面では大きな盛り上がりを感じるのに対して,他の場面では淡々と進行している,あるいは,つなぎや溜めの場面であると感じることは自然なことである。物語の展開に沿った感情的なダイナミクスを捉える手段として,センチメント分析を利用することで,細かな単位での感情の推移を容易に推測することができる。一方で,そのような分析結果が人間による物語の山場の知覚と対応関係を持つのかは明らかでない。本研究では,センチメント分析に基づいて,比較的盛り上がりの部分が明確な物語文章を選び出し,実験参加者にはそれらを読んで,山場がどこにあったか,その感情的な印象はポジティブかネガティブか,読後感はネガティブかポジティブかの判断を求めた。実験の結果,センチメント分析に基づいて山場が前半のほうにあると推定された物語については,後半にあると推定された物語よりも,山場はより前のほうにあると評定された。
著者
井関 龍太 川崎 惠里子
出版者
日本認知心理学会
雑誌
日本認知心理学会発表論文集
巻号頁・発行日
vol.2009, pp.105, 2009

過去の出来事を思い出すときには,自分自身がその場にいて実際に周囲の状況を見ているかのように思い出す場合と(一人称の視点),第三者の立場に立って外部から自分を見つめているかのように思い出す場合(三人称の視点)がある。このような想起の視点は,現在の自己との整合性が低い記憶を想起する場合には三人称になりやすいことが報告されている。このことから考えると,現在からより離れた時点の記憶を想起するときほど,三人称の視点で想起されやすいと思われる。そこで,本研究では,手がかり語のイメージ性を操作して自伝的記憶の想起を求めた。一般に,イメージ性の高い語は,より過去の出来事を想起させることが知られている。実験の結果,高イメージ語は,低イメージ語よりも,より過去の出来事を想起させた。しかし,想起の視点は,手がかり語の違いによって有意には異ならなかった。想起の鮮明性は,高イメージ語の場合に高い傾向が見られた。
著者
井関 龍太
出版者
日本基礎心理学会
雑誌
基礎心理学研究 (ISSN:02877651)
巻号頁・発行日
vol.37, no.2, pp.180-187, 2019-03-31 (Released:2019-05-18)
参考文献数
19

Although sample-size planning is important for research integrity and useful for designing experiments, it appears to be not yet fully spread in cognitive psychology. The present study examined descriptions for sample-size planning in papers that published in Psychonomic Bulletin & Review and Journal of Experimental Psychology: General. Although some researches determined their sample size without referring to statistical power analysis, they derived the size based on prior research. Not a few researches reported results of power analysis without describing exact values of power and effect sizes and types of targeted effects. To communicate findings more correctly, it should be included descriptions specifying targeted sample sizes and their basis that enables readers to calculate the values irrespective of statistical methods or not. Finally, I discussed the risk of over-emphasizing prior power analysis in peer review.
著者
井関 龍太 川崎 惠里子
出版者
日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.54, no.4, pp.464-475, 2006-12
被引用文献数
5

物語文と説明文から形成される状況モデルは異なるのか,異なるとすればどのように異なるのかを検討した。研究の枠組みとして,状況モデルに5つの状況的次元(同一性,時間性,空間性,因果性,意図性)を仮定するモデルを採用した。このモデルによれば,各状況的次元において連続的なイベントは互いに強く連合されるはずである。本研究では,イベント間の連合の強さを動詞分類課題における分類パターンによって測定した。実験1では,昔話と説明文を比較した。分析の結果,物語文と説明文では状況的次元の寄与が異なること,特に,空間性と意図性において異なることが示唆された。実験2では,昔話を小説に変えて追試を行い,空間性,意図性,距離の要因に異なる寄与を仮定する複数のモデルの適合度を比較した。その結果,空間性と意図性の寄与において差があるとするモデルが最もよい適合を示した。物語文では空間性の寄与が見られないのに対して,説明文では負の効果が認められた。また,物語文では意図性が連合を強めたのに対して,説明文ではほとんど効果が見られなかった。最後に,この結果の理論的意義及び実践的意義について論じた。