著者
京極 真 寺岡 睦 小林 隆司 河村 顕治
出版者
三輪書店
雑誌
作業療法ジャーナル (ISSN:09151354)
巻号頁・発行日
vol.48, no.6, pp.521-524, 2014-06-15

Abstract:本論では,作業療法教育における学部・大学院5年一貫教育プログラムの概要を紹介し,実践報告を通してその利点と課題を明らかにした.今回,わが国の作業療法業界で初めて学部・大学院5年一貫教育プログラムに選抜された学生に対し,大学院教育を行った.その結果,意義として,①作業療法学の発展に貢献し得る人材を早期に育成しやすい,②作業療法養成課程におけるキャリアプランを豊かにし,学生のモチベーションの向上に資する,の2点があると論じた.他方,課題として,①教育体制の充実と工夫が必要である,および②大学院教育期間の短縮により受ける制約の検証が必要である,の2点があると論じた.
著者
京極 真 山田 孝 小林 法一
出版者
日本保健科学学会
雑誌
日本保健科学学会誌 (ISSN:18800211)
巻号頁・発行日
vol.11, no.4, pp.225-235, 2008-12-25 (Released:2017-10-27)
参考文献数
6

非構成的評価(UA)の確かさを担保するとされる4条件((1)第3者が評価者の想定した暗黙の前提を共有しやすい,(2)提示された事実は面接や観察から得られたもので,作業遂行を通して変化が認められる,(3)事実の表記は省略が少なく,概念が明確である,(4)判断は作業有能性に焦点を当てており,論理的に適正で明瞭である)を満たすよう作成したUA結果が,確かさの担保されたUA結果であると判断されるかどうかを検討した。その結果,作業療法士は,4条件を満たしたUA結果を確かさの担保されたUA結果であると判断することが明らかとなった。一方,4条件のうち1条件でも欠けると,確かさが担保されたUA結果ではないと判断することが示唆された。4条件を満たしたUA結果は,良質なUA結果を学ぶ教材として利用できるため,教育者は本研究の結果を参考に学習者に教育的指導を行うことができると考えられた。
著者
諸星 成美 京極 真
出版者
日本作業療法士協会
巻号頁・発行日
pp.273-280, 2021-06-15

要旨:本研究は,身体障害を有する地域在住高齢者の作業的挑戦の特性をクラス分類し,作業参加,抑うつ,人格特性との関連性を検証した.データ収集は,調査用紙を用いて対象者から回答を得た.分析は,記述統計量の算出,潜在クラス分析,多項ロジスティック回帰分析を実施した.結果,作業的挑戦には,肯定的な作業的挑戦,危うい作業的挑戦,否定的な作業的挑戦の3つの特性があることがわかった.そして,肯定的な作業的挑戦に影響を与える因子には,生産的活動やセルフ・ケアへの作業参加,抑うつの身体症状やポジティブ感情,協調性や勤勉性の人格特性があった.本研究により,作業的挑戦への介入のための解釈可能性が広がると考えられる.
著者
野口 卓也 京極 真 寺岡 睦
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.1097-1106, 2016-12-10

要旨 【目的】本研究では,精神障害者を対象に,Well-Beingを促進する生活活動にどの程度かかわれているかを評価できる尺度(Assessment of Positive Occupation;APO-15)を開発した.【方法】本研究は2段階から構成された.研究1では,作業療法士を対象に構成概念の検討,項目プールの作成,内容妥当性を検討した.研究2では,2つの手順で構成された.手順1は,研究1で作成した項目プールの項目特性を明らかにし,基準を満たさない項目の削除を検討した.手順2は,厳選された項目の信頼性と妥当性を検討した.【結果】研究1の対象者は10名(経験年数8.70±3.22年)であった.分析の結果,ポジティブ心理学のPERMAモデルに準拠し,Well-Beingに寄与する生活活動の5因子50項目が作成された.また,各項目はわかりやすい文章,因子定義を的確に反映するように意図して加筆修正された.研究2の対象者は110名(53.22±11.24歳)であった.分析の結果,APO-15は4因子15項目で尺度構成され,併存的妥当性,項目の妥当性,因子妥当性,構造的妥当性,仮説検証,項目分析などのいずれにおいても良好な尺度特性を示した.【考察】APO-15は全体として高い妥当性と信頼性を備えており,精神科デイケアに通う精神障害者を対象に,Well-Beingを促進する生活活動にかかわれている程度を的確に評価できると考えられた.特に,それが芳しくない対象者で測定精度が高いことから,APO-15は支援が優先的に必要な精神障害者を適切に評価できると考えられた.
著者
寺岡 睦 京極 真
出版者
日本作業療法士協会
巻号頁・発行日
pp.249-258, 2014-06-15

要旨:本論では,作業に根ざした実践(occupation-based practice;以下,OBP)の新理論であるOBP 2.0の理論と実践を示した.従来のOBPは作業機能障害の解決に取り組むが,信念対立によって制約される限界があった.本論で示すOBP 2.0は,作業機能障害の種類と信念対立解明アプローチを理論統合し,ひとつの理論で2種類の問題に対応できるように構築した.また本論では臨床実践におけるOBP 2.0のモデル提示を行った.OBP 2.0は,作業療法の新理論として有益であると考えられた.
著者
佐野 伸之 京極 真
出版者
日本作業療法士協会
雑誌
作業療法 (ISSN:02894920)
巻号頁・発行日
vol.35, no.3, pp.229-238, 2016-06-15

要旨:介護予防事業では,高齢者の活動と参加に焦点を当てたリハビリテーションが期待される.本研究の目的は,デイサービスを利用する217名に対して,作業参加と外出頻度や障害重症度,歩行能力,ストレス反応との関連を検討することであった.研究仮説に基づく構造方程式モデリングでの検証の結果,障害の重さは作業参加に抑制的に働き,作業参加は外出頻度を促し,ストレス反応を抑制する効果があった.また,歩行能力は外出頻度を促す働きがあった.作業療法士は,クライエントの障害重症度に配慮しながら,本人にとって大切な活動への関わりを改善することで,社会参加の充実や精神的に安定した生活に結びつける支援が行えると考えられた.
著者
谷村 厚子 山田 孝 京極 真
出版者
日本保健科学学会
雑誌
日本保健科学学会誌 (ISSN:18800211)
巻号頁・発行日
vol.10, no.2, pp.89-100, 2007
参考文献数
15
被引用文献数
2

我が国の精神障害をもつ当事者の精神保健福祉および生活上の主観的なニーズに関する研究について1994〜2005年の専門誌をレビューし,そこに示されたニーズを,KJ法に準じた手法を用いて分類した。各文献から抽出された当事者のニーズは819枚のラベルに転記され,コアカテゴリ『自分が望む生活を営める』,『精神医療保健福祉システムが充実している』,『生活する環境が整っている』,『人的環境が充実している』,および,より下位のカテゴリに分類された。これらのカテゴリに分類された当事者のニーズは,具体性に富み,専門家が支援していく上で大いに参考になると考えられる。また,これらは,精神-脳-身体の遂行サブシステム,意志のサブシステム,習慣化のサブシステム,物理的環境,社会的環境,作業行動場面といった人間作業モデルの概念にも対応したため,作業療法の実践モデルによる支援が可能であると考えられる。