植物の開花や落葉などの時期は、気温に密接に関連している。従ってこれらは地球温暖化の影響を受けやすいと言える。実際、Walther et al.は近年の気温上昇の影響を受けて、植物の開花や落葉などの時期が変化していることを報告した。一般的には温暖化とともに、開花は早くなり、落葉は遅くなる。しかし暖地では冬季に十分な寒さを経なくなるので、休眠打破が遅れ、開花が遅くなることも指摘されている。日本のサクラも例外ではない。近年の気温上昇傾向を受けて、サクラの開花の時期は早くなっている。しかし冬季に暖かいと休眠打破が遅れ、開花が遅くなることも知られている。その典型が2007年であった。この年は暖冬で、全体的には開花日が早まったが、南九州や八丈島などの暖地で極端に開花が遅くなる現象が見られた。特に八丈島では観測史上初めて満開には至らなかった。本研究では、DTS(温度変換日数)法に基づきながらも、全国一律のパラメータを用い、予測したい期間の気温のみで休眠打破の時期、開花日までを予測できるように開花モデルを作成する。また、さらに現在気候において開花しない名瀬と開花の南限である種子島のデータを使用することによって、開花そのものの有無の判定基準を作成する。そしてその開花モデルを将来の予測気温に適用し、将来の開花を予測する。