著者
位髙 啓史
出版者
日本DDS学会
雑誌
Drug Delivery System (ISSN:09135006)
巻号頁・発行日
vol.35, no.1, pp.27-34, 2020-01-25 (Released:2020-04-25)
参考文献数
33

mRNA医薬は、合成されたメッセンジャーRNA(mRNA)を体内に直接投与して、mRNAによってコードされたタンパク質を標的細胞で産生させることによって、治療または予防を行う医薬品である。mRNAは細胞外環境で極めて不安定な物質であり、これを医薬品として有効に用いるためには、DDSの果たす役割は大きい。世界的には脂質ナノ粒子(LNP)が最も多く用いられるが、肝標的投与以外の目的に対しては、まだ多くの課題が残る。筆者らが開発を進めるナノミセル型キャリアは、局所での組織浸透性・安全性に優れ、細胞機能制御を目的とするmRNA医薬投与に優れた性質をもつ。本稿では、このナノミセル型キャリアの概略、および最近の治療応用研究を紹介する。
著者
位髙 啓史
出版者
公益社団法人 日本薬理学会
雑誌
日本薬理学雑誌 (ISSN:00155691)
巻号頁・発行日
vol.148, no.4, pp.190-196, 2016 (Released:2016-10-01)
参考文献数
18
被引用文献数
1

メッセンジャーRNA(mRNA)をクスリとして直接体内に投与する新しい遺伝子治療が注目されている.迅速なタンパク質発現,ゲノムに取り込まれない安全性がポイントで,mRNAの安定な生体内送達を可能とするDDSが重要となる.神経系や運動感覚器に対する再生医療など,幅広い適応が期待される.
著者
位髙 啓史
出版者
公益財団法人 日本学術協力財団
雑誌
学術の動向 (ISSN:13423363)
巻号頁・発行日
vol.26, no.10, pp.10_38-10_43, 2021-10-01 (Released:2022-02-25)
参考文献数
16

人工的に合成したメッセンジャーRNA(mRNA)をクスリとして体内に投与し、治療薬やワクチンとして用いるmRNA医薬・ワクチンが注目されている。核酸配列を変えるだけでどのようなタンパク質でも産生させることが可能で、ゲノム挿入変異リスクが無いなど、多くの疾患に対する治療薬・ワクチンとしての開発が期待される新規医薬品モダリティである。新型コロナウイルスに対して迅速なワクチン開発が行われたが、そこにはmRNA作成技術、mRNAの免疫原性を制御する技術、体内の目的とする組織・細胞にmRNAを安全に送り届ける送達システム(ドラッグデリバリーシステム:DDS)など多くの技術の寄与がある。本稿ではmRNA医薬・ワクチンの開発経緯、用いられる技術、適応や今後の課題について概説する。
著者
位髙 啓史
出版者
日本DDS学会
雑誌
Drug Delivery System (ISSN:09135006)
巻号頁・発行日
vol.35, no.1, pp.27-34, 2020

mRNA医薬は、合成されたメッセンジャーRNA(mRNA)を体内に直接投与して、mRNAによってコードされたタンパク質を標的細胞で産生させることによって、治療または予防を行う医薬品である。mRNAは細胞外環境で極めて不安定な物質であり、これを医薬品として有効に用いるためには、DDSの果たす役割は大きい。世界的には脂質ナノ粒子(LNP)が最も多く用いられるが、肝標的投与以外の目的に対しては、まだ多くの課題が残る。筆者らが開発を進めるナノミセル型キャリアは、局所での組織浸透性・安全性に優れ、細胞機能制御を目的とするmRNA医薬投与に優れた性質をもつ。本稿では、このナノミセル型キャリアの概略、および最近の治療応用研究を紹介する。
著者
片岡 一則 横田 隆徳 位髙 啓史 津本 浩平 長田 健介 石井 武彦 西山 伸宏 宮田 完二郎 安楽 泰孝 松本 有 内田 智士
出版者
公益財団法人川崎市産業振興財団(ナノ医療イノベーションセンター)
雑誌
特別推進研究
巻号頁・発行日
2013

脳は高度に発達した生体バリアに守られているため薬剤の送達が極めて困難な部位である。本研究では、この生体バリアを克服して核酸医薬を脳内に送達して機能させるウイルス・サイズの薬剤送達システムを、高分子材料の自己組織化(高分子ミセル化)に基づいて構築した。すなわち、(1)血管内腔側内皮に局在するグルコース輸送タンパク質を標的とするグルコース結合型高分子ミセルを創製し、血管内腔からの脳内薬物移行を制限する内皮細胞バリア(血液脳関門)を突破して核酸医薬を脳内送達する事によって、アルツハイマー病(AD)の発症に関わる酵素の産生を抑制する事に成功した。(2)生体内で速やかに酵素分解を受けるmRNAのミセル内包安定化を達成し、脳室内局所投与による単鎖抗体のその場産生を実現する事によって、AD発症に関わるタンパク質であるアミロイドβ量を有意に低下出来る事を実証した。