著者
佐竹 昭介
出版者
一般社団法人 日本老年医学会
雑誌
日本老年医学会雑誌 (ISSN:03009173)
巻号頁・発行日
vol.55, no.3, pp.319-328, 2018-07-25 (Released:2018-08-18)
参考文献数
29
被引用文献数
4 10

基本チェックリストは,近い将来介護が必要となる危険の高い高齢者(二次予防事業対象者)を抽出するスクリーニング法として開発され,2006年の介護保険制度改正の際に,介護予防把握事業の一部として導入された.基本チェックリストは,「はい」または「いいえ」で回答する自記式質問票であり,日常生活関連動作,運動器,低栄養状態,口腔機能,閉じこもり,認知機能,抑うつ気分,の7領域25個の質問群からなっている.この各領域において,二次予防事業対象者または留意すべき対象者の選定基準が決められており,地域在住高齢者を対象とした疫学調査において妥当性が検証されている.選定基準の中で,「うつを除く20項目中10項目以上に該当する場合」に自立機能を失う危険性が最も高く,多面的な評価の重要性が示唆されている.基本チェックリストに含まれる各領域は,近年注目されている「フレイル」の要素としても重要なものである.これらの要素をすべて含む基本チェックリスト総合点は,他のフレイル評価法と有意な相関性を示す.また,総合点に基づくフレイル状態の評価は,予後予測の点でも有用性が認められ,フレイル評価法として妥当性があると考えられる.総合点による評価と各領域別の評価を組み合わせることで,フレイル状態の把握のみならず,介入すべき対象領域の特定にも利用できる.基本チェックリストは,介護予防事業の変遷とともに,その存在意義や役割が変化しているが,決して有効性がなかったわけではない.むしろ,国内外のフレイルに関するガイドラインでも,妥当性のあるフレイル評価法として挙げられている.介護予防事業における変遷は,より有効な活用を模索する過程として捉え,健康長寿社会の構築に向けたフレイル予防のために,高齢者を取り巻くさまざまな場面で基本チェックリストが活用されることが望まれる.

3 0 0 0 万葉集

著者
佐竹昭広 [ほか] 校注
出版者
岩波書店
巻号頁・発行日
2013
著者
古瀬 清秀 藤野 次史 中越 利夫 佐竹 昭
出版者
広島大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1992

鉄滓に関する研究は、これまで自然科学的分析によって、鉄滓と鉄及び鉄器の生産との関連が論じられてきた。考古学の立場からは、人工遺物、遺構が研究の対象となり、いわば廃棄物としての鉄滓はおろそかにされがちであったことは事実である。今回、この鉄滓を考古学的立場で検討することが可能かどうかについて、研究を推進した。この結果、鉄滓の外観的特徴、出土状況の分析を考古学的研究法によっても分類でき、鉄及び鉄器生産の諸工程を復元することも可能との結論を得た。方法としては、実験的鉄、鉄器生産及び現代の刀鍛治など伝統鍛治技術によって生成される鉄滓を入手して、それぞれの工程ごとの鉄滓の特徴を理解し、それらと古代遺跡で出土した鉄滓を比較検討することとした。特に、鍛治鉄滓に興味深い結果が得られた。鍛治滓は、i)ギザギザとした表面を呈するものが多い。ii)木炭片をかみこむ。iii)典型的な椀形滓が多く、小破片ももとは椀形を呈するものが破断していることが多い。iv)軟質のガラス滓がある。ということが主要な判断要素となるようである。実際に遺跡から出土するものには、(1)直径20cm前後・重量1kg前後、(2)直径10cm前後・重量200g前後、(3)(1)、(2)より小さく軽いガラス滓の3種に分類できる。そして、実験的に得られた滓をみると、(1)・(2)が精錬鍛治、(2)・(3)が鍛錬鍛治、(3)が火造り鍛治に対応できると考えられる。本研究の成果の大きな意義は、これまで考古学的には軽視されがちであった産業廃棄物としての鉄滓を考古学的方法論によって、重要な考古学資料として利用できることを明らかにしたことにあるといっても過信ではなく、鉄滓の研究が鉄及び鉄器の生産研究に大きな、しかも新たな研究の方向性を与えたといえる。
著者
佐方 信夫 浜田 将太 土屋 瑠見子 佐竹 昭介
出版者
一般社団法人 日本老年医学会
雑誌
日本老年医学会雑誌 (ISSN:03009173)
巻号頁・発行日
vol.58, no.1, pp.164-166, 2021-01-25 (Released:2021-02-25)
参考文献数
5
被引用文献数
1

介護度が多様な施設入所者に対するフレイル評価として,FRAIL-NHが米国で開発され,その妥当性や予後予測の有用性が確認されている.我々は,原版の翻訳,逆翻訳,開発者への確認,試験的使用というプロセスを経て,言語的妥当性を検証したFRAIL-NH日本語版を作成した.今後,FRAIL-NH日本語版が施設入所者のフレイル評価に活用され,脆弱性の進行予防に寄与することを期待している.
著者
佐竹 昭
出版者
広島大学
雑誌
地誌研年報 (ISSN:09155449)
巻号頁・発行日
vol.5, pp.59-76, 1996-03

<シンポジウム特集> 地誌学とエリアスタディ : 現状と課題 報告論文『広島市公文書館紀要』17号(1994年)に掲載されたものを発行者の許可を得て転載したもの
著者
木下 かほり 佐竹 昭介 松井 康素 荒井 秀典
出版者
Japan Society of Nutrition and Food Science
雑誌
日本栄養・食糧学会誌 (ISSN:02873516)
巻号頁・発行日
vol.72, no.5, pp.221-229, 2019 (Released:2019-10-28)
参考文献数
38
被引用文献数
1

フレイル高齢者でエネルギー摂取とは独立して偏りやすい栄養素を横断的に解析することを目的とした。当院フレイル外来を受診した独歩可能な高齢者270名 (年齢中央値79歳) を対象とし, 中等度以上の認知機能低下やタンパク質制限を要する者は除外した。フレイルはJ-CHS基準で評価した。食事摂取量は簡易型自記式食事歴法質問票で評価し, 推定エネルギー必要量を摂取したと仮定した栄養素・食品摂取量を算出後, 22の栄養素摂取量が日本人の食事摂取基準の推奨量または目安量を満たすかどうか評価した。フレイル有無において基準を満たしていない者の割合をχ2検定で性別に比較し, 差を認めた栄養素を従属変数, フレイルを独立変数, 年齢, BMIを共変量としたロジスティック回帰分析を性別に行った。その結果, 女性でのみ有意な関連を認め, フレイルの亜鉛摂取基準値未満に対するオッズ比 (95%信頼区間) は2.50 (1.23‐5.06) であった。フレイルな高齢女性では亜鉛の不足に留意した栄養指導が必要である。
著者
木下 かほり 佐竹 昭介 西原 恵司 川嶋 修司 遠藤 英俊 荒井 秀典
出版者
一般社団法人 日本老年医学会
雑誌
日本老年医学会雑誌 (ISSN:03009173)
巻号頁・発行日
vol.56, no.2, pp.188-197, 2019-04-25 (Released:2019-05-16)
参考文献数
30
被引用文献数
1

目的:外出低下は身体機能や抑うつの影響を受け,いずれも低栄養と関連する.低栄養の早期兆候である食事摂取量減少と外出低下との関連を検討した.方法:老年内科外来を初診で受診した高齢者で認知症あり,要介護認定あり,施設入所中,急性疾患で受診,調査項目に欠損がある者を除外し463名(男性184名,女性279名)を解析した.調査項目は性,年齢,BMI,服薬数,基本チェックリスト,MNA-SFとした.外出週1回未満を外出頻度低下とし,過去3カ月に中等度以上の食事摂取量減少ありを食事摂取量減少とした.外出頻度低下有無で2群に分け調査項目を比較した.目的変数を食事摂取量減少あり,説明変数を外出頻度低下ありとしたロジスティック回帰分析を行った.調整変数は,性,年齢,および,外出頻度低下有無2群間に差を認めた項目で多重共線性のなかった服薬数,基本チェックリストの栄養状態項目得点,口腔機能項目得点,身体機能項目得点,うつ項目得点とした.結果:平均年齢は男性79.6±5.9歳,女性79.9±6.1歳,外出頻度の低下は104名(22.5%).外出頻度低下あり群では外出頻度低下なし群と比べて,高年齢で服薬数が多く,MNA-SF合計点が低く,基本チェックリスト合計点が高かった(すべてp<0.05).ロジスティック回帰分析では性,年齢,服薬数,栄養状態項目得点,口腔機能項目得点で調整後,食事摂取量減少ありに対する外出頻度低下ありのオッズ比2.5,95%信頼区間1.5~4.4,さらに身体機能項目得点およびうつ項目得点で調整後のオッズ比2.0,95%信頼区間1.1~3.6であった.結論:生活機能の自立した高齢者では多変量調整後も外出頻度低下は食事摂取量減少と関連した.食事摂取量減少はエネルギー出納を負に傾け体重を減少させ低栄養をきたす.低栄養の早期予防には日常診療で高齢者の外出頻度に注目することが重要である.
著者
佐竹 昭
出版者
広島大学大学院総合科学研究科
雑誌
文明科学研究 (ISSN:1881770X)
巻号頁・発行日
vol.11, pp.1-23, 2016

Before World War II, a number of families who had been iron makers for generations, going back to the Edo period, owned vast natural forests in the Okuizumo district in Shimane Prefecture called Tetsuzan (literally, "iron forest"), from which they obtained charcoal for the production of iron. It has not been clear until now how they accumulated these forests. By close examination of documents from the Edo period, which have been preserved by the iron makers' families, I gathered concrete evidence that they accumulated the vast forest areas by purchase.In this paper, I show chronologically how the Tetsuzan were purchased by iron makers in Nita County, a territory of Matsue Feudal Domain, in the early Edo period. After determining the precise location of these Tetsuzan and locating them on a map, I was able to observe the process of expansion of the iron manufacturing enterprises. As a result, I was able to determine that the five iron makers had already been establishing large-scale enterprises in Nita County early in the eighteenth century and that Matsue Domain protected them by carrying out an iron manufacturing policy called Tetsukata-Housiki in 1726.本稿の一部は、中国四国地理学歴史学協会2016年度大会日本史学部会で報告したものである。