著者
秋谷 直矩 佐藤 貴宣 吉村 雅樹
出版者
日本認知科学会
雑誌
認知科学 (ISSN:13417924)
巻号頁・発行日
vol.21, no.2, pp.207-275, 2014-06-01 (Released:2015-02-10)
参考文献数
19
被引用文献数
1

This study examines street-walking training sessions by orientation and mobility spe-cialists for people who are visually impaired. We determine the professional methods used by orientation and mobility specialists to support the spatial perception of people who are visually impaired. Based on the above, when we study the street-walking of people who are visually impaired, we argue the important viewpoint that in this case,walking should be considered “a social action.” We videotape street-walking training sessions and describe the ethno-methods of orientation and mobility specialists. Results indicate that when orientation and mobility specialists describe the surrounding envi-ronment, they highlight spatial arrangements with regard to the boundaries of objects in the street.Through touching and hearing, these objects ’intelligibility is achieved by linking the orientation and mobility specialist’s description of the environment and the spatial perception of the person who is visually impaired. These results suggest walking in the street is a social action, which is related to various configurations of common sense. This research is important to advancing studies on the “order of perception.”
著者
安岡 愛理 佐藤 貴宣 青木 千帆子 松原 崇 秋風 千恵 Yasuoka Airi Sato Takanori Aoki Chihoko Matsubara Takashi Akikaze Chie ヤスオカ アイリ サトウ タカノリ アオキ チホコ マツバラ タカシ アキカゼ チエ
出版者
大阪大学人間科学部社会学・人間学・人類学研究室
雑誌
年報人間科学 (ISSN:02865149)
巻号頁・発行日
no.30, pp.33-53, 2009

研究ノートDisability Studies(障害学)は、一九六〇年代後半から七〇年代中葉にかけて世界的規模で起こった、障害者による社会運動を背景として誕生した。九〇年代になって、日本にも学問として紹介されている。日本の障害学はイギリスの影響が強いことから、本稿ではイギリスの学術誌"Disability &Society"(以後DSとする)を対象として、国際的な障害学の動向を把握することを目的とする。一九八六年の創刊号から二〇〇八年二三巻四号までのDSに掲載された論文のうち、アブストラクトのある七八六件の論文を一次資料として採用し、各論文の主題を類型化しカテゴリーに分類して、そのトレンドを分析した。DSにおいて扱われる障害種別は次第に多様化する傾向にある。発刊当初から九〇年代半ばまでの間、障害を社会的文脈との関連において理論化していこうとする研究が盛んであった。それは障害学の核ともいうべき「障害の社会モデル」を精緻化するとともに、社会モデルの枠組みを用いて既存のさまざまな社会事象を分析する取り組みであった。しかし、それ以降は社会モデルを革新し、その射程範囲を広げていこうとする方向にある。また障害学の発展にともない、より多様な国と地域、より多様な障害種別がその論考の対象となってきている。したがって、今後は、エスニックマイノリティや女性障害者をも包摂し、多様化する障害種別にいかに対応していける理論を構築できるかが大きな課題となるだろう。Disability Studies have their roots in the social movement started by disabled people throughout the world from the late 1960s and until the 1970s. By 1990s Disability Studies was also introduced to Japan. The purpose of this paper is to find the trends of Disability Studies by reviewing the papers published in Disability & Society – a prominent British Journal of the field. We believe this review will be especially of interest in Japan, where Disability Studies are strongly influenced by research conducted in UK. As our primary source we have used the papers with abstracts published in "Disability&Society", starting from the inaugural issue of year 1986 and finishing with the volume 23 number 4 of year 2008. We have categorized the papers by subject and analyzed the tendencies. We have found that number of types of impairments appearing in "Disability&Society" grows increasingly year by year and that until the middle 90s many papers theorize disabilities through their connection with the social context. This tendency shows that during that period the Social Model of Disability – the key concept of Disability Studies – was increasingly used to produce more and more detailed understanding of the social phenomena of disabilities. From the second part of 90s the Social Model renews and starts to cover increasingly wider range of objects. Disability Studies gain more and more power, and papers on new types of impairments based on research in more and more countries and regions appear. We conclude that in future objects of inquiry should include disabled people from ethnic minorities and also disabled women, and that the ever growing number of types of impairments also needs theoretical innovations in the field.
著者
佐藤 貴宣
出版者
一般社団法人 日本教育学会
雑誌
教育学研究 (ISSN:03873161)
巻号頁・発行日
vol.86, no.2, pp.287-299, 2019 (Released:2019-10-12)
参考文献数
26

本稿では、小学校を事例とし、個々の現場に埋め込まれて組織化される教師の実践の論理を析出することを試みる。個別の学校の日常において、障害児を含め多様な子どもたちと日々関係を営為している教師たちは、自らの教育実践をどのような仕方で意味づけ産出しているのか。本稿が経験的データの分析を通じて探求しようとするのはこの点である。そこから、包摂を志向する実践それ自体が通常学級から障害児を切り離すことへと反転しうる可能性について論考する。
著者
佐藤 貴宣
出版者
日本教育社会学会
雑誌
教育社会学研究 (ISSN:03873145)
巻号頁・発行日
vol.93, pp.27-46, 2013-11-30 (Released:2015-03-25)
参考文献数
14
被引用文献数
2

本稿は,教師たちが盲学校のリアリティを,普通学校とは別の独得の秩序をもつ現実として構成していくその仕方を解明するとともに,そうしたリアリティ構成のあり方が,どのような形で生徒たちの進路形成・進路分化を規定しうるのかを,エスノメソドロジーの成員カテゴリー化論に依拠して考察することを目的とする。 この間,精力的に成員性カテゴリー化分析(MCA)を推進してきたエグリンとヘスターはリフェラル・ミーティングにおける参加者のカテゴリー使用を考察することにより,成員カテゴリーや成員カテゴリー化装置(MCD),その述部の意味はインデクシカルな表現から成り立ち,カテゴリー化とその文脈とは相互に精緻化し合うと主張してきた。本稿もヘスターらのアイディアを援用し,盲学校という場のリアリティを構成する教師たちの言語行為を記述していく。それはすなわち,盲学校に固有のリアリティが状況定義と生徒のカテゴリー化との相互規定性として達成されていくプロセスの解明に他ならない。そのようにして達成されていく盲学校のリアリティは,[盲学校教師]カテゴリーに対して特定の述部的行為を道徳的に帰属する。その結果,盲学校内部の職業課程を経由する職業移行が,視覚障害を有する生徒にとっての,最も妥当な進路として合理化されていくのである。
著者
松原 崇 佐藤 貴宣
出版者
国際ボランティア学会
雑誌
ボランティア学研究 (ISSN:13459511)
巻号頁・発行日
no.11, pp.85-98, 2011-12-28

本研究の目的は、障害疑似体験の可能性について、新たな観点を提示することである。一般に、従来の障害疑似体験は車いすやアイマスクのような補装具や拘束具を用いて、健常者の身体上に障害者の身体状態を再現することで可能になると考えられてきた。しかし、こうした障害疑似体験に対しては障害学や障害当事者団体より批判的な見解が提出されてきた。本研究では、体験は人々の間のコミュニケーションを通じて協働的に構成されると考える社会構成主義の観点に依拠して考案したワークショップ『バリバリツアー』を事例として、新たな障害疑似体験の方向を提示した。すなわち、障害の疑似体験は、障害当事者に寄り示い、障害当事者と協働である事柄を障害(ディスアビリティ)として意味付ける過程に参加することによって可能になるとする障害協働体験を提案した。