著者
八木 浩司 斉藤 宗勝
出版者
学術雑誌目次速報データベース由来
雑誌
季刊地理学 (ISSN:09167889)
巻号頁・発行日
vol.49, no.4, pp.121-136, 1997
被引用文献数
1 1

ネパールのヒマラヤ前縁帯およびテライ平原において, 天然林 (サラノキ: <i>Shorea robusta</i>) の果実が, カカオ代替油脂 (サルバター) 採取を目的として企業的に利用されている。その利用システムには天然林生産物と地域住民を基層構造とし, 首都カトマンズの企業そして国際市場につながる階層性が存在する。<br>材以外で, サルバターのような国際市場に結びついた天然林生産物利用地域の出現は, <i>S. robusta</i> 林がヒマラヤ前縁帯・ガンジス平原北縁に広大に分布する低価格天然林資源であること, 果実の結実期が乾季でその間農業活動が比較的低調であること, 労働集約型の採取活動が要求されるにも関わらずこの地域の最底辺層に位置する安い労働力が利用できることによって説明される。しかし, サルバター生産地域は, 自然および社会環境の変化に左右される不安定な存在である。さらに <i>S. robusta</i> 林は過度の人為ストレスのため持続可能利用されているとは言いがたい部分も生じている。
著者
村山 良之 八木 浩司
出版者
山形大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

以下のような事業を行い,標記のテーマに関する成果を得た。(1)東日本大震災時と以後の学校等実態調査(宮城県,岩手県内) (2)2007年に仙台市立北六番丁小学校での防災教育実践の大震災経験をふまえた評価 (3)石巻市立鹿妻小学校の復興マップづくり(津波被災地の学校における防災ワークショップ) (4)鶴岡市教育委員会と共同の学校防災支援(教員研修会,学校訪問,マニュアルひな形) (5)ネパールにおける斜面災害・土石流災害に対する防災教育支援(学校防災教育支援および専門家,大学院生教育支援) (6)その他の防災教育関連の取組(数多くの講演等および山形大学地域教育文化学部での科目新設提案)
著者
八木 浩司 吉川 契子
出版者
THE TOHOKU GEOGRAPHICAL ASSOCIATION
雑誌
東北地理 (ISSN:03872777)
巻号頁・発行日
vol.40, no.4, pp.247-257, 1988-12-20 (Released:2010-04-30)
参考文献数
14
被引用文献数
1

西津軽沿岸地域は, 本邦における地殻変動の活発な東北日本弧内弧に位置する。この地域には6段以上の更新世海成段丘が発達しみごとな景観をなしている。本研究は西津軽沿岸地域に発達する完新世海成段丘の高度分布を述べ, さらに本地域の完新世地殻変動について考察した。結果は以下のようにまとめられる。(1) 西津軽沿岸地域には完新世の旧汀線が4段認められる。それらは上位よりLI面, LII面, BI面, BII面である。LI面とLII面は海成段丘, BI面およびBII面は隆起ベンチである。BII面は1704年に本地域南部岩館周辺で発生した地震, および, 1793年に北部の大戸瀬沖で発生した地震の際に離水した。(2) LI面の形成年代は, 放射性炭素年代測定で約6,000yr. B. P. を得た。LI面の発達高度は5~8mである。最大隆起速度は1.3mm/yrに及び本地域が本邦で最も隆起の激しい地域であることを示す。(3) 完新世段丘の隆起量の最も大きな地域は, 海岸線が桝形山地と白神山地を横切る所に位置し, またそこは更新世海成段丘の隆起量の激しい位置と一致する。各旧汀線の高度分布パターンは, 18世紀の地震で隆起した離水ベンチのそれとよく類似する。西津軽沿岸地域における完新世海成段丘の発達は, 更新世より続く桝形山地および白神山地の間欠的な地震隆起によるものと考えられる。
著者
八木 浩司 山崎 孝成 渥美 賢拓
出版者
The Japan Landslide Society
雑誌
日本地すべり学会誌 : 地すべり = Journal of the Japan Landslide Society : landslides (ISSN:13483986)
巻号頁・発行日
vol.43, no.5, pp.294-306, 2007-01-25
被引用文献数
12 23

2004年新潟県中越地震にともなって発生した地すべり・崩壊の発生場の地形・地質・土質的特徴を地形図, GISならびに土質試験・安定解析を用いて検討した。その結果, 以下のことが明らかとなった。<br>1. 2004年新潟県中越地震による地すべり (深層すべり) は, 芋川や塩谷川流域の梶金向斜沿いの地域に集中して発生した。それらは, 旧期の地すべり地形の一部が再活動したものである。これには, 魚沼丘陵を開析する河谷に沿った30°程度の急な谷壁斜面の発達が関わっていることが示唆された。<br>2. 大規模な地すべりによる地形変位量を地震前後のDEM (数値地形モデル) から算出した。滑落崖付近での陥没, 移動体による旧河道の埋積, 旧地表面に対する乗り上がり・隆起が捉えられたほか, 移動体から受ける側圧で発生した河床の隆起も認められた。特に大日岳北側 (塩谷神沢川最上流部) では, 上下変動量がともに最大で40m以上の規模で発生した。<br>3. 崩壊は, その6割以上が45°以上の急斜面で発生している。<br>4. 地すべりの大半は層すべり型でその発生場での元斜面勾配は, 13-26°の範囲で, そのモードは21-26°である。そのうちモードは, 東北日本内弧・新第三系堆積岩地域のそれに比べ数度程度大きいことから, 地震動なしには地すべりが発生しにくい土質条件下にあった。<br>5. リングせん断試験および原位置一面せん断試験によるすべり面のせん断強度は, 砂岩と泥岩の層界にすべり面が形成されている場合, 完全軟化強度<i>c</i>'=0kPa, φ'=35°, 残留強度は<i>c<sub>r</sub></i>'=0kPa, φ<i>r</i>'=30°の値を示し, 泥岩・シルト岩のすべり面では完全軟化強度<i>c</i>'=0~10kPa, φ'=30°, 残留強度は<i>c<sub>r</sub></i>'=10kPa, φ<i>r</i>'=20°の値が得られた。既報告の第三紀層すべり面の平均残留強度値 (眞弓ほか, 2003) と比較した場合, シルト岩のすべり面は10°程度大きな値である。
著者
八木 浩司 佐藤 浩
出版者
山形大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

低ヒマラヤ山地斜面に発達する地すべり地形の分布図作成を通して,地すべりの発生しやすい地形・地質条件を明らかにすることでハザードマップ作成のための危険度判定基準を明らかにした.
著者
八木 浩司 山崎 孝成 渥美 賢拓
出版者
公益社団法人 日本地すべり学会
雑誌
日本地すべり学会誌 (ISSN:13483986)
巻号頁・発行日
vol.43, no.5, pp.294-306, 2007 (Released:2007-08-03)
参考文献数
20
被引用文献数
10 23

2004年新潟県中越地震にともなって発生した地すべり・崩壊の発生場の地形・地質・土質的特徴を地形図, GISならびに土質試験・安定解析を用いて検討した。その結果, 以下のことが明らかとなった。1. 2004年新潟県中越地震による地すべり (深層すべり) は, 芋川や塩谷川流域の梶金向斜沿いの地域に集中して発生した。それらは, 旧期の地すべり地形の一部が再活動したものである。これには, 魚沼丘陵を開析する河谷に沿った30°程度の急な谷壁斜面の発達が関わっていることが示唆された。2. 大規模な地すべりによる地形変位量を地震前後のDEM (数値地形モデル) から算出した。滑落崖付近での陥没, 移動体による旧河道の埋積, 旧地表面に対する乗り上がり・隆起が捉えられたほか, 移動体から受ける側圧で発生した河床の隆起も認められた。特に大日岳北側 (塩谷神沢川最上流部) では, 上下変動量がともに最大で40m以上の規模で発生した。3. 崩壊は, その6割以上が45°以上の急斜面で発生している。4. 地すべりの大半は層すべり型でその発生場での元斜面勾配は, 13-26°の範囲で, そのモードは21-26°である。そのうちモードは, 東北日本内弧・新第三系堆積岩地域のそれに比べ数度程度大きいことから, 地震動なしには地すべりが発生しにくい土質条件下にあった。5. リングせん断試験および原位置一面せん断試験によるすべり面のせん断強度は, 砂岩と泥岩の層界にすべり面が形成されている場合, 完全軟化強度c'=0kPa, φ'=35°, 残留強度はcr'=0kPa, φr'=30°の値を示し, 泥岩・シルト岩のすべり面では完全軟化強度c'=0~10kPa, φ'=30°, 残留強度はcr'=10kPa, φr'=20°の値が得られた。既報告の第三紀層すべり面の平均残留強度値 (眞弓ほか, 2003) と比較した場合, シルト岩のすべり面は10°程度大きな値である。