著者
八木 麻衣子 根本 祐二
出版者
日本理学療法士学会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.35, no.5, pp.254-260, 2008-08-20 (Released:2018-08-25)
参考文献数
17

本研究は,「理学療法士がメディカルフィットネスを提供できる」という仮想市場における,客観的な市場の選好条件を,コンジョイント分析を用いて検討することを目的とした。対象は東京都内3ヶ所のシルバー人材センターに登録されている計113名(男性97名,女性16名,平均年齢68.9 ± 10.3歳)であった。方法はアンケート調査を用いて,理学療法士コンジョイントカードの順位付けによるメディカルフィットネスの選好条件の検討を行った。メディカルフィットネスに対する属性の重要度が高かったのは価格であった。価格の部分効用値は5,000円と50,000円が正の評価となり,高価格帯と低価格帯を好む2極化が見られた。このような傾向は,現代の消費傾向と同様の結果であった。メディカルフィットネスを提供する際には,価格設定に重点を置き,サービスの対象者を明確にする必要性が示唆された。
著者
渡邉 陽介 横山 仁志 笠原 酉介 堅田 紘頌 八木 麻衣子 小山 照幸
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.25, no.3, pp.385-390, 2010 (Released:2010-07-28)
参考文献数
24
被引用文献数
2

〔目的〕本研究では,肺切除術における術後呼吸器合併症の併発率や,合併症併発の予測因子について明らかにすることを目的に検討した。〔方法〕肺切除術を施行した全146例を対象とし,呼吸器合併症の有無を診療録より後方視的に調査し,呼吸器合併症の併発率,併発日を算出した。そして,術後呼吸器合併症の予測因子について,ロジスティック回帰分析を用いて検討した。〔結果〕術後呼吸器合併症の併発率は4.1%(146例中6例)と極めて低値を示し,併発日は2.2±2.2日であった。また,術前屋外自立歩行の可否(オッズ比15.2),慢性呼吸器疾患合併の有無(オッズ比9.9)が,呼吸器合併症の併発に独立して影響を与えていた。〔結語〕従来の報告に比較し,術後呼吸器合併症の併発率は低下傾向にあり,その予測因子も変化していることが推察された。
著者
八木 麻衣子 根本 祐二
出版者
日本理学療法士学会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.35, no.5, pp.254-260, 2008
参考文献数
17
被引用文献数
1

本研究は,「理学療法士がメディカルフィットネスを提供できる」という仮想市場における,客観的な市場の選好条件を,コンジョイント分析を用いて検討することを目的とした。対象は東京都内3ヶ所のシルバー人材センターに登録されている計113名(男性97名,女性16名,平均年齢68.9 ± 10.3歳)であった。方法はアンケート調査を用いて,理学療法士コンジョイントカードの順位付けによるメディカルフィットネスの選好条件の検討を行った。メディカルフィットネスに対する属性の重要度が高かったのは価格であった。価格の部分効用値は5,000円と50,000円が正の評価となり,高価格帯と低価格帯を好む2極化が見られた。このような傾向は,現代の消費傾向と同様の結果であった。メディカルフィットネスを提供する際には,価格設定に重点を置き,サービスの対象者を明確にする必要性が示唆された。
著者
八木 麻衣子 森田 英隆 坂本 雄 小諸 信宏 宮城 春秀 亀川 雅人
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.212-221, 2021-02-15

要旨 【目的】リハビリテーション部門にて,トランザクティブメモリーシステム(transactive memory system:TMS)や組織風土と,職務・職場満足との関連性を検討することを目的とした.【方法】対象は首都圏の医療機関3施設のリハビリテーション専門職331名であった.調査項目は回答者属性のほか,TMSと組織風土を評価し,因子構造を確認して用いた.アウトカムとして職務・職場満足を調査し,多変量解析で関連する因子を検討した.【結果】職務満足は,TMSの高い信憑性,相互調整や高い専門分化,組織風土の高い組織環境性,職種,経験・勤続年数と関連した.職場満足は,高い信憑性,相互調整や低い専門分化,低い伝統性と高い組織環境性,年齢,勤続年数などと関連した.医療職としての転職経験,上司との意識的なコミュニケーションは職務・職場満足とも関連した.【結論】職務満足にはTMSの全要素と組織風土の組織環境性が,職場満足にはTMSの全要素と,組織風土の伝統性・組織環境性が関連した.今後は診療成績などとの関連性の検討が望まれる.
著者
海鋒 有希子 八木 麻衣子 石山 大介 渡邉 紗都 赤尾 圭吾 桑村 雄偉 大森 慎太郎 太田 明雄
出版者
一般社団法人 日本糖尿病学会
雑誌
糖尿病 (ISSN:0021437X)
巻号頁・発行日
vol.63, no.4, pp.172-178, 2020-04-30 (Released:2020-04-30)
参考文献数
28

糖尿病(DM)患者の筋力や筋肉の質(MQ)の低下が指摘されているが,患者背景や身体機能との関連は不明である.本研究の目的は,2型DM患者の下肢筋力および下肢MQの維持・低下に関連する因子を調査し,評価特性の違いを明らかにすることである.対象は当院入院・通院中の2型DM患者のうち,取込み基準を満たす95例(男性67例,女性28例,年齢59.0±14.4歳,罹患歴6.9±8.6年,HbA1c 8.8±2.8 %)とした.下肢筋力及びMQ各々について,維持群と低下群における基本属性・体組成・身体機能を比較し,さらにロジスティック回帰分析にて,維持・低下の関連要因を検討した.下肢筋力には体脂肪率が,下肢MQには10 m最大歩行速度が,それぞれの維持・低下に独立して影響していた.2型DM患者ではMQの方が,年齢や体格の影響を受けにくく,歩行能力を鋭敏に反映する指標であることが示唆された.
著者
石阪 姿子 田中 彩乃 八木 麻衣子 西山 昌秀 岩﨑 さやか 立石 圭祐 大沼 弘幸 清水 弘之
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.38 Suppl. No.2 (第46回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.CbPI2198, 2011 (Released:2011-05-26)

【目的】 変形性膝関節症(以下,膝OA)における股関節周囲筋筋力増強は膝関節負荷軽減や膝関節痛軽減,運動機能向上などの効果が得られたとする研究が散見され,トレーニングプログラムの一つとして行われることが多い.しかし実際に膝OA患者の股関節周囲筋の筋力水準を提示した研究は少なく,健常者と比較してどの程度の筋力水準なのかは不明である.よって運動処方の際に,目標とする筋力水準を設定出来ない現状がある. 本研究では膝OA患者の股関節周囲筋の年代別筋力水準を提示し,筋力低下の有無や程度を検討することを目的とした.【方法】 対象は当院に人工膝関節全置換術目的に入院した重度膝OA女性患者71名(以下,OA群)と過去6ヶ月に1週間以上の臥床経験が無く独歩可能で日常生活活動が自立し,さらに骨・関節疾患,脳血管障害,神経・筋疾患の既往や認知症が無いという取り込み基準を満たす女性56名(以下,コントロール群)の合計127名である. 筋力測定は等尺性筋力測定装置μ-Tas(アニマ社製)を使用し,股関節外転,伸展,膝関節伸展筋力を約5秒間の最大努力により2回測定,その最大値を記録した.OA群は手術予定側,コントロール群は全例右下肢の筋力値を採用,体重で除した値を用いた. 統計解析には統計ソフトSPSS(Ver.12.0J)を使用した.属性の比較,OA群とコントロール群の筋力値の水準比較には対応のないt検定を使用,筋力値に対する体重の影響を検討するために体重を共変量とし,共分散分析をおこなった.OA群,コントロール群各々における各年代間の筋力値の比較は一元配置の分散分析を使用した.なお,統計学的判定の有意水準は5%とした.【説明と同意】 倫理的配慮として当院倫理委員会の承認を得た(承認番号第1313号).対象者には研究についての適切な説明を行い十分に理解した上で同意を得た.【結果】 属性において両群の体重に有意差を認めたが,共分散分析を行った結果,筋力値に対する体重の影響は棄却された. 年代別筋力値の体重比(単位kgf/kg)を60歳代(OA群13名/コントロール群18名),70歳代(48名/20名),80歳代(10名/18名)の順に述べる.膝関節伸展筋力はOA群では0.26±0.10,0.27±0.09,0.24±0.05,コントロール群では0.47±0.14,0.39±0.09,0.38±0.10, 股関節外転筋力ではOA群では0.23±0.11,0.22±0.08,0.20±0.08,コントロール群0.33±0.08,0.28±0.05,0.27±0.09, 股関節伸展筋力ではOA群では0.23±0.11,0.23±0.08,0.23±0.07,コントロール群0.40±0.11,0.31±0.09,0.27±0.12であった.OA群とコントロール群との比較では80歳代の股関節外転,伸展筋力以外すべてにおいて有意にOA群の筋力が低値であった(p<0.05). また,コントロール群とOA群各々における各年代の筋力値の比較ではコントロール群の股関節伸展筋力にのみ60歳代から80歳代にかけて有意な筋力低下がみられたが(p<0.01),OA群では60歳代から80歳代にかけての筋力値に統計学的な有意差は見られなかった.【考察】 OA群ではコントロール群と比較し,従来から筋力低下がおこるといわれている膝関節伸展筋力のみならず,股関節外転,伸展筋力にも筋力低下を生じていることがわかり,その予防対策やトレーニングの必要性が示唆された.トレーニングプログラムとして股関節周囲筋の筋力増強を図る場合には,今回の結果から得られたコントロール群の年代別筋力値を目標値の一つとして使用できると考える.しかし,今回は筋力値とパフォーマンスや疼痛との関連,また,下肢のアライメントや身体活動量の違いなどとの関連は検討しておらず,今後の課題である. また,OA群ではコントロール群に見られる加齢による筋力低下の傾向が見られなかった.疾患由来による筋力低下が60歳代においてすでにみられるが,その後,加齢による筋力低下は見られない.重度膝OA患者ではあるが全例歩行が可能であったことから,今回得た筋力値は日常生活維持可能な最低限の筋力水準であることが予想された.高齢女性では予備体力低下が問題であり,今後は筋力低下を生じる前に予防策を講じる必要性があると考えられた.【理学療法学研究としての意義】 本研究の意義は膝OA患者において膝関節伸展筋力とともに,股関節周囲筋にも筋力低下を生じていることを示した点、またその水準を示した点である.股関節周囲筋の筋力トレーニングを実施するにあたり、目標値を設定する一助となると考える.