著者
内井 喜美子 川端 善一郎
出版者
日本陸水学会
雑誌
陸水学雑誌 (ISSN:00215104)
巻号頁・発行日
vol.70, no.3, pp.267-272, 2009 (Released:2011-02-16)
参考文献数
22
被引用文献数
1 2

1998年,アメリカおよびイスラエルで大量死起こした養殖コイから初めて単離されたコイヘルペスウイルスは,2003年,日本に侵入し,コイ養殖産業に大損害を与えた。日本においては,ウイルスは養殖場にとどまらず,2004年には全国の河川や湖に蔓延し,琵琶湖では同年,10万匹以上の野生コイが死亡した。大流行の収束後は,感染を生き残ったコイがウイルスを保因し,新たなウイルスの供給源となっている可能性が高い。さらに,コイの集団繁殖生態が,ウイルスの宿主間伝播に寄与すると推測される。
著者
山中 裕樹 源 利文 高原 輝彦 内井 喜美子 土居 秀幸
出版者
一般社団法人 日本生態学会
雑誌
日本生態学会誌 (ISSN:00215007)
巻号頁・発行日
vol.66, no.3, pp.601-611, 2016 (Released:2016-12-28)
参考文献数
58
被引用文献数
19

大型水棲動物を対象とした環境DNA分析は、野外調査時には水を汲むだけで済むという簡便性から、広域的かつ長期的な生態学的調査や生物相調査への適用が期待されている。環境DNA分析は種の分布や生物量、そして種組成の解析にまで利用され始めているが、大型水棲生物を対象とした研究が行われるようになってからまだ日が浅く、野外調査などへの適用に当たっては当然知っておくべき基礎情報の中にも、環境DNAの水中での分解や拡散の過程など、未だ明らかとなっていないブラックボックスが残されているのが現状である。本稿ではこれまでの多くの野外適用例をレビューして、環境DNA分析の野外調査への適用の場面で想定される様々な疑問や課題について解説し、今後の展望を述べる。環境DNA分析から得られる結果は採捕や目視といった既存の調査で得られた知見との比較検討の上で適切に解釈する必要があり、この新たな手法が今後各方面からの評価と改善を繰り返して、一般的な調査手法として大きく発展することを期待したい。
著者
高原 輝彦 山中 裕樹 源 利文 土居 秀幸 内井 喜美子
出版者
一般社団法人 日本生態学会
雑誌
日本生態学会誌 (ISSN:00215007)
巻号頁・発行日
vol.66, no.3, pp.583-599, 2016 (Released:2016-12-28)
参考文献数
81
被引用文献数
4

要旨: 湖沼や河川、海洋沿岸域で採取した水試料に浮遊・存在するDNA(環境DNA)の分析により、水棲動物の生息状況(在・不在やバイオマスなど)を推定する生物モニタリング手法は、“環境DNA分析”と呼ばれる。これまでに、淡水域から海水域までの様々な環境において、環境DNA分析を用いた生物モニタリングが実施されており、目視や採捕などによる従来の調査法と比べて、低コスト・高パフォーマンスであることが報告されている。現在まで、環境DNAの分析に必要となる水試料の採取量や保存の仕方、水試料に含まれるDNAの回収・濃縮方法、DNAの抽出・精製方法、およびDNA情報の解析方法については、研究者ごとに様々な方法が採用されており、統一的なプロトコルはない。いくつかの研究では、水試料に含まれるDNAの濃縮方法やDNA抽出方法の違いが、得られるDNA濃度や検出率に及ぼす影響を比較・検討しており、その結果、野外環境条件や対象生物種によって、効果的なプロトコルに相違があることがわかってきた。そこで本稿では、著者らのこれまでの研究を含めた既報の論文における実験手法を概説し、環境DNA分析を用いた効率的な生物モニタリング手法の確立に向けて議論を展開する。本稿によって、環境DNA分析が広く認知されるとともに、本稿がこれから環境DNAの研究分野に参画する研究者の技術マニュアルとして活用されることを願う。さらに、環境DNA分析が、様々な局面での環境調査において、採捕や目視といった既存の手法と同様に、一般的に利用される生物モニタリング手法となることを期待している。
著者
内井 喜美子 川端 善一郎
出版者
日本陸水學會
雑誌
陸水學雜誌 (ISSN:00215104)
巻号頁・発行日
vol.70, no.3, pp.267-272, 2009-12-20
参考文献数
22
被引用文献数
2 2

1998年,アメリカおよびイスラエルで大量死起こした養殖コイから初めて単離されたコイヘルペスウイルスは,2003年,日本に侵入し,コイ養殖産業に大損害を与えた。日本においては,ウイルスは養殖場にとどまらず,2004年には全国の河川や湖に蔓延し,琵琶湖では同年,10万匹以上の野生コイが死亡した。大流行の収束後は,感染を生き残ったコイがウイルスを保因し,新たなウイルスの供給源となっている可能性が高い。さらに,コイの集団繁殖生態が,ウイルスの宿主間伝播に寄与すると推測される。
著者
見坂 武彦 谷 佳津治 内井 喜美子 片岡 憲司 藤光 隆司 石本 唯奈 細見 峻司
出版者
大阪大谷大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2015-04-01

細菌の越境移動に関する現状の把握は、健康・衛生の観点から重要な課題である。地球上の種々の細菌が渡り鳥とともに国境を越えて移動している可能性があるがその実態は明らかではない。本研究では、渡り鳥の糞に含まれる細菌群集を培養に依存せずに高速シーケンサーを用いて明らかにし、潜在的な病原細菌が長距離移動する実態を検証した。関西地区および北海道東部の沿岸部において、ツバメ科、カモ科、カモメ科の渡り鳥を主な対象として、糞に含まれる腸内細菌群集の16S rRNA遺伝子の配列を網羅的に解析し、鳥の種類による相違、他の生物との相違を明らかにした。また糞に含まれる多剤耐性菌について遺伝学的特徴を明らかにした。
著者
内井 喜美子
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
ファルマシア (ISSN:00148601)
巻号頁・発行日
vol.50, no.5, pp.449, 2014 (Released:2016-06-21)
参考文献数
5

別の動物を介して感染する感染症をベクター媒介感染症という.蚊が媒介するデング熱やマラリアは人間の代表的なベクター媒介感染症だが,有効なワクチンがなく,その制御には,殺虫剤による蚊の駆除と,防虫ネットによる蚊との接触遮断が最も有効な手段となっている.しかし,蚊が薬剤耐性を獲得したり,防除器具の普及・維持が難しい場合があることより,新たな方策が求められている.なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.1) McGraw E. A. et al., Nat. Rev. Microbiol., 11, 181-193 (2013).2) McMeniman C. J. et al., Science, 323, 141-144 (2009).3) Moreira L. A. et al., Cell, 139, 1268-1278 (2009).4) Ye Y. X. H. et al., Plos Neglect. Trop. Dis., 7, e2362 (2013).5) Zhang G. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U. S. A., 110, 10276-10278 (2013).