著者
別府 哲 加藤 義信 工藤 英美
出版者
岐阜大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

自閉スペクトラム症の心の理論障害は、Perner(1991)によればメタ表象の問題である。しかしメタ表象を直接定義し測定した研究はほとんど無い。本研究では、工藤・加藤(2014)が開発した多義図形の1枚提示課題(メタ表象を必要)と2枚提示課題(メタ表象を必要としない)を用いてその特徴を検討した。定型発達児は4歳で2枚提示条件のみ正答率があがり、5歳で1枚提示条件も正答率が上昇する。それに対し、自閉スペクトラム症児は精神年齢4歳台で1枚提示条件はもとより、2枚提示条件も正答率が低かったことから、メタ表象の発達の遅れとともに、その発達プロセスが得意である可能性が示唆された。
著者
加藤 弘美 加藤 義信 竹内 謙彰
出版者
一般社団法人 日本発達心理学会
雑誌
発達心理学研究 (ISSN:09159029)
巻号頁・発行日
vol.25, no.3, pp.302-312, 2014

本研究では,ビデオ映像を用いて,マークテストとリーチングテストの達成の発達的関係を調べることによって,自己とモノの映像の性質に関する理解に2~3歳児では違いがあるか否かを明らかにすることを目的とする。実験では2歳6カ月から3歳7カ月の幼児43名を対象に,まず,マークテストを実施し,その後,前方リーチングテスト(隠されたモノが子どもの前方に出現する)と,後方リーチングテスト(モノが子どもの背後に出現する)を実施した。さらに,前方と後方の両方に同時につい立てを置き,どちらか一方だけにモノを置いた場合,子どもがモノの映像だけを見て正しい位置にリーチングするかどうかを見た。その結果,(1)後方リーチングテストはマークテストより通過が困難であること,(2)後方リーチングテストは前方リーチングテストより困難であること,(3)つい立てが前後両方に現れる課題では,モノが後方に置かれる場合には,実際の場所と反対を探索する「お手つき反応」がより多く出現することが示された。この傾向は,マークテストを通過できる子どもにも同じく認められた。以上から,自己映像を対象とするマークテストに通過できた子どもでも,モノの映像の十分な理解が,とりわけ映像空間内と実空間内でのモノの位置の対応関係の理解が,必ずしも可能となっているわけではないことが示唆された。
著者
橋本 憲尚 加藤 義信
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.36, no.4, pp.358-368, 1988-12-30 (Released:2013-02-19)
参考文献数
51

It is well-known that younger children up to the age of about 6 yr. have much difficulty in discrimination between oblique lines in contrast with relative ease in that between horizontal and vertical. This phenomenon is called oblique effect and a large amount of studies were conducted over the past twenty years for determining the causes of such effect. This paper reviewed these experimental studies in terms of the development of the children's strategies in encoding and storing information of oblique orientation in memory. Some recent infant studies revealed that even a baby might have his/her categorical ability of orientation, so, during early childhood, the orientational categories should be much elaborated, and several encoding strategies for non-specific orientation such as oblique should be developed in an appropriate way to each stimulus context. This course of the development seemed to be confirmed on the whole from the present overview of the studies concerned. This confirmation afforded a basis for further discussions on a developmental hierarchy in orientational categories.