著者
瀬野 由衣
出版者
名古屋大学
雑誌
心理発達科学論集
巻号頁・発行日
no.33, pp.11-25, 2003

This article reviewed DeLoache's studies on the development of children's understanding of symbol. DeLoache defined a symbol as follows : "A symbol is something that someone intends to stand for or represent something other than itself." Firstly, we examined this definition in terms of five elements (someone, something [symbol, referent], represent or stand for, intend). Secondly, we discussed DeLoache's theory which emphasized the importance of symbol's dual nature and reviewed her findings providing a strong support for it. Finally, we described the future direction about the research of the symbolic understanding.
著者
瀬野 由衣
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学年報 (ISSN:04529650)
巻号頁・発行日
vol.56, pp.8-23, 2017-03-30 (Released:2017-09-29)
参考文献数
81
被引用文献数
1 3

本稿では,2015年7月から2016年6月までの1年間に発表された,日本における乳幼児期と児童期を対象とした研究を概観した。対象とした主な研究は,『教育心理学研究』『発達心理学研究』『心理学研究』『Japanese Psychological Research』『日本教育心理学会第58回総会論文集』に掲載されたものである。日本教育心理学会第58回総会においては,乳幼児期,児童期ともに昨年度と同様,「他者とのかかわり」を研究テーマに含む研究発表が多い傾向がみられた。本稿では,論文の著者が「どのような他者とのかかわりを想定しているのか」を筆者なりに推測し,幼児期と児童期の研究を分類した。最後に,幼児期と児童期の研究の共通性と相違点について考察し,今後の展望について述べた。
著者
瀬野 由衣
出版者
一般社団法人日本発達心理学会
雑誌
発達心理学研究 (ISSN:09159029)
巻号頁・発行日
vol.19, no.1, pp.36-46, 2008-05-10

本研究では,相手によって知識の提供と非提供を使い分けられるようになる発達的プロセスを検討した。105名の幼稚園児(3〜6歳児)を対象に,隠し合いゲームを実施し,ゲームの流れの中で協力場面,競争場面を設定した。どちらの場面でも,子どもは宝物の隠し場所を見たが,協力相手,競争相手はそれを見なかった。協力相手に正しい知識を提供すれば,宝物は子どもの宝箱に人った。一方,敵である競争相手に正しい知識を提供すると,宝物は競争相手に取られてしまった。いずれの場面でも,協力相手,競争相手は,まず,子どもに「知ってるかな?」と尋ねた。その後,子どもが知識を提供しなかった場合は,「教えて」と尋ね,知識伝達を促した。その結果,年少児(3歳児)では,両場面で,「知ってるかな?」と質問された時点で隠し場所を指す,即時性の強い反応が最も多くみられ,この反応は年齢の上昇と共に減少した。一方,正答である競争相手には知識を提供せず,協力相手のみに知識を提供するという使い分けは,年齢の上昇と共に可能になった。さらに,上記の課題で知識の提供と非提供を使い分けられる子どもは,既知の対象に対する行為抑制が必要な実行機能課題(葛藤課題)の成績もよかった。以上から,相手によって知識の提供と非提供を使い分ける能力の発達に,既知の対象に対する行為抑制の発達が関連することが示唆された。
著者
伊藤 大幸 辻井 正次 望月 直人 中島 俊思 瀬野 由衣 藤田 知加子 高柳 伸哉 大西 将史 大嶽 さと子 岡田 涼
出版者
一般社団法人 日本発達心理学会
雑誌
発達心理学研究 (ISSN:09159029)
巻号頁・発行日
vol.24, no.2, pp.211-220, 2013

本研究では.保育士が日常の保育業務の中で作成する「保育の記録」を心理学的・精神医学的観点から体系化した「保育記録による発達尺度(NDSC)」(中島ほか,2010)の構成概念妥当性について検証を行った。4年間にわたる単一市内全園調査によって,年少から年長まで,延べ9,074名の園児についてのデータを得た。主成分分析を行ったところ,9つの下位尺度が見出され,いずれも十分な内的整合性を持つことが示された。9尺度のうち,「落ち着き」,「注意力」,「社会性」,「順応性」の4尺度は月齢との関連が弱く,子どもの行動的・情緒的問題のスクリーニングツールであるStrengths and Difficulties Questionnaire(SDQ)との関連が強いことから,生来の発達障害様特性や不適切な養育環境による不適応問題を反映する尺度であることが示唆された。逆に,「好奇心」,「身辺自立」,「微細運動」,「粗大運動」の4尺度は,月齢との関連が強く,SDQとの関連が弱いことから,子どもの適応行動の発達状況を反映する尺度であることが示唆された。このようなバランスのとれた下位尺度構成によって,NDSCは,配慮が必要な子どもの検出と早期対処を実現するとともに,現在の子どもの発達状況に適合した保育計画の策定に貢献するツールとして有効性を発揮することが期待される。
著者
瀬野 由衣
出版者
日本保育学会
雑誌
保育学研究 (ISSN:13409808)
巻号頁・発行日
vol.48, no.2, pp.157-168, 2010-12-25

本研究では,2〜3歳児の遊び場面を半年間にわたって幼稚園で縦断的に観察し,遊びにおいて子どもたちが生み出す共有テーマの特徴を調べた。その結果,遊びを特徴づける共有テーマは時間経過に伴い,質的に変化していくことが示された。前半の3か月間は,相互模倣によって共有テーマを生み出す子どもの姿が観察された。相互模倣において,子どもたちは同じモノ,同じ動きを介して関わりながら,"同じ"であることを体感したり,互いの間にコンタクトが成立していることを確認しあう姿がみられた。その後,徐々に,ごっこの開始を誘いかける言葉が契機となって開始されるごっこのテーマが共有されるようになった。初期のごっこ遊びはルーティンに支えられていたが,徐々に皆で目標を共有しながらテーマを共有する姿がみられるようになった。