著者
勝沼 信彦 犬伏 知子 遠藤 晃市
出版者
徳島文理大学
雑誌
萌芽的研究
巻号頁・発行日
1997

ビタミンB6の活性助酵素型ピリドキサール燐酸(PALP)がシステインプロテアーゼ群を阻害することは全く新しい発見である。その阻害はカテプシン群の活性基-SIIとPALPの活性アルデヒドが結合しておこることを明らかにした。ビタミンB6誘導体の中で生理的助酵素型であるPALPが一番阻害が強いことは大切で意義が深い。勝沼らはカテプシンBのX線結晶回折からカテプシンBの立体構造のコンピューターグラフィックを使用して、カテプシンBとPALPは親和性が強く結合するが、燐酸のないPALは結合が非常に弱いことを説明できた。抗原のプロセッシングプロテアーゼであるカテプシンBを強く阻害できることからこのビタミンB6誘導体のinvivoでのカテプシンBの阻害及び免疫・アレルギー発現抑制が、生理的に関与しているか、または治療薬理学的に意味があるのかを明らかにした。そのことにより(1)食餌ビタミン量と免疫・アレルギー発現の間に関係があるのか。(2)薬物量のビタミンB6投与により免疫抑制及びアレルギー発現の抑制が可能であることを明らかにした。すなわち、卵白アルブミンで感作した場合に産生されるIgElとIgGl量がビタミンB6誘導体PALとPIN投与で著明に抑制されることが証明できた。更にこれらの抑制はサイトカイン類、Il-4,IL-2等の産生抑制を介して起こっている。すなわち、ビタミンB6により抗原のプロセッシングが抑制されることにより、サイトカイン類の産生に影響を与えて、その結果としてインムノグロブリン産生に影響を与えるという事がわかった。この原理により、アレルギー発現に対してビタミンB6は予防や治療薬として使用可能であるのかを明らかにした。
著者
勝沼 信彦
出版者
公益社団法人 日本ビタミン学会
雑誌
ビタミン (ISSN:0006386X)
巻号頁・発行日
vol.78, no.9, pp.456, 2004-09-25 (Released:2017-10-10)

茶catechin類の生理作用は近年にいたりおおいに着目されてきている. 特に疫学的には発がん抑制作用が着目されている. Apoptosisに関しては相反する効果の報告が多くある. すなわち, ある系ではapoptosisを誘導するといい, 別の系ではapoptosisを抑制するとの報告がある. 現象的に系により相反する結果が報告されている. しかし, apoptosisに関与する酵素に対する直接作用の報告は全く無い. 我々は, apoptosisの発現に最も大切な役割を担っているcaspase-3を直接阻害することを見いだした. Catechin誘導体ではepigallo-catechin gallate(EGCG)およびepigallo-catechin(EGC)は弱く阻害した. 単独ではcatechinも, その立体異性体epi-catechin(EC)も全く阻害活性は無い. Gallo-catechin(GC)もgallateにも全く阻害活性は無い. すなわち, GCまたはEGCのどちらかの組み合わせを含有していることが必要であることが明らかとなった. 両コンポネントを兼ね備えているEGCGが最も強力であった. この阻害のモードは基質変化に対する反応速度曲線はシグモイドになり, Linewever-Burkの表現では1/vは1/sに対してEGCG存在下で直線にならずLog曲線となって, 1/[s]2をとると直線となった. 従って, この阻害モードはsecond order allosteric inhibitionであるものと考えられる. この阻害はin vivoの系でも起こり, 肝apoptosis誘導剤であるD-galactosamine投与により上昇した肝caspase-3の活性をEGCGは完全に抑制した. その結果D-galactosamineにより誘導されたapoptosisも抑制した. 核の凝縮反応, タンネル染色陽性も肝GOT, GPT上昇も抑制された. 〔論議〕永津客員 イスラエルのグループが, 緑茶のepigallo-catechinが, MPTP(1-methyl-4-phenyl-1,2,3,6-tetrahydropyridine)による神経細胞死のapoptosisを防ぐ報告をしています. その機構にoxygen radicalを抗酸化作用で防ぐためと推定していますが, 先生の示されたようにcaspase-3を直接阻害している機構が考えられると思いますがいかがでしょうか. 勝沼会友 先生のご意見どおりcaspase-3の抑制による可能性は非常に高いと思います.
著者
勝沼 信彦 犬伏 知子 高橋 昌江 小川 直子
出版者
徳島文理大学
雑誌
徳島文理大学研究紀要 (ISSN:02869829)
巻号頁・発行日
no.75, pp.189-194, 2008-03

[1]骨マトリックスを形成しているのは主にタイプI型コラーゲンであり,タイプI型コラーゲンを良く分解できるのは生体組織内では主にCollagenolitic Cathepsinsと言われているCathepsin LとKである。[2]Cathepsins Lの特異的阻害剤CLIK-148等はin vitroのOsteoclastic骨Pit形成を強力に抑制する。in vivoでのPTHによる骨分解促進も強力に抑制できる。[3]牛乳中には多種にして大量のCollagenolitic cathepsinの阻害剤を含有している。そのうち,Lactoferrinの含有量は一番高く,これは構造上Cytatin family (Cysteine protease inhibitor = Cystatin)である。β-Caseinは次に含有量が高いCathepsin阻害剤である。[4]初乳Colosteriumでは成乳の3倍のLactoferrinを含有しており,β-Caseinは成乳に多いが初乳には極めて少ない。[5]成乳によるCathepsin LとKの阻害は70〜80倍希釈乳で50%であるが,初乳では50%抑制に200倍希釈で充分である。この差は,Lactoferrinの含有量の差に起因するものと考えられる。[6]Osteoclastic骨Pit形成は,成乳では25倍希釈乳で50%抑制であるが,初乳では約250倍希釈で50%阻害が見られる。25倍希釈乳では完全阻害である。新生児への人工乳栄養ではこの差は大切な考慮すべき問題点である。

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著者
勝沼信彦 市原明編集
出版者
朝倉書店
巻号頁・発行日
1968
著者
立石 潤 高久 史麿 今堀 和友 辻 省次 井原 康夫 畠中 寛 山口 晴保 貫名 信行 石浦 章一 勝沼 信彦 中村 重信
出版者
九州大学
雑誌
重点領域研究
巻号頁・発行日
1992

当研究班では脳老化に伴う神経変性とくにアルツハイマー型老年痴呆を中心課題としてとり挙げ、その発症機序を分子生物学的ならびに分子遺伝学的手法により追求した。まず神経系細胞の生存維持に直接関与する神経栄養因子に関しては神経成長因子(NGF)およびそのファミリー蛋白質であるBDNF,NT-3,4,5を中心に特異抗体の作成とそれによる鋭敏な測定方法の確立、受容体のTrkA,B,Cなどの核酸、蛋白レベルでの検索で成果を挙げた。さらに神経突起進展作用を持つ新しい細胞接着因子ギセリンを発見し、逆に成長を遅らす因子GIFについてそのcDNAのクローニングから発現状態までを明らかにした。アルツハイマー病の2大病変である老人斑と神経原線維変化(PHF)については、主な構成成分であるβ蛋白とタウ蛋白を中心に検討を進めた。β蛋白に関してはびまん性老人斑は1-42(43)ペプチドから成り、アミロイド芯と血管アミロイドは1-40ペプチドから成ることを発見した。タウ蛋白に関しては、そのリン酸化酵素TPKI,IIを抽出し,それがGSK3とCDK5であることをつきとめた。さらには基礎的な業績として神経細胞突起の構成と機能、とくに細胞内モーター分子についての広川らの業績は世界に誇るものである。アルツハイマー病の分子遺伝学上の重要点は第14,19,21染色体にある。第14染色体の異常は若年発症家系で問題となり、わが国の家系で14q24.3領域のS289からS53の間約8センチモルガンに絞り込んでいた。最近シエリントンらによりpresenilin I(S182)遺伝子が発見され、その変異が上記のわが国の家系でも検出された。第19染色体のアポリポ蛋白E4が、遅発性アルツハイマー病のみならず早発性の場合にも危険因子となることを、わが国の多数の症例から明らかにした。第21染色体ではダウン症関連遺伝子とともにAPP遺伝子があり、そのコドン717の点変異をわが国のアルツハイマー家系でも確認した。さらに第21染色体長腕部全域の物理地図を完成した大木らの業績は今後、学界への貢献度が大であろう。これらの研究成果を中心に、単行本として「アルツハイマー病の最先端」を羊土社より平成7年4月10日に発行し、また週刊「医学のあゆみ」の土曜特集号として平成7年8月5日号に「Alzheimer病-up date」を出版した。