著者
齊藤 奈英 多田 幸雄 岡部 隆義 長野 哲雄
出版者
情報計算化学生物学会
雑誌
Chem-Bio Informatics Journal (ISSN:13476297)
巻号頁・発行日
vol.17, pp.34-37, 2017-04-08 (Released:2017-04-08)
参考文献数
11

偽性低アルドステロンII型は、常染色体優性遺伝疾患であり非常に稀な家族性高血圧症である。これは、WNK1 [with no K (lysine) protein kinase-1]あるいはWNK4の機能亢進に起因するとされている。これらのWNKは、多くのキナーゼに存在するβ3 strandのリジン残基がシステインに置き換わっており、また、ATP結合サイトのすぐ後ろにバックポケットがあるという特徴的な構造をしている。したがって、この特徴的なバックポケット及び活性に重要な役割を果たしていることも知られているグリシンリッチループにあるリジン残基(WNK1のLys233)と相互作用する化合物は、WNK1及びWNK4の選択的阻害剤であることが予測される。本研究では、フラグメントライブラリー化合物及び競合結合アッセイを用いて、ヒンジ領域ではなく、バックポケットと選択的に相互作用する化合物を選択した。得られた化合物は、1,3-イソキノリンジオールと4-メチル1,3-イソキノリンジオールであった。これらの化合物にプロトンドナーとなる置換基を導入すると、Leu369 (WNK1) に水素結合し、WNK1及びWNK4に対する選択的な阻害剤を得るためのシード化合物となると予想される。
著者
齊藤 奈英 多田 幸雄 岡部 隆義 長野 哲雄
出版者
情報計算化学生物学会
雑誌
Chem-Bio Informatics Journal (ISSN:13476297)
巻号頁・発行日
vol.17, pp.30-33, 2017-03-30 (Released:2017-03-30)
参考文献数
9

偽性低アルドステロンII型は、WNK1 [with no K (lysine) protein kinase-1]あるいはWNK4に起因する非常に稀な常染色体優性遺伝疾患として知られている。これらのセリン-スレオニンキナーゼは、ATP結合サイトのすぐ後ろにバックポケットがあるという特徴的な構造をしている。さらに、グリシンリッチループにあるリジン残基(WNK1のLys233)は、活性に重要な役割を果たしていることも知られている。本研究において、我々は、WNK特異的阻害剤を創成するためのリード候補化合物を探索するため、WNK1のバックポケットと約9000化合物のフラグメントライブラリーとのドッキングシミュレーションを実施した。我々は、結合スコアに基づいてバックポケットと相互作用してヒンジ領域とは相互作用しないリード構造として、β-テトラロン(化合物5)を選択した。次に、バックポケットとβ-テトラロンとの予測できる4つのドッキングパターンに基づいて、Lys233と水素結合を形成することが予測される4つの誘導体化合物A-Dをデザインした。これらの誘導体化合物は、ドッキングシミュレーションにおいてLys233と選択的に相互作用することが示され、選択的なWNK阻害剤を開発するための潜在的リード化合物であると考えられる。
著者
多田 幸雄 山脇 一郎 上田 修一 松本 宏 松浦 直資 安本 三治 江田 昭英 堀 幹夫
出版者
Chem-Bio Informatics Society
雑誌
Chem-Bio Informatics Journal (ISSN:13476297)
巻号頁・発行日
vol.3, no.4, pp.163-174, 2003 (Released:2003-12-31)
参考文献数
10

I 型アレルギー疾患治療薬の開発を目的として dimethyl-2-phenoxyethylsulfoniun p-toluenesulfonate 誘導体(1)におけるリード最適化を行った。3-ethoxy, 3-phenoxy, 2,3-diethoxypropoxy 誘導体が、経口投与で誘導ラット同種受身皮膚アナフィラキシー(PCA)の抑制作用を示した。さらに急性毒性とアセチルコリン様作用を考慮し、2-[4-(3-ethoxy- 2-hydroxypropoxy)phenoxy]ethylsulfoniun p-toluenesulfonate (11)を前臨床試験候補化合物として選択した。
著者
多田 幸雄 山脇 一郎 上田 修一 松本 宏 松浦 直資 安本 三治 江田 昭英 堀 幹夫
出版者
Chem-Bio Informatics Society
雑誌
Chem-Bio Informatics Journal (ISSN:13476297)
巻号頁・発行日
vol.12, pp.25-38, 2012 (Released:2012-06-28)
参考文献数
14
被引用文献数
1

スルホニウム化合物の分配係数 logK 値は実測されていなかったので、これまでは置換基の πの計算値のみを用いてQSAR解析を報告してきた。本研究においては、固定相としてオクチルシリル化されたシリカゲルプレート(Merck HPTLC RP-8 F253S)、移動相として 50%(V/V) エタノール水溶液を用いて、抗アレルギー剤である Suplatast Tisilate (IPD-1151) の開発におけるスルホニウム化合物の logK 値を測定した。最適化された化合物 52 および 67 (Suplatast Tosilate)の logKTLC値は、それぞれ 0.07 と 0.06 であった。従って、抗アレルギー剤としてのスルホニウム化合物の望ましい logKTLC の値はほぼ 0 であることが判明した。
著者
多田 幸雄 山脇 一郎 上田 修一 松本 宏 松浦 直資 安本 三治 江田 昭英 堀 幹夫
出版者
情報計算化学生物学会(CBI学会)
雑誌
Chem-Bio Informatics Journal (ISSN:13476297)
巻号頁・発行日
vol.1, no.2, pp.84-93, 2001 (Released:2001-09-28)
参考文献数
12

スルホニウム化合物の物理化学的性質とその生物活性との相関を明らかにする目的で、スルホニウム化合物に特徴的な性質である H-D 交換およびメチル基転移反応速度を調べた。その結果H-D 交換およびメチル基の転移反応速度と急性毒性(LD50)の間に良好な相関があった。医薬品の開発において毒性をコントロールすることは非常に重要なことである。メチル基の高い反応性は急性毒性の面から望ましくない、従ってこれらスルホニウム化合物において、硫黄原子の置換基として不飽和炭素を持たない化合物が毒性軽減の面から望ましかった。さらに、OH 基もしくは COOH 基は大幅に毒性を軽減した。これらの毒性軽減に関する情報は抗アレルギー薬である Suplatast Tosilate の分子設計に用いられた。
著者
多田 幸雄 数野 秀樹 佐藤 勉 鈴木 則彦 江村 智弘 矢野 伸吾
出版者
情報計算化学生物学会(CBI学会)
雑誌
CBIジャーナル
巻号頁・発行日
vol.17, pp.19-29, 2017

トリフルオロチミジン(TFT)は抗腫瘍活性を有するが、チミジンホスホリラーゼ(TP)により不活性なチミンに容易に代謝されるので、TFT単独では臨床で満足な抗腫瘍活性を示すことができない。ヒトのTP (HTP) はヒトのピリミジンヌクレオシドホスホリラーゼの主な酵素である。従って、TFTの抗腫瘍活性を維持するにはHTP阻害薬を開発する必要があった。ここでは、SBDDとclassical QSARによるHTP阻害薬のドラッグデザインのプロセスを示す。チミンをシード化合物、5-クロロウラシル(3)をリード化合物として選択した。リード化合物(3)のC6位にイミノ基の導入は阻害活性を向上した。結果として5-chloro-6-[1-(2-iminopyrrolidinyl) methyl] uracil hydrochloride (TPI)を臨床試験候補化合物とした。そして、TAS-102(配合モル比 TFT:TPI = 1: 0.5)はトリフルリジン/チピラシル(ロンサーフ)として日本、欧州、米国で転移性直腸がんの治療薬として認可された。
著者
多田 幸雄 数野 秀樹 佐藤 勉 鈴木 則彦 江村 智弘 矢野 伸吾
出版者
Chem-Bio Informatics Society
雑誌
Chem-Bio Informatics Journal (ISSN:13476297)
巻号頁・発行日
vol.17, pp.19-29, 2017-03-24 (Released:2017-03-24)
参考文献数
33

トリフルオロチミジン(TFT)は抗腫瘍活性を有するが、チミジンホスホリラーゼ(TP)により不活性なチミンに容易に代謝されるので、TFT単独では臨床で満足な抗腫瘍活性を示すことができない。ヒトのTP (HTP) はヒトのピリミジンヌクレオシドホスホリラーゼの主な酵素である。従って、TFTの抗腫瘍活性を維持するにはHTP阻害薬を開発する必要があった。ここでは、SBDDとclassical QSARによるHTP阻害薬のドラッグデザインのプロセスを示す。チミンをシード化合物、5-クロロウラシル(3)をリード化合物として選択した。リード化合物(3)のC6位にイミノ基の導入は阻害活性を向上した。結果として5-chloro-6-[1-(2-iminopyrrolidinyl) methyl] uracil hydrochloride (TPI)を臨床試験候補化合物とした。そして、TAS-102(配合モル比 TFT:TPI = 1: 0.5)はトリフルリジン/チピラシル(ロンサーフ)として日本、欧州、米国で転移性直腸がんの治療薬として認可された。
著者
多田 幸雄 山脇 一郎 上田 修一 松本 宏 松浦 直資 安本 三治 江田 昭英 堀 幹夫
出版者
Chem-Bio Informatics Society
雑誌
Chem-Bio Informatics Journal (ISSN:13476297)
巻号頁・発行日
vol.2, no.3, pp.86-94, 2002 (Released:2002-10-31)
参考文献数
10
被引用文献数
1 1

I 型アレルギー疾患治療薬を開発する目的でトシル酸 2-ヒドロキシエチルジメチルスルホニウム (1) 誘導体の抗アレルギー作用を検討した。それらの中でトシル酸 2-アルコキシと2-フェノキシエチルジメチルスルホニウムの数化合物がIgE 誘導ラット同種受身皮膚アナフィラキシー(PCA)の抑制作用を示した。抗アレルギー作用および急性毒性と化合物の疎水性または電子的性質(HOMOまたは酸素原子上の電荷)との間に相関が見られた。そしてトシル酸2-フェノキシエチルジメチルスルホニウム(5)を、次の開発段階における第二のリード化合物として選定した。
著者
多田 幸雄 山脇 一郎 上田 修一 松本 宏 松浦 直資 安本 三治 江田 昭英 堀 幹夫
出版者
情報計算化学生物学会(CBI学会)
雑誌
CBIジャーナル (ISSN:13476297)
巻号頁・発行日
vol.2, pp.86-94, 2002
被引用文献数
1

I 型アレルギー疾患治療薬を開発する目的でトシル酸 2-ヒドロキシエチルジメチルスルホニウム (1) 誘導体の抗アレルギー作用を検討した。それらの中でトシル酸 2-アルコキシと2-フェノキシエチルジメチルスルホニウムの数化合物がIgE 誘導ラット同種受身皮膚アナフィラキシー(PCA)の抑制作用を示した。抗アレルギー作用および急性毒性と化合物の疎水性または電子的性質(HOMOまたは酸素原子上の電荷)との間に相関が見られた。そしてトシル酸2-フェノキシエチルジメチルスルホニウム(5)を、次の開発段階における第二のリード化合物として選定した。
著者
多田 幸雄 山脇 一郎 上田 修一 松本 宏 松浦 直資 安本 三治 江田 昭英 堀 幹夫
出版者
情報計算化学生物学会(CBI学会)
雑誌
CBIジャーナル (ISSN:13476297)
巻号頁・発行日
vol.1, no.2, pp.84-93, 2001

スルホニウム化合物の物理化学的性質とその生物活性との相関を明らかにする目的で、スルホニウム化合物に特徴的な性質である H-D 交換およびメチル基転移反応速度を調べた。その結果H-D 交換およびメチル基の転移反応速度と急性毒性(LD<SUB></FONT SIZE=-1>50</FONT></SUB>)の間に良好な相関があった。医薬品の開発において毒性をコントロールすることは非常に重要なことである。メチル基の高い反応性は急性毒性の面から望ましくない、従ってこれらスルホニウム化合物において、硫黄原子の置換基として不飽和炭素を持たない化合物が毒性軽減の面から望ましかった。さらに、OH 基もしくは COOH 基は大幅に毒性を軽減した。これらの毒性軽減に関する情報は抗アレルギー薬である Suplatast Tosilate の分子設計に用いられた。
著者
多田 幸雄 タダ ユキオ Yukio TADA
雑誌
岐阜薬科大学紀要 = The annual proceedings of Gifu Pharmaceutical University
巻号頁・発行日
vol.64, pp.46-55, 2015-06-30

I 型アレルギー反応は、肥満細胞に結合しているIgE に抗原が結合することで、細胞内顆粒に貯蔵されている各種ケミカルメディエーターが放出されることにより惹起される。既存の抗アレルギー薬は、メディエーター遊離抑制薬および、ヒスタミンH1 拮抗薬、トロンボキサン阻害薬、ロイコトリエン拮抗薬であった。そこで、I 型アレルギー反応の原因である IgE の作用を特異的に阻害できればアレルギー疾患の根本的な治療に繋がると考え、従来のメカニズムとは異なる新しい抗アレルギー薬の開発を目指した。メチル基転移反応がアレルギー反応に関わっているのではないかという考えに基づき、生体内メチル基供与体であるS-adenosylmethionine はsulfonium 化合物であることと、S-methylmethionine(methylmethionine sulfonium chloride) がモルモットの抗体産生を増強することから、これをシード化合物とした。次いで、sulfonium 化合物の種々の物理化学的性質と抗アレルギー作用および急性毒性との構造活性相関解析による、論理的な分子設計を実施した。その結果、抗アレルギー薬: Suplatast Tosilate として認可されたsulfonium 化合物54b を創製することができた。Type I allergic reactions are caused by various chemical mediators released from mast cell by combining antigens and IgEantibodies. The existing anti-allergic drugs are mediator suppressants, histamine H1 antagonists, thromboxane inhibitors, andleukotriene antagonists. However, drugs that specifically inhibit IgE activity are expected to be efficacious for the treatment of type Iallergic diseases. We sought to develop a new anti-allergy drug that functions outside the conventional mechanism.Methylmethionine sulfonium chloride (S-methylmethionine) was selected as a seed compound, because it reinforces guinea pigantibody production and may affect allergic reactions. We analyzed the structure-activity relationship between physical chemicalproperties and sulfonium compound-induced anti-allergic action or toxicity for rational molecular drug design. Based on these efforts,we identified sulfonium compound 54b, which was launched as Suplatast Tosilate.
著者
多田 幸雄 山脇 一郎 上田 修一 松本 宏 松浦 直資 安本 三治 江田 昭英 堀 幹夫
出版者
情報計算化学生物学会(CBI学会)
雑誌
Chem-Bio Informatics Journal (ISSN:13476297)
巻号頁・発行日
vol.1, no.1, pp.51-59, 2001 (Released:2001-03-31)
参考文献数
17
被引用文献数
3 3

トランスメチレーション反応は免疫システムにおいて重要な役割を担っている。また反応し易いメチル基を有するスルホニウム化合物は生体内においてメチル基の供給源となり得ると考えられる。我々は抗アレルギー薬の開発を開発を目的として、構造活性解析の観点からスルホニウム化合物の物理化学的性質を検討した。そして見出した免疫活性を有するいくつかのスルホニウム化合物の中から、2-hydroxyethyldimethylsulfonium p-toluenesulfonate をリード化合物に選定した。