- 著者
-
土井 悦四郎
北畠 直文
- 出版者
- 京都大学
- 雑誌
- 一般研究(C)
- 巻号頁・発行日
- 1986
食品素材並びに製造食品の長期保存の観点から, 凍結保存の必要性が高まり, 冷凍食品は増加する傾向にある. これに対し冷凍保存中における品質劣化の原因は複雑であり, その機構に関する基礎的な研究は極めて少ない.本研究においては, 我々の最近の研究成果に基いて, 蛋白質の凍結変性が界面変性の一種であると言うモデルを設定し, その機構を明らかにし同時に新しい凍結変性の防止法を見出すことを目的とした.1)卵白アルブミンを材料とし, その溶解度の変化(濁度の変化)を指標として凍結変性を検討した. その結果凍結変性は比較的0゜Cに近い温度の凍結条件で著しいことを見出した. また蛋白濃度が低い程著しいことを見出した.2)この卵白アルブミンの凍結変性はTritonX-100,Tween20, その他の非イオン性界面活性剤の低濃度の存在で完全に保護されることを見出した. この界面活性剤による凍結変性の保護はこれまで全て知られていなかった新事実である.3)上記の研究成果を発展させ, 実際の食品に適用するため, 兎節肉のミオシンを材料として, 凍結変性の研究を行った. ミオシンの場合は溶解度と同時にATPase活性をその変性の指標として用いた.4)兎ミオシンATPaseを卵白アルブミンと同様に, 0゜Cに近い凍結状態でより著しい変性を受け, 蛋白質濃度が低い程変性が著しい.5)非イオン性の界面活性剤であるTween20により凍結変性が保護された. 更に興味あることは, 来から凍結変性防止材として知られている糖, グリセロールは, 比較的高濃度で効果が認められていたものであるが, 非イオン性界面活性剤と共存させることにより, より低濃度で保護効果を示すことを見出した. この事実は実用上重要な意味のあることと考える.