- 著者
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南 裕樹
- 出版者
- 京都大学
- 雑誌
- 特別研究員奨励費
- 巻号頁・発行日
- 2008
本研究の目的は,離散値信号を含む2次元システム(2Dシステム)における動的量子化器の最適設計論を構築することである.これを達成するために,つぎの二つのテーマに取り組んだ.1.分散型動的量子化器の解析と最適設計:申請者がこれまでに行ってきた研究(1次元システムのための最適動的量子化器の設計)の発展として,分散構造を有する動的量子化器の最適設計に取り組んだ(理論研究と応用研究).まず,理論研究の成果は,複数個の量子化器が組み込まれる離散値制御系において,最適な分散型動的量子化器を解析的に導出したことである.ここでの最適性は,離散値制御系の入出力特性が,通常の連続値制御系の入出力特性に最も近くなるという意味でのものである.一方,応用研究では,不安定なメカトロニクス系を対象とし,分散型最適動的量子化器を用いた離散値制御の有効陛を検討した.この実験検証により,最適量子化器の実用性が示された.2.n次元システムに対する最適動的量子化器:これまでの動的量子化の設計問題は,機械システムのような時間的なダイナミクスをもつく1次元システムを対象にしていた.ここでは,これまでの理論を一般化するために,空間的なダイナミクスをもつn次元システム(たとえば,分布定数系)を対象として,研究を行った.まず,離散値信号を含むn次元システムに対して,最適な動的量子化器を解析的に導出した.つぎに,その最適動的量子化器をハーフトーン画像処理に応用した.本研究では,動的量子化器を用いて多値画像の画質をできる限り維持する2値画像が生成できることを確認した.