著者
篠原 厚子 千葉 百子 武内 裕之 木下 勝之 稲葉 裕
出版者
日本衛生学会
雑誌
日本衛生学雑誌 (ISSN:00215082)
巻号頁・発行日
vol.60, no.4, pp.418-425, 2005-11-15 (Released:2009-02-17)
参考文献数
29
被引用文献数
1 3

Objective: The relationships between element concentrations and sperm parameters in semen samples were investigated.Methods: Semen samples (n=113) were donated voluntarily by male partners of infertile couples. The concentrations of fourteen elements (Na, K, P, Ca, Zn, Mg, Fe, Cu, Se, Mn, Sn, Co, Ni, and Cd) in semen were determined by atomic absorption spectrometry, fluorometry, or colorimetry. Element concentrations in seminal plasma and in sperm were also measured.Results: Element concentrations in semen were in the order Na>P, K>Ca>Zn>Mg>>Fe>Cu, Se>Mn>Sn, Ni, Co, Cd. When the samples were divided into two groups in terms of sperm concentration and number, the Se concentration in semen with normal parameter values (sperm concentration≥20×106 and sperm number≥40×106), 99.4±37.4ng/ml, was higher than that in semen with abnormal parameter values (sperm concentration≤20×106 and/or sperm number≤40×106), 72.1±33.9ng/ml (p<0.001). A clearer positive correlation between the Se concentration and the sperm concentration was observed in the sperm portion (r=0.853, p<0.001) than in semen (r=0.512, p<0.001) and seminal plasma (r=0.292, p=0.003). Statistically significant correlations were also observed between the concentration of Se, P, Zn, Cu, Fe, or Mn in semen, the sperm portion or seminal plasma and the sperm concentration, semen volume or abnormal morphology, although correlation coefficients were small.Conclusion: Among biologically essential elements in semen of infertile males, Se was a good indicator of sperm concentration; however, other trace elements did not indicate clear relationships between their concentrations and sperm parameters.
著者
千葉 百子 篠原 厚子 稲葉 裕 中山 秀英 林野 久紀 小出 輝
出版者
順天堂医学会
雑誌
順天堂医学 (ISSN:00226769)
巻号頁・発行日
vol.36, no.3, pp.406-410, 1990-10-20 (Released:2014-11-20)
参考文献数
19
被引用文献数
1 1

体重減少, 全身倦怠感, 筋力低下を主訴として受診, ゲルマニウムを飲用していたことが判明した症例, および神経痛治療の目的でゲルマニウム含有粉末を摂取していたため精査を希望して受診した症例の2例について検査し, 次のような結果を得た. 1) 2症例ともに測定した組織, 臓器中に高濃度のゲルマニウムが検出された. この結果はゲルマニウム含有物質の服用歴を裏付けるものである. 2) ゲルマニウムの中毒作用として腎障害が知られているが, 症例1においては臨床的ならびに病理組織学的に横紋筋融解による明らかな急性尿細管壊死が認められた. 3) ゲルマニウムの中毒作用として筋力低下, 筋萎縮が知られているが, 今回の結果では筋肉内にゲルマニウムを検出し得なかったことから, 筋肉内蓄積性のものではないと考えられる. 4) 毛髪, 爪は経口的に摂取したゲルマニウムの排泄経路の一部である.
著者
千葉 百子 稲葉 裕 篠原 厚子 佐々木 敏 下田 妙子 金子 一成
出版者
順天堂大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2004

カザフスタンとウズベキスタンに跨るアラル海は琵琶湖の100倍、世界第4位の画積だったが、現在は約1/4の面積となり、20世紀最大の環境破壊といわれる。その結果、強い砂嵐が北西から南東にかけて吹くなど、気候変動も起きている。アラル海東側には原因不明の健康障害を訴える住民が増加した。2000年からこの地域の疫学調査に着手した。罹患率の高い貧血、呼吸機能障害、腎機能障害に関してその原因究明を行ってきた。腎機能に関してカドミウムによる障害ではないかと考えた。生体、食事、環境試料を分析したがカドミウムが原因とは考え難い。これまでに世界各地で採取した多数の飲料水を分析してきたが、この地域の飲料水中にはかなりのウランが含まれているものが多かった。そこで本研究ではウランを中心に健康被害調査を行った。2004年9月にクジルオルダ州の2村で無作為抽出した218名の学童を対象に調査を行った。そのうち155名が2005年2月の調査にも応じてくれた。対象学童から飲料水、尿、血液の提供を受けた。飲料水中ウラン濃度の高いものは約40μg/L、低いものは検出限界以下であった。全例の飲料水中および尿中ウランの相関係数はr=0.263であった。尿中クレアチニン(CR)濃度がウラン濃度と平行して増加していた。尿中蛋白濃度はウラン濃度の増加に伴って上昇したが(r=0.272)、NAGおよびβ2ミクログロブリンはウラン濃度と無相関であった。尿中の元素でウランと相関があったものはヒ素(r=0.608)とチタン(r=0.650)であった。飲料水中で有意な相関があった元素はストロンチウム(r=0.800)、鉄(r-0.719)およびカルシウム(r=0.719)であった。飲料水中ウランと腎臓機能障害の指標(NAG、β2MGなど)と直接関係するか否か今後も検討を続ける予定である。
著者
篠原 厚子 千葉 百子 中埜 拓 稲葉 裕
出版者
日本微量元素学会
雑誌
Biomedical Research on Trace Elements (ISSN:0916717X)
巻号頁・発行日
vol.15, no.1, pp.49-53, 2004 (Released:2005-04-08)
参考文献数
5

The concentrations of 48 kinds of major and trace elements in dry milk were determined by microwave-induced plasma mass spectrometry, atomic absorption spectrometry, or colorimetry. The order of the element concentrations in dry milk was K > Ca, P > Na > Mg >> Zn > Rb > Fe > Sr > Cu, Ba, Ni, Mo, Mn, As > Se, Co, Cr. Other elements determined were much lower or under detection limit. Element concentrations in fractions of milk (skim milk, butter milk, acidic casein, whey, whey protein concentrate (WPC), and milk mineral) were also determined. The concentrations of each element in these powdered samples were dependent on the fractions. Concentrations of Ca and Mg in skim milk, butter milk, whey and WPC were similar to those in dry milk, but those in acidic casein fraction were very low and those in milk mineral fraction were extremely high. The concentrations of P in milk mineral fraction were about twice of dry milk, and Na was almost the same, and K was lower than those in dry milk. The present study indicates that the milk mineral fraction is a good source of Ca and Mg.
著者
森本 史郎 安部 りょう子 福原 厚子 松村 靖夫
出版者
公益社団法人 日本薬理学会
雑誌
日本薬理学雑誌 (ISSN:00155691)
巻号頁・発行日
vol.74, no.2, pp.239-249, 1978

ラットにおけるmetolazone(MET)の利尿作用についてhydrochlorothiazide(HCT)と比較検討し,次の結果を得た.1)雄性ラットにおいて,METは0.O1mg/kgの経口投与から有意な利尿作用を示し,尿中Na排泄の増加をきたした.このNa利尿作用は,投与量0.01~0・5mg/kgまではほぼ用量依存的に増強されたが,さらに1~5mg/kgに増量しても作用強度に増大が認められなかった.尿中K排泄の増加も0.01mg/kgの投与から有意に増加したが,Naに比べて軽度であり,尿中Na/Kの上昇が認められた.METによる最大利尿効果は,対照尿量と比較して約2.5倍で,HCTよりやや強い程度であったが,最小有効量からみるとHCTの20倍強力であった.2)雄性ラットにおけるMET腹腔内投与による利尿作用は,最小有効量,作用強度ともに経口投与の場合とほぼ同じで,HCT腹腔内投与群に比べてやや強いNa利尿作用を示した.最少有効量から比較すると,METはHCTより10倍強力であった.3)これらMETおよびHCTの利尿作用には,雌雄両性ラットの間で有意差が認められなかった.4)METの経口投与あるいは腹腔内投与で,電解質排泄増加に一致して滲透圧クリアランスは著明に増加した.自由水再吸収量には増加傾向が認められたが有意なものではなかった.5)METは腎血漿流量,糸球体濾過量に明らかな影響を与えず,腎尿細管に直接作用し,電解質の再吸収を抑制することにより利尿作用を発揮するものと考える.
著者
千葉 百子 篠原 厚子
出版者
順天堂大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1992

[目的]タリウムは毒性が強いので、以前には殺鼠剤、殺虫剤として使われた。最近タリウムは超電導素材、半導体産業の素材として注目されている。そこでタリウムが生体内に摂取された場合の体内分布、また生体内からの消失を観察することを主目的としてマウスを使って実験した。[方法]1.マウス(6週齢、♂)に0.2ppm Tl含飲料水を1週間自由に摂取させ、1、3、7日後にTlの臓器内分布と排泄量を観察した。2.20ppm Tl含飲料水を3週間自由に摂取させる。(1)翌日および3週間後解剖、(2)翌日50μmol Tl/kgの強制経口投与し、その翌日および3週間後に解剖、(3)50μmol Tl/kg 1回強制経口投与し、その翌日および3週間後に解剖。各マウスから骨、肺、腎臓、骨髄細胞、顎下腺、消化管内容物、精巣、筋肉、膵臓、膀胱、消化管、脾臓、心臓、脳、肝臓、RBC、Plasma、Hair、尿、糞の20検体についてTlを分析した。[結果および考察]次のことが明らかとなった。1.経口摂取したTlは測定した全ての臓器に分布していた。2.摂取を中止すると各臓器からのTlの消失は比較的早く低濃度摂取の場合、3日後に約1/2、7日後に約1/10となる。3.連続的に摂取したTlは尿中に10〜30%、糞中に35〜60%排泄された。4.臓器中Tl濃度は骨に最も高く、摂取中止後も濃度は下るが長く存在している。5.消化管、精巣、顎下腺は比較的Tlとの親和性の高い臓器である。6.体毛中Tlは摂取総量との相関が高い。7.血値GOT、Al-P、血中ALADには著明な影響はなかった。[結論]経口的に侵入したTlは殆ど全ての臓器に分布するが、消失は速やかである。Tlの生物学的モニタリングには体毛が有効である。