著者
江原 由美子
出版者
日本社会学会
雑誌
社会学評論 (ISSN:00215414)
巻号頁・発行日
vol.30, no.1, pp.51-66,111, 1979-06-30 (Released:2009-11-11)
被引用文献数
1

多元的リアリティ論は、A. Schutz以来社会学における重要な一課題となっている。だが、これまでの多元的リアリティ論においては、各リアリティ間の構造的連関や動態が論じられることは比較的少なかったように思われる。本稿では、リアリティの多元性を生むと思われる要因を三つ挙げ、その内の一つの意識状態の多様性に基く多元的リアリティの動態論を導く事を課題とする。三要因を分節したのは、これまでの多くの議論ではリアリティの多元性に関する異なった観点を同時に取り挙げてモデル構成していたので、各リアリティを系統的に抽出し得なかったのではないかと考えるからである。そして、この各リアリティを構成する為に、人間の精神発達過程 (特にピアジェとエリクソンの発達心理学) に着眼し、その発達段階から各リアリティを導く事を試みる。このようにして構成された各リアリティ間には、二つの軸による構造的連関が指摘できる。この連関に基き、動態的な多元的リアリティの一モデルを提出したい。
著者
江原 由美子 樫村 志郎 西阪 仰 藤村 正之 山崎 敬一 山田 富秋 椎野 信雄 坂本 佳鶴恵
出版者
東京都立大学
雑誌
総合研究(A)
巻号頁・発行日
1990

初年度においては文献研究と研究計画の決定のための研究活動をおこない、第二年度においてはその研究計画に基き調査を実施した。最終年度においては、それらをもとに、研究成果を論文化することを主要な課題とし、研究報告書の作成に着手した。本研究の性格上、収集したデータの分析は、今後も継続して行われると思われるが、報告書作成段階において得られた知見を以下に挙げる。第一に、対面的相互行存状況においては、状況内にある参与者の身体(視線、顔、身体の向き、参与者相互の身体配置等)が相互行存進行の上で非常に重要な意味をもっていること。第二に、特定の制度的文脈においては、特定の相互行存的特徴がみられること.第三に、特定の制度的文脈において発生する会話トピックには、一定の範域があり、その範域をコントロールしようとする参与者の実践がみられること。第四に、それらの特定の制度的な文脈における相互行存の特徴は、相互行存参与者の、「協働的達成」として成立していること。これらの知見は、社会秩序それじたいが、行存者の「協働的達成」として成立していることを明らかにしている。社会秩序の「協働的達成」のための身体技術に関しては、その一部を報告書において明らかにしたが、今後さらに詳細な研究が必要である。
著者
小原 由美子
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.48, no.12, pp.806-816, 2006

2001年4月の情報公開法の施行と国立公文書館法の一部改正により,国の行政機関から国立公文書館への新しい公文書移管制度が始まった。しかし移管は円滑に進んでいるとは言えず,現在内閣府に置かれた「公文書等の適切な管理,保存及び利用に関する懇談会」の報告書の提言に基づき,改革が進められている。公文書等の移管は各行政機関と内閣総理大臣の合意に基づいて行われる。国立公文書館は移管についての意見を内閣総理大臣に提出できるが,意見照会しても必ずしも移管に結びつかない。諸外国の例に学びながら,政府機能の把握,公文書の廃棄権限,現用・非現用文書の概念の見直し,文書管理法等の検討が必要である。