著者
樫村 志郎
出版者
The Japanese Group Dynamics Association
雑誌
実験社会心理学研究 (ISSN:03877973)
巻号頁・発行日
vol.36, no.1, pp.148-159, 1996-06-30 (Released:2010-06-04)
参考文献数
32
被引用文献数
1 1

会話分析は, 会話者自身が会話をする中で, 作り出し, 利用する, 秩序性を判別し, 定式化しようとする, 経験的分析である。そのような「自然な」秩序性には, ターンとその内部的構造化, 後続するターンによる先行するターンの解釈提示, 複合的で延長されたターンの維持管理, 順番のローカルな配分, 「問」と「答え」のような隣接発話対に代表される順番連鎖の制御構造, 制度的に特徴あるそれらのバリエーションが含まれる。本稿では, これらの会話現象の構造ないし形式的特性と会話分析の方法論的基準との間の関連が論じられる。つぎに, あるエスノグラフィックな調査研究の現場における会話が分析され, それらの会話現象が現に存在する会話の形式的構造を作り上げていることが例証される。最後に, それらの会話が, 通常の会話であると同じ仕方の中で, 同時に, エスノグラフィックな調査インタビューとしての制度的特質を示していることが示唆されることを示す。
著者
樫村 志郎
出版者
日本法社会学会/有斐閣
雑誌
法社会学 (ISSN:04376161)
巻号頁・発行日
vol.2005, no.63, pp.161-185,267, 2005-09-30 (Released:2011-04-13)
参考文献数
27

The present article analyzes the impact of the recent judicial reform on the rural community of Japan. It is based on the multi-methodological study project on rural justice in contemporary Japan. The project has been financially supported by JSPS no. 15330004 and the 21st Century COE program for Kobe University.Firstly, the article reviews the major reforms in national law level. Though Japan has long been suffered from shortage of formal legal resources, the situation is rapidly changing because of the national judicial reform movement in last 10 years. The number of lawyer (bengoshi) in 2005 has increased by 50% compared with that of 1990: The Japan Federation of Practicing Attorneys (Nichibenren) has established the legal advice centers in all jurisdiction of local courts. The regulatory restrictions have been removed in such areas of advertisement and fees: The government enacted the "the comprehensive legal support act" in June 2004. However, the availability of legal services is still severely limited in small towns and cities in non-metropolitan areas.Secondly it examines the nation-wide distribution pattern and its changes, for 1998 to 2002 period, of attorneys (bengoshi) and judicial scribners (shihoshoshi) in local court jurisdictions, and it finds that the attorneys are more concentrated in largest metropolitan areas than the judicial scribners; however, the number of judicial scribners is increasing in more of the urban areas and decreasing in more of the rural areas than the attorneys.Lastly it qualitatively describes how the legal problems are resolved almost without resorting to attorneys in rural areas by reporting 4 case studies of small cities in rural areas. People in those areas usually rely on judicial scribners for legal remedies for such troubles as consumer problems, domestic violence, and debts. They also ask advices of the local police, local government's, especially the consumer protection agencies and their branches. In each of those areas, one or two active attorneys recently opened the publicly funded office of law in the community. It is also noticeable that not a small number of people hesitates to ask advice to the "foreign" attorney even in serious legal troubles.
著者
山崎 敬一 山崎 晶子 久野 義徳 池田 佳子 今井 倫太 小野 哲雄 五十嵐 素子 樫村 志郎 小林 亜子 関 由起子 森本 郁代 バーデルスキー マシュー 川島 理恵 中西 英之 小林 貴訓
出版者
埼玉大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2011-04-01

本研究は、人間の言語的・身体的相互行為とそれを支援する身体化されたテクノロジーのデザインに関心を持つ社会学者とロボット工学者の共同研究である。本研究では多文化に対応する身体化されたテクノロジーを開発するために、海外のミュージアム等で研究を行い、そこでの人間同士の言語的・身体的行為をヴィデオエスノグラフィーの手法で分析した。また、日本語話者と英語話者に対する比較ロボット実験と、日本とハワイを結ぶ遠隔ロボット実験を行った。
著者
江原 由美子 樫村 志郎 西阪 仰 藤村 正之 山崎 敬一 山田 富秋 椎野 信雄 坂本 佳鶴恵
出版者
東京都立大学
雑誌
総合研究(A)
巻号頁・発行日
1990

初年度においては文献研究と研究計画の決定のための研究活動をおこない、第二年度においてはその研究計画に基き調査を実施した。最終年度においては、それらをもとに、研究成果を論文化することを主要な課題とし、研究報告書の作成に着手した。本研究の性格上、収集したデータの分析は、今後も継続して行われると思われるが、報告書作成段階において得られた知見を以下に挙げる。第一に、対面的相互行存状況においては、状況内にある参与者の身体(視線、顔、身体の向き、参与者相互の身体配置等)が相互行存進行の上で非常に重要な意味をもっていること。第二に、特定の制度的文脈においては、特定の相互行存的特徴がみられること.第三に、特定の制度的文脈において発生する会話トピックには、一定の範域があり、その範域をコントロールしようとする参与者の実践がみられること。第四に、それらの特定の制度的な文脈における相互行存の特徴は、相互行存参与者の、「協働的達成」として成立していること。これらの知見は、社会秩序それじたいが、行存者の「協働的達成」として成立していることを明らかにしている。社会秩序の「協働的達成」のための身体技術に関しては、その一部を報告書において明らかにしたが、今後さらに詳細な研究が必要である。
著者
樫村 志郎 山崎 敬一 南方 暁 棚瀬 孝雄 米田 憲市
出版者
神戸大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1998

紛争処理は広く合意型と裁定型に分けることができる.合意型の紛争処理においては,紛争処理過程の開始,進行とその結果が紛争当事者による承認ないし規範受容に結合されている(ただし,裁定型の紛争処理でも,紛争解決の最終結果の規範的妥当性が,制度的規範により構築されるにとどまり,その過程や結果の解釈等は,かなり紛争当事者の規範受容によって構築されたり影響されたりする).本研究では,合意型の処理において当事者の間のどのようなコミュニケーションがなりたっているのかを知ることを主眼として,エスノメソドロジーの知見を参考にしながら,複数の研究を行った.(1)まず,法社会学の研究と理論における,非公式紛争紛争研究のレビューを行った.(2)その上で,理論的分析としては,法的コミュニケーションを単なる相互了解としてではなく,法的場面を存立させるための根源的かつ基盤的作用をもつものとしてとらえる社会学的視角の総合と洗練を行った.(3)以上の理論的分析の上にたつ,経験的分析としては,まず,紛争当事者と法的専門家が公式・非公式の紛争処理の準備のために事件の分析を行う法律相談場面.紛争当事者と紛争解決者が合意にもとづく紛争解決を達成するために事件の分析を行う調停場面(シミュレーション)をとりあげて,詳しい分析を行った.(4)この経験的知見を確かめるために,人が日常的場面を理解しようとする際に規範へと言及する場面を半実験的に構成し,法制度的場面と比較した.これらの結果として,本研究は,理論的ならびに経験的分析を組み合わせて,合意型の紛争処理過程が,独特の制度的規範構造のもとで起こるコミュニケーションとして,日常的なコミュニケーションと区別されることを示すことに成功した.